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商標登録ドットコム > 商標の拒絶理由(登録できない商標) > 3条1項柱書(審決例)

審決例(3条1項柱書):商標の拒絶理由

「商標の詳細な説明」は「ピンと音が聞こえた後に、人の声で『あ、小林製薬』というナレーションが入る構成」とされた音商標において、複数の構成音が同時に重なっていることにつき、全体として複数の構成音を組み合わせた音と特定でき、矛盾や支障のある記載はないから第3条第1項柱書の要件を具備するとともに、音声ファイルは記載の範囲内にとどまり,記載内容も商標の音を具体的に特定しているといえるから第5条第5項の要件を具備するとされた事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2017-12007
【審決日】平成30年11月6日(2018.11.6)
【事案】
本願商標は,以下の(1)及び(2)のとおりの構成からなり,第1類,第3類ないし第5類,第7類,第10類,第11類,第16類,第21類,第24類ないし第26類,第29類,第30類及び第32類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として,平成27年4月1日に音商標として登録出願されたものである。
そして,その指定商品については,原審における平成28年2月15日付けの手続補正書により,別掲のとおりの商品に補正された。

(1)商標登録を受けようとする商標
本商標は、ピンと音が聞こえた後に、人の声で「あ、小林製薬」というナレーションが入る構成になっており、全体で約1.5秒の長さである。(以下,この記載を「本願商標記載」という。)

(2)商標法第5条第4項の規定により同法施行規則第4条の8第3項で定める物件
平成27年4月1日付け手続補足書で提出された光ディスク(以下「本願音声ファイル」という。)のとおり

【拒絶理由】
(1)本願商標は,音商標である旨の記載があるところ,本願商標記載中「ピン」という記載について,音の種類が記載されていないため,本願商標を音商標と認めることができない
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。

(2)本願商標の音は,本願音声ファイルにより特定されるところ,本願商標記載中「ピンと音が聞こえた後に、人の声で『あ、小林製薬』というナレーションが入る」に対して,本願音声ファイルには,「ピン」という音と「あ、小林製薬」の「あ」が同時に収録され,同時に聞こえるもので,「ピン」という音が「あ」の音より前に鳴っていると認めることができないため,本願商標記載の音と本願音声ファイルの音は一致しておらず,本願音声ファイルが本願商標を特定するものとは認められない
したがって,本願商標は,商標法第5条第5項の要件を具備しない。

審決における判断

原査定を取り消す。
本願商標は,登録すべきものとする。

(1)本願商標の商標法第3条第1項柱書の該当性

ア 商標法第3条第1項柱書は,自己の業務に係る商品又は役務について使用をする「商標」(文字,図形,記号,立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合,音を含む。商標法第2条第1項を参照。)については,商標登録を受けることができる旨を規定している。そして,音商標に係る登録出願に際しては,音商標である旨と商標登録を受けようとする商標を,願書に記載しなければならない(商標法第5条第1項及び第2項)。
そして,「音」とは,「物の響きや人・鳥獣の声。物体の振動が空気の振動(音波)として伝わって起こす聴覚の内容。」(参照:「広辞苑 第7版」岩波書店)であるところ,音商標の登録出願に際して,その願書には,聴覚により伝わる音そのものは記載できないため,文字若しくは五線譜又はこれらの組み合わせを用いて商標登録を受けようとする音を特定するために必要な事項を記載することになる(商標法施行規則第4条の5)。併せて,その記載だけでは表せられない,本願商標の聴覚による伝わる音としての具体的表現物は,物件(以下「音声ファイル」という。)として提出することになる(商標法第5条第4項)。

イ 本願商標記載は「本商標は、ピンと音が聞こえた後に、人の声で『あ、小林製薬』というナレーションが入る構成になっており、全体で約1.5秒の長さである。」と記載されているところ,本願商標が音商標である旨の記載があることを踏まえると,本願商標記載は,文字での表現(擬音語,言葉)及びその他の文章を通じて,複数の構成音(「ピン」及び「あ、小林製薬」),その組合せ(複数の音の先後)及び全体の長さ(約1.5秒)を特定してなるもので,全体として,複数の構成音を組み合わせた音からなるものであると理解できる。また,本願商標記載において,音以外の要素の表現や,音商標と理解することを妨げる特段の矛盾や支障のある記載はない
したがって,本願商標は,商標法第3条第1項柱書の要件を具備する。

(2)商標法第5条第5項の該当性

ア 商標法第5条第5項は,音商標に係る登録出願に際しては,同条第4項の規定に基づき願書に添付が必要な音声ファイルは,願書に記載した商標登録を受けようとする商標を特定するものでなければならない旨を規定しているところ,この音声ファイルの提出目的は,願書に記載した商標登録を受けようとする商標を明確にするため,また,登録商標となった際の権利範囲の特定を安定的に実施するため(参照:「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説 第20版」特許庁編,発明推進協会発行)のものであるから,音声ファイルに求められる役割は,願書に記載した商標登録を受けようとする商標を,そこで文字若しくは五線譜又はこれらの組合せによって記載された範囲内,かつ,その記載内容に添う内容において,聴覚により伝わる具体的な音を特定することにあるといえる。

