町内の各業者に対し使用が奨励されていることを十分承知していながら、「母衣旗」の名称による利益の独占を図る意図で出願した本件商標は、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反するものであるとされた事例
【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成10年(行ケ)第18号
【事案】
本件商標は、「ほろはた」及び「母衣旗」の文字を二段に横書きしてなり、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果実」等を指定商品とするものである。
【拒絶理由】
商標法第4条第1項第7号
【判決における判断】
本件商標を構成する「母衣旗」の文字については、イベントの名称や町の産品に付することを奨励するものとして選定採択し、地域周辺の業者等において、誰もが自己の商品に「母衣旗」の標章を使用できるとの認識を有する状態となっていたことが認められる。
他方、「母衣旗」の名称が、町内の各業者に対し使用が奨励されていることを十分承知しているものと推認されるところ、被告は、本件商標を出願し、登録を受けて、その指定商品の範囲とはいえ、「母衣旗」の標章の独占的使用権限を取得して、他業者の使用を不可能又は困難とし、その使用を断念させたことが認められる。
そうすると、被告による本件商標の取得は、仮に、本件商標を自ら使用する意思をもってその出願に及んだものであるとしても、原告による、町の経済の振興を図るという地方公共団体としての政策目的に基づく公益的な施策に便乗して、その遂行を阻害し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、「母衣旗」名称による利益の独占を図る意図でしたもので、本件商標は、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗に反するものである。
したがって、本件商標は、商標法4条1項7号に該当する。