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他人の名前等(商標法第4条第1項第8号) -商標登録ドットコム™

他人の氏名・名称等を含む商標(商標法第4条第1項第8号)

商標法第4条第1項第8号

「不正競争防止法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第51号)2023/6/14公布、未施行)に基づく記載にしております。(ただし審査基準は改正前の説明)

(1)他人の肖像
(2)他人の氏名(商標の使用をする商品・役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名)・名称
(3)他人の著名な雅号、芸名、筆名
(4)上記(1)~(3)の著名な略称
を含む商標は、登録されません。
ただし、その他人の承諾を得ているものを除きます。


他人の氏名を含む商標であって、政令で定める要件に該当しないものは、登録されません。

商標法4条1項8号
他人の肖像若しくは他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であって、政令で定める要件に該当しないもの

政令の要件は、具体的には、次の要件が規定されています。

 一商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること。
 二商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと。

「他人」とは、現存する者とし、また、外国人を含みます。
また、「著名」の程度の判断については、商品又は役務との関係が考慮されます。

「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕では、
「旧法との相違は『著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称』を加えたことである。その理由はこれらも氏名と同様に特定人の同一性を認識させる機能があるからであり、人格権保護の規定としてはこれらを保護することが妥当だからである。ただ、肖像あるいは戸籍簿で確定される氏名、登記簿に登記される名称と異なり、雅号等はある程度恣意的なものだからすべてを保護するのは行き過ぎなので、『著名な』ものに限ったのである。『氏名』はフルネームを意味する。したがって、氏又は名のうちいずれか一方のときは本号の適用はない。『これらの著名な略称』とは、氏名、名称、雅号、芸名及び筆名の略称の意味である。また、例えば、自己の名称と他人の名称とが同一の場合は、自己の名称についても本号の適用があり、したがって、不登録になる。なお、本号に関して、これは不正競争防止の規定であるから『その他人の承諾云々』の括弧書は不要であるとの説もあるが、立法の沿革としては前述のように人格権保護の規定と考えるべきであろう。本号には外国人の氏名、名称も含まれる。」
と解説されています。

商標審査基準抜粋

第4条第1項第8号(他人の氏名又は名称等)(PDF)

1.「他人」について

「他人」とは、自己以外の現存する者をいい、自然人(外国人を含む。)、法人のみならず、権利能力なき社団を含む。

2.「商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名」について(2024年4月~)

(1) 「商標の使用をする商品又は役務の分野」について
「商標の使用をする商品又は役務の分野」の判断にあたっては、人格権保護の見地から、必ずしも、当該商標の指定商品又は指定役務のみならず、当該他人に係る商品又は役務等との関連性をも勘案して判断する。

(2) 「需要者の間に広く認識されている」について
「需要者の間に広く認識されている」は、商標の使用をする商品又は役務の分野の相当程度の需要者に認識されている場合をいう。
なお、判断に際しては、人格権保護の見地から、その他人の氏名が認識されている地理的・事業的範囲を十分に考慮した上で、その商品又は役務に氏名が使用された場合に、当該他人を想起し得るかどうかに留意する。

3.「略称」について

(1) 法人の「名称」から、株式会社、一般社団法人等の法人の種類を除いた場合には、「略称」に該当する。なお、権利能力なき社団の名称については、法人等の種類を含まないため、「略称」に準じて取り扱うこととする。

(2) 外国人の「氏名」について、ミドルネームを含まない場合には、「略称」に該当する。

4.「著名な」略称等について

他人の「著名な」雅号、芸名、筆名又はこれら及び他人の氏名、名称の「著名な」略称に該当するか否かの判断にあたっては、人格権保護の見地から、必ずしも、当該商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは要しない。

5.「含む」について

他人の名称等を「含む」商標であるかは、当該部分が他人の名称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであるか否かにより判断する。
(例) 商標「TOSHIHIKO」から他人の著名な略称「IHI」を想起・連想させない。

6.自己の氏名等に係る商標について

自己の氏名、名称、雅号、芸名、若しくは筆名又はこれらの略称に係る商標であったとしても、「他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称」にも該当する場合(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であって商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものである場合には、当該他人の人格的利益を損なうものとして、本号に該当する。

7.「他人の承諾」について

「他人の承諾」は、査定時においてあることを要する。

8.「政令で定める要件」について

(1) 「商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること」について
例えば、出願商標に含まれる他人の氏名が、出願人の自己氏名、創業者や代表者の氏名、出願前から継続的に使用している店名等である場合は、相当の関連性があるものと判断する。
護の見地から、必ずしも、当該商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは要しない。

(2) 「商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと」について
例えば、他人への嫌がらせの目的や先取りして商標を買い取らせる目的が、公開されている情報や情報提供等により得られた資料から認められる場合は、不正の目的があるものと判断する。

拒絶理由通知(4条1項8号)への対応方法

(1)自己の氏名・名称等と他人の氏名・名称等が一致するときは、その他人の押印のある承諾書をもらい、これを意見書に添付して、その他人の承諾がある旨を説明する。

(2)他人の氏名・名称等の略称であるときは、その略称が著名でないことを証明する。

(3)他人の氏名であるときは、他人の氏名が「商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名」ではないことを主張する。(2024年4月~)

(4)他人の氏名であるときは、「政令で定める要件」を満たしていることを主張する。(2024年4月~)

審決例

「青木功」の文字は、出願人の氏名をあらわすものであるところ、これと同一氏名の他人多数が出願以前より所在し、その他人の承諾を得ていないものと認められるから、商標法4条1項8号に該当するとされた事例S52-17348

「CHANEL DE BEAUTE」の文字は、他人の名称「CHANEL」を含むものであり、その承諾を得ていると認められないとされた事例S44-9018

判決例

「SHINAGAWA INTER CITY」及び「品川インターシティ」の文字を2段書きした商標が、「INTER・CITY」、「インター・シティ」他の各引用商標とは類似せず、商標法第4条第1項第7号に該当しない、引用商標は著名ではないから商標法第4条第1項第8号にいう「他人の名称の略称」に該当しない、周知であるといえるためには、全国的でなくとも数県にまたがる程度の相当に広い範囲で多数の取引者・需要者に知られている必要があり、商標法第4条第1項第10号、第15号には該当しないとされた事例東京高昭平成13年(行ケ)第430号

「月の友の会」なる商標は、他人の商号である「株式会社月の友の会」から株式会社なる文字を除いた部分と同一のものであるが、その登録を受けることができないのは、「月の友の会」がその他人を表示するものとして著名であるときに限られるとされ、商標の無効が認められなかった事例最高裁昭和57年(行ツ)第15号

「SONYAN」の文字を横書きした商標は、全体が6文字のうち、語頭から4文字は、原告の造語表示「SONY」と一致し、著名な略称である「SONY」を容易に想起看取できるため、商標法4条1項8号に該当するとされた事例東京高昭和52年(行ケ)第133号

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