商標法の趣旨に反する重複登録
第3条・第64条の趣旨に反する商標登録出願
同一人が、同一の指定商品・指定役務について、同一の商標を出願した場合には、国際登録を除く後願について「商標法第3条の趣旨に反する」として、登録が認められません。
防護標章登録出願、防護標章の更新登録出願についても、同一人が、同一の指定商品・指定役務について、同一の標章を出願した場合には、後願について「商標法第64条の趣旨に反する」として、登録が認められません。
拒絶理由の概要
同一人が、同一の指定商品又は指定役務に係る同一の商標を出願した場合
同一人が、同一の指定商品・指定役務について、同一の商標を出願した場合には、同一の商標登録が併存してしまうことから、国際登録を除く後願について「商標法第3条の趣旨に反する」として、登録が認められません。
同一の商標には、縮尺のみ異なるものも含まれます。
同一の指定商品・指定役務には、指定商品または指定役務とがすべて同一である場合のほか、先願または既登録商標に係る指定商品・指定役務に含まれている場合も含まれます。
同一人が、同一の指定商品又は指定役務に係る同一の標章を防護標章登録出願、防護標章の更新登録出願した場合
防護標章登録出願、防護標章の更新登録出願についても、同一人が、同一の指定商品・指定役務について、同一の標章を出願した場合には、後願について「商標法第64条の趣旨に反する」として、登録が認められません。
趣旨
商標法は第15条において拒絶理由を限定的に列挙しています。
(拒絶の査定)
第十五条 審査官は、商標登録出願が次の各号のいずれかに該当するときは、その商標登録出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一 その商標登録出願に係る商標が第三条、第四条第一項、第七条の二第一項、第八条第二項若しくは第五項、第五十一条第二項(第五十二条の二第二項において準用する場合を含む。)、第五十三条第二項又は第七十七条第三項において準用する特許法第二十五条の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
二 その商標登録出願に係る商標が条約の規定により商標登録をすることができないものであるとき。
三 その商標登録出願が第五条第五項又は第六条第一項若しくは第二項に規定する要件を満たしていないとき。
商標登録権者が、商標の出願時には使用を予定していなかった商品・役務について、登録後に追加したいと考えることもあります。
そこで先願の登録商標と同一の指定商品・役務を含め、必要な商品・役務を一つの登録にまとめるため、新たな出願をする必要があります。
しかし同一商標が重複して併存することとなった場合には、一方の権利の移転により出所混同の問題が生じたり、併存する複数の権利を別々の他人に使用許諾できてしまうなどの、弊害が生じる可能性もあります。
そこで従来、同一人が同一商標について、同一の商品・役務を指定して出願した場合には後願について「商標法制定の趣旨に反する。」との理由で拒絶するものとされてきました。
しかし商標登録出願の拒絶理由は、商標法第15条に限定列挙されたものに限られるため、審査での取り扱いは、登録要件の一般条項である「商標法第3条の趣旨に反する」「商標法第64条の趣旨に反する」として拒絶されることが、商標審査基準、商標審査便覧に明示されています。
商標審査基準抜粋
第18 その他 (PDF)
2.同一人が、同一の指定商品又は指定役務に係る同一の商標又は標章を出願した場合に ついて
(1) 同一人が同一の商標(縮尺のみ異なるものを含む。)について、その指定する商品又は役務がすべて同一の商標登録出願をしたと認められるときは、第68条の10の規定に該当する場合を除き、原則として、後願について「商標法第3条の趣旨に反する。」との拒絶の理由を通知するものとする。
(2) 商標権者が登録商標と同一の商標(縮尺のみ異なるものを含む。)について同一の商品又は役務を指定して商標登録出願したときも、同様とする。
(3) 商標権者が、同一の登録商標に基づき、その指定する商品又は役務がすべて同一の防護標章登録出願をしたと認められるときは、原則として、後願について「商標法第64条第1項及び第2項の趣旨に反する。」との拒絶の理由を通知するものとする。
(4) 防護標章の更新登録出願をすることができる期間内に防護標章登録に基づく権利を有する者から同一の登録防護標章についてその指定する商品又は役務がすべて同一の防護標章の更新登録出願があったときも、同様とする。
商標審査便覧
41.01 商標法第3条の趣旨に反する場合の審査運用について (PDF) (PDF)
上記基準における、本願商標に係る指定商品又は指定役務が、引用する先願未登録商標又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務と「同一の指定商品又は指定役務」であるかは、次のとおり判断する(アルファベットの大文字は包括表示を、小文字は個別表示(大文字で表したものに包含される表示)を表す)。
1.「同一の指定商品又は指定役務」であると判断する場合
指定商品又は指定役務の表示が同一であれば、「同一の指定商品又は指定役務」であると推定して判断する。
(1)本願に係る指定商品又は指定役務と引用した先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務とがすべて同一である場合。

