カッターナイフの形状からなる商標が、キャップ形状を含め指定商品の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標とはいえず、しかし商品の形状を普通に用いられる方法で表示した域を出ない第3条第1項第3号に該当するものであるが、形状に特異性のある本願商標を使用した結果、自他商品識別力を獲得するに至っているとして、商標法第3条第2項の要件を具備するとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2011-3475
【審決日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【事案】
本願商標は、別掲1ないし5のとおりの構成よりなり、第16類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年1月14日に登録出願、その後、指定商品については、当審における同23年9月8日付けの手続補正書により、第8類「カッターナイフ」と補正されたものである。

【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、カッターナイフの一形態と認識されるにとどまる格別特異とは認め難い立体的形状を普通に用いられる方法で表してなるから、これを本願の指定商品「カッターナイフ」に使用するときは、単に商品の形状について普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。なお、出願人は、使用実績を考慮すると、本願商標に接した需要者はこれを出願人を示す出所標識として認識しないと断ずることはできない旨主張し資料を提出するが、本願商標がその指定商品「カッターナイフ」について使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識されていると認められる実際に使用している商標並びに商品についての使用開始時期、使用期間、使用地域、譲渡の数量(売上高等)、広告宣伝等による事実の証左が足らず、本願商標がその指定商品について使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものということはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。
(1)商標法第3条と立体商標における商品等の形状について
ア 商標法第3条第1項第3号は、「その商品の・・・形状(包装の形状を含む。)・・・を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」は、商標登録を受けることができない旨を規定し、同条第2項は、「前項第三号から第五号までに該当する商標であつても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる」旨を規定している。その趣旨は、同条第1項第3号に該当する商標は、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものとして、商標登録の要件を欠くが、使用をされた結果、自他商品識別力を有するに至った場合に商標登録を認めることとしたものである。
商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定するが(同法第2条第1項、第5条第2項)、同法第4条第1項第18号において、「商品又は商品の包装の形状であつて、その商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標」は、同法第3条の規定にかかわらず商標登録を受けることができない旨を規定していることに照らすと、商品の立体的形状のうち、その機能を確保するために不可欠な立体的形状については、特定の者に独占させることを許さないものとしたものと解される。
イ 商品の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとする等の目的で選択されるものであって、直ちに商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものではない。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識するのであって、商品等の出所を表示し、自他商品を識別するために選択されたものと認識する場合は多くない。
そうすると、客観的に見て、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されると認められる商品等の形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当することになる。
また、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として特定人に当該形状の独占使用を認めることは、公益上適当でない。
よって、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、同種の商品等について、機能又は美感に資することを目的とする形状の選択であると予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、同号に該当するものというべきである。
ウ 他方、商標法第3条第2項は、商品の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない立体的形状については、それが商品の機能を効果的に発揮させ、商品の美感を追求する目的により選択される形状であったとしても、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられ、又は使用をされた結果、その形状が自他商品識別力を獲得した場合には、商標登録を受けることができるものと規定している(平成22年(行ケ)第10366号、知的財産高等裁判所平成23年4月21日判決言渡し参照)。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号の該当性について
ア 本願商標の構成について
本願商標は、別掲1ないし5に示すとおり、カッターナイフの一種と看取される形状からなるところ、大別して黒色のホルダー部及び黄色のキャップ部からなるものである。
しかして、当該ホルダー部の形状は、正面(別掲1)から観察するとキャップ部から刃を繰り出す先端方向に向けてテーパー状に延びる黒色のホルダー部分と、当該ホルダー部に挟みこまれるように保持される刃部と、当該刃部と連結され、刃部をホルダー部の先端部から繰り出し、かつ、収納するためにスライドさせる白色の操作部から構成されている。
また、当該キャップ部は、正面(別掲1)から見ると、欧文字「T」を右側に90度倒し、その縦棒の付け根をやや上方にずらしたような形状からなり、当該縦棒がホルダー部に挟み込まれるようにはめ込まれており、当該「T」字形状の横棒は、ホルダー部を正面(別掲1)から観察すると、下底が上底よりも長い台形となっており、前記のホルダー部へのはめ込み部分以外の端部が丸みを帯びているという特徴を有してなるもの(以下、「本願キャップ形状」という。)である。
さらに、本願商標は、前記のとおり、黒色のホルダー部と黄色の本願キャップ図形という彩色がなされ、その色彩上のコントラストから、本願キャップ図形は、需要者の目につきやすいものである。
加えて、本願キャップ形状を含め、本願商標の形状は、その指定商品の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなるものとは、言い難いものである。
イ 本願商標の識別性について
本願の指定商品は、前記1のとおり「カッターナイフ」である。
そうすると、本願商標は、上記アのとおり、本願キャップ形状という特徴を有しているものではあるが、本願商標の構成を全体としてみた場合、カッターナイフの一種と容易に看取、認識されるものであり、本願の指定商品「カッターナイフ」の一形態と認識されるものといえる。
加えて、請求人の提出に係る証拠(第10号証(審決注:原審において提出された資料1ないし10は、第1号証ないし第10号証と読み替えた。また、特に断らない限り、書証番号のみ記載するときは、その枝番号の書証を含むものとする。以下同じ。)によれば、本願の指定商品の分野において採択される商品の形状からみて、本願商標の形状は、カッターナイフの形状と需要者に容易に認識されるものといわなければならない。
そうとすると、本願商標は、本件審決時を基準として、客観的に見れば、本願キャップ形状が、特徴的なものであるとしても、いまだ商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当であり、需要者が指定商品の形状として一般に認識しうるものというべきである。
ウ 請求人の主張について
(中略)
エ 小括
以上アないしウからすると、本願商標は、その指定商品との関係において、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表したにすぎないものであるから、本願商標は、商標法第3条第1項第3項に該当する。
(3)本願商標の商標法第3条第2項の該当性について
ア 商標法第3条第2項の趣旨
商標法第3条第2項は、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として同条第1項第3号に該当する商標であっても、使用により自他商品識別力を獲得するに至った場合には、商標登録を受けることができることを規定している。
