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審決例(4条1項7号) -商標登録ドットコム™

「昭和大仏」の文字は、宗教法人青龍寺の境内に建立された大日如来座像を示すものであり、無断で出願をした行為は、社会の一般道徳観念に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるため、商標法第4条第1項第7号に該当し無効であるとされた事例

【種別】無効審判の審決
【審判番号】無効昭和60-18883
【審決日】
【事案】
本件商標は、「昭和大仏」の文字よりなり、第20類「家具、畳類、建具、屋内装置品、屋外装置品、記念カップ類、葬祭用具」を指定商品とするものである。
【無効理由】
商標法第4条第1項第7号
【審決における判断】
よって判断すると、請求人「宗教法人青龍寺」の境内に建立され、昭和59年9月31日に開眼落慶式が挙行されたところの大日如来座像を「昭和大仏」と称するところ、これは、同54年7月1日に建立趣意書が世に発表され、地元(青森県)新聞に掲載され、同57年には全国紙にも報道されるに至ったものとされる。
しかして、被請求人は、本件の商標登録出願をすることにつき請求人の承諾を得たと認めるに足りる資料の提出がない。
ところで、商標法4条1項7号の規定の趣旨は、商標の構成自体がきょう激、卑わいな文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するような場合も含まれるものとみるのが相当と解されるところ、被請求人は、請求人に無断で本件の出願をなしたものといえるから、かかる行為は、社会の一般道徳観念に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるものといえる。
したがって、本件商標は、商標法4条1項7号に該当する。

「OldSmuggler」の文字は、密輸者(密輸商人を含む。)、酒類密造者の意味を有する「Smuggler」の文字を服うものであり、自他商品識別の標識としては不穏当であり、結局、本願商標は、商標法4条1項7号に該当するとされた事例

【種別】抗告審判(旧法)の審決
【審判番号】昭和30年抗告審判第15号
【事案】
本願商標は、「OldSmuggler」の文字を横書きしてなり、第39類「ウイスキー、その他本類に属する商品」を指定商品とするものである。
【拒絶理由】
商標法第4条第1項第7号
【審決における判断】
よって判断するに、本願商標は、「OldSmuggler」の欧文字よりなるところ、「Old」の文字は洋酒類について当該商品の年数ものの表示として取引上普通に慣用されている用例にすぎないものであることは当庁において顕著な事実であり、また、「Smuggler」の文字が(1)密輸者(密輸商人を含む。)、(2)酒類密造者の意味を有するものであることは辞書をみれば明瞭なところである。そして、「Smuggler」に相当する者は、我が国においては法によりこれを犯罪者として取扱わなければならないことは明らかである。
したがって、この様な用語を商品に使用することは公の秩序を乱すおそれのあるいかがわしい標識であると判断せざるを得ないから、自他商品識別の標識としては不穏当であり、結局、本願商標は、商標法4条1項7号に該当する。

「ごまの蠅」の文字は、懐中のスリ又はさぎ等を意味する用語であり、本願商標は公の秩序、善良の風俗を害するおそれがあるとされた事例

【種別】抗告審判(旧法)の審決
【審判番号】昭和29年抗告審判第825号
【事案】
本願商標は、「ごまの蠅」の文字を縦書きしてなり、第43類「菓子及び麺麭の類」を指定商

品とするものである。
【拒絶理由】
商標法(旧法)第2条第1項第4号
【審決における判断】
思うに、本願商標を構成する「ごまの蠅」の文字は、懐中のスリ又はさぎ等を意味する用語で、このような悪徳を嫌悪する社会感情こそ善良の風俗の根源をなすところである。
このような用語を商標として指定商品に使用し、その商品が世上に流布するときは単なる滑稽の度を超え、不徳漢を礼賛し、善良の社会感情を嘲弄(ちょうろう)する如き印象を与え、道義上社会に悪影響を及ぼすおそれがあると認めざるを得ない。
したがって、本願商標は公の秩序、善良の風俗を害するおそれがあると認め、本願商標をその指定商品に使用することは妥当でないから、商標法(旧法)2条1項4号に該当する。

「ポパイ」の特徴を顕著に表した図形を配した商標は、一見して漫画の「ポパイ」そのものを直ちに認識させ、他人の著名な標章の盗用と推認し、商標法第4条第1項第7号に該当し無効であるとされた事例

