「千疋屋」の標準文字で書し、第3類「せっけん類,化粧品,歯磨き」を指定商品とし他本願商標は、「千疋屋總本店」が果実について長年にわたり使用し、取引者、需要者の間において広く認識されている商標「千疋屋」と出所の混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当するとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2007-21707
【審決日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【事案】
本願商標は、「千疋屋」の文字を標準文字で書してなり、第3類「せっけん類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、平成18年10月26日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、株式会社千疋屋總本店が商品『果実』に使用して著名な『千疋屋』の文字を書してなるところ、これをその指定商品に使用するときは、これが恰も前記会社の販売に係わる商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
1 本願商標は、上記第1で述べたとおり、「千疋屋」の文字を標準文字で書してなるものである。
2 本願商標の周知・著名について
(1)本願商標に関しては、請求人提出の証拠番号「1-001」ないし「1-163」、「2-001」ないし「2-143」、及び「3-001」ないし「3-250」の各証拠、並びに、当審において職権による証拠調べによって発見した別掲1に記載の新聞記事情報やインターネットのウェブページの記載によれば、次の事実が認められる。
ア 東京都中央区日本橋室町2-1-2日本橋三井タワー内に所在する「株式会社千疋屋總本店」(以下、便宜上「千疋屋總本店」という。)は、国内初の果物専門店として、1834(天保5)年に創業し、創業者の頃から「千疋屋」の屋号が用いられ、各新聞記事においても「老舗の果物店」として紹介されるとともに、明治時代には、下記記載の株式会社銀座千疋屋及び請求人会社である株式会社京橋千疋屋を暖簾分けにより独立させるなど、創業以来170年以上を数える日本で最も有名な果物の取扱店の一であることが認められる。
また、別掲1の(3)及び(8)の新聞記事に記載のあるとおり、千疋屋總本店は、現在、本店及び直営店11店舗にて、果実のほか、ジャムなどの加工品や洋菓子、ワインなどの販売も取り扱うとともに、フルーツパーラーによる飲食物の提供を行っていることが認められるとともに、全国各地の百貨店(請求人提出に係る証拠によれば、仙台市に本社を置く「藤崎」、岡山市に本社を置く「天満屋」、福岡市に本社を置く「岩田屋」、鹿児島市に本店を置く「山形屋」、大分市に本社を置く「トキハ」、大阪市に本社を置く「高島屋」、静岡県浜松市に本社を置く「遠鉄百貨店」、大阪市に本社を置く「そごう」、東京都に本社を置く「西武」等。)が取り扱うお中元やお歳暮のカタログに、その取扱商品が掲載されており、これらカタログで取り扱われている果実や菓子等の商品の記載欄には「千疋屋總本店」と記載されているもののほか、単に「千疋屋」と記載されているものも認められる。
イ 東京都中央区銀座5-5-1に所在する「株式会社銀座千疋屋」(以下、便宜上「銀座千疋屋」という。)は、上記「千疋屋總本店」から暖簾分けを受けて、1894(明治27)年に創業し、その後1913(大正2)年には日本初の「フルーツパーラー」を開業するなど、現在も「果実」の販売のほか、菓子等食品の製造販売、飲食物の提供の事業を行っていることが認められる。
また、全国各地の百貨店(請求人提出に係る証拠によれば、神奈川県川崎市に本社を置く「さいか屋」、東京都に本社を置く「小田急百貨店」等。)が取扱うお中元やお歳暮のカタログのほか、各種雑誌に、同社が取扱う果実や菓子、果汁飲料等の商品が掲載されていることが認められる。
(2)一方、請求人は、東京都中央区京橋1-1-9に所在し、「千疋屋總本店」から暖簾分けを受けて1881(明治14)年に創業し、現在も「果実」のほか、食品、洋酒の販売、洋菓子の製造及び販売、並びに、飲食物の提供の事業を行っていることが認められる。
(3)これらの事実からすると、「銀座千疋屋」及び請求人会社は、それぞれの取扱いに係る商品については、「銀座千疋屋」が「銀座千疋屋」の文字を、請求人会社が「京橋千疋屋」の文字を商号商標としてそれぞれ使用していることが認められるものである。