そして、立体的形状からなる商標が使用により自他商品識別力を獲得したかどうかは、(ア)当該商標の形状及び当該形状に類似した他の商品等の存否、(イ)当該商標が使用された期間、商品の販売数量、広告宣伝がされた期間及び規模等の使用の事情を総合考慮して判断すべきである。なお、使用に係る商標ないし商品等の形状は、原則として、出願に係る商標と実質的に同一であり、指定商品に属する商品であることを要するが、機能を維持するため又は新商品の販売のため、商品等の形状を変更することもあり得ることに照らすと、使用に係る商品等の立体的形状が、出願に係る商標の形状と僅かな相違が存在しても、なお、立体的形状が需要者の目につきやすく、強い印象を与えるものであったか等を総合勘案した上で、立体的形状が独立して自他商品識別力を獲得するに至っているか否かを判断すべきである(前掲平成22年(行ケ)第10366号、知的財産高等裁判所平成23年4月21日判決言渡し参照)。
この場合、立体的形状を有する使用商品にその出所である企業等の名称や文字商標等が付されていたとしても、そのことのみで上記立体的形状について同法第3条第2項の適用を否定すべきではなく、上記文字商標等を捨象して残された立体的形状に注目して、独自の自他商品識別力を獲得するに至っているかどうかを判断すべきである(平成22年(行ケ)第10169号、知的財産高等裁判所平成22年11月16日判決言渡し参照)。
イ 本願商標の商標法第3条第2項該当性
以下、本願商標が上記アの観点に照らして、商標法第3条第2項に該当するか否か検討する。
(ア)本願商標の形状及び本願形状に類似した他の商品等の存否
a 上記(2)のとおり、本願商標は、その指定商品であるカッターナイフの立体的形状に係るものであり、本願商標は、その指定商品の形状として通常採用されている範囲を大きく超えるものとまでは認められず、需要者において商品の形状として一般に認識されるものというべきである。
しかしながら、本願キャップ形状のような特徴を有するカッターナイフは、同種の商品には見当たらない(第10号証)。
してみれば、前記(2)アのとおりの本願キャップ形状を有する本願商標は、ほかの同種商品と見分けられる一定の特異性を有しているということができるものである。
(イ)本願商標の使用の実情
a 請求人は、1970年(昭和45年)に、「オルファ180ブラック」、「ブラック180」の品名で、本願商標に係るカッターナイフを発売し、その後、一貫して本願商標と同一の形状及び色彩の商品が継続して販売されているところ、その使用期間は、本件審決時まで40年以上の長きにわたるものである(第1号証、第2号証及び第11号証)。
また、本願商標に係る商品は、1971年(昭和46年)8月4日付けでグッドデザイン賞を受賞し、その後、昭和62年度のロングライフデザイン賞を1987年(昭和62年)10月29日付けで受賞している(第3号証)。
b 本願商標に係るカッターナイフは、2000年ないし2010年の11年間に579万本以上が卸売業者に取引されており(第11号証(審決注:第11号証の15に係る株式会社フォーデックは、第11号証の2に係るマンモスグループの会員であるから(第12号証の2)、11号証の15に係る取引数は、取引本数の総計から除外した。)、その卸先の販売店も全国各地の店舗に及んでいる(第12号証)。
また、請求人は、本願商標に係るカッターナイフを1970年(昭和45年5月)より2009年12月31日までに、国内のみで累計4800万本以上、世界を含めると1億本以上を売上げており、2009年においてもその売上げは、1億4千万円以上(第4号証)であること、また、カッターナイフの分野における請求人の市場占有率は50%(約27億円)(第7号証の1第4頁、第13号証及び第14号証)であるところ、請求人は、50種類以上のカッターナイフを製造、販売している。かかる状況のもとで、本願商標に係るカッターナイフが毎年1.5億円規模で販売されていることからすれば、本願商標に係るカッターナイフは、請求人の代表的な商品である旨主張するところ、これに反する事実は見当たらない。
)。
c 本願商標に係るカッターナイフは、たびたび新聞、雑誌、書籍、インターネットウェブサイトにカッターナイフを代表する商品として紹介されている(第5号証及び第6号証、第7号証の1ないし4、第16号証ないし第18号証、第20号証、第22号証、第23号証ないし第33号証)ところ、例えば、その一部を摘示すると「世界中で使われている小型カッターのベストセラー。」(第5号証の3)、「同社の最大のヒット商品『ブラック』は、七○年に発売されて以来、その姿を変えないまま、海外百五か国を含めて累計八千四百万本を売り、現在も年間三百六十万本のペースで生産を続けている。」(第6号証の1)、「もうひとつの定番は、1970(昭和45)年に発売された『ブラックS型』。こちらもロングセラー商品で、世界中に輸出されている。販売本数は1億本以上。この2本のうちどちらか、あるいは両方を会社や家庭で使っているという人は多いはずだ。」(第7号証の1)、「カッターナイフといえばこのブラックS型をイメージする方は多いのではないでしょうか。」(第7号証の2)、「愛着があるのがオルファのカッターナイフ。・・・黒と黄色のデザインが好き。」(第7号証の4)、「世界中で愛用されているロングセラーの小型カッター。」(第20号証)、「『ブラックS型』はグッドデザインのロングライフ賞も受賞した小型カッターの超定番」(第23号証)、「小さなボディのロングセラー。」(第24号証)及び「世界中に輸出されている人気商品であり、1億本を越える販売本数を記録しているカッターナイフ界の王様です。」(第26号証)等の記載が見受けられる。
(ウ)小括
前記のとおり、本願キャップ形状が、他に見当たらない特異性を有し、1970年(昭和45年)年以降40年以上にわたって本件審決時まで、本願商標と同一の形状及び色彩からなる商品「カッターナイフ」が一貫して製造、販売され、需要者の強い支持を得ているロングセラーであることに照らすならば、本願商標についての「OLFA」、「オルファ」等の平面的な商標の使用及び「ブラック180」、「ブラック(S型)」の品名の表示を考慮してもなお、当該平面的な商標等を捨象して、前記(2)アのとおりの色彩と結合した立体的形状に係る本願商標は、自他商品識別力を獲得するに至っており、本願の指定商品「カッターナイフ」の需要者が、本願商標に接するときは、請求人に係るカッターナイフであることを認識することができるものというのが相当である。
してみれば、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するというべきである。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、その指定商品について、商標法第3条第2項の要件を具備するものであるから、同条第1項第3号の規定に該当するとして、本願を拒絶すべき限りでない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
「タカラヅカ」の文字を標準文字からなる商標は、役務の提供の場所「兵庫県南東部の市」を普通に用いられる方法で表示したものと認識され、「宝塚歌劇(団)」の略称「タカラヅカ」の文字が使用されていたとしても宣伝広告の頒布数、頒布範囲などが具体的に確認できないため、需要者の間で広く知られていたとはいえない、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるとはいえないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2021-17467
【審決日】令和5年11月30日(2023.11.30)
【事案】
本願商標は、「タカラヅカ」の文字を標準文字で表してなり、第41類に属する願書記載のとおりの役務(以下「原審役務」という。)を指定役務として、令和2年5月27日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年4月26日付けで拒絶理由が通知され、同年6月8日に意見書が提出されたが、同年9月14日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年12月17日に拒絶査定不服審判が請求され、原審役務については、同日付けの手続補正書により、別掲1のとおりの指定役務(以下「当審補正役務」という。)に補正されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、本願商標は「兵庫県南東部の市」の意味を有する語である「宝塚」の語を片仮名表記したものと容易に看取できる「タカラヅカ」の文字を標準文字で表してなるから、これを、原審役務に使用しても、本願商標に接する需要者は、宝塚市において提供される役務であること、すなわち、単に役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示したものとして認識するから商標法第3条第1項第3号に該当し、提出された証拠によっては、同法第3条第2項に該当するものではなく、また、原審役務中の宝塚市において提供される役務以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 商標法第3条第1項第3号の意義