イ 本願商標記載は,上記(1)のとおり,全体として,複数の構成音を組み合わせた音を表してなるところ,その構成音は,「ピン」の音及び「あ、小林製薬」の人の声であり,その構成音の順序は「ピン」の音が聞こえた後に「あ、小林製薬」の声が聞こえるようになっているもので,全体の長さが「約1.5秒」となるものである。
他方,本願音声ファイルは,複数の構成音を組み合わせた音であり,その構成音は,「ピン」の擬音語で表現可能な音と,「ア、コバヤシセイヤク」と発声する女性と思しき人の声であり,その構成音の順序は「ピン」の音及び「ア、コバヤシセイヤク」の音がほぼ同時に開始し,重ねて聞こえるようになっているもので,全体の長さは約1秒半程度である。
以上を踏まえて本願音声ファイルが,本願商標記載を特定するものといえるかという観点から,本願音声ファイルと本願商標記載とを比較すると,両者はその構成音(「ピン」及び「ア、コバヤシセイヤク(あ、小林製薬)」)が概ね共通し,本願音声ファイルは,擬音語及び言葉で表された本願商標記載の具体的内容(「ピン」の音,人の声)をその範囲内において特定するものである。そして,両者の構成音の順序(「ピン」の音が「ア、コバヤシセイヤク(あ、小林製薬)」の音より先か,ほぼ同時か)については,本願商標記載は,構成音の重なりの有無を明確に言及していないこと,併せて,請求人が提出した証拠(甲5)によっても,本願音声ファイルにおいて,2つの構成音の先後が逆になることは確認できないことを鑑みれば,本願音声ファイルは,本願商標記載に照らして,その内容に明らかな誤りや矛盾があるものではない。また,音全体の長さについて,本願音声ファイルは,本願商標記載と概ね整合しているといえる。
そうすると,本願音声ファイルは,本願商標記載の範囲内にとどまり,かつ,その記載内容に沿う内容において,本願商標記載の音を具体的に特定しているものというべきである。

ウ したがって,本願音声ファイルは,商標法第5条第5項の要件を具備する。

(3)まとめ

以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項柱書及び同法第5条第5項の要件を具備するというべきである。
その他,本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

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願書に「色彩のみからなる商標」と記載され、商標登録を受けようとする商標の欄には、点線のカード形状の中に、緑色で塗られた角を丸くした台形の形状が表されている本願商標は、一定の形状を備えた図形と色彩が結合したものといえ、商標の詳細な説明の記載を考慮しても、図形の要素を持つ商標といえるから、商標法第3条第1項柱書に規定する「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」が記載されていないとされた事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2018-3929
【審決日】令和2年4月9日(2020.4.9)
【事案】
本願商標は、別掲(1)の商標登録を受けようとする商標及び願書記載のとおりの商標の詳細な説明からなり、第36類「ICカード利用者に代わってする支払代金の清算,前払い式証票の発行」及び第39類「鉄道による輸送」を指定役務として、平成27年4月14日に登録出願されたものである。
そして、願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明については、原審における平成28年8月9日受付の手続補正書及び当審における同30年6月13日受付の手続補正書により、最終的に別掲(2)のとおり補正されたものである。

本願商標

別掲(2)商標の詳細な説明
商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、色彩のみからなるものであり、ICカード券面形状の約3ミリメートル内側の部分における左側約50%を緑色(DIC91)とする構成からなり、ICカードの形状が変化した場合は、その変化に即して変化する。なお、ICカードの破線は、役務の提供の用に供する物の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。

【拒絶理由】
原査定は、「本願商標の緑色の色彩は、ICカードの形状(輪郭)の数ミリメートル内側に付されており、ICカードの形状(輪郭)に全く接していない上に、緑色の色彩が付された部分の形状(輪郭)は、4つの頂点が丸みを帯びた特徴的な台形図形を認識させるものであるから、色彩を付する位置を特定するのに必要最低限の方法で表示されているものということはできない。また、ICカードの形状は規格化されており、その形状が変化することはないこと、仮にICカードの形状が将来的に変化したとしても、その形状の変化に即して、そこに付した色彩部分も変化することが、願書の商標記載欄の記載及び商標の詳細な説明からは把握することができないことも考慮すると、本願商標を、色彩のみからなる商標と認めることはできない。さらに、商標の詳細な説明の記載は、図形を認識させる記載を含んでおり、ICカードは、この商標登録出願に係る指定役務との関係からすると『役務の提供の用に供する物』に該当するので、当該記載は、商標登録を受けようとする商標を特定するものと認めることができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、また、本願は同法第5条第5項の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