また、「千疋屋總本店」にあっては、該社の取扱いに係る商品について、「千疋屋總本店」の文字を商号商標として使用するほか、「千疋屋」の文字をも使用していることは、上記のとおりである。
(4)以上よりすれば、「千疋屋」の文字からなる商標は、我が国において本願商標の登録出願時には、既に、「千疋屋總本店」が、商品「果実」について、本願商標の登録出願以前から現在に至る長年にわたって使用しているものと認められ、かつ、少なくとも本願商標の登録出願時及び査定時には、該社の取扱いに係る商品であることを表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間において広く認識されているものであり、現時点においても周知、著名性は継続しているものと認められる。
3 出所の混同を生ずるおそれについて
(1)本願商標は、上記1のとおり「千疋屋」の文字を書してなるところ、該「千疋屋」の文字は「千疋屋總本店」が、商品「果実」について長年にわたって使用し、かつ、我が国の取引者、需要者の間において広く認識されているものであるということは、上記のとおりである。
(2)ところで、本願指定商品「せっけん類、化粧品、歯磨き」には、果実の有する香りを特徴とする商品や、果実から抽出した成分を原材料とする商品も製造、販売されていることが、別掲2に記した新聞記事情報の記載からも認められるところであって、かつ、本願指定商品には、一般家庭において普通に使用されるものが含まれている。
一方、「千疋屋總本店」の業務に係る商品「果実」についてみると、これは、一般家庭において、日常消費される食料品として購入・消費されるものが多く含まれている。
そうとすれば、本願指定商品「せっけん類、化粧品、歯磨き」と「千疋屋總本店」の業務に係る商品「果実」とは、生産部門や用途等が異なるとしても、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等において販売されているという販売部門や、これら商品の需要者層の多くが一致するものであって、少なからぬ関係を有する商品であるということができる。
(3)また、請求人会社及び銀座千疋屋については、かつて千疋屋總本店から暖簾分けを受けたという関連性は認められるものの、請求人提出に係る全証拠並びに職権による調査をもってしても、請求人会社及び銀座千疋屋が、千疋屋總本店から暖簾分けを受けて以降、これら会社間で親子会社として緊密な営業上の関係を有していること、あるいは、同一の表示による商品化事業を営む関係を有していること等の組織的、経済的な関係について、確認することができないものであり、かえって、各社が独立して事業を行っているものというべきである。
(4)さらには、千疋屋總本店が、現在、「果実」のほか、ジャムなどの加工食料品や洋菓子、ワインなどの販売も取り扱うとともに、フルーツパーラーにおける飲食物の提供を行うなど、企業の多角経営化を行っていることは、既に上記したとおりである。
(5)してみると、請求人が本願商標をその指定商品「せっけん類、化粧品、歯磨き」に使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、該商品が、「千疋屋總本店」の取扱いに係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというのが相当である。
4 したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとした原査定は妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
「POLO」「ポロ」の文字を上下2段に横書きし、「美容院用いす、理髪店用いす」を指定商品とする本願商標は、ファッション関連商品においてはラルフ・ローレンのデザインに係る「ポロ」ブランドの商品が著名であるとしても、美容院用いす、理髪店用いす)の分野においてまで周知・著名となっていたものとはいえないから、商品の出所混同が生ずるおそれがあるとはいえず、商標法第4条第1項第15号には該当しないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2006-21527
【審決日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【事案】