商標法第3条第1項第3号所定の商標が登録要件を欠くとされているのは、商品の「産地、販売地、品質」等又は役務の「提供の場所、質、提供の用に供する物」等を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる」商標は、商品又は役務の特性を表示記述する標章であることから、取引者、需要者によって、専ら当該商品又は役務の性質を説明するものとして認識されるのが通常であり、自他商品又は役務の識別標識として認識されるとは考え難いこと、そのような標章は、多くの場合、当該商品又は役務に係る取引一般において、取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能するものであるから、誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり、特定人の独占的使用を認めると、円滑な取引を阻害するなど公益上の問題が生じるおそれがあることによるものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・集民126号507頁参照)。
イ 本願商標が商標法第3条第1項第3号の該当性について
本願商標は、上記1のとおり、「タカラヅカ」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、「兵庫県南東部の市。」(広辞苑第7版)の意味を有する「宝塚」の語を片仮名表記したものである。

兵庫県宝塚市 https://www.city.takarazuka.hyogo.jp/
そして、別掲2の1のとおり、「宝塚」の文字は、前掲書以外の一般的な国語辞典及び地名辞典においても地名を表示する語として載録され、また、別掲2の2のとおり、「宝塚」の文字が、地名を表示する語として使用されている実情がある。
そうすると、本願商標を、当審補正役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該役務が、「兵庫県南東部の市である宝塚市において提供される役務」であること、すなわち、役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにすぎない。
そして、役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標は、役務の特性を表示記述する標章であることから、取引者、需要者によって、専ら当審補正役務の性質を説明するものとして認識されるのが通常であり、自他役務の識別標識として認識されるとは考え難く、また、そのような標章は、多くの場合、当審補正役務に係る取引一般において、取引の内容を説明するために必要かつ適切な表示として機能するものであるから、誰もが自由に使用できるようにしておく必要があり、特定人に独占使用させることは、円滑な取引を阻害するなどの問題が生じるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第16号該当性について
本願商標は、上記(1)イのとおり、当審補正役務中の「宝塚市において提供される役務以外の役務」に使用しても、役務の提供の場所を普通に用いられる方法で表示したものと認識するにすぎないものである。
また、本願商標を当審補正役務中の「宝塚市において提供される役務以外の役務」に使用したとしても、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるとはいえない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
(3)本願商標の使用による自他役務の識別性について
請求人は、意見書、審判請求書(以下「請求書」という。)及び回答書にて、本願商標は長年にわたり、当審補正役務に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものと認識されるに至っているので、商標法第3条第2項の要件を充足しており、本願商標の登録は認められるべきである旨主張しているが、その前提として、本願商標が同条第1項第3号に該当するものであることは、上記(1)のとおりである。
そこで、請求人の主張及び同人が提出した証拠を参照し、以下、本願商標の使用による自他役務の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について検討する。
なお、本審決において、請求人が本件審判請求にて提出した第1号証ないし第22号証は、第1号証を甲第1号証、第2号証を甲第2号証のように読み替える。
また、証拠の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」のように省略して記載する場合があり、かつ、枝番号の全てを表示する場合は、枝番号を省略して記載する。
ア 商標法第3条第2項について
ある標章が商標法第3条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは、出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品の販売数量又は売上高等、当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきであり(知財高裁平成24年(行ケ)第10285号、平成25年1月24日判決参照)、役務についても同様に解されるものである。
イ 請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。

宝塚歌劇団 https://kageki.hankyu.co.jp/
(ア)請求人と宝塚歌劇団の関係について
請求人の創設者が、大正3年に兵庫県宝塚市に歌劇団と遊園地を誕生させて以来、請求人は、約100年の長きにわたり、請求人のエンターテインメント・コミュニケーション事業として、レビューや音楽劇等を演ずる「宝塚歌劇団」を運営している(請求人の主張、甲2、甲4の2)。
(イ)本願商標の使用状況について
a 使用開始時期、使用地域について
「タカラヅカ」の文字は、少なくとも、昭和34年(1959年)頃から、「演芸の上演,演劇の上演,音楽の演奏」(以下「エンターテイメント役務」という。)について、請求人が運営する「宝塚歌劇(団)」の略称として使用されていた(甲21ほか)。
また、「宝塚歌劇(団)」の公演は、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)及び東京宝塚劇場(東京都千代田区有楽町)の2か所を中心として、大阪、福岡、千葉、横浜、名古屋などでも開催されている(甲2、甲5、甲14、甲15ほか)。
b 観客動員数等について
請求人発行の「会社ハンドブック」(2020年10月及び2022年8月発行)によれば、2019年度及び2021年度における宝塚大劇場の観客動員数はそれぞれ約111万人及び約90万人、東京宝塚劇場の観客動員数はそれぞれ約92万人及び約78万人である(甲14)。
また、阪急阪神ホールディングス株式会社発行の「統合報告書2022」によれば、2012年度ないし2021年度までの宝塚歌劇の観劇人員数は、宝塚大劇場、東京宝塚劇場、その他の劇場及びライブ中継等を含め、約157万人ないし313万人の間で推移している(甲15)。
c 「宝塚歌劇(団)」のファンクラブ会員構成について
「宝塚歌劇」のファンクラブ会員構成(2009年調査)は、成人女性が多く、女性が会員の96%を占めている(甲5)。
d 広告宣伝の方法、地域及び規模等について
平成9年(1997年)及び同26年(2014年)の新聞記事(産経新聞、読売新聞、日本経済新聞)(甲3の1、3、4)、平成27年(2015年)及び令和4年(2022年)発行の雑誌(甲5、甲13の4)、昭和53年(1987年)ないし令和3年(2021年)に発行された書籍(甲6の3、4、甲13の1~3、請求人の主張)、昭和34年(1959年)ないし令和4年(2022年)のポスター及びウェブサイト(甲9~甲12の2、6~8、甲16の1、3、甲17、甲20~甲22)、宝塚歌劇専門チャンネル(甲16の2)、宝塚歌劇(団)の舞台の映像、楽曲のインターネットによる配信(甲18~甲19)などにおいて、エンターテイメント役務について、請求人の運営に係る「宝塚歌劇(団)」の略称として「タカラヅカ」の文字が使用されていたことは分かる。
ウ 判断
上記イによれば、請求人は、約100年の長きにわたり、エンターテインメント・コミュニケーション事業として、レビューや音楽劇等を演ずる「宝塚歌劇団」を運営していること、「宝塚歌劇(団)」の公演は、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)及び東京宝塚劇場(東京都千代田区有楽町)の2か所を中心として、大阪、福岡、千葉、横浜、名古屋などでも開催されていること、「タカラヅカ」の文字は、少なくとも、昭和34年(1959年)頃から、エンターテイメント役務について、請求人が運営する「宝塚歌劇(団)」の略称として使用されていたこと、2019年度及び2021年度における宝塚大劇場の観客動員数はそれぞれ約111万人及び約90万人、東京宝塚劇場の観客動員数はそれぞれ約92万人及び約78万人であり、2012年度ないし2021年度までの宝塚歌劇の観劇人員数は、宝塚大劇場、東京宝塚劇場、その他の劇場及びライブ中継等を含め、約157万人ないし313万人の間で推移していること、平成9年(1997年)及び同26年(2014年)に発行された各種新聞記事、平成27年(2015年)及び令和4年(2022年)発行の雑誌、昭和53年(1987年)ないし令和3年(2021年)に発行された書籍、昭和34年(1959年)ないし令和4年(2022年)のポスター及びウェブサイト、宝塚歌劇専門チャンネル、宝塚歌劇(団)の舞台の映像、楽曲のインターネットによる配信等で、請求人の運営に係る「宝塚歌劇(団)」の略称として「タカラヅカ」の文字が使用されていたことは分かる。