審決における判断

(1)「色彩のみからなる商標」について

商標法第5条第2項第3号にいう「色彩のみからなる商標」は、人の知覚によって認識することができるもののうち、色彩からなるものであり、平成26年の特許法等の一部改正(平成26年法律第36号)により、商標法の保護対象に追加されたものである。
上記法改正の立法の経緯をみると、基本的論点が検討された産業構造審議会知的財産分科会の報告書において、「現行制度の保護対象」について、「現行商標法第2条第1項に掲げられた各標章は、いずれも一定の形状を備え、かつ、視覚で認識できるものであるから、形状を備えていない『輪郭のない色彩』や、視覚を認識できない『音』、『におい』等は、現行商標法における『標章』には該当せず、同法の保護を受けることができない。」とした上で、国際的な趨勢や我が国における保護のニーズの高まりを受け、「現行制度において商標登録されない商標の類型」である「『輪郭のない色彩』の商標」を新たに保護対象とすべきとされ、同報告書においては、「『輪郭のない色彩』の商標は、図形等と色彩が結合したものではなく、色彩のみからなる商標である。『輪郭のない色彩』の商標は、複数の色彩を組み合わせたものと、単一の色彩によるものがある。」と記載されている(「新しいタイプの商標の保護等のための商標制度の在り方について」平成25年9月産業構造審議会知的財産分科会)。
そして、上記報告書の趣旨を踏まえ、従来、商標法の保護対象に含まれていなかった色彩のみの商標を新たに商標法の保護対象として追加する法改正が行われた(「工業所有権法(産業財産権法)逐条改正解説(第20版)」特許庁編、「平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書 第4章 商標法の保護対象の拡充等」特許庁ホームページ(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/h26/document/tokkyo_kaisei26_36/04syou.pdf)。
以上の立法の経緯からすれば、「色彩のみからなる商標」とは、上記法改正前から商標法の保護対象に含まれていた一定の形状を備えた図形等と色彩が結合したものではない
このような「色彩のみからなる商標」について商標登録を受けようとする際には、願書に、「色彩のみからなる商標」である旨(商標法第5条第2項第3号)及び商標の詳細な説明を記載しなければならず(同条第4項)、位置を特定した色彩のみからなる商標である場合は、商標登録を受けようとする商標を記載する欄(以下「商標記載欄」という。)に「商標登録を受けようとする色彩を当該色彩のみで描き、その他の部分を破線で描く等により当該色彩及びそれを付する位置が特定されるように表示した一又は異なる二以上の図又は写真」を記載しなければならない(商標法施行規則第4条の4第2号)。

(2)本願商標の願書の記載について

本件商標登録出願についての願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明として、「商標登録を受けようとする商標(以下「商標」という。)は、色彩のみからなるものであり、ICカード券面形状の約3ミリメートル内側の部分における左側約50%を緑色(DIC91)とする構成からなり、ICカードの形状が変化した場合は、その変化に即して変化する。なお、ICカードの破線は、役務の提供の用に供する物の形状の一例を示したものであり、商標を構成する要素ではない。」と記載されている。
しかしながら、本願の商標記載欄に記載されている商標登録を受けようとする商標とされる部分(以下「色彩部分」という。)は、緑色で塗られた角を丸くした台形の形状として表されており、これよりは一定の形状を備えた図形と認識され得る態様といえるものである。
そうすると、色彩部分は、角を丸くした台形の形状の図形と緑色の色彩が結合した結合商標と認識されるものであり、一定の形状を備えた図形と色彩が結合したものというべきである。
また、本願の商標の詳細な説明の記載を考慮しても、台形の形状からなる色彩部分の右辺の傾斜部分は、ICカード券面形状の変化に即した変化が想定できないものであって、カードの形状(輪郭)が変化した場合は、その変化に即して色彩部分も変化すると解することはできず、結局、色彩部分は、図形としての要素を有するものといわざるを得ないものであるから、本願商標は、「色彩のみからなる商標」ということはできない
してみれば、本願は「色彩のみからなる商標」についての商標登録出願であるにもかかわらず、願書の商標記載欄には「色彩のみからなる商標」が記載されていないものであり、商標法第3条第1項柱書に規定する「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」が記載されていないといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。

(3)請求人の主張について

(中略)

(4)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものであるから、その他の拒絶の理由について検討するまでもなく、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。

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「直江兼続公の前立」の文字と「愛」の文字を配した兜の図形よりなる本願商標は、上杉謙信公とも縁のある上杉神社が所蔵する直江兼続公の甲冑と類似するものであり、上杉神社の承諾を得ず他人が登録し独占的に使用することは公正な競業秩序を乱すため、商標法第4条第1項第7号に該当し、さらに出願人は「2700余に及ぶ会員事業所の当該商品・役務に使用させ、地域振興・産業振興に資するねらいのものである。 」旨主張するのみで、商標を使用することについての証明書類等の提出はされず第3条第1項柱書の要件を具備しないとされた事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2009-16679
【審決日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【事案】
本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第35類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として、平成20年8月11日に登録出願されたものであるが、その後、指定役務については、原審における同21年4月20日付け及び当審における同年9月9日付け提出の手続補正書により、最終的に、第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,織物・身の回り品及び被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,手動利器・手動工具及び金具(但し、金属製金具・水道蛇口用座金・水道蛇口用ワッシャー・キーホルダー・ゴム製又はバルカンファイバー製の座金及びワッシャー・かばん金具・がま口口金・蹄鉄・カーテン金具・金属代用のプラスチック製締め金具・くぎ・くさび・ナット・ねじくぎ・びょう・ボルト・リベット及びキャスター(金属製のものを除く。)・座金及びワッシャー(金属製・ゴム製又はバルカンファイバー製のものを除く。)・錠(電気式又は金属製のものを除く。)・被服用はとめを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と補正されたものである。

本願商標

【拒絶理由】
(1)原査定は、「本願商標は、その構成中に、『直江兼続』の文字を有してなるところ、当該文字は、初代米沢藩主上杉景勝に仕えた戦国時代から江戸時代前期にかけての武将の氏名として知られるものである。そして、上記人物は、2009年放映予定のNHK大河ドラマ『天地人』の主人公となっていることも相俟って、上記人物とゆかりの深い新潟県や山形県の一部地域では、当該ドラマの放映に先駆けて観光客の誘致、シンポジウム等様々なイベントが行われ、また、上記人物に因んだ記念品や土産品を販売し、上記人物の氏名をシンボル的に使用していることが、新聞記事からも窺い知ることができる。そうとすると、当該『直江兼継』の氏名を容易に看取できる文字部分を含む本願商標を、同人と何ら関係のあるとも認め難い一出願人が、自己の商標として採択使用することは、商取引の秩序、社会の一般的道徳に照らし、穏当ではない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