本願商標は、「POLO」の欧文字と「ポロ」の片仮名文字を上下2段に表してなり、第20類「美容院用いす,理髪店用いす」を指定商品として、平成17年4月28日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、『POLO』及び『ポロ』の文字を上下二段に横書きしてなるが、米国のデザイナーラルフ・ローレン(Ralph Lauren)のデザインに係る被服、装身具、香水、眼鏡等の商品について長年使用され、周知著名となっている『Polo by Ralph Lauren』の文字からなる商標及びこれと組み合わせて使用されることの多いポロプレーヤーを表した図形商標は、ポロ(Polo)の略称でも呼ばれることからすると、本願指定商品である『美容院用いす,理髪店用いす』に本願商標を使用した場合においても、需要者はこれからラルフ・ローレンに係る前記周知著名となっている商標を想起して、同人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。
(1)本願商標と引用標章の類似性の程度について
(ア)本願商標は、「POLO」の欧文字と「ポロ」の片仮名文字を上下2段に横書きしてなるものである。
他方、原査定において引用した「Polo by Ralph Lauren」の文字商標及びポロプレーヤーを表した図形商標は、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク所在のザ・ポロ/ローレンカンパ二-リミテッドパートナーシップが使用して、同国のファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係る商品を、関連会社やライセンシー及び販売店を通して世界的な規模で販売しており、我が国においては、昭和51年に、西武百貨店が請求人とライセンス契約を結び、ラルフ・ローレンのデザインに係る男性用衣料品の取扱いを開始したのを皮切りに、婦人用衣料、ファッション関連商品等についてもラルフ・ローレンのデザインに係る商品が請求人のライセンシー、販売店等を通じ、全国の有名デパートや専門店等において販売されるようになり、今日に至っている。
ラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品には、文字商標として、横長四角形中に「Polo」の欧文字を表し、その下部に「by Ralph Lauren」の文字を表した標章、「POLO」の文宇と「RALPH LAUREN」の文字との間にポロプレーヤーの図形を組み合わせた標章、ポロプレーヤーのみの図形標章(以下、まとめて「引用標章」という。)などが使用されてきた。これらの引用標章を付した商品は、ラルフ・ローレンの「ポロ」(POLO、Polo)、あるいは単に「ポロ」(POLO、Polo)と略称され、「ポロ/ラルフ・ローレン」のブランド名で、需要者の間で高い人気を博しており、上記各標章は、そのブランド名と共に、遅くとも本願商標の登録出願時(平成17年4月28日)より前に、ファッション関連商品の分野において、取引者、需要者の間で周知・著名となっており、その周知・著名性は、拒絶査定時(平成18年9月1日)を経て今日まで継続している(なお、ファッション関連商品の分野における「ポロ」、「POLO」ブランドの周知・著名性に関して、これを認めた多数の審決例及び判決例がある。)。
(イ)本願商標と引用標章とを外観について対比すると、本願商標は、文字のみの商標であり、引用標章は、前記のとおり「Polo by Ralph Lauren」の文字やポロプレーヤーの図形を組み合わせたものであるから全体として異なったものとして、見る者に異なる印象、記憶を生じさせるものというべきである。
次に、称呼及び観念についてみると、本願商標は、「スポーツとしてのポロ競技に関連したもの」程度の漠然とした観念が生じ、「ポロ」の称呼を生ずるのに対し、引用標章をその周知・著名性を考慮の外に置いて見たときには、「Polo」の文字及びポロプレーヤーの図形から、「スポーツとしてのポロ競技」程度の観念を生じさせるものにすぎないから、本願商標と引用標章との対比においては、称呼及び観念は両者の類似性を評価する要素としては、強く印象づけるものではないというべきである。
そうすると、本願商標は、時と処を異にして観察した場合でも引用標章とは類似性が高い商標とはいえないものと判断するのが相当である。
(2)引用標章の周知・著名性の範囲について
今日、ファッション関係のデザイナーが、ライフスタイルを提案し、あるいは生活全般を卜一タルにコーディネートするという見地から、ファッション関連以外の商品にデザインの領域を広げ、家具、インテリア用品、寝具、テーブルウエア等々、様々な商品をデザインし、販売する例があることは、知られた事実である。
