商標登録出願の願書には「色彩のみからなる商標」の記載があるが、さまざまな色彩の125個の縦長長方形からなる横長長方形を4つ結合した構成の本願商標は、全体として特徴的な図形を認識させるものであり、色彩のみからなる商標が記載されていないから、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2020-5753
【審決日】令和3年10月7日(2021.10.7)
【事案】
1 手続の経緯
本願は、平成29年9月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年11月12日付け:拒絶理由通知書
平成31年3月25日:意見書、手続補正書の提出
令和元年9月6日付け:通知書
令和元年10月18日:意見書の提出
令和2年1月22日付け:拒絶査定
令和2年4月28日:審判請求書の提出
令和3年4月21日付け:審尋
令和3年6月2日:回答書の提出
令和3年9月22日:手続補正書の提出
2 本願商標
本願商標は、別掲(1)の商標登録を受けようとする商標及び願書記載のとおりの商標の詳細な説明からなり、第16類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として登録出願され、その後、指定商品については、当審における令和3年9月22日受付の手続補正書により、第16類「紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋,紙製テーブルクロス,紙類,印刷物」と補正されたものである。
そして、願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明については、原審における平成31年3月25日受付の手続補正書により、別掲(2)のとおり補正されたものである。

【拒絶理由】
原査定は、「本件商標登録出願の願書には、色彩のみからなる商標である旨の記載があるが、本願商標は、別掲(1)のとおり、様々な色彩からなる125個の縦長長方形からなる横長長方形を4つ結合した構成よりなるから、全体として特徴的な図形を認識させるものであり、色彩のみからなる商標を表示したものということができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
(1)「色彩のみからなる商標」について
商標法第5条第2項第3号にいう「色彩のみからなる商標」は、人の知覚によって認識することができるもののうち、色彩からなるものであり、平成26年の特許法等の一部改正(平成26年法律第36号)により、商標法の保護対象に追加されたものである。
上記法改正の立法の経緯をみると、基本的論点が検討された産業構造審議会知的財産分科会の報告書において、「現行制度の保護対象」について、「現行商標法第2条第1項に掲げられた各標章は、いずれも一定の形状を備え、かつ、視覚で認識できるものであるから、形状を備えていない『輪郭のない色彩』や、視覚を認識できない『音』、『におい』等は、現行商標法における『標章』には該当せず、同法の保護を受けることができない。」とした上で、国際的な趨勢や我が国における保護のニーズの高まりを受け、「現行制度において商標登録されない商標の類型」である「『輪郭のない色彩』の商標」を新たに保護対象とすべきとされ、同報告書においては、「『輪郭のない色彩』の商標は、図形等と色彩が結合したものではなく、色彩のみからなる商標である。『輪郭のない色彩』の商標は、複数の色彩を組み合わせたものと、単一の色彩によるものがある。」と記載されている(「新しいタイプの商標の保護等のための商標制度の在り方について」平成25年9月産業構造審議会知的財産分科会)。
そして、上記報告書の趣旨を踏まえ、従来、商標法の保護対象に含まれていなかった色彩のみの商標を新たに商標法の保護対象として追加する法改正が行われた(「工業所有権法(産業財産権法)逐条改正解説(第20版)」特許庁編、「平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書 第4章 商標法の保護対象の拡充等」特許庁ホームページ(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/h26/document/tokkyo_kaisei26_36/04syou.pdf))。
このような立法の経緯からすれば、「色彩のみからなる商標」とは、上記法改正前から商標法の保護対象に含まれていた「図形と色彩との結合商標」ではなく、図形としての要素を有しないものである。
そして、このような「色彩のみからなる商標」について商標登録を受けようとする際には、願書に、「色彩のみからなる商標」である旨(商標法第5条第2項第3号)及び「商標の詳細な説明」を記載しなければならず(同条第4項)、商標登録を受けようとする商標を記載する欄(商標法施行規則第2条(様式第2))に記載する商標は、文字や図形ではなく、視覚上認識できる色彩そのものを「表示した図又は写真」を記載しなければならない(同施行規則第4条の4第1号)。また、「色彩のみからなる商標」を「図又は写真によって記載するときは、なるべく商標登録を受けようとする色彩が全体にわたり表示された図又は写真によって記載する」こととなっている(同施行規則第2条(様式第2)備考7ヨ)。
(2)本願商標の願書の記載について
本件商標登録出願についての願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明については、原審における上記1の手続補正書により、別掲(2)のとおり補正されている。
しかしながら、本願商標は、多数の色を縦に4分の1の長さで帯状に隙間なく並べたものを、4つ積み重ねた構成からなるところ、人間の視覚をもってしては、一つ一つの色の幅が均一のものとは認識できないものの、高さは揃っており、それぞれの色が異なることから、これら4つの帯状のものは、各段に境界があると看取され、構成全体としてみれば、様々な色彩からなる横長長方形を4段に重ねた特徴的な図形として認識され得る態様といえるものである。
また、本願商標が125色ずつ4段で表したものであるとしても、各段における境界部分は、商品やその包装の形状の変化に即した変化が想定できないものであって、商品やその包装の形状が変化した場合に、その変化に即して当該境界部分が変化すると解することはできず、結局、本願商標は、図形としての要素を有するものといわざるを得ないものであるから、本願商標を「色彩のみからなる商標」ということはできない。
そうすると、本願の願書には、「色彩のみからなる商標」である旨の記載及び「商標の詳細な説明」の記載があるものの、「商標登録を受けようとする商標」の欄には、「色彩のみからなる商標」が記載されていないものであり、「色彩のみからなる商標」として、商標法第3条第1項柱書に規定する「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」が記載されていないものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。

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