(2)本願商標において指定している小売等役務(商標法第2条第2項に規定する役務)は、全く業種が異なり、類似の関係にもないものであるため、このような状況の下では、出願人が本願商標をこれらの指定した小売等役務のいずれにも使用しているか又は近い将来使用をすることについて疑義があるといわざるを得ない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しているということができない。

審判における審尋

当審において、平成22年3月19日付けで、以下のとおりの審尋を発し、期間を指定して、請求人に意見を述べる機会を与えた。

(1)商標法第3条第1項柱書について

請求人(出願人)は、前記1のとおり本願の指定役務を補正し、「20余の会員事業所に使用許諾している」旨主張するのみで、請求人(出願人)又は会員事業所がその業務を行っているか、請求人が近い将来使用をすることについて疑義があるといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しているということができないものである。

(2)商標法第4条第1項第7号について

本願商標は、別掲(1)のとおり、「直江兼続公の前立」の文字と、前立に図案化された「愛」の文字を配した兜の図形よりなるところ、該図形部分は、図案化された「愛」の文字を前立とした直江兼続公の兜を象徴する図形として認識されるから、該文字部分と該図形部分から、「ナオエカネツグ(コウ)ノマエダテ」の称呼及び「直江兼続(公)の前立」の観念を生ずるものと認められる。
ところで、2009年放送のNHK大河ドラマ「天地人」は、戦国武将上杉景勝公の家臣、直江兼続公(1560-1619年)が主人公であって、直江兼続公が所用したといわれる甲冑は、別掲(2)のとおり、具足と呼ばれる甲冑であるが、兜に図案化された「愛」の文字の前立を有するものである。

本願商標と別掲(2)

そして、直江兼続公の甲冑は、「直江兼続(公)の前立」(ナオエカネツグ(コウ)ノマエダテ)とも呼ばれ、現在、上杉謙信公とも縁のある上杉神社が所蔵するものであることが認められる。
そこで、本願商標と直江兼続公の兜部分を比較すると、両者は、図案化された「愛」の文字部分をはじめ兜部分において顕著な特徴部分を共通にし、酷似しているものであるから、これより生ずる「ナオエカネツグ(コウ)ノマエダテ」の称呼及び「直江兼続(公)の前立」の観念を同じくする類似のものと認められる。
そうとすれば、このような商標を他人と認められる請求人(出願人)に対し、その指定役務について商標登録を認め、独占的に使用させることは商標法制定の趣旨に反し適切でなく、公正な競業秩序を乱すものであり、穏当でないものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
なお、本件商標をその指定役務について商標登録を受けることについて上記の上杉神社の承諾を得ていることを証明したときは、この限りではない
 

4 審尋に対する意見

請求人は、前記3の審尋に対し、所定の期間を経過するも何ら意見を述べるところがない。

審決における判断

(1)商標法第3条第1項柱書について

請求人(出願人)は、平成21年9月9日付けの審判請求書において、「出願人は、歴史上の人物『直江兼続』ゆかりの地『山形県米沢市』の総合経済団体という公益性の高い法人であって、一営利法人とは全く異なり、本商標の使用を独占しようとするものではなく、2700余に及ぶ会員事業所の当該商品・役務に使用させ、地域振興・産業振興に資するねらいのものである。 」旨主張するのみで、指定役務の全てについて使用しているか又は近い将来使用をすることについての証明書類等の提出はされていない
そうすると、本願は、第35類において広範な範囲にわたる役務を指定しているものであるから、このような状況の下では、いまだ、出願人が出願に係る商標をそれらの指定役務の全てについて使用しているか又は近い将来使用をすることについて疑義があるといわざるを得ない。
したがって、本願は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しているということができない。

(2)商標法第4条第1項第7号について

本願商標は、別掲(1)に示した構成よりなるところ、前記3の審尋に対し、何ら意見等を述べるところがないばかりなく、前記3の審尋において述べたとおり、上記上杉神社の承諾を得ることなく本願商標を他人と認められる請求人(出願人)に対し、その指定役務について商標登録を認め、独占的に使用させることは商標法制定の趣旨に反し適切でなく、公正な競業秩序を乱すものであり、穏当でないものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものというべきであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。

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小売等役務を指定した商標「離婚カウンセラー」について、「離婚カウンセラー養成講座」等の副教材としてテキスト等とセットで提供しているものであり、商品単体で販売されているものとは認められず、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、さらに小売等役務に係る取扱商品が「離婚問題の相談に応じ、適切な指導・助言をする人」を題材とするものであり、「商品の品質」を認識、理解させるに止まり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないことから、第3条第1項第6号に該当するとされた事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2009-24370
【審決日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【事案】
本願商標は、「離婚カウンセラー」の文字を標準文字で書してなり、第35類「録画済み又は録音済みのDVD・ビデオテープ・ビデオディスク・CD・CD-ROMの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,録画済み又は録音済みDVD・ビデオディスク・CD・CD-ROM付の書籍の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,学習教材用録音・録画済み記憶媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,教材(器具に当たるものを除く。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、平成19年6月27日に登録出願されたものである。

【拒絶理由】
原査定は、以下の(1)及び(2)のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。

(1)商標法第3条柱書について
商標登録を受けることができる商標は、現在使用をしているもの、または、近い将来使用をするものと解されるところ、本願の指定役務のうち「録画済み又は録音済みのDVD・ビデオテープ・ビデオディスク・CD・CD-ROMの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,学習教材用録音・録画済み記憶媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」については、出願人が商品としての「録画済みDVD又は録画済みビデオテープ」の小売又は卸売をしているということができないから、出願人は前記小売等役務に係る業務を行っていると認めることができない。したがって、本願商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備していない。
 
