「清里高原」の文字は役務の提供地を表示するものとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成10-15795
【審決日】
【事案】
本願商標は、「清里高原」の文字を横書きしてなり、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、平成8年6月6日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、山梨県北西部八ヶ岳南東麓の高原地帯をいう『清里高原』の名称である文字よりなるから、この高原はペンション等様々な休養施設、飲食物の提供施設を有し、営業をしていることからして、これを指定役務に使用した場合、役務の提供地を表示するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として本願を拒絶したものである。
【審決における判断】
本願商標は、「清里高原」の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、その構成中前半の「清里」の文字は、例えば、(株)三省堂発行「コンサイス地名辞典」第3版、(株)岩波書店発行「広辞苑」第5版及び(株)昭文社発行「マップルガイド20信州」1997年等に掲載されており、これらの掲載内容を総合すると、「清里」は、八ヶ岳中信国定公園に属する山梨県北西部八ヶ岳南東麓の高原に位置し、高冷地野菜栽培と酪農が盛んで避暑地としても有名なことが確認できるところである。そして、清里のシンボルでもある清泉寮や美し森等の観光名所はもとより、多くのレストラン・喫茶店が紹介されており、近年当該地が観光、行楽地として大きく発展し、周辺にはレストラン・喫茶店を初め、別荘、ホテル、ペンション等も多数存在しているところである。
また、後半の「高原」の文字は、海面からかなり高い位置にあって、平らな平面をもち、比較的起伏が小さく、谷の発達があまり顕著でない山地を指称する語として広く親しまれているものである。
そうとすれば、本願商標は、「清里周辺の高原地帯」を表したものといわなければならない。
現に、「清里高原」の文字は、同地域を指す語として、(株)三省堂発行「大辞林」第2版に掲載されており、また、清里高原(高根町)観光案内のホームページ(http://www1e.mesh.ne.jp/kiyosato/kiyosat2.htm)、清里観光振興会のホームページ(http://www.comlink.ne.jp/~sinkokai/)、(株)昭文社発行「ス-パーマップル3関東道路地図」1999年及び実業之日本社発行「ブルーガイド・ムック首都圏東京200kmガイド&マップウィークエンドナビゲーション」等に使用されているし、また、中央自動車道長坂ICを降りてから野辺山高原に至る有料道路の名称にも「清里高原有料道路」と命名され、該文字が使用されているところである。
そして、該地域は、前述のとおり、著名な観光、行楽地として発展し、これに伴いレストラン・喫茶店等本願指定役務である「飲食物の提供」を業とする者が少なからず存在していること明らかである。
してみれば、「清里高原」の文字が広く使用されており、かつ、該地域においてレストラン、喫茶店等の飲食物の提供が広く行われていると認められる以上、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者は、役務の提供の場所を表す語として理解、認識するに止まり、自他役務の識別機能を有しないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号に該当するとした原査定は妥当なものであって、取り消す限りではない。
なお、請求人は、過去における登録例、審決例を多数挙げ、本願商標は、自他役務の識別機能を有する旨主張しているが、請求人主張の事例が指定商品に係るものであるのに対し、本願商標は指定役務に係るものであるから、商品と役務という相違のあることは明かである。また、商標登録をすべきものとされた時が本願商標と異なることも当然であり、本願がこれら事例に左右されなければならない特別の事情も見い出せないものであるから、請求人の該主張は採用することができない。
よって、結論のとおり審決する。