商標法3条1項3号の適用判断の基準時は、査定または審決の時と解するのが相当であるとされた事例
【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和45年(行ケ)第5号
【事案】
商標法3条1項3号の適用判断の基準時は、査定または審決の時と解するのが相当であるとされた事例。
【判決における判断】
原告は、まず、商標法3条1項3号の適用判断の基準時は、商標登録の出願時であるから、本願商標の登録出願の後に刊行された引用文献を判断の資料とすることは許されない旨主張するが、同条項の適用判断の基準時は、査定または審決の時と解するのが相当である。けだし、商標法3条1項は、商標の登録に関する積極的な要件ないしは商標の一般的登録要件に関する規定、換言すれば、登録を出願している商標がそれ自体取引上自他の商品を識別する機能を有すべきことを登録の要件とする趣旨の規定であって、同項各号にかかる識別的機能を有しないものを列挙し、このようなものについては登録を拒絶すべきことを法定したものというべく、したがって、このような要件の存否の判断は、行政処分(商標登録の許否が一の行政処分であることはいうまでもない。)の本来的性格にかんがみ、一般の行政処分の場合におけると同じく、特別の規定の存しない限り、行政処分時、すなわち査定時または審決時を基準とすべきものと解するのが相当であるからである(この理は、登録阻却要件を定めた商標法4条1項についても同様であって、同条3項がこれについての例外的規定を設けていることも、このように解することによってその合理性を首肯することができるとともに、同条におけるこのような例外的規定の設定の事実は、3条についての前叙のごとき解釈をすることの相当な所以を裏づけるものともいうことができよう。)もっとも、このように解した場合、かりに特許庁が不当に査定ないし審決を遷延することがあったとすると、その間に出願人が登録出願をしている商標について登録要件が欠けるに至り、その結果出願人が不当な不利益をこうむるという事態の発生が絶無であることを保しがたいが、このような不当な不利益は別途にこれが救済を受けうべく、かかる事態の発生のおそれがあることを理由に法律上何ら特別規定がないにもかかわらず、商標登録に関する処分に限り、通常一般の場合と例を異にし、行政処分すなわち商標登録についての要件の存否を行政処分の申請時すなわち商標登録の出願時を基準として判断決定するというごとき解釈は、当裁判所の到底採用しがたいところである。