「OldSmuggler」の文字は、密輸者(密輸商人を含む。)、酒類密造者の意味を有する「Smuggler」の文字を服うものであり、自他商品識別の標識としては不穏当であり、結局、本願商標は、商標法4条1項7号に該当するとされた事例
【種別】抗告審判(旧法)の審決
【審判番号】昭和30年抗告審判第15号
【事案】
本願商標は、「OldSmuggler」の文字を横書きしてなり、第39類「ウイスキー、その他本類に属する商品」を指定商品とするものである。
【拒絶理由】
商標法第4条第1項第7号
審決における判断
よって判断するに、本願商標は、「OldSmuggler」の欧文字よりなるところ、「Old」の文字は洋酒類について当該商品の年数ものの表示として取引上普通に慣用されている用例にすぎないものであることは当庁において顕著な事実であり、また、「Smuggler」の文字が(1)密輸者(密輸商人を含む。)、(2)酒類密造者の意味を有するものであることは辞書をみれば明瞭なところである。そして、「Smuggler」に相当する者は、我が国においては法によりこれを犯罪者として取扱わなければならないことは明らかである。
したがって、この様な用語を商品に使用することは公の秩序を乱すおそれのあるいかがわしい標識であると判断せざるを得ないから、自他商品識別の標識としては不穏当であり、結局、本願商標は、商標法4条1項7号に該当する。
本件は商標法第4条第1項第7号に該当するものとして、弁理士試験の教材にも必ず出てくる事例の一つです。
しかし弁理士である筆者はなんとなく「OldSmuggler」が公序良俗に反する商標なのだろうかという違和感をもっていました。
商標の審査基準、判断基準は時代とともに変わるものです。特に社会の環境や道徳意識の変化により、公序良俗違反については変化していきます。
仮に現代において、筆者が本件の拒絶理由通知を受けたら、意見書での反論を試みるかもしれません。
考えられる反論としては次のようなことが思いうかびます。
・「Smuggler」の文字が密輸者、酒類密造者の意味合いを有するとしても、法令で禁止されている事項は時代とともに変わるのであり、現代において酒類の製造、輸出入は法令に従う限り自由である。
・禁酒法は1920年から1933年の間にアメリカにあった法令であり、現代の法律ではなく、古いその時代の洋酒の味覚や風味を再現した商品であることを連想させる商標にすぎない。
・酒類が販売されるのは酒専門店、スーパーなどの量販店、インターネット通販などであり、そのような流通に置かれた状態で「OldSmuggler」の商標を見ても、誰も密輸品や密造酒であるとは思わない。
・酒類をはじめとする飲食料品では、法令により製造者、販売者、輸入者の表示が義務付けられており、密輸品や密造種ではないことが明らかである。
・「Smuggler」の単語が日本で一般的に使われるほどのものではなく、消費者は単に商品名であると認識する。

参考登録例

国際登録番号:987328
国際登録日又は事後指定日:平成21(2009)年 1月 22日
登録日(国内):平成22(2010)年 3月 26日
商標:budgy\smuggler
名義人:LEOKADIA PTY LTD
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務(訳)】
第18類 革製の札入れ,空輸(旅行)用かばん,バッグである旅行かばん類,キャンプ用バッグ,登山用バッグ,衣服用バッグ,化粧品キット道具入れ,運動用被服を持ち運ぶためのスポーツ用バッグ,(以下略)
第25類 エプロン(被服),羊毛製の被服,人工皮革製被服用品,皮革製被服,フラシ天製の被服用品,風除け用被服,体操用被服,海岸用被服,少年用被服,カシミヤ製被服,カジュアルな衣服,子供用被服,被服,乳幼児用被服,スポーツ用衣服,サーフィン用被服,水泳着,デニム製被服,少女用被服,手袋(被服),ゴルフ用被服(手袋を除く。),ヘッドバンド,衣服用フード,幼児用被服,ジャケット(被服),ジャンプスーツ,ネッカチーフ,ニット製被服,女性用被服,妊婦用被服,男性用の被服,被服,シルク製被服,運動用被服(ゴルフ用手袋を除く。),テニス用被服,ビキニ型水着,(以下略)
コメント
Budgy Smuggler(バジー・スマグラー)は、オーストラリア英語の俗語。
男性用のビキニ型水着を指し、水着の中にセキセイインコ(Budgie)を隠し持っている(Smuggle)ように見えることが言葉の由来。
これを登録した審査官は確実に「OldSmuggler」の事例を検討したと思います。