(2)本願に係る指定商品又は指定役務が引用した先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務に含まれている場合(概念的に含まれている場合は除く)。

(解説)
(2)は、先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務の一部を指定して新たに出願したものである。このような場合には、後願のような新たな出願をしなくとも、先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務から不要な指定商品又は指定役務を放棄すれば同様の結果が得られるため、「同一の指定商品又は指定役務」であると判断する。
2.「同一の指定商品又は指定役務」であると判断しない場合

(解説)
本願に係る指定商品又は指定役務のうちの一部が引用した先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務と同一である場合、引用した先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務が包括表示であり、本願に係る指定商品又は指定役務がそれに含まれる個別表示の場合には、「同一の指定商品又は指定役務」とは判断しない。
3.指定商品又は指定役務が実質的に異なると判断できる場合について
1.に該当する場合であっても、出願人から、本願の指定商品又は指定役務が、先願又は既登録商標に係る指定商品又は指定役務とは国際分類の版が異なること等により、実質的に商品・役務の内容が相違するとの主張がなされ、その事実が認められる場合には、「同一の指定商品又は指定役務」であるとの推定が覆ったものとして判断できるため、当該拒絶理由は解消する。
拒絶理由通知(3条1項柱書)への対応方法
(1)手続補正により、同一の指定商品・指定役務を削除する。
同一の指定商品・指定役務を手続補正書により削除して、先願の登録と、後願の出願とが同一の商品・役務を指定しないこととなる場合には、商品・役務の範囲が異なる別々の商標権として併存させる。
(2)先願の登録について商標権の放棄等をし、後願の出願を登録させる。
先願の登録について、放棄による商標権抹消登録申請書(または商標権に係る指定商品・指定役務の一部放棄)を提出し、商標権の放棄をしたうえで(先願が出願中のときは出願取下書)、後願の出願を登録させる。
(3)後願の出願取り下げを行い、先願の商標権とは同一でない商標に変更して、再度出願する。
後願について、出願取下書により出願を取り下げたうえで、書体・色彩その他を変更した、先願の商標権とは同一でない商標に変更し、再度出願する。
(4)先願が包括表示であり、後願がそれに含まれる個別表示である場合には、意見書でその旨を主張する。
後願の指定商品・指定役務の一部が先願の指定商品・指定役務と同一である場合、引用した先願または既登録商標の指定商品・指定役務が包括表示であり、後願の指定商品・指定役務がそれに含まれる個別表示の場合には、「同一の指定商品又は指定役務」とは判断されないため、意見書でその旨を主張し説明する。
(5).指定商品・指定役務が実質的に異なると判断できる場合には、意見書でその旨を主張する。
後願の指定商品・指定役務の一部が、先願または既登録商標の指定商品・指定役務とは国際分類の版が異なること等により、実質的に商品・役務の内容が相違すると考えられる場合には、「同一の指定商品・指定役務」であるとの推定が覆ったものとして判断できるため、意見書でその旨を主張し説明する。
審決例
●出願人所有の登録商標と同一であり、同一の指定商品を含む出願について、補正により登録商標の指定商品において同一のものを含まないものとなったため、商標法制定の趣旨に反するとの拒絶理由は解消したとされた事例 2008-27540