しかしながら、ファッション関連商品の分野において、引用標章が有する高い識別力,顧客吸引力は,標章自体が有する外観や観念の独創性ないし特異性に由来するというものではなく,むしろ,引用商標がラルフ・ローレンのデザインに係る「ポロ」ブランドの商品に使用され,「ポロ」ブランドの著名化とともに,ラルフ・ローレンの「ポロ」を表示するマークとして定着し,広く知られるようになったという事実によってもたらされたものというべきであるから、ファッション関連商品の分野においては、引用標章の周知・著名性が認められるものであるが、ファッション関連商品以外の本願の指定商品「美容院用いす、理髪店用いす」の分野における周知・著名性については、当審における調査によってもなんら、これを認めるに足りるべき的確な証左は発見できない。
仮に、本願指定商品「美容院用いす、理髪店用いす」が家庭用の椅子等のインテリア関連商品といえるような商品であったとしても、我が国におけるラルフ・ローレンのデザインに係るホームファニシング製品においては「RALPH LAUREN」をプランド名として前面に押し出し、「RALPH LAUREN」の表示を使用して販売されている実情が伺えるところである。
加えて、「ポロ」(polo)の語は、ペルシア起源とし、その後英国に広まった騎乗球技を意味するものであり、ポロ競技のプレーヤーが着用するシャツを「ポロシャツ」と称することもあるなど、「ポロ」の語自体は一般に良く知られた語と認められるものである。
上記事情を総合考盧し、我が国におけるラルフ・ローレンのデザインに係るホームファニシング製品の販売状況に照らすと,引用標章が,本願商標の拒絶査定時において,ファッション関連商品以外のインテリア関連商品やホームファニシング商品の分野においてまで周知・著名性を獲得していたということはできず、かつ、引用標章は、本願商標の指定商品(美容院用いす、理髪店用いす)の分野においてまで周知・著名となっていたものとはいえないから、本願商標の指定商品の分野における引用標章の周知・著名性に基づく商品の出所混同のおそれを認めることはできない。
(3)商品の出所混同のおそれについて
本願商標と引用標章とは、全体として類似性が高いものとはいえず、また、引用標章は、本願指定商品を含むインテリア関連商品やホームファニシング商品の分野においてまで周知・著名性を獲得していたということはできないことは、上記認定のとおりである。
してみれば、ファッション関連商品の分野における引用標章の周知・著名性を考盧に入れても、本願商標を指定商品に使用したときに、当該商品が、ラルフ・ローレン又は同人と密接な営業上の関係若しくは同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であるかのように誤信され、商品の出所混同が生ずるおそれがあるということはできない。
(4)結語
したがって、本願商標を商標法第4条第1項第15号に該当するとした原査定は妥当でなく、取消しを免れない。
その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
商標「Lisbeth Dahl」が、デンマークの会社が使用する標章であって雑貨・食器などが世界各国で使用され販売され、日本でも出願前から販売されていたことから、商品・役務の出所について誤認・混同を生じさせるおそれがあるとして第4条第1項第15号により拒絶され、拒絶査定不服審判では同一商標の選択が偶然ではないとして第4条第1項第19号の拒絶理由通知がされたものの、出願人のグループ会社がデンマークの会社と代理店契約を結び、ブランド名の権利も移転する合意があったことから、登録が認められた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2015-11995
【審決日】平成28年6月29日(2016.6.29)
【事案】
本願商標は、「Lisbeth Dahl」の文字を標準文字で表してなり、第3類、第14類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第25類及び第35類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成26年8月6日に登録出願されたものである。