しかしながら、エンターテイメント役務の業界全体の観客動員数が確認できないため、「宝塚歌劇(団)」の観客動員数の多寡を判断することができず、また、「宝塚歌劇(団)」の公演について売上高等が確認できる証拠は提出されていないため、エンターテイメント役務の業界全体における請求人の市場シェア等を客観的に判断し得ない。
また、エンターテイメント役務の需要者は、老若男女を問わない一般の需要者が該当するところ、「宝塚歌劇(団)」のファンクラブ会員構成は、女性が会員の96%が女性であることからすると、「宝塚歌劇(団)」のレビューや音楽劇等の観覧をする者、宝塚歌劇専門チャンネルや宝塚歌劇(団)の舞台の映像及び楽曲のインターネットによる配信に接する需要者は、限定されていると推認できる。
さらに、広告宣伝については、各種新聞記事の掲載時期が限定的である上、掲載回数も決して多いとはいえないことからすると、各種新聞に継続的に広告宣伝を掲載していたとはいえず、また、「宝塚歌劇(団)」に関する宣伝広告がなされた雑誌、書籍等の発行部数、ポスターの印刷数量、頒布数及び頒布範囲なども具体的に確認できない。
その他、請求人の提出した証拠からは、広告宣伝の規模や広告宣伝費等は明らかではない。
以上からすると、本願商標は、当審補正役務の需要者の間で広く知られていたとはいえないから、本願商標が当審補正役務に使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものとは認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
「Takarazuka」の欧文字を横書きした商標は、宝塚歌劇・宝塚歌劇団の略称として広く一般に知られ自他役務の識別標識として機能するため、第3条第1項第3号には該当しないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】平成11年審判第12238号
【審決日】平成15年2月20日(2003.2.20)
【事案】
本願商標は、「Takarazuka」の欧文字を横書きしてなり、第41類「映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,音響用又は映像用のスタジオの提供,娯楽施設の提供,興行場の座席の手配,映写機及びその附属品の貸与,映写フィルムの貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与」を指定役務として、平成10年2月4日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、兵庫県東南部の市で温泉のほか、宝塚歌劇団、動物園、植物園などがある娯楽地として広く知られている『宝塚』に相応する『Takarazuka』の文字を普通に用いられる方法で書してなるものであるから、これをその指定商品に使用するときは、単に役務の提供場所を表示したにすぎず、自他役務の識別標識としての機能を果たすものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
本願商標は、前記のとおり「Takarazuka」の欧文字を書してなるところ、『広辞苑第五版』(岩波書店発行)、『コンサイス日本地名辞典』(三省堂発行)及び『情報・知識imidas2002』(集英社発行)に掲載された「たからづか(宝塚)」又は「宝塚歌劇団」の項並びに請求人の提出に係る各証拠によると、以下のことが認められる。
「宝塚」の名は、宝塚歌劇団、動物園及び植物園等のある娯楽地として知られているが、このように一大娯楽地として広く知られるようになったのは、大正3年に請求人である阪急電鉄株式会社の創設者小林一三が当地に歌劇団と遊園地を誕生させたことによる。請求人は、以来88年の長きにわたり同劇団を運営しており、宝塚歌劇又は宝塚歌劇団の名は、同歌劇ファンに止まらず、広く一般に知られている。そして宝塚歌劇又は宝塚歌劇団を、単に「宝塚」、「タカラヅカ」、「TAKARAZUKA」又は「Takarazuka」等と略称していることも広く一般に知られている。
そうすると、本願商標を同歌劇団の業務に係る役務と認められる本願指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、単に役務の提供場所を表示したというよりも、宝塚歌劇又は宝塚歌劇団を表示したものと理解、認識するとみるのが相当であり、本願商標は、自他役務の識別標識としての機能を十分に果たし得るものと認められる。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものとして、本願を拒絶した原査定は取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
「ひつまぶし」の文字は、鰻を細かく刻んでご飯にまぶした料理の提供であると理解するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を有しないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2006-25186
【審決日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【事案】
本願商標は、「ひつまぶし」の平仮名文字を横書きしてなり、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成17年12月27日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、『蒲焼きを細かく刻んで米飯に混ぜた料理』を認識させる『ひつまぶし』の文字を普通に用いられる方法で表示してなるから、これをその指定役務に使用しても、単に役務の質(内容)、提供の用に供する物を表示するにすぎないと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
1 本願商標は、前記第1のとおり「ひつまぶし」の文字よりなるものであるところ、「ひつまぶし」の文字(語)についてみると、鰻を細かく刻んでご飯にまぶした料理として知られ、また、鰻を取り扱う店舗において、料理名の一つとして広く使用されている事実が認められる。
そして、上記した実情は、以下の各種新聞記事の記載、及びインターネットの情報からも裏付けられる。
(1)1998.06.25 毎日新聞地方版/静岡には、「[面白ばなし]うなぎの櫃まぶし/愛知」の見出しのもと「・・・「名古屋の名物が食べたい」と言われ「うなぎの櫃(ひつ)まぶし」をごちそうした。・・・この料理が生まれたのは、うなぎが人工養殖されていなかった時代とか。型が崩れて捨てるかば焼きが多く、ある時「もったいない」と、型崩れのうなぎをちぎってご飯にまぶしたところ、客に大受けしたそうだ。」との記載。
(2)1999.02.20 朝日新聞名古屋夕刊 9頁には、「愛知県一色町生田・千間(アベニュー・アベニュー)【名古屋】」の見出しのもと「ウナギといえば、うなどん、ひつまぶし、かば焼きを使った料理が思い浮かぶが、実は様々な食べ方ができる素材だ。」との記載。
(略)
2 請求人(出願人)は、「ひつまぶし」商標の権利者であり、明治6年創業以来、鰻料理店舗を持ち、名古屋を始め東海地区を中心とする一般社会の鰻料理の需要者に広く「鰻料理の提供」及び「持ち帰り用鰻料理」の役務を提供し使用した結果、自他役務識別性を有する旨、また、少なくともサービスマーク制度が法律化された時点で、自己の業務に係る指定役務「飲食物の提供」を表示するものとして、需要者の間に広く認識される程度の信用を形成しており、周知商標としても登録を受けることができる旨主張し、甲第1号証ないし甲第17号証(枝番を含む。以下、同じ。)及び検甲第1号証を提出している。
そこで、請求人(出願人)提出の甲各号証についてみるに、請求人(出願人)は、「ひつまぶし」商標(登録第1996631号)を昭和60年6月14日に登録出願し、「第32類:食肉,卵,食用水産物,野菜,果実,加工食料品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として同62年11月20日に設定登録されている商標の権利者(甲第1号証)であり、「御食事」として「鰻丼」、「ひつまぶし」、「長焼定食」、「天麩羅定食」及び「かしわ定食」の記載がある請求人(出願人)の昭和30年当時と推認できるお品書き(甲第13号証の4:検甲第1号証)、及び「名物 ひつまぶし」の記載のある店舗カタログ及びハローページ(甲第3号証及び第4号証)、甲第14号証ないし甲第17号証により、請求人(出願人)は、少なくとも昭和30年頃より現在において、食事として「ひつまぶし」を提供していると認められる。
しかしながら、「ひつまぶし」は、お品書きにあるように、「鰻丼」、「長焼定食」等の料理名と同じ欄に書いてあることより、料理名として認識されるとみるのが相当であり、飲食物の提供について使用する商標として広く認識されているとはいい難い。
また、出願に係る商標が自他役務の識別力を有するか否かの判断時期は、査定又は審決時と解されるものであることからすれば、「ひつまぶし」の文字(語)は、現在において、鰻料理を提供している各店舗における料理名の一つとして一般に使用されていること前記1のとおりであり、本願商標は、その指定役務との関係において、鰻を細かく刻んでご飯にまぶした料理の提供であると理解するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を有しないものであるといえるから、請求人(出願人)の使用の事実、あるいは商品における登録商標があるとしても、その主張は採用することができない。
