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使用しない商標(商標法第3条第1項柱書) -商標登録ドットコム™

自己の業務に使用しないことが明らかな商標等(商標法第3条第1項柱書)

第3条第1項柱書

「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をしないことが明らかであるときは、登録されません。

1.出願人の業務の範囲が法令上制限されているために、出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合

2.指定商品又は指定役務に係る業務を行うことができる者が法令上制限されているため、出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合

3.団体商標であって、当該団体及びその構成員の双方が使用をしないもの、その構成員が使用をしないもの。

4.団体商標、立体商標の出願書類不備。

5.動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標、位置商標とは認められないもの。

「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕」では、
「登録主義においては、現実に商標の使用をしていることを商標登録の要件とすると、折角使用をしてその商標に信用が蓄積しても、出願した場合に不登録理由があることによって不登録となるような事態が予想されるから、あらかじめ使用者に将来の使用による信用の蓄積に対して法的な保護が与えられることを保証すべきであり、そのためには現実にその商標の使用をする予定のある者には、近い将来において保護に値する信用の蓄積があるだろうと推定して事前に商標登録をすべきだというのである。そして、一定期間以上使用をしなければ事後的に商標登録を取り消せばよいというのである。すなわち、両者とも法的な保護の対象が商標の使用によってその商標に化体した業務上の信用である点においては一致するのだが、使用主義では現実にその信用がなければならないとするのに対して、登録主義においては必ずしも現実に存在する信用のみならず未必的に可能性として存在する信用も保護の対象として考えてもよいではないかというのである。」
「商標登録の対象となる商標は自ら使用をしているもの、あるいは使用をしようとするものに限るのか、他人に使用をさせるものでもよいのかという問題については次のように考えられる。旧法は、商標権の譲渡をその営業とともにする場合に限ったり、使用許諾制度を認めていない等の理由から自ら使用をする意思がなければならないということができるのであるが、現行法では、商標権の自由譲渡を認め、使用許諾制度を採用したこと等から必ずしも旧法と同様に考えられない。しかし、当初から自ら使用をするものでないものに排他独占的な権利を設定するのは妥当ではない反面、いったん権利が設定された以上はその処分は一つの私的財産権として私的自治に委せた方がよいとの見解から、現行法においても商標登録は『自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標』に限っているのである。」
と解説されています。

商標審査基準抜粋

第3条第1項全体(PDF)
弟3条第1項柱書き(PDF)

判断時期について

本項に該当するか否かの判断時期は、査定時とする。

なお、拒絶査定不服審判請求がなされた場合の判断時期は、審決時である。

1.「自己の業務」について

「自己の業務」には、出願人本人の業務に加え、出願人の支配下にあると実質的に認められる者の業務を含む。
(例)
① 出願人がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社の業務
② ①の要件を満たさないが資本提携の関係があり、かつ、その会社の事業活動が事実上出願人の支配下にある場合の当該会社の業務
③ 出願人がフランチャイズ契約におけるフランチャイザーである場合の加盟店(フランチャイジー)の業務

2.「使用をする商標」について

(1) 「使用をする」とは、指定商品又は指定役務について、出願人又は出願人の支配下にあると実質的に認められる者(以下「出願人等」という。)が、出願商標を現に使用している場合のみならず、将来において出願商標を使用する意思(以下「使用の意思」という。)を有している場合を含む。

(2) 指定役務が、例えば、次のような場合には、商標を使用できない蓋然性が高いものとして、本項柱書により登録を受けることができる商標に該当しないと判断する旨の拒絶理由の通知を行い、出願人が指定役務を行い得るか確認する。
(例)
指定役務に係る業務を行うために法令に定める国家資格等を有することが義務づけられている場合であって、願書に記載された出願人の名称等から、出願人が、指定役務に係る業務を行い得る法人であること、又は、個人として当該国家資格等を有していることのいずれの確認もできない場合。