そして、指定商品及び指定役務については、原審における平成27年1月16日受付の手続補正書により、第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,香料,薫料」、第14類「貴金属,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,宝石箱,身飾品,時計」、第16類「事務用又は家庭用ののり及び接着剤,紙類,文房具類,印刷物,写真,写真立て」、第18類「愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,乗馬用具」、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス,愛玩動物用ベッド,犬小屋,小鳥用巣箱,家具」、第21類「化粧用具,家事用手袋,台所用品(「ガス湯沸かし器・加熱器・調理台・流し台」を除く。),食器類,清掃用具及び洗濯用具,アイロン台,霧吹き,こて台,へら台」、第24類「織物,布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第35類「広告業,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,求人情報の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,台所用品・清掃用具及び洗濯用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・歯磨き及びせっけん類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計及び眼鏡の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」に補正されたものである。

【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、『Lisbeth Dahl』の文字からなるところ、該文字は、1981年にデンマークに設立された会社が使用する標章であって、当該会社のデザインした雑貨・食器などが世界各国で使用され販売されてきたことが認められる。そして、日本においても、遅くとも本願商標の出願前には、『Lisbeth Dahl』の標章を使用する雑貨・食器などが、当該会社のデザイン・業務に係る製品として多くの通信販売業者らにより認識され輸入され販売されていたものと認められる。そうすると、本願商標は、その指定商品・指定役務に使用した場合には、デンマークの『Lisbeth Dahl』の標章を使用する会社の業務に係る商品・役務かのように商品・役務の出所について誤認・混同を生じさせるおそれのある商標と認められる。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨、認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。
第3 当審における拒絶の理由の要点
当審において、平成28年1月18日付けの拒絶理由通知書で、請求人に対し通知した拒絶の理由の要旨は、以下に示すとおりである。
本願商標は、「Lisbeth Dahl」の欧文字を標準文字で表した商標であるのに対し、「Lisbeth Dahl A/S」社の商標は、「Lisbeth Dahl」又は全て大文字で表した「LISBETH DAHL」の文字(以下「使用商標」という。)を表してなるものである。 してみれば、本願商標は、その出願前からデンマークで取引者、需要者の間に広く認識されている使用商標と酷似するものである。
しかも、本願商標は、特定の観念を生じない造語といえるものであって、使用商標と文字の綴りを同一にし、構成上の顕著な特徴を共通にするものであることからすれば、請求人が本願商標を採択するに際し、使用商標と偶然一致したものであるとは、認められない。
そうすると、本願の指定商品及び指定役務中の「宝石箱、写真立て、傘、食器類」等と、使用商標を使用する会社が販売している商品「食器、写真立て、宝石箱、傘」は、同一又は類似のものであり、取引者、需要者が共通しているといえるものであることなどを総合勘案すると、請求人は、本願商標の登録出願時に、使用商標の存在を熟知していたものというべきであり、<使用商標が、本願の指定商品・指定役務の分野において商標登録されていないことを奇貨として先取りし、剽窃的に本願商標を登録出願し、その登録を受けようとしたものというのが相当であるから、不正の目的をもって使用するものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 当審における拒絶の理由に対する意見
上記第3の拒絶理由通知に対して、請求人は、平成28年2月29日受付の意見書及び同年5月18日付けの上申書により、次のとおり述べている。
