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周知商標の不正登録-拒絶理由

不正目的で出願された他人の著名商標

商標法第4条第1項第19号
他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標は、出願時に不正に目的で使用するものであるときは登録されません。
不正の目的とは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいいます。

「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕では、
「一九号は、平成八年の一部改正において、日本国又は外国で周知な商標と同一又は類似の商標を不正の目的で使用するものを不登録理由としたものである。すなわち、主として、外国で周知な商標について外国での所有者に無断で不正の目的をもってなされる出願・登録を排除すること、さらには、全国的に著名な商標について出所の混同のおそれがなくても出所表示機能の稀釈化から保護することを目的とするものである。本号で『周知性』を要件としたのは、使用に基づく一定以上の業務上の信用を獲得していないような商標であって未登録のものについて他人が出願した場合に、『不正の目的』があるからという理由だけでこの出願を排除することとするのは、商標の使用をする者の業務上の信用を維持することを目的とし(一条)、かつ先願登録主義を建前とする(八条一項)我が国法制の下では適切ではないからである。」
『不正の目的』の定義である『不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的』とは、図利目的・加害目的をはじめとして取引上の信義則に反するような目的のことをいう。その意義は、不正競争防止法一九条一項二号でいう『不正の目的』と同じである。ここで『不正競争の目的』とせず『不正の目的』としたのは、取引上の競争関係を有しない者による出願であっても、信義則に反するような不正の目的による出願については商標登録すべきでないからである。」
『不正の目的』があるとして、本号が適用される具体的な想定例は次のとおりである。
. 外国において周知な他人の商標と同一又は類似の商標について、我が国において登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせたり、外国の権利者の国内参入を阻止したり、国内代理店契約を強制したりする等の目的で、先取り的に出願した場合。
. 日本国内で商品・役務の分野を問わず全国的に知られているいわゆる著名商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声を毀損させる目的をもって出願した場合。
. その他日本国内又は外国で周知な商標について信義則に反する不正の目的で出願した場合。
以上のような事例については、従来、七号又は一五号に該当するとの解釈・運用を行ってきたものであるが、平成八年の一部改正では、このような規定の解釈・運用に頼らず、内外の周知・著名商標と同一又は類似の商標について『不正の目的』をもって使用をするものは登録しないことを明確化したものである。」
「二項は、一項六号に掲げる商標について当該団体自身が出願した場合には、他の商標登録要件が充たされる限り商標登録を受けられるという規定である。その理由は、一項六号の立法趣旨がその者の権威の尊重といった意味なのであるから団体自身が使用するのならば商標登録をしても一向に差し支えないばかりか、逆に団体が業務を行う場合には未登録のものであれ他人のその商標の使用を排除する必要があるから、商標登録を受けられるようにすることが必要だからである。なお、本項については、その者自身を表示する標章についてのみ商標登録を受けられるのであり、例えば、国を表示する標章について地方公共団体が商標登録を受けられると解釈することはできない。また『公益に関する事業であつて営利を目的としないものを行つている者』については、その者自身は公益的なものでなくても、事業そのものが公益を目的とするならばよい。」
「三項は、出願に係る商標が一項各号に掲げる商標に該当するかどうかの判断の時点は査定時であることを前提にして、特に一項八号、一〇号、一五号、一七号(平成六年の一部改正において追加)、一九号(平成八年の一部改正において追加)についてだけは査定時にこれらの規定に該当していても、商標登録出願時にこれらの規定に該当していなければよいという趣旨を表わしている。上記各号についてこのような救済規定を設けたのは、これら各号の場合には商標登録出願時に該当しないのに出願後これらの規定に該当するようになったものまで不登録にするのは酷に失するという理由による。」
と解説されています。

商標審査基準抜粋

第4条第1項第19号(他人の周知商標と同一又は類似で不正の目的をもって使用をする商標)(PDF)

1.「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」について
(1) 需要者の認識について
需要者の間に広く認識されているか否かの判断については、この基準第3の九(第4条第1項第10号)の1.を準用する。
(2) 「外国における需要者の間に広く認識されている商標」について
我が国以外の一の国において周知であることは必要であるが、必ずしも複数の国において周知であることを要しないものとする。また、商標が外国において周知であるときは、我が国における周知性は問わないものとする。

2.「同一又は類似の商標」について
「需要者の間に広く認識されている」他人の商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、その他人の商標と類似するものと判断する。
ただし、その他人の商標が既成語の一部となっていることが明らかな場合等を除く。
(例) 該当例は、この基準第3の十(第4条第1項第11号)の4.(2)(ア)②と同様である。

3.「不正の目的」について
(1) 考慮事由について
「不正の目的」の認定にあたっては、例えば、以下の①から⑥に示すような資料が存する場合には、当該事実を十分勘案するものとする。
① その他人の商標が需要者の間に広く知られている事実
② その周知商標が造語よりなるものであるか、又は、構成上顕著な特徴を有する ものであるか
③ その周知商標の所有者が、我が国に進出する具体的計画(例えば、我が国への輸出、国内での販売等)を有している事実
④ その周知商標の所有者が近い将来、事業規模の拡大の計画(例えば、新規事業、新たな地域での事業の実施等)を有している事実
⑤ 出願人から商標の買取りや代理店契約締結等の要求を受けている事実、又は出願 人が外国の権利者の国内参入を阻止しようとしている事実
⑥ 出願人がその商標を使用した場合、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸 引力等を毀損させるおそれがあること
(2) 不正の目的をもって使用するものと推認する場合
以下の①及び②の要件を満たすような商標登録出願に係る商標については、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うものとする。
① 一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること。
② その周知な商標が造語よりなるものであるか、又は、構成上顕著な特徴を有す るものであること。

4.本号該当性の判断について

本号該当性については、周知度、商標の同一又は類似性の程度、不正の目的のそれぞれの判断要素を総合的に勘案して判断する。
(例) 本号に該当する場合
① 外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの。
② 日本国内で全国的に知られている商標と同一又は類似の商標について、出所の 混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したもの。

●対応方法

(1)他人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標ではない旨の反論をする。

(2)他人の周知商標と同一又は類似の商標ではない旨の反論をする。

(3)出願時に不正に目的で使用するものでなかったことを立証する。

判決例

「SHINAGAWA INTER CITY」及び「品川インターシティ」の文字を2段書きした商標が、「INTER・CITY」、「インター・シティ」他の各引用商標とは類似せず、商標法第4条第1項第7号に該当しない、引用商標は著名ではないから商標法第4条第1項第8号にいう「他人の名称の略称」に該当しない、周知であるといえるためには、全国的でなくとも数県にまたがる程度の相当に広い範囲で多数の取引者・需要者に知られている必要があり、商標法第4条第1項第10号、第15号には該当しないとされた事例東京高昭平成13年(行ケ)第430号

「iOffice2000」の商標は、マイクロソフトの商標である「Office2000」の著名性にただ乗りする意図で、不正の目的で出願したものとされた事例東京高平成13年(行ケ)205号

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