よって、結論のとおり審決する。
「セロテープ」の文字は、その指定商品である「セロファン製テープ」を暗示するものではあっても、「セロファン製粘着テープ」の商標として自他商品識別機能を失わない程度に広く認識されていたものであって、いわゆる特別顕著性を有していたものとみるのが相当であるとされた事例
【種別】審決取消訴訟の判決
【審判番号】東京高昭和39年(行ナ)第27号
【事案】
本件商標は、下記のとおりの形状構成の、「セロテープ」の片仮名を左横書きしてなり、第50類「セロファン製のテープ」を指定商品とするものである。

【拒絶理由】
商標法(旧法)第1条第2項
判決における判断
本件商標「セロテープ」は、少なくともその登録時においては、その指定商品である「セロファン製テープ」を暗示するものではあっても、単にその品質・形状を表すに過ぎないものではなく、また、その取引者・需要者間において一般的に普通名称として使用され、認識されていたものではなく\b>、商品である「セロファン製粘着テープ」の商標として自他商品識別機能を失わない程度に広く認識されていたものであって、商標法(旧法)1条2項にいわゆる特別顕著性を有していたものとみるのが相当である。
「Veneto」の文字は、「時計」に使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、商品が「ベネト(Veneto)州産の時計」であること、すなわち商品の品質、産地を表示するものと理解させるに止まるものであるとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成11-15694
【審決日】
【事案】
本願商標は、「Veneto」の欧文字を横書きしてなり、第14類に属する商品を指定商品として、平成10年4月23日に登録出願、その後、指定商品については、当審における平成11年9月28日付け提出の手続補正書をもって「時計」と補正されているものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、イタリア北東部の州を表したものと認められる『Veneto』の文字を書してなるところ、該州の州都ベネチアは、観光・文化の中心地であり、また、陶器・ガラス・レース・金などの工芸品を輸出していることよりすれば、これをその指定商品に使用しても該商品が『Veneto』で製造された商品であること、即ち、産地を表したものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を果たすものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
審決における判断
イタリア東北部に位置し、古代ローマの時代にはベネチア地方と呼ばれていたベネト(Veneto)州は、観光・文化の中心地である州都ベネチアのほか、中世の歴史都市パドバ、ビチェンツァ等が点在する観光地として知られるとともに、最近では、料理や食文化に関するセミナー等で同州産のワインとともにその名が屡々紹介され、一般に知られているところである(「コンサイス地名事典外国編」株式会社三省堂発行、「イタリア」ブルーガイド・ワールド実業之日本社発行、日本食料新聞2001年1月24日、同年8月8日及び同年12月10日等)。
そして、ベネト州の州都ベネチアは、陶器、ガラス、金等の工芸品の販売地であること、ガラスや金は時計の原材料でもあることも勘案すれば、「Veneto」の文字よりなる本願商標をその指定商品「時計」に使用した場合、これに接する取引者、需要者をして、上記実情から、該商品が「ベネト(Veneto)州産の時計」であること、すなわち商品の品質、産地を表示するものと理解させるに止まるものであって、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
「那須山麓」の文字は、単に商品の産地を普通に用いられる方法で表示するにすぎないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成11-14854
【審決日】
【事案】
本願商標は、「那須山麓」の文字を横書きしてなり、第29類「乳製品,食用油脂」を指定商品として、平成10年4月1日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、栃木県北東部の酪農産地である『那須山麓』の文字を表してなるから、これを本願指定商品について使用するときは、単に商品の産地を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。
審決における判断
本願商標は、「那須山麓」の文字を普通に表した文字のみよりなるものであるところ、その構成中の「山麓」の文字は、「山のふもと、山のすそ」を意味する親しまれた語であり、「那須山麓」もまた栃木県最北部に位置する「那須岳(那須五岳)」より東南部に広がる地域一帯を指し示すものであることは、請求人の否定するところでない。
そして、この地域は、その気候、風土に起因する観光業のみならず農業、酪農業が盛んであることは、当審における顕著な事実である。
してみれば、本願商標は、その指定商品に係る商品の産地(品質)を普通に表したにすぎないものというべく、自他商品識別機能を果たし得ないものというのが相当である。
しかして、商標法第3条の規定の趣旨は、旧商標法第1条第2項の「特別顕著」を具体的に法文に明定した(「逐条解説」特許庁編)ものであり、判例も「商品の品質を表示する名称は、それがすでに一般的に使用されている場合はもとより、そうでなくても将来は一般的に使用されるに至るべき可能性を多分にもつものというべきであり、この可能性を多分にもつものについて商標権の設定を認め、その権利者だけに独占的使用を許すことは相当でないものと考えられるところであって、この意味からして、右のような可能性をもつものについては、永年使用による特別顕著性の認められる場合の外は、その特別顕著性を認めることはできないものといわなければならない。東京高裁昭和36年(行ナ)第192号判決」と判示するところである。
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すべきでない。
なお、請求人は、登録例を挙げて述べるところがあるが、上記のとおりであるから、採用することができない。
よって、結論のとおり審決する。
「PROVENCE」の文字は、調味料、香辛料等の商品について使用するときには、取引者、需用者は、該商品の産地、販売地を表示するものと認識するにとどまるといわざるを得ないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成11-12616
【審決日】
【事案】
本願商標は、「PROVENCE」の欧文字を書してなり、第30類「茶、コーヒー及びココア、氷、菓子及びパン、ウースターソース、ケチャップソース、しょうゆ、食酢、酢の素、そばつゆ、ドレッシング、ホワイトソース、マヨネーズソース、焼肉のたれ、角砂糖、果糖、氷砂糖、砂糖、麦芽糖、はちみつ、ぶどう糖、粉末あめ、水あめ、化学調味料、香辛料、アイスクリームのもと、シャーベットのもと、穀物の加工品、アーモンドペースト、サンドイッチ、すし、ピザ、べんとう、ミートパイ、ラビオリ、即席菓子のもと、酒かす」を指定商品として、平成9年9月30日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、フランスの南東部、地中海に臨む地方を指称する『PROVENCE』の文字を表してなるから、これを本願指定商品に使用するときは、単に商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。
審決における判断
本願商標は、前記構成よりなるものであるところ、「PROVENCE」は、フランス南東部の地中海沿いの地方で「保養地」として、また、古くから文化の花開いた地としても知られており、その文化に根付いた食文化においても、種々の「プロバンス風」料理があることは、我が国においても知られているところである。そして、「プロバンス風」と称される各料理の特徴は、オリーブ、香草、ニンニク、トマトをきかせた点にあるとされ、ことに、この地方の香草は、エルブ・ド・プロバンスとして名を世界にとどろかせている。
ところで、本願商標の指定商品中には、特徴ある各国料理を作るための調味料、香辛料等の商品が含まれており、これら商品の中には、世界各国または各地方において生産され、販売されているものが我が国に輸入され、それぞれの料理に供されている事実が認められる。
そうとすれば、「PROVENCE」の文字を普通に用いられる方法をもって書された本願商標を、その指定商品中の前記商品等に使用するときには、取引者、需用者は、該商品の産地、販売地を表示するものと認識するにとどまるといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
「タスマニア」の文字は、商品が「タスマニア」産の商品であるか、または、同地で販売された商品であることを表示するにすぎないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成11-10648
【審決日】
【事案】