拒絶理由通知において指摘されたデンマークの「Lisbeth Dahl A/S」(以下「リスベスダール社」という。)に関しては、2013年1月17日付にて、審判請求人会社のグループ会社である「株式会社ジョージオリバー」との間で、我が国における代理店契約を締結し、当該事実は、取引社へ通知されていた。その後、2013年10月16日付にて、リスベスダール社は破産したが、リスベスダール社のCEO・取締役であった「Nicolai Winding Andersen」氏(以下「ニコライ氏」という。)は、同日付にて、新会社「LISBETH DAHL COPENHAGEN ApS」(以下「新会社」という。)を設立した。当該新会社は2014年6月3日付にて倒産しているが、2014年6月16日付けにて、ニコライ氏と株式会社ジョージオリバーとの間で、覚書を締結した。その覚書の第1項において、両者は、「Lisbeth Dahl JAPAN Company(仮)」を設立することを同意し、これに基づいて設立されたのが審判請求人会社である。さらに、覚書第4項において、「Lisbeth Dahl Copenhagen」のブランド名等に係る全ての権利を、ニコライ氏から審判請求人会社へ移転することが合意されている。
以上の事実から、審判請求人会社は、本願商標を正当に使用及び取得する権原を有していることは明らかである。
したがって、外国の権利者の国内参入を阻止したり、代理店契約締結を強制する目的で出願したものであるというような不正な意図を窺わせるような状況ではなく、むしろ、両者の合意に基づいて出願をしたものであって、審判請求人会社に不正の目的はないことは明確であるから、本願商標を、商標法第4条第1項第19号に該当するとした拒絶理由は妥当ではない。
第5 当審の判断
本願商標は、「Lisbeth Dahl」の文字からなるところ、該文字は、前記第2のとおり、1981年にデンマークで設立されたリスベスダール社に係る雑貨ブランドであって、「食器、宝石箱、傘」等の商品について使用されて、少なくとも本願商標の登録出願時(平成26年(2014年)8月6日)には、同社の出所を表示するものとして、同国において広く認識されているものと推認されるものである。さらに、我が国における取引者、需要者の間にも一定程度知られていたものというのが相当である。
しかしながら、上記第4の請求人の意見及び提出された証拠によると、本願商標の登録出願前に、リスベスダール社と請求人のグループ会社の「株式会社ジョージオリバー」は、代理店契約を結んでいたものである。そして、リスベスダール社の破産後は、リスベスダール社の元CEO・取締役のニコライ氏と請求人との間で、ニコライ氏が設立した「Lisbeth Dahl Copenhagen」のブランド名等に係る全ての権利を、ニコライ氏から請求人へ移転することが合意されていることが認められる(添付資料6)。
そうすると、本願商標をその指定商品及び指定役務について使用しても、破産したリスベスダール社との間で出所の混同を生ずるおそれはないものと認められるものであって、また、本願商標は、その指定商品及び指定役務の分野において商標登録されていないことを奇貨として先取りし、剽窃的に本願商標を登録出願し、その登録を受けようとしたものではなく、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用する商標であるということはできない。
してみれば、本願商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号に該当しない。
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
「ELLECLUB」の欧文字を横書きした商標は、周知かつ著名なフランス・・アシェット社の商標「ELLE」と同一の綴りの文字を構成文字の先頭に有し、取引者・需要者は「ELLE」の文字に注目し、指定商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】平成10年審判第15775号
【審決日】平成12年6月20日(2000.6.20)
【事案】
本願商標は、別掲の(1)に表示したとおり「ELLECLUB」の欧文字を横書きしてなり、平成8年1月19日に登録出願、その後、指定商品については平成10年5月20日付の手続補正書をもって第21類「食器類(貴金属製のものを除く。),ガラス基礎製品(建築用のものを除く。),なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),やかん,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ・砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),シェーカー,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,栓抜,なべ敷き,はし,はし箱,ようじ,レモン絞り器,清掃用具及び洗濯用具,携帯用アイスボックス,水筒,魔法瓶,家事用手袋,化粧用具(「電気式歯ブラシ」を除く。),洋服ブラシ,靴ブラシ,靴べら,シューツリー,アイロン台,植木鉢,じょうろ,紙タオル取り出し用金属製箱,せっけん用ディスペンサー,トイレットペーパーホルダー,花瓶及び水盤(貴金属製のものを除く。),コッフェル」に補正されているものである。

