「千疋屋」の標準文字で書し、第3類「せっけん類,化粧品,歯磨き」を指定商品とし他本願商標は、「千疋屋總本店」が果実について長年にわたり使用し、取引者、需要者の間において広く認識されている商標「千疋屋」と出所の混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当するとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2007-21707
【審決日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【事案】
本願商標は、「千疋屋」の文字を標準文字で書してなり、第3類「せっけん類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、平成18年10月26日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、株式会社千疋屋總本店が商品『果実』に使用して著名な『千疋屋』の文字を書してなるところ、これをその指定商品に使用するときは、これが恰も前記会社の販売に係わる商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
1 本願商標は、上記第1で述べたとおり、「千疋屋」の文字を標準文字で書してなるものである。
2 本願商標の周知・著名について
(1)本願商標に関しては、請求人提出の証拠番号「1-001」ないし「1-163」、「2-001」ないし「2-143」、及び「3-001」ないし「3-250」の各証拠、並びに、当審において職権による証拠調べによって発見した別掲1に記載の新聞記事情報やインターネットのウェブページの記載によれば、次の事実が認められる。
ア 東京都中央区日本橋室町2-1-2日本橋三井タワー内に所在する「株式会社千疋屋總本店」(以下、便宜上「千疋屋總本店」という。)は、国内初の果物専門店として、1834(天保5)年に創業し、創業者の頃から「千疋屋」の屋号が用いられ、各新聞記事においても「老舗の果物店」として紹介されるとともに、明治時代には、下記記載の株式会社銀座千疋屋及び請求人会社である株式会社京橋千疋屋を暖簾分けにより独立させるなど、創業以来170年以上を数える日本で最も有名な果物の取扱店の一であることが認められる。
また、別掲1の(3)及び(8)の新聞記事に記載のあるとおり、千疋屋總本店は、現在、本店及び直営店11店舗にて、果実のほか、ジャムなどの加工品や洋菓子、ワインなどの販売も取り扱うとともに、フルーツパーラーによる飲食物の提供を行っていることが認められるとともに、全国各地の百貨店(請求人提出に係る証拠によれば、仙台市に本社を置く「藤崎」、岡山市に本社を置く「天満屋」、福岡市に本社を置く「岩田屋」、鹿児島市に本店を置く「山形屋」、大分市に本社を置く「トキハ」、大阪市に本社を置く「高島屋」、静岡県浜松市に本社を置く「遠鉄百貨店」、大阪市に本社を置く「そごう」、東京都に本社を置く「西武」等。)が取り扱うお中元やお歳暮のカタログに、その取扱商品が掲載されており、これらカタログで取り扱われている果実や菓子等の商品の記載欄には「千疋屋總本店」と記載されているもののほか、単に「千疋屋」と記載されているものも認められる。
イ 東京都中央区銀座5-5-1に所在する「株式会社銀座千疋屋」(以下、便宜上「銀座千疋屋」という。)は、上記「千疋屋總本店」から暖簾分けを受けて、1894(明治27)年に創業し、その後1913(大正2)年には日本初の「フルーツパーラー」を開業するなど、現在も「果実」の販売のほか、菓子等食品の製造販売、飲食物の提供の事業を行っていることが認められる。
また、全国各地の百貨店(請求人提出に係る証拠によれば、神奈川県川崎市に本社を置く「さいか屋」、東京都に本社を置く「小田急百貨店」等。)が取扱うお中元やお歳暮のカタログのほか、各種雑誌に、同社が取扱う果実や菓子、果汁飲料等の商品が掲載されていることが認められる。
(2)一方、請求人は、東京都中央区京橋1-1-9に所在し、「千疋屋總本店」から暖簾分けを受けて1881(明治14)年に創業し、現在も「果実」のほか、食品、洋酒の販売、洋菓子の製造及び販売、並びに、飲食物の提供の事業を行っていることが認められる。
(3)これらの事実からすると、「銀座千疋屋」及び請求人会社は、それぞれの取扱いに係る商品については、「銀座千疋屋」が「銀座千疋屋」の文字を、請求人会社が「京橋千疋屋」の文字を商号商標としてそれぞれ使用していることが認められるものである。
また、「千疋屋總本店」にあっては、該社の取扱いに係る商品について、「千疋屋總本店」の文字を商号商標として使用するほか、「千疋屋」の文字をも使用していることは、上記のとおりである。
(4)以上よりすれば、「千疋屋」の文字からなる商標は、我が国において本願商標の登録出願時には、既に、「千疋屋總本店」が、商品「果実」について、本願商標の登録出願以前から現在に至る長年にわたって使用しているものと認められ、かつ、少なくとも本願商標の登録出願時及び査定時には、該社の取扱いに係る商品であることを表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間において広く認識されているものであり、現時点においても周知、著名性は継続しているものと認められる。
3 出所の混同を生ずるおそれについて
(1)本願商標は、上記1のとおり「千疋屋」の文字を書してなるところ、該「千疋屋」の文字は「千疋屋總本店」が、商品「果実」について長年にわたって使用し、かつ、我が国の取引者、需要者の間において広く認識されているものであるということは、上記のとおりである。
(2)ところで、本願指定商品「せっけん類、化粧品、歯磨き」には、果実の有する香りを特徴とする商品や、果実から抽出した成分を原材料とする商品も製造、販売されていることが、別掲2に記した新聞記事情報の記載からも認められるところであって、かつ、本願指定商品には、一般家庭において普通に使用されるものが含まれている。
一方、「千疋屋總本店」の業務に係る商品「果実」についてみると、これは、一般家庭において、日常消費される食料品として購入・消費されるものが多く含まれている。
そうとすれば、本願指定商品「せっけん類、化粧品、歯磨き」と「千疋屋總本店」の業務に係る商品「果実」とは、生産部門や用途等が異なるとしても、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等において販売されているという販売部門や、これら商品の需要者層の多くが一致するものであって、少なからぬ関係を有する商品であるということができる。
(3)また、請求人会社及び銀座千疋屋については、かつて千疋屋總本店から暖簾分けを受けたという関連性は認められるものの、請求人提出に係る全証拠並びに職権による調査をもってしても、請求人会社及び銀座千疋屋が、千疋屋總本店から暖簾分けを受けて以降、これら会社間で親子会社として緊密な営業上の関係を有していること、あるいは、同一の表示による商品化事業を営む関係を有していること等の組織的、経済的な関係について、確認することができないものであり、かえって、各社が独立して事業を行っているものというべきである。
(4)さらには、千疋屋總本店が、現在、「果実」のほか、ジャムなどの加工食料品や洋菓子、ワインなどの販売も取り扱うとともに、フルーツパーラーにおける飲食物の提供を行うなど、企業の多角経営化を行っていることは、既に上記したとおりである。
(5)してみると、請求人が本願商標をその指定商品「せっけん類、化粧品、歯磨き」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、該商品が、「千疋屋總本店」の取扱いに係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというのが相当である。
4 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとした原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。

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