「三宮手帳」の文字は、「年刊定期刊行物である手帳」について使用するときは、「神戸市の三宮で生産、販売される心おぼえに雑事や必要事項を記入する小さな帳面」と理解・認識させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成10-113331
【審決日】
【事案】
本願商標は、「三宮手帳」の文字を横書きしてなり、第16類「日記帳,手帳」を指定商品として、平成8年3月23日登録出願、その後、当審において、指定商品を「年刊定期刊行物である手帳」と補正されたものである。
【拒絶理由】
原査定において、『本願商標は、”神戸市の葺合・生田2区の境で市内随一の商店街”を認識する「三宮」及び「手帳」の文字を普通に用いられる方法で書してなるものに過ぎないから、これをその指定商品中、「手帳」に使用しても単に商品の産地・販売地を表すにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。』旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。
【審決における判断】
本願商標は、「三宮手帳」の文字を横書きしてなるところ、「三宮」の文字部分は、「神戸市中央区の一部で、神戸市随一の商業・娯楽等の繁華街」を表示したもの、また、「手帳」の文字部分は、「心おぼえに雑事や必要事項を記入する小さな帳面」の意味合いと解されること、新村 出編者「広辞苑(第五版)」株式会社岩波書店、1998年11月11日第五版第一刷発行、の記載に徴し明らかなところである。
してみれば、これらの語を結合してなるにすぎない本願商標は、その指定商品に使用するときは、この種の商品の取引者、需要者をして該商品が「神戸市の三宮で生産、販売される心おぼえに雑事や必要事項を記入する小さな帳面」と理解・認識させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとは認められないものと判断するのが相当である。したがって、本願商標は商標法第3条第1号第3項に該当する。
請求人は、三宮を中心とする神戸の各種の情報や地図を資料として載せている旨主張するが、一般の手帳には、各種の情報や鉄道路線等が掲載されているばかりでなく、仮に請求人主張の如く神戸市三宮の情報・地図が掲載されている手帳に使用するのであれば、本願商標は、その内容を端的に表示したものにすぎず、自他商品の識別機能を有しないことに変わりはないものである。
また、本願商標の指定商品を「年刊定期刊行物である手帳」と補正しているが、手帳というものは、一般に、毎年1月より12月まで記入できるように作製されているものであり、通常、年1回の刊行となるものであるから、上記補正は、ほとんど内容のない補正というべく、かかる補正により、拒絶の理由が解消したとする請求人の主張は、採用することができない。
したがって、本願商標を商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。