(2)商標法第3条第1項第6号について
本願商標は、標準文字にて「離婚カウンセラー」と表してなるところ、その構成中の「離婚」の部分が「夫婦が婚姻を解消すること」の意味を有する語であり、「カウンセラー」の部分が「社会生活において個人が当面する悩みなどについて相談に応じ、適切な指導・助言をする人」の意味を有し、「○○カウンセラー」のように一般的に称されているところから、全体として「離婚問題について相談に応じて、適切な指導・助言をする人」の意味合いを表したものと容易に理解されるものである。これに加えて、インターネットや新聞記事情報によると「離婚カウンセラー」と称する民間資格取得のための講座が開かれ、その資格取得者がその分野で活躍しているとみられるところからすると、本願商標をその指定役務について使用しても、指定役務の取扱商品である「録画済み又は録音済みのDVD・ビデオテープ・ビデオディスク・CD・CD-ROM」、「書籍・印刷物」等の内容が「離婚カウンセラーを題材としたものから、その資格取得に必要なものなど、離婚カウンセラーに関する種々の商品を取り揃えている」旨表したものと理解されるにとどまるというのが相当であり、自他役務の識別標識としては認識されず、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標と認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

審決における判断

(1)商標法第3条柱書該当性について

請求人は、平成22年1月21日受付の手続補正書において、「平成20年11月11日付提出の物件提出書で提出した参考資料1や、平成22年1月21日付提出の参考資料17によれば、請求人が開講する通信講座の実体は、『録画済みDVD等、学習教材用録音・録画済み記憶媒体』であり、小売等役務に係る取扱商品を取り扱うものであるから、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するものである」旨主張している。
しかしながら、請求人が提出している前記参考資料及びその他の参考資料を検討するに、小売等役務に係る取扱商品は、「離婚カウンセラー養成講座」等の副教材として、テキスト等とセットで提供しているものであって、ビデオ、DVD等、又は、学習教材用録音・録画済み記憶媒体の単体で販売されているものとは認められず、また、近い将来使用をすることについても何ら示されていない。
そうすると、本願商標が「録画済み又は録音済みのDVD・ビデオテープ・ビデオディスク・CD・CD-ROMの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,学習教材用録音・録画済み記憶媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」の役務に使用しているか又は近い将来使用をすることについて認めることができず、これを証明する追加の書類等の提出もなされていないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しているということができない。

(2)商標法第3条第1項第6号該当性について

本願商標は、前記1のとおり、「離婚カウンセラー」の文字よりなるところ、その構成中「離婚」の文字は、「夫婦が婚姻を解消すること。」を意味する語として、また、「カウンセラー」の文字は、「社会生活において個人が当面する悩みなどについて相談に応じ、適切な指導・助言をする人。」等の意味を有する語として(いずれも「広辞苑第6版」を参照)、共によく知られている語であるから、これらを組み合わせた本願商標全体からは、「離婚問題の相談に応じ、適切な指導・助言をする人」程の意味合いを容易に認識させるというべきである。
そうすると、本願商標をその指定役務について使用したときには、その小売等役務に係る取扱商品が「離婚問題の相談に応じ、適切な指導・助言をする人」を題材とするもの、すなわち、小売等役務に係る取扱商品の品質を認識、理解させるに止まり、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標といわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものである。

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商標登録出願の願書には「色彩のみからなる商標」の記載があるが、さまざまな色彩の125個の縦長長方形からなる横長長方形を4つ結合した構成の本願商標は、全体として特徴的な図形を認識させるものであり、色彩のみからなる商標が記載されていないから、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないとされた事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2020-5753
【審決日】令和3年10月7日(2021.10.7)
【事案】
1 手続の経緯
本願は、平成29年9月27日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年11月12日付け:拒絶理由通知書
平成31年3月25日:意見書、手続補正書の提出
令和元年9月6日付け:通知書
令和元年10月18日:意見書の提出
令和2年1月22日付け:拒絶査定
令和2年4月28日:審判請求書の提出
令和3年4月21日付け:審尋
令和3年6月2日:回答書の提出
令和3年9月22日:手続補正書の提出

2 本願商標
本願商標は、別掲(1)の商標登録を受けようとする商標及び願書記載のとおりの商標の詳細な説明からなり、第16類に属する願書記載のとおりの商品を指定商品として登録出願され、その後、指定商品については、当審における令和3年9月22日受付の手続補正書により、第16類「紙製包装用容器,プラスチック製包装用袋,紙製テーブルクロス,紙類,印刷物」と補正されたものである。
そして、願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明については、原審における平成31年3月25日受付の手続補正書により、別掲(2)のとおり補正されたものである。

本願商標

【拒絶理由】
原査定は、「本件商標登録出願の願書には、色彩のみからなる商標である旨の記載があるが、本願商標は、別掲(1)のとおり、様々な色彩からなる125個の縦長長方形からなる横長長方形を4つ結合した構成よりなるから、全体として特徴的な図形を認識させるものであり、色彩のみからなる商標を表示したものということができない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