本願商標は、「タスマニア」の片仮名文字を横書きしてなり、第31類「木、草、芝、ドライフラワー、苗、苗木、花、牧草、盆栽」を指定商品として、平成9年9月25日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、オーストラリア南東部、同国の州である『タスマニア』の文字を表してなるから、これを本願指定商品に使用するときは、単に商品の産地、販売地を普通に用いられる方法で表示するに過ぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。
審決における判断
よって判断するに、「タスマニア」は、原審説示の如く、オーストラリア国の州名を表すものであり、また、同州の中心をなす島名としても我が国において知られている。同地は、冷涼な温帯気候であって、動植物相において特異性を示している。
ところで、我が国においては、ガーデニングがブームとなっており、世界各地から新種の植物の輸入が盛んに行われている現状にある。
そうとすれば、「タスマニア」の文字を普通に用いられる方法をもって書された本願商標を、その指定商品に使用するときは、該商品が「タスマニア」産の商品であるか、または、同地で販売された商品であることを表示するにすぎないものといわざるを得ないものであって、特定人に独占を認めることは適当ではない。
したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号に該当するものとして拒絶した原査定は妥当であって、取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
「揚子江」の文字は、商品が「長江の下流域にある化学工場において生産された肥料」と理解・認識させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成11-3745
【審決日】
【事案】
本願商標は、「揚子江」の文字を横書きしてなり、第1類「肥料」を指定商品として、平成9年9月25日登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、『本願商標は、「揚子江」の文字を普通に用いられる方法で書してなるにすぎないところ、該文字は、「ヤンツーチアン」とも称呼され、武漢等の、長江の流域の局地的な地域名(地理学上では、長江の下流の局地的な名称)であり、武漢(ウーハン)等においては、本願指定商品の工業的生産、取引も行われていること明らかであるから、このような長江下流域の地域名(ヤンツーチアン)を、本願指定商品に使用しても、単に、その商品の生産地または生産地域名、または販売地を表示するものとして直観し認識するに止まり、なんら自他商品を区別する標識としての機能を果たすことができないものと認めるを相当とする。したがって、本願商標は、商標法第3条第1号第3項に該当する。』旨認定して、本願を拒絶したものである。
審決における判断
よって判断するに、本願商標は、「揚子江」の文字を横書きしてなるところ、原審において認定したとおり、「揚子江」は、「長江の別称であって、中国最大の河川でチベット高原に源を発し、青海、雲南、湖北、湖南、江西、江蘇、などの各省を経て東シナ海に注ぐ。本流域の主要都市は、重慶、宜昌、武漢、九江、鎮江、揚州、南京、上海など。」であり(三省堂編修所編者「コンサイス外国地名事典」株式会社三省堂、1985年12月10日改訂版第1刷発行)、また、その都市の中で特に、「九江」は、「江西省北部の都市。揚子江中流右岸に位置。綿紡績・燐酸肥料工場がある。」(同「コンサイス外国地名事典」)と認められるものである。
してみれば、「揚子江」の文字を普通に用いられる方法で書してなる本願商標を、その指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、該商品が「長江の下流域にある化学工場において生産された肥料」と理解・認識させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとは認められないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は商標法第3条第1号第3項に該当し、登録することはできない。
なお、請求人は、本願商標が商標法第3条第1号第3項に該当するとしても、使用により識別力を有するにいたったと十分認められるので、商標法第3条第2項に該当すると主張し、その事実を立証するために甲第1号証乃至同第3号証を提出している。
しかしながら、本願商標については前記の判断されること叙上のとおりであり、請求人の提出に係る書証をもってしても、本願商標が商標法第3条第2項に該当する要件を具備するに至ったものとは認めがたいから、同人の主張は採用することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
「三宮手帳」の文字は、「年刊定期刊行物である手帳」について使用するときは、「神戸市の三宮で生産、販売される心おぼえに雑事や必要事項を記入する小さな帳面」と理解・認識させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成10-013331
【審決日】
【事案】
本願商標は、「三宮手帳」の文字を横書きしてなり、第16類「日記帳,手帳」を指定商品として、平成8年3月23日登録出願、その後、当審において、指定商品を「年刊定期刊行物である手帳」と補正されたものである。
【拒絶理由】
原査定において、『本願商標は、”神戸市の葺合・生田2区の境で市内随一の商店街”を認識する「三宮」及び「手帳」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものに過ぎないから、これをその指定商品中、「手帳」に使用しても単に商品の産地・販売地を表すにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。』旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
審決における判断
本願商標は、「三宮手帳」の文字を横書きしてなるところ、「三宮」の文字部分は、「神戸市中央区の一部で、神戸市随一の商業・娯楽等の繁華街」を表示したもの、また、「手帳」の文字部分は、「心おぼえに雑事や必要事項を記入する小さな帳面」の意味合いと解されること、新村 出編者「広辞苑(第五版)」株式会社岩波書店、1998年11月11日第五版第一刷発行、の記載に徴し明らかなところである。
してみれば、これらの語を結合してなるにすぎない本願商標は、その指定商品に使用するときは、この種の商品の取引者、需要者をして該商品が「神戸市の三宮で生産、販売される心おぼえに雑事や必要事項を記入する小さな帳面」と理解・認識させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとは認められないものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は商標法第3条第1号第3項に該当する。
請求人は、三宮を中心とする神戸の各種の情報や地図を資料として載せている旨主張するが、一般の手帳には、各種の情報や鉄道路線等が掲載されているばかりでなく、仮に請求人主張の如く神戸市三宮の情報・地図が掲載されている手帳に使用するのであれば、本願商標は、その内容を端的に表示したものにすぎず、自他商品の識別機能を有しないことに変わりはないものである。
また、本願商標の指定商品を「年刊定期刊行物である手帳」と補正しているが、手帳というものは、一般に、毎年1月より12月まで記入できるように作製されているものであり、通常、年1回の刊行となるものであるから、上記補正は、ほとんど内容のない補正というべく、かかる補正により、拒絶の理由が解消したとする請求人の主張は、採用することができない。
したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
「嬬恋高原」の文字は、商品が「嬬恋高原で製造、販売されるビールあるいはビール製造用ホップエキス」であること、すなわち商品の産地、販売地を表示するものと理解させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成10-5393
【審決日】
【事案】
本願商標は、「嬬恋高原」の漢字を横書きしてなり、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料,ビール製造用ホップエキス」を指定商品として、平成8年3月29日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品については、平成9年12月26日付け提出の手続補正書により「ビール,ビール製造用ホップエキス」と補正されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、群馬県吾妻郡にある『嬬恋高原』の文字を、普通に用いられる方法で書してなるから、これを本願指定商品中、例えば『嬬恋高原産の地ビール』等の商品に使用するときは、単に商品の産地・販売地を表示するにすぎない。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、同第4条第1項第16号に該当する。また、出願人の提出に係る各資料によっては、本願商標が同第3条第2項に該当するに至ったものとは認められない。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
審決における判断
