商標法第3条第1項各号の拒絶理由の判断時期
拒絶査定不服の審判においては、商標法3条1項3号該当性は、審決時を基準として判断されるべきであるとされた事例東京高平成12年(行ケ)第24号
拒絶査定に対する不服の審判請求に対してなされた審決時を基準時として、その指定商品との関係において、当該商品の取引の実情を勘案して判断すべきであり、既登録例があることをもって認定判断を覆すことはできないとされた事例東京高平成6年(行ケ)第35号
商標法3条1項3号の適用判断の基準時は、査定または審決の時と解するのが相当であるとされた事例東京高昭和45年(行ケ)第5号
商標法第4条第1項各号の拒絶理由の判断時期
第4条第3項(第4条第1項各号の判断時期)
第一項第八号、第十号、第十五号、第十七号又は第十九号に該当する商標であっても商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用されません。
1.第4条第1項各号の判断時期について
(1) 第4条第1項第1号から第7号、第9号、第11号、第12号、第14号、第16号又は第18号に該当するか否かの判断時期は、査定時とする。
(2) 第4条第1項第8号、第10号、第15号、第17号又は第19号を適用するには、その商標登録出願が、出願時において各号の規定に該当し、かつ、査定時においても該当しなければならない。
商標審査基準(PDF) 特許庁
拒絶査定に対する不服の審判請求に対してなされた審決時を基準時として、その指定商品との関係において、当該商品の取引の実情を勘案して判断すべきであり、既登録例があることをもって認定判断を覆すことはできないとされた事例
【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成6年(行ケ)第35号
【事案】
拒絶査定に対する不服の審判請求に対してなされた審決時を基準時として、その指定商品との関係において、当該商品の取引の実情を勘案して判断すべきであり、既登録例があることをもって認定判断を覆すことはできないとされた事例。
【判決における判断】
商標が自他商品識別機能を有するものであるかは、拒絶査定に対する不服の審判請求に対してなされた審決時を基準時として、その指定商品との関係において、当該商品の取引の実情を勘案して判断すべきである。
原告は、「URO」「ウロ」という語と他の商品の品質を連想させる語との結合とからなるもので過去において登録された商標が多数あるとして例示するけれども、本審決時における「URO」「ウロ」という語の意味、取引の実情、指定商品との関係、組み合わせた語句との関係等を無視して一般的に比較することはできないといわざるを得ず、これらの既登録例があることをもって、本願商標の識別力についてこれを有しないとした認定判断を覆すことはできない。
拒絶査定不服の審判においては、商標法3条1項3号該当性は、審決時を基準として判断されるべきであるとされた事例
【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成12年(行ケ)第24号
【事案】
拒絶査定不服の審判においては、商標法3条1項3号該当性は、審決時を基準として判断されるべきであるとされた事例。
【判決における判断】
拒絶査定不服の審判においては、商標法3条1項3号該当性は、審決時を基準として判断されるべきである。
すなわち、同号は、商標の登録に関する積極的要件ないし一般的要件に関する規定であって、その要件がないものについては、商標登録を拒絶すべき旨を定めたものであるから、このような要件の存否の判断は、行政処分一般の本来的性格にかんがみ、一般の行政処分の場合と同じく、特別の規定がない限り、行政処分時、すなわち、拒絶査定不服の審判においては、審決時を基準として判断されるべきである。同法4条3項は、同法4条1項の登録阻却要件について、例外規定を定めたものであって、同法3条に適用されるものではない。また、同条1項3号についてはこのような例外規定のないことは、同号該当性の判断に当たって、出願時を基準とすべきでないことの裏付けということができる。
商標法3条1項3号の適用判断の基準時は、査定または審決の時と解するのが相当であるとされた事例
【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和45年(行ケ)第5号
【事案】
商標法3条1項3号の適用判断の基準時は、査定または審決の時と解するのが相当であるとされた事例。
【判決における判断】
原告は、まず、商標法3条1項3号の適用判断の基準時は、商標登録の出願時であるから、本願商標の登録出願の後に刊行された引用文献を判断の資料とすることは許されない旨主張するが、同条項の適用判断の基準時は、査定または審決の時と解するのが相当である。けだし、商標法3条1項は、商標の登録に関する積極的な要件ないしは商標の一般的登録要件に関する規定、換言すれば、登録を出願している商標がそれ自体取引上自他の商品を識別する機能を有すべきことを登録の要件とする趣旨の規定であって、同項各号にかかる識別的機能を有しないものを列挙し、このようなものについては登録を拒絶すべきことを法定したものというべく、したがって、このような要件の存否の判断は、行政処分(商標登録の許否が一の行政処分であることはいうまでもない。)の本来的性格にかんがみ、一般の行政処分の場合におけると同じく、特別の規定の存しない限り、行政処分時、すなわち査定時または審決時を基準とすべきものと解するのが相当であるからである(この理は、登録阻却要件を定めた商標法4条1項についても同様であって、同条3項がこれについての例外的規定を設けていることも、このように解することによってその合理性を首肯することができるとともに、同条におけるこのような例外的規定の設定の事実は、3条についての前叙のごとき解釈をすることの相当な所以を裏づけるものともいうことができよう。)もっとも、このように解した場合、かりに特許庁が不当に査定ないし審決を遷延することがあったとすると、その間に出願人が登録出願をしている商標について登録要件が欠けるに至り、その結果出願人が不当な不利益をこうむるという事態の発生が絶無であることを保しがたいが、このような不当な不利益は別途にこれが救済を受けうべく、かかる事態の発生のおそれがあることを理由に法律上何ら特別規定がないにもかかわらず、商標登録に関する処分に限り、通常一般の場合と例を異にし、行政処分すなわち商標登録についての要件の存否を行政処分の申請時すなわち商標登録の出願時を基準として判断決定するというごとき解釈は、当裁判所の到底採用しがたいところである。