【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、フランス国 ルヴァロア ペレ セデックス リュー アナトール フランス149番に所在する、『アシェット フィリパキ プレス ソシエテ アノニム』が、ファッションを中心とした女性雑誌に使用して、本願商標出願時にすでに著名な商標であり、かつ、最近では被服をはじめとする各種商品に使用されている商標である『ELLE』の文字を有してなるものであるから、これを出願人がその指定商品に使用するときには、恰も前記法人と何らかの関係を有るものの商品であるかの如く、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるものと認められる。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨、認定判断して、本願を拒絶したものである。
また、本件については、当審において職権により証拠調を行い、平成12年2月4日付発送日をもって、その結果を請求人に通知した。
審決における判断
(1)原査定において引用する「ELLE」の商標(以下「引用商標」という。)は、別掲の(2)に表示したとおりのものであって、フランス国 ルヴァロア ペレ セデックス リュー アナトール フランス149番に所在する「アシェット フィリパキ プレス ソシエテ アノニム」(以下「アシェット社」という。)が、昭和20年(1945年)にフランスで引用商標を題号として使用した女性向けファッション雑誌(以下「雑誌『ELLE』」という。)を創刊した(株式会社研究社1991年発行「英和商品名辞典」141頁「Elle エル」の項参照。)。
その後、アシェット社は、アメリカ合衆国、イギリス(メディア・リサーチ・センター株式会社1988年6月10日発行「雑誌新聞総カタログ1988年版(第10版)」944頁「ELLE/アメリカ版」、「ELLE/イギリス版」の項参照。)を始め世界各国で雑誌「ELLE」を発行している。
日本においては、昭和57年に株式会社マガジンハウスが雑誌「ELLE」の日本語版を発行し、その後、株式会社タイムアシェト ジャパンがこれを承継して現在に至っていることを認めることができる。
そして、アシェット社の雑誌「ELLE」は、昭和54年7月20日増補版第二刷「増補版服飾大百科事典下巻」(文化出版局 発行)の〔エル Elle〕の項目に、「ファッション中心に編集したフランスの若い女性向きの週刊誌であり、最近では『エル・ファッション』と呼ばれ、全世界の若い女性たちの間に支持者を持つようになっている」旨の記載があり、昭和63年9月5日第10刷「服飾辞典」(同文化出版局 発行)のエル・ファッション〔Elle fashion〕の項目にも、「フランスの女性雑誌『ELLE』によって生み出されたファッションのこと」と記載されている。
(2)アシェット社は、引用商標の商品化活動を推進し、昭和39年以降は帝人株式会社を介して、昭和59年7月からは自ら設立した東洋ファッション開発株式会社(平成4年7月1日、エルパリス株式会社に商号変更)を介して、日本国内においても多数の企業に対して引用商標の使用を許諾し、現在までに、それら使用権者により、被服、アクセサリー、バッグ類、はき物、傘、時計、眼鏡製品、喫煙具、カップ、なべ類、やかん、泡立て器、生活用品等多種類の分野につき、引用商標の付された商品が製造・販売されている(株式会社アパレルファッション昭和59年1月10日発行「月刊『アパレルファッション』別冊海外ファッション・ブランド総覧」163頁、164頁、198頁「エル ELLE」の項及び株式会社チャネラー昭和59年9月20日発行「別冊チャネラー’84-9/ファッション・ブランド年鑑’85年版」49頁、205頁、420頁「エル(ELLE)」の項、同社1995年11月20日発行「別冊チャネラー’95-11/ファッション・ブランド年鑑’96年版」159頁、214頁「エル(ELLE)」の項参照。)。
また、<strong>引用商標の付された商品が製造・販売されていることは、インターネットのホームページにおいてもみることができ、新潟県燕市物流センター1丁目11番地「株式会社サクライ」が掲載のインターネットのホームページ中には、引用商標の付されたカップ、なべ類、やかん、泡立て器等の「ELLE」商品が紹介されている。