群馬県吾妻郡西端に位置する嬬恋村は、村域の半分以上が上信越高原国立公園に含まれる観光地として知られ、吾妻川沿いの集落を除く大部分が標高千メートル以上の風光明媚な高原状の地形にあることから、付近一帯は「嬬恋高原」の呼び名でも親しまれているところである。
このことは、ホテルやゴルフ場の所在地に「嬬恋村嬬恋高原」との表示が、また、インターネットによる嬬恋村に関する紹介記事に「嬬恋高原のキャベツ畑」、「万座ハイウェー経由で嬬恋高原まで○○Km」等の表示が、さらに、嬬恋村に関する新聞記事に、「東海大学嬬恋高原研修センター」、「嬬恋高原芸術展」、「嬬恋高原山野草愛好会」等の表示がみられること等から認めることができる(「全国ゴルフ場ガイド’93東日本編」ゴルフダイジェスト社発行1764頁、「goo」1999年9月1日インターネット情報、朝日新聞1989年1月31日群馬版、毎日新聞1999年8月5日群馬版、同1997年7月5日群馬版)。
ところで、1994年4月の酒税法改正でビール製造量の下限が引き下げられたことにより、我が国でも地域の特性を生かした地ビール造りが盛んに行われるようになり、全国各地で多種多様のビールが製造され、販売されているのが実情である。
そして、嬬恋村に1万1千人の住民の他、多くの企業、リゾート施設や宿泊施設等が存在することを考えれば 、「嬬恋高原」の文字は、前記「嬬恋高原」の地域で本願指定商品の製造または販売をする者によって、必要に応じ、商品の生産地、販売地を表示するものとして、その容器、包装等に任意に採択、使用され得る性質のものであるというのが相当である。
してみれば、「嬬恋高原」の文字よりなる本願商標は、これをその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者に対し、上記実情から、該商品が「嬬恋高原で製造、販売されるビールあるいはビール製造用ホップエキス」であること、すなわち商品の産地、販売地を表示するものと理解させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。
つぎに請求人は、本願商標が商標法第3条第2項に該当する旨述べ、それを証明するものとして資料1乃至同11を提出しているが、そこに示された請求人の使用に係る商標は、いずれも「嬬恋高原」「つまごいこうげん」「ブルワリー」の各文字と図形が一体になったもの、あるいは「嬬恋高原ブルワリー」であって、本願商標である「嬬恋高原」とは態様が異なるものであるうえ、上記商標の使用期間も2年と短く、さらに取引数量の証明もないものであるから、本願商標が、その指定商品に使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとは認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、登録することかできない。
よって、結論のとおり審決する。
「北海道発」の文字は、商品の品質、産地又は販売地を表示するものと理解させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成10-1896
【審決日】
【事案】
本願商標は、「北海道発」の文字を横書きしてなり、第30類「コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,サンドイッチ,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,酒かす」を指定商品として、平成7年7月14日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、全体として『北海道からの』等の意味合いを認識するから、これをその指定商品に使用しても単に商品の産地を表示したものと認められ、自他商品の識別標識としての機能を有しない。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
審決における判断
本願商標は「北海道発」の文字よりなるところ、構成文字中「北海道」の文字は、日本列島の北端にある大きな島、「北海道」の地名を表すものとして、また、「発」は、「出ること、出すこと」等を意味するものとして、いずれも普通に使用されている語であるから、本願商標は、「北海道から出ること」あるいは「北海道から出すこと」を表すものと容易に理解されるものである。
ところで、新聞紙面においては「~北海道発のブランド商品として、素材にこだわった菓子の共同開発・販売~」の記載がみられ、また、北海道特産の海産物、農産物に関する記事において、「“北海道発”商品の開発に本腰を入れる。」との記載がみられる(日経流通新聞1997年7月31日7頁、同1989年5月30日11頁)。さらに、1996年に東京都内の郵便局が取り扱った「’96東京お歳暮特選品」においては、「北海道ラーメン」の紹介欄に「北海道発」の記載がみられ、本願指定商品を取り扱う分野において、「北海道発」の語は、北海道で製造、販売される商品であることを表すものとして使用されていることが認められる。
そうとすれば、「北海道発」の文字よりなる本願商標は、これをその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者に対し、上記実情から、該商品が「北海道で製造し発売されたもの」であること、すなわち商品の品質、産地又は販売地を表示するものと理解させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
指定商品「せんべい」について「焼おにぎり」「やきおにぎり」の文字は、商品の品質表示にあたらず、品質誤認のおそれもないとして、登録された事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成11-11433
【審決日】
【事案】
本願商標は、「焼おにぎり」の文字と「やきおにぎり」の文字を二段に書してなり、第30類「菓子及びパン」を指定商品として、平成9年3月13日に登録出願、その後、指定商品については平成11年4月15日付手続補正書により「せんべい」と補正されたものである。

【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、商品が『焼きおにぎりの形状及び風味を有する商品』であることを容易に認識させる『焼おにぎり』『やきおにぎり』の文字を普通の態様で二段に書してなるものであるから、これを本願指定商品中前記に照応する商品に使用しても、単に該商品の形状、品質を表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
審決における判断
本願商標は、上記の構成よりなるところ、これをその指定商品に使用しても、原審において説示するような、商品の品質を表示するものとは看取し得ないばかりでなく、当審において調査するも、前記意味合いでこの種業界において取引上普通に使用されている事実も見出せない。
そうとすると、本願商標は、商品の品質を表示するものとはいい難く、自他商品の識別標識としての機能を十分果たし得るものであり、またこれを指定商品に使用しても、商品の品質について誤認を生じさせるおそれはないものといわざるを得ない。
してみれば、本願商標を商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとして拒絶した原査定の拒絶の理由は妥当でなく、その理由をもって拒絶をすべきものとすることはできない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。よって、結論のとおり審決する。
登録第4534707号
登録日:平成14(2002)年 1月 11日
株式会社マスヤ
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
第30類 せんべい
「清里高原」の文字は役務の提供地を表示するものとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成10-15795
【審決日】
【事案】
本願商標は、「清里高原」の文字を横書きしてなり、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、平成8年6月6日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、山梨県北西部八ヶ岳南東麓の高原地帯をいう『清里高原』の名称である文字よりなるから、この高原はペンション等様々な休養施設、飲食物の提供施設を有し、営業をしていることからして、これを指定役務に使用した場合、役務の提供地を表示するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として本願を拒絶したものである。
審決における判断
本願商標は、「清里高原」の文字を普通に用いられる方法で書してなるところ、その構成中前半の「清里」の文字は、例えば、(株)三省堂発行「コンサイス地名辞典」第3版、(株)岩波書店発行「広辞苑」第5版及び(株)昭文社発行「マップルガイド20信州」1997年等に掲載されており、これらの掲載内容を総合すると、「清里」は、八ヶ岳中信国定公園に属する山梨県北西部八ヶ岳南東麓の高原に位置し、高冷地野菜栽培と酪農が盛んで避暑地としても有名なことが確認できるところである。そして、清里のシンボルでもある清泉寮や美し森等の観光名所はもとより、多くのレストラン・喫茶店が紹介されており、近年当該地が観光、行楽地として大きく発展し、周辺にはレストラン・喫茶店を初め、別荘、ホテル、ペンション等も多数存在しているところである。