審決における判断

(1)「色彩のみからなる商標」について

標法第5条第2項第3号にいう「色彩のみからなる商標」は、人の知覚によって認識することができるもののうち、色彩からなるものであり、平成26年の特許法等の一部改正(平成26年法律第36号)により、商標法の保護対象に追加されたものである。
上記法改正の立法の経緯をみると、基本的論点が検討された産業構造審議会知的財産分科会の報告書において、「現行制度の保護対象」について、「現行商標法第2条第1項に掲げられた各標章は、いずれも一定の形状を備え、かつ、視覚で認識できるものであるから、形状を備えていない『輪郭のない色彩』や、視覚を認識できない『音』、『におい』等は、現行商標法における『標章』には該当せず、同法の保護を受けることができない。」とした上で、国際的な趨勢や我が国における保護のニーズの高まりを受け、「現行制度において商標登録されない商標の類型」である「『輪郭のない色彩』の商標」を新たに保護対象とすべきとされ、同報告書においては、「『輪郭のない色彩』の商標は、図形等と色彩が結合したものではなく、色彩のみからなる商標である。『輪郭のない色彩』の商標は、複数の色彩を組み合わせたものと、単一の色彩によるものがある。」と記載されている(「新しいタイプの商標の保護等のための商標制度の在り方について」平成25年9月産業構造審議会知的財産分科会)。
そして、上記報告書の趣旨を踏まえ、従来、商標法の保護対象に含まれていなかった色彩のみの商標を新たに商標法の保護対象として追加する法改正が行われた(「工業所有権法(産業財産権法)逐条改正解説(第20版)」特許庁編、「平成26年法律改正(平成26年法律第36号)解説書 第4章 商標法の保護対象の拡充等」特許庁ホームページ(https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/kaisetu/h26/document/tokkyo_kaisei26_36/04syou.pdf))。
このような立法の経緯からすれば、「色彩のみからなる商標」とは、上記法改正前から商標法の保護対象に含まれていた「図形と色彩との結合商標」ではなく、図形としての要素を有しないものである。
そして、このような「色彩のみからなる商標」について商標登録を受けようとする際には、願書に、「色彩のみからなる商標」である旨(商標法第5条第2項第3号)及び「商標の詳細な説明」を記載しなければならず(同条第4項)、商標登録を受けようとする商標を記載する欄(商標法施行規則第2条(様式第2))に記載する商標は、文字や図形ではなく、視覚上認識できる色彩そのものを「表示した図又は写真」を記載しなければならない(同施行規則第4条の4第1号)。また、「色彩のみからなる商標」を「図又は写真によって記載するときは、なるべく商標登録を受けようとする色彩が全体にわたり表示された図又は写真によって記載する」こととなっている(同施行規則第2条(様式第2)備考7ヨ)。

(2)本願商標の願書の記載について

本件商標登録出願についての願書には、「色彩のみからなる商標」と記載され、商標の詳細な説明については、原審における上記1の手続補正書により、別掲(2)のとおり補正されている。
しかしながら、本願商標は、多数の色を縦に4分の1の長さで帯状に隙間なく並べたものを、4つ積み重ねた構成からなるところ、人間の視覚をもってしては、一つ一つの色の幅が均一のものとは認識できないものの、高さは揃っており、それぞれの色が異なることから、これら4つの帯状のものは、各段に境界があると看取され、構成全体としてみれば、様々な色彩からなる横長長方形を4段に重ねた特徴的な図形として認識され得る態様といえるものである。
また、本願商標が125色ずつ4段で表したものであるとしても、各段における境界部分は、商品やその包装の形状の変化に即した変化が想定できないものであって、商品やその包装の形状が変化した場合に、その変化に即して当該境界部分が変化すると解することはできず、結局、本願商標は、図形としての要素を有するものといわざるを得ないものであるから、本願商標を「色彩のみからなる商標」ということはできない。
そうすると、本願の願書には、「色彩のみからなる商標」である旨の記載及び「商標の詳細な説明」の記載があるものの、「商標登録を受けようとする商標」の欄には、「色彩のみからなる商標」が記載されていないものであり、「色彩のみからなる商標」として、商標法第3条第1項柱書に規定する「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」が記載されていないものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。

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弁護士・司法書士のみが法律上できる業務を指定した商標「FORECAST」の図形商標が、出願人を名義変更届により司法書士のみにしたことから商標法第3条第1項柱書の拒絶理由は解消したが、引用商標「FORECAST」と類似するとして第4条第1項第11号に該当するとされた事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2021-12337
【審決日】令和4年2月22日(2022.2.22)
【事案】
第1 手続の経緯
 本願は、令和元年12月3日の登録出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
 令和2年12月14日付け:拒絶理由通知書
 令和3年1月19日受付:意見書
 令和3年6月15日付け:拒絶査定
 令和3年8月24日受付:出願人名義変更届
 令和3年9月14日受付:審判請求書
 
第2 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第45類「訴訟事件その他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理,行政手続の助言及び代理,遺言の執行,遺言書の保管,成年後見手続きの代理,官公署に提出する書類・権利義務に関する書類・事実証明に関する書類の作成及びそれらの手続の代理,戸籍・住民票などの公的証明書の取得に関する情報の提供,行政手続の代理又は助言,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介」を指定役務として、登録出願されたものである。

本願商標

【拒絶理由】
原査定は、要旨以下のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。

1 商標法第3条第1項柱書について

本願に係る指定役務は、弁護士ではなく、かつ、弁護士法人とは認められない法人である出願人が、業として行うことが禁止されている役務「訴訟事件その他に関する法律事務」、及び司法書士ではなく、かつ、司法書士法人とは認められない法人である出願人が、業として行うことが禁止されている役務「登記又は供託に関する手続の代理」を含むものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。