(3)以上の事実に照らしてみれば、引用商標は、少なくとも、本願商標の出願時である平成8年1月19日以前には、「女性向けファッション雑誌」の商標として、我が国における取引者・需要者間に広く認識されていたものであり、また、本願商標の指定商品「食器類(貴金属製のものを除く。)」に含まれる「カップ」をはじめ、「なべ類、やかん、泡立て器」等の各種商品の商標としても、取引者・需要者間に相当程度知られた周知かつ著名な商標と認められる。
(4)そうすると、本願商標は、別掲の(1)に示すとおり「ELLECLUB」の欧文字を横書きしてなるものであり、前記周知かつ著名な別掲の(2)に示す商標「ELLE」と同一の綴りの文字を構成文字の先頭に有してなるものであるから、本願商標をその指定商品に使用した場合には、前記実情からして、これに接する取引者・需要者は、本願商標の構成中の「ELLE」の文字に注目し、前記周知かつ著名なアシェット社に係る別掲の(2)に示す「ELLE」の商標を連想し、該商品がアシェット社又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように出所について混同を生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は、妥当なものであって取り消すべき限りでない。
「ヤマト運輸株式会社」とは何等関係のない他人が「宅急便」を使用することが、他人の業務と混同を生じるおそれがある(商標法第4条第1項第15号)とされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服昭和60-1182
【事案】
「ヤマト運輸株式会社」とは何等関係のない他人が「宅急便」を使用することが、商品の出所について誤認を生じるおそれがある商標(商標法第4条第1項第15号)に該当するか。
【拒絶理由】
本願商標は、「宅急便」の文字を横書きしてなり、第32類「食肉、卵、食用水産物、野菜、果物、加工食料品」を指定商品として、同時出願に係わる商標登録願「3」(昭和57年商標登録願第102967号商標)と連合する商標として、昭和57年11月24日に登録出願されたものである。
これに対し、当審において「本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨の拒絶の理由を通知したものである。
審決における判断
よって按ずるに、本願商標は「宅急便」の文字を書してなるものであるところ、該文字は、昭和51年(1976年)に大和運輸株式会社(現在は「ヤマト運輸株式会社」に商号変更が昭和57年10月になされた)が、「宅配便」の役務の標章(サ-ビスマーク)として「宅急便」の文字と黒猫のキャラクターを使用し”クロネコヤマト”の「宅急便」と称して、宅配貨物の取扱店(取次店)を全国各地に設け、合わせて全国的に多大な宣伝広告に努めてきた結果、「宅急便」の文字からなる標章は、「ヤマト運輸株式会社」の業務(宅配便)を表示するものとして、少なくとも本願商標の登録出願前より取引者、需要者のみならず一般世人にも広く認識され周知著名に至っていたものと認め得るところである。
そして、運輸業界においては、近時、冷凍・冷蔵庫や包装容器の改良に加え、冷凍車の普及により、生産地の商品やふるさとの特産品等を鮮度を保持したまま消費者に運送することは、普通に行われているところであり、これが本願商標の指定商品との関係においても、農作物や魚介類等の生鮮食料品を鮮度を保持しつつ生産地より直接消費者に届ける運送システム(運輸システム)が取り入れられているところである。しかして、「ヤマト運輸株式会社」は、前記運送システムに使用される包装容器や運送車輌等に「宅急便」の文字によりなる標章を付して使用し、宅配業務等を行っているところである。
しかるところ、請求人(出願人)は、「ヤマト運輸株式会社」とは、何等関係のない他人と認め得るものであるから、請求人が本願商標をその指定商品について使用した場合、取引者、需要者は、「ヤマト運輸株式会社」若しくは同会社と何等かの関係を有するものの業務に係わる商品であるかの如く、又は、同会社の業務に係わる商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、登録することはできない。
なお、請求人(出願人)は、サービスマークとしての使用事実は、商品標識として商品に使用されている商標とは、明確に区別されている旨種々述べているが、本願商標は、前示のとおり判断するのが相当であるから、同人のこれ等の主張は採用できない。
よって、結論のとおり審決する。