また、後半の「高原」の文字は、海面からかなり高い位置にあって、平らな平面をもち、比較的起伏が小さく、谷の発達があまり顕著でない山地を指称する語として広く親しまれているものである。
そうとすれば、本願商標は、「清里周辺の高原地帯」を表したものといわなければならない。
現に、「清里高原」の文字は、同地域を指す語として、(株)三省堂発行「大辞林」第2版に掲載されており、また、清里高原(高根町)観光案内のホームページ(http://www1e.mesh.ne.jp/kiyosato/kiyosat2.htm)、清里観光振興会のホームページ(http://www.comlink.ne.jp/~sinkokai/)、(株)昭文社発行「ス-パーマップル3関東道路地図」1999年及び実業之日本社発行「ブルーガイド・ムック首都圏東京200kmガイド&マップウィークエンドナビゲーション」等に使用されているし、また、中央自動車道長坂ICを降りてから野辺山高原に至る有料道路の名称にも「清里高原有料道路」と命名され、該文字が使用されているところである。
そして、該地域は、前述のとおり、著名な観光、行楽地として発展し、これに伴いレストラン・喫茶店等本願指定役務である「飲食物の提供」を業とする者が少なからず存在していること明らかである。
してみれば、「清里高原」の文字が広く使用されており、かつ、該地域においてレストラン、喫茶店等の飲食物の提供が広く行われていると認められる以上、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者・需要者は、役務の提供の場所を表す語として理解、認識するに止まり、自他役務の識別機能を有しないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号に該当するとした原査定は妥当なものであって、取り消す限りではない。
なお、請求人は、過去における登録例、審決例を多数挙げ、本願商標は、自他役務の識別機能を有する旨主張しているが、請求人主張の事例が指定商品に係るものであるのに対し、本願商標は指定役務に係るものであるから、商品と役務という相違のあることは明かである。また、商標登録をすべきものとされた時が本願商標と異なることも当然であり、本願がこれら事例に左右されなければならない特別の事情も見い出せないものであるから、請求人の該主張は採用することができない。
よって、結論のとおり審決する。
ニューヨークの地名「5th Avenue」に「INTERNATIONAL」を付しても商標法3条1項6号(原査定では3号)に該当するとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成9-19423
【事案】
本願商標は、下記に表示したとおりの構成よりなり、第25類「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物」を指定商品として、平成7年8月25日に登録出願されたものである。

【拒絶理由】
これに対し、原査定は、「この商標登録出願に係る商標は、アメリカ合衆国ニューヨーク市の高級品店がある通りとして有名な『5th Avenue』の文字を2段に分けて表示したものに『国際的な』の意味の『INTERNATIONAL』の文字を小さな文字で付記した構成よりなるものであるから、これをニューヨーク製を初め外国製のものが多く取り扱われている本願指定商品に使用しても,該通りを産地にするものと理解されるにとどまるから、単に商品の産地・販売地を表示するにすぎない商標である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
よって判断するに、本願商標は下記に表示したとおり大きな「5th Avenue」の文字の下に小さく「INTERNATIONAL」の文字を表してなるものであるが、構成中の上段の「5th Avenue」は、パリの「シャンゼリゼ通り」、日本の「銀座」と同様、国を代表するアメリカ合衆国ニューヨーク市の著名な繁華街であり、そこには「グッチ」、「バリー」、「フェラガモ」、「テファニー」等の一流品店舗が軒を並べていることでよく知られているものである。また、下段の「INTERNATIONAL」の文字は、「国際的な」を意味する英語であるが、「スーツ」「コート」等、被服を取り扱う業界において「世界のどの国でも共通に着られる」如き意味合いを表す語として適宜採択し使用されているところである。
そうとすれば、これら「5th Avenue」と「INTERNATIONAL」各文字よりなる本願商標を、その指定商品中「スーツ」「コート」等の被服に使用しても、これに接する取引者・需要者は、該商品が単に「世界中のどこでも着られる被服であり、ニューヨークの5番街(5th Avenue)で製造若しくは販売された商品である」ことを理解し認識するに止まるものといえる。
したがって、本願商標は、何人の業務に係る商品であるかを認識させることができないものと認められるものであるから、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができない。
なお、原査定は、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当すると認定しているが、当審では、本願商標が自他商品の識別標識の機能を果たし得ない点においては3号も6号も同様であると判断し、改めて拒絶理由を通知することなく上記のとおりの認定をした。
よって、結論のとおり審決する。
「マキトール」の文字は「巻き取る」の意味を直観させ、商品の品質、機構(構造)を表示するものとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成1-2238
【事案】
「マキトール」の文字は「巻き取る」の意味を直観させ、ロールブラインド・ロールスクリーン等の巻き取る機構(構造)を有する商品について使用しても、商品の品質、機構(構造)を表示するものである(商標法第3条第1項第3号)。
これを前記商品以外の屋内装置品、屋外装置品について使用した場合には、該商品が「巻き取る機構(構造)を有する商品」であるかの如く、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものである(商標法第4条第1項第16号)。
【拒絶理由】
本願商標は、「マキトール」の文字を横書きしてなり、第20類「家具、畳類、建具、屋内装置品(書画および彫刻を除く)屋外装置品(他の類に属するものを除く)記念カップ類、葬祭用具」を指定商品として、昭和61年2月17日に登録出願されたものである。
これに対し、原査定は、「本願商標は、『巻き取る』の意味合いを直観する『マキトール』の文字を普通に用いられる方法で表してなるにすぎないから、これをその指定商品中巻き取り機構を有するロールブラインド・ロールスクリーン等に使用するときは、単に該商品が上記機構を有するものであることの品質を表示するにすぎない。したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定して、本願を拒絶したものである。
審決における判断
よって接ずるに、ある商標が自他商品の識別力を有するか否かについては、その指定する商品との関係を考慮して相対的に判断されなければならないところである。
しかして、本願商標は「マキトール」の文字よりなるものであるところ、これは「巻いて他の物へ移しとる」の意味を有する「巻き取る」の語の字音を容易に想起させる「マキトル」の語にあって、その後半部の「トル」を語呂よく「トール」と表音化したものとみるを相当とし、その指定する商品中の「ロールブラインド・ロールスクリーン」等の商品との関係では、該文字は「巻き取る」の意味を直観させるものといわなければならない。
即ち、屋内装置品等の業界においては、巻き取る機構(構造)を有する商品として、「ロールブラインド・ロールスクリーン」等の存するところ、これら商品については、「巻き上げるタイプ」とか「巻き込んで収納できる」等の解説が記載されていたり、また、該商品の部品として「巻き取りチューブ」「巻取ドラム」「巻取パイプ」等の用語が使用されていることからみて、「巻き取る」の語は商品の機能、構造を表すものとして一般に使用されているものといえる(株式会社経済出版発行「家具木材加工インテリア用語辞典」、株式会社東洋経済新報社発行「現代商品大辞典 新商品版」、株式会社三省堂発行「コンサイスカタカナ語辞典」、株式会社ニチベイ発行「Nichibei Product Guide総合カタログ」、株式会社ヨコタ発行「ヨコタカタログ’83」等の「ロールブラインド・ロールスクリーン、ローラーシエード」の項参照)。
そうとすれば、本願商標は、その指定商品中のロールブラインド・ロールスクリーン等の巻き取る機構(構造)を有する商品について使用しても、取引者・需要者は、該商品が前記機構(構造)を有する商品であること、即ち、商品の品質、機構(構造)を表示するものであることを容易に理解し、認識するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるといわなければならず、また、これを前記商品以外の屋内装置品、屋外装置品について使用した場合には、該商品が「巻き取る機構(構造)を有する商品」であるかの如く、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当し、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。