2 商標法第4条第1項第11号について

本願商標は、登録第6081210号商標(以下「引用商標」という。)と同一又は類似の商標であって、その商標に係る指定役務と同一又は類似の役務について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
なお、引用商標は、「FORECAST」の文字を標準文字で表してなり、平成30年1月9日に登録出願、第45類「法律・判例・特許・実用新案・意匠・商標その他の知的財産権に関する情報の提供,知的財産権・工業所有権に関する情報の調査・収集・管理・提供,外国における工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務,工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務に関する取次・仲介・助言及び情報の提供,外国における訴訟事件その他に関する法律事務,訴訟事件その他に関する法律事務に関する取次・仲介・助言及び情報の提供,著作権の利用に関する契約の代理又は媒介,知的財産権の利用に関する契約の代理又は媒介」並びに第9類、第35類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年9月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

審決における判断

1 商標法第3条第1項柱書について

当審において、出願人名義変更届が提出された結果、本願の請求人(出願人)は、原審における令和3年1月19日受付の意見書において、司法書士であることを証明した者のみとなった。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないとした原査定の拒絶の理由1は解消した。

2 商標法第4条第1項第11号について

(1)本願商標について
本願商標は、別掲のとおり、ペン先及び見開きの本のような形状の一部が欠けた図形(それぞれ紫色又は橙色が施されている。以下「図形部分」という。)を配し、その右側に、図形部分と比して、2倍以上の幅で「FORECAST」の欧文字を橙色で顕著に横書きしてなる(以下「文字部分」という。)、図形と文字との結合商標である。

イ 本願商標の構成中、図形部分と文字部分は、重なること無く間隔を空けて配置され、文字部分の高さは図形部分の高さの半分程度であるところ、文字部分は図形部分の縦半分よりも下の位置に表されていることから、各部分の下端は同一線上にあるものではなく、各部分の幅も異なり、各部分は、等間隔で同一線上の横一列に配置されてはいないものである。
そうすると、本願商標の構成中、図形部分と文字部分は、視覚的に分離して観察され、外観上密接不可分な関係にあるとはいい難いものである。

ウ 本願商標の構成中、図形部分は、ペン先及び見開きの本のような形状の一部が欠けた図形からなるものの、デザイン化の度合いが高いものであって、それらの態様からは、直ちに特定の事物や文字を表すものとして把握されるといった事情は見いだせず、特定の称呼や観念が想起されるとは認め難いものである。
他方、本願商標の文字部分を構成する「FORECAST」の文字は、「予報。予想。」(ベーシックジーニアス英和辞典 株式会社大修館書店)の意味を有する英単語を大文字表記したものであって、当該文字に相応して、「フォーキャスト」の称呼を生じ、また、「予報。予想。」の観念が生じるものである。
また、当該文字部分は、本願商標の指定役務の質等を表す語であるなど、本願指定役務との関係において自他役務の識別標識としての機能を果たさないとみるべき事情はない。

エ 上記イ及びウを踏まえると、本願商標の構成中、図形部分と文字部分とは、外観上密接不可分な関係にあるとはいい難い上に、直ちに観念的な関連性を見いだすことができないものというのが相当であって、本願商標の構成中、図形部分と文字部分は、これらを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいい難いものである。

オ してみると、本願商標の構成中から文字部分を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して、商標そのものの類否を判断することが許されるというべきである。

カ したがって、本願商標は、その文字部分に相応して、「フォーキャスト」の称呼を生じ、また、「予報。予想。」の観念が生じるものである。

(2)引用商標について
引用商標は、「FORECAST」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して、「フォーキャスト」の称呼を生じ、また、「予報。予想。」の観念が生じるものである。

(3)本願商標と引用商標との類否について
外観については、本願商標と引用商標とは、全体としては相違するものの、「FORECAST」の構成文字を共通にすることに加え、いずれも特徴のない一般的な書体で横書きに表されているから、両者は外観上、一定程度似かよった印象を与えるものといえる。
次に、称呼については、両者は「フォーキャスト」の称呼を共通にするものである。
さらに、観念については、両者は「予報。予想。」の観念を共通にするものである。
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観において一定程度似かよった印象を与えるものであり、称呼及び観念を共通にすることからすれば、これらの外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すれば、両者は互いに相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。

(4)本願商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否
本願商標の指定役務は、引用商標の指定役務中、第45類の指定役務と同一又は類似の役務である。

(5)まとめ
以上によれば、本願商標と引用商標とは、互いに類似する商標であり、かつ、本願商標の指定役務は引用商標の指定役務と同一又は類似の役務である。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(6)請求人の主張について
(中略)

3 むすび

以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。

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「EMS」及び「国際スピード郵便」の文字からなる商標について、出願人の設立根拠法である日本郵政公社法では指定商品「ラベル,封筒」の販売等に係る業務を行うことを明らかに禁止されているとはいえず、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備するとともに、郵便用に使用可能な封筒の規格等は限定されていないから商品の品質について誤認を生じさせるおそれはなく、第4条第1項第16号に該当しないとされた事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2004-20013
【審決日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【事案】
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第16類「ラベル,封筒」を指定商品として、平成15年11月12日登録出願されたものである。

本願商標

【拒絶理由】
原査定は、以下の(1)及び(2)のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。
(1)出願人は、日本郵政公社法第19条で業務の範囲が規定されているため、指定商品に係る業務を行っているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。
(2)本願商標は、その構成中に「郵便」の文字を有してなるから、これをその指定商品に使用するときには、あたかも郵便に係るものであるかのごとく、その品質について誤認を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