(3) 指定商品又は指定役務について、(ア)又は(イ)に該当するときは、商標の使用及び使用の意思があるかについて合理的な疑義があるものとして、本項柱書により登録を受けることができる商標に該当しないと判断する旨の拒絶理由の通知を行い、下記3.に従い商標の使用又は使用の意思を確認する。
ただし、出願当初から、出願人等における商標の使用又は使用の意思があることが確認できる場合を除く。
(ア) 第2条第2項に規定する役務(以下「小売等役務」という。)について
① 「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「総合小売等役務」という。)に該当する役務を個人(自然人をいう。)が指定してきた場合。
② 総合小売等役務に該当する役務を法人が指定してきた場合であって、「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をするものであるか否かについて調査を行っても、出願人等が総合小売等役務を行っているとは認められない場合。
③ 類似の関係にない複数の小売等役務を指定してきた場合。
(イ) (ア)を除く商品・役務の全般について
1区分内での商品又は役務の指定が広い範囲に及んでいる場合。

3.「使用をする商標」であることの確認について

(1) 「使用をする商標」であることは、指定商品又は指定役務の各区分において類似群(類似商品・役務審査基準における類似群をいい、類似関係にあると推定する商品又は役務をグルーピングしたものを指す。)ごとに明らかにする必要がある。

(2) 出願人等における商標の使用又は使用の意思については、商標の使用の前提となる指定商品又は指定役務に係る業務を行っているか否か又は行う予定があるか否かを通じて確認する。

(3) 業務を行っていることの確認について
(ア) 総合小売等役務に該当する役務を行っているか否かは、次の事実を考慮して総合的に判断する。
① 小売業又は卸売業を行っていること。
② その小売等役務の取扱商品の品目が、衣料品、飲食料品及び生活用品の各範疇にわたる商品を一括して1事業所で扱っていること。
③ 衣料品、飲食料品及び生活用品の各範疇のいずれもが総売上高の10%~70%程度の範囲内であること。
(イ) 指定商品又は指定役務に係る業務を出願人等が行っていることは、例えば、次の方法により確認する。
① 出願人等の取扱商品が記載されたカタログ、ちらし等の印刷物
② 出願人等が運営する店舗及び取扱商品が分かる店内の写真
③ 出願人等の取扱商品が分かる取引書類(注文伝票、納品書、請求書、領収書等)
④ 出願人等の業務内容、取扱商品が紹介されている新聞、雑誌、インターネット等の記事
⑤ (総合小売等役務の場合)小売等役務に係る商品の売上高が判る資料

(4) 業務を行う予定があることの確認について
(ア) 出願人等が出願後3~4年以内(登録後3年に相当する時期まで)に商標の使用を開始する意思がある場合に、指定商品又は指定役務に係る業務を出願人等が行う予定があると判断する。
(イ) 指定商品又は指定役務に係る業務を出願人等が行う予定があることの確認のためには、商標の使用の意思を明記した文書及び予定している業務の準備状況を示す書類の提出を求める。
なお、商標の使用意思が明確でない場合や当該予定している業務の準備状況に疑義がある場合には、必要に応じその事業の実施や計画を裏付ける書類の提出を求める。

商標審査便覧 41.100 03 商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用について[PDF]

拒絶理由通知(3条1項柱書)への対応方法

(1)法令上の認可・許可を得られる見込みがあるときは、その旨を説明する。

(2)法令上の認可・許可を得られる出願人に名義変更する。

(3)指定商品・指定役務について商標の使用をすることを書面の提出により証する。

(3)その他の不備を解消する。

審決例

税理士でなく、かつ、その資格を得ることができない法人である出願人が、業として行うことが禁止されている役「税務相談,税務代理」を指定役務に含むときは、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないとして、これを削除した場合に登録された事例2003-9785

銀行業を業務とする者は、法律に定められた以外の他の業務を営むことができないので、「自己の業務に係る商品について使用」をするとは認められないとされた事例S57-25974

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