【種別】無効審判の審決
【審判番号】無効昭和58-19123
【事案】
本件登録第536992号商標(以下「本件商標」という。)は、別紙に表示した通りの構成よりなり、第36類「被服、手巾、釦鈕及び装身用『ピン』の類」を指定商品として、昭和33年6月26日登録出願、同34年1月17日登録査定、同34年6月12日に設定登録され有効に存続するものである。
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そして、漫画の主人公「ポパイ」が想像上の人物であって、「POPEYE」乃至「ポパイ」なる語は、該主人公以外の何物をも意味しない点を併せ考えると、「POPEYE」「ポパイ」の名称及びキャラクターは、漫画に描かれた主人公として登場される人物像と不可分一体のものとして世人に親しまれてきたものというべきである。
しかして、本件商標は「POPEYE」の文字を上部に、「ポパイ」の文字を下部にそれぞれ横書きし、両文字部分の中間に、水兵帽をかぶって水兵服を着用し、顔をやや左向きにした人物がマドロスパイプをくわえ、錨を描いた左腕を胸に、太い右腕を掲げ、両足を開き伸ばして立った状態に表された「ポパイ」の特徴を顕著に表した図形を配したものであるから、一見して漫画の「ポパイ」そのものを直ちに認識させるものである。
【審決における判断】
ところで、商標法は不正競争防止と並ぶ競業法であって登録商標に化体された営業者の信用の維持を図ると共に、商標の使用を通じて商品又はサービスに関する取引秩序を維持することが目的とされる。
そして、商標法第4条第1第7号は、前記目的を具現する条項の1つとして「公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録することができない」旨を規定しておりその趣旨は、過去の審判決例によれば、その商標の構成自体が矯激、卑猥な文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、その時代に応じた社会通念に従って検討した場合に、当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反するような場合、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標、若しくは国際審議に反するような商標である場合も含まれるものとみるものがが相当と解されている。
しかして、前記商標法の目的との関係に則して、同号中に規定されている「公の秩序」の意義について検討するに、「公の秩序」中には、商品又はサービスに関する取引上の秩序が包含されているものとみるのと解すべきである。
しかるところ、本件商標は、前記したとおり漫画の「ポパイ」そのものを直ちに認識されるものであり、その構成内容からみて、請求人等が正当な権利を有して著名となっていた漫画「ポパイ」又はキャラクターとしての「ポパイ」そのものを直ちに認識させるものであり、請求人とが正当な権利を有して著名となっていた漫画「ポパイ」と偶然に一致する標章を採択したものとみることができないばかりでなく、本件商標の登録出願人が、本件商標に係わる登録出願をするにつき、請求人等(著作権者、複製許諾者)より許諾を得た事実を認めることができないものである。したがって、本件商標は前記の漫画「ポパイ」に依拠しこれを模倣又は剽窃して、その登録出願をしたものであると推認し得るものであるといわざるを得ない。
そうとすれば、かかる経緯によって登録を得た本件商標の登録を有効として維持することは、前記「ポパイ漫画」の信用力、顧客吸引力を無償で利用する結果を招来し、客観的に、公正な商品又はサービスに関する取引秩序を維持するという前記法目的に合致しないものといわなければならない。
さらに、近事、諸外国との貿易摩擦が激しさを増すなかで、政府は、「市場アクセス改善のためのアクション・プログラムの骨格」を昭和60年7月に決定し、その一環として、外国周知標章のわが国における冒認出願登録等の未然防止が検討課題として取り上げられた結果、特許庁としても、これを重視し積極的に対応することとした「外国標章等の保護に関する処理方針」が設けられた。即ち、その標章(外国標章)が出願商標により先に使用されているものであって、その国(外国)において著名になっているものでもあり出願商標がその標章と構成において同一又は類似のものである場合には、当該出願を他人の著名な標章の盗用と推認し、このような国際審議を損なうような出願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとして拒絶する運用を開始したものである。
加えて、本件商標は、請求人が著作権を有する「ポパイ」の図形と、これと不可分一体のもとして世人に親しまれてきた「POPEYE」及び「ポパイ」の文字を結合してなるものであるから、これを著作権等に無断で使用することは、商標法第29条による規制の対象となるものであり、かつ、著作権法第21条の複製権・同法第112条の差止請求権・同法第119条の侵害とみなす行為等によっても規制されているので、前期商標法第4条第1項第7号の運用指針の1つである「他の法律によって、その使用等が禁止されている商標」に該当するもであると解される。

更に、被請求人は「ポパイ」の名称は、著作物ではないから、これに著作権は及ばない旨を述べている。確かに、「ポパイ」の文字自体は著作物でないが、「POPEYE」ないし「ポパイ」なる語は、著名な漫画の「ポパイ」以外の何ものも意味しないものであって、漫画に描かれた主人公として想起される。「ポパイ」の人物像と不可分一体のものとして世人に親しまれてきたものであり、本件商標が、「ポパイ」の図形を直ちに想起させるものである以上、本件商標の使用にたいして著作権が及ぶことに変わりはない。

「ホワイトハウス」が公序良俗に反する商標であるとされた事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服昭和60-2315
【事案】
「ホワイトハウス」が公序良俗に反する商標(商標法第4条第1項第7号)に該当するか
【拒絶理由】
本願商標は「ホワイトハウス」の文字を書してなるものであるが、これより一般には「アメリカ大統領官邸」を認識させるものであり、これを出願人が商標として採択使用することは穏当を欠くものと認める。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
【審決における判断】
本願商標は、「ホワイトハウス」の片仮名文字を横書きしてなり、第33類「穀物、豆、粉類、飼料、種子類その他の植物および動物で他の類に属しないもの」を指定商品として、昭和57年11月10日に登録出願されたものである。
これに対し、原査定は「本願商法は『ホワイトハウス』の文字を書してなるものであるが、これより一般には『アメリカ大統領官邸』を認識させるものであり、これを出願人が商標として採択使用することは穏当を欠くものと認める。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」として本願商標を拒絶したものである。
よって判断するに、「ホワイトハウス」の文字は、アメリカ合衆国大統領の官邸の通称であることは、我が国においても広く知られているところである。
してみれば、本願商標は該官邸の著名な通称を表してなる商標といわざるを得ない。
したがって、本願商標を一般人が営利の目的において使用することは、該国の権威と尊厳とを損ねるものであり、かつ、国際信義に反するものであるから、これを請求人(出願人)が自己の商標として採択使用することは穏当でないから、本願商標は商標法第4条第1項第7号の規定に該当し、これを登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。

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