審決における判断

原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。

出願人(日本郵政公社)の設立根拠法である日本郵政公社法において、出願人が本願指定商品である「ラベル,封筒」の販売等に係る業務を行うことを、明らかに禁止されているものとはいえなく、他に出願人の指定商品に係る業務を行うことができないとする理由はない
してみれば、本願商標は、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備しないものということはできない。
次に、本願商標は、別掲のとおりの構成よりなるところ、本願指定商品である封筒等が郵便に使用されることがあるにしても、郵便用に使用可能な商品の規格等が限定されているものでないことから、その構成中の「郵便」の文字が直ちに特定の品質を需要者・取引者に想起させるものとはいい難く、これを本願指定商品に使用しても、商品の品質について、誤認を生じさせるおそれがないものと認める。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項柱書きの要件を具備しないとし、商標法第4条第1項第16号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当ではなく、取消を免れない。
その他、政令で定める期間内に、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

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税理士でなく、かつ、その資格を得ることができない法人である出願人が、業として行うことが禁止されている役務「税務相談,税務代理」を指定役務に含むときは、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないとして、これを削除した場合に登録された事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2003-9785
【審決日】
【事案】
本願商標は、「JPMORGAN」の欧文字を横書きしてなり、第16類及び第36類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定して、平成13年11月28日に登録出願、その後、指定商品及び指定役務については、本件審判請求と同時にした同15年5月30日付手続補正書により、第16類「出版物」及び第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入あっせん,有価証券の売買,有価証券指数等先物取引,有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,企業の信用に関する調査」と補正されたものである。

【拒絶理由】
原査定は、「本願に係る指定役務中には、税理士でなく、かつ、その資格を得ることができない法人である出願人が、業として行うことが禁止されている役務『税務相談,税務代理』を含むものである。したがって、本願は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

「JPMORGAN」の文字商標

審決における判断

本願商標は、その指定役務について上記1のとおり補正された結果、商標法第3条第1項柱書きの要件を具備したものと認められる。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項柱書きの要件を具備しないとの原査定の拒絶の理由は解消した。
その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

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銀行業を業務とする者は、法律に定められた以外の他の業務を営むことができないので、「自己の業務に係る商品について使用」をするとは認められないとされた事例

【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服昭和57-25974
【審決日】1989年12月21日
【事案】
「旅客用小切手」は、一般市場において流通に供することを目的とした有体物とは認められず、かつ、有価証券の一種と認められるので、商標法にいう商品ということができない
免許を受けて銀行業を営む者は、銀行法に掲げる業務を本業とし、同法及び「普通銀行ノ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律」1条に掲げる業務のほか、他の業務を営むことができないので、出願人が自己の業務に係る商品について使用をするものとは認められず、また、商標法上の商品でないものを指定して出願するものであるから、商標法3条1項柱書の規定により登録を受けることができない。

図形商標


【拒絶理由】
本願商標は、下記に表示したとおりの構成よりなり、第26類「旅客用小切手、その他旅客用小切手に関する印刷物」を指定商品とするものである。
銀行法(昭和56年法律59号)によれば、銀行業は、大蔵大臣の免許を受けた者でなければ営むことができず(同法4条1項)、また、当該免許を受けて銀行業を営む者は、同法2条に掲げる業務を本業とし、同法10条、11条、12条及び「普通銀行ノ信託業務ノ兼営等ニ関スル法律(昭和18年法律43号)」1条に掲げる業務のほか、他の業務を営むことができないので(同法12条、47条)、出願人が商標法にいう商品についての業務を営むことができないことは明らかであり、かつ、商標法の商品についての業務を営むことについて大蔵大臣の免許を受けていることを認めるに足る証拠もない。したがって、出願人は、本願商標を商標法3条柱書にいう「自己の業務に係る商品について使用」をするものとは認められない。

審決における判断

してみれば、出願人は、本願商標を商標法第3条第1項各号列記以外の部分(いわゆる「柱書き」)にいう「自己の業務に係る商品について使用」をするものとは認められない。したがって、同趣旨の認定をもって前記条項を適用し、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すべき限りでない。
また、願書には、本願商標の指定商品として「旅客用小切手、その他旅客用小切手に関する印刷物」が記載されている。その記載中「旅客用小切手」とは、「トラベラーズチェック」を指称しているものと解されるところ、それには署名欄が二カ所あり、その購入者が一カ所には購入時に署名し、他の一カ所には買物や現金化するときに受取人の面前で署名することを要し、両方の署名が一致しない限りそれは通用しないものであって、その使用者はその購入者である署名者に限られ、それ以外の者はそれを一般の商品として売買又は使用することのできないものである。してみると「旅客用小切手」は、一般市場において流通に供することを目的とした有体物とは認められず、かつ、有価証券の一種と認められるので、商標法にいう商品ということができない。また、当該指定商品中の「旅客用小切手に関する印刷物」には、旅客用小切手に関する説明、案内若しくは約款の類だけでなく、そのPR用のパンフレットやカタログが含まれるとしても、それらは、いずれも「旅客用小切手」に付随して発行される印刷物であるので、旅客用小切手が商標法にいう商品に該当しない以上、商標法にいう商品ということができない。
したがって、本願商標は、出願人が自己の業務に係る商品について使用をするものとは認められず、また、商標法上の商品でないものを指定して出願するものであるから、商標法3条1項柱書の規定により登録を受けることができない。

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