本願商標に係る「乳酸菌飲料」の形状は、収納容器の一形態を表示するにすぎず第3条第1項第3号に該当し、商標を使用した商品についても「ヤクルト」の文字商標により識別され、本願商標それ自体の識別機能を有するに至っているとはいえないから、第3条第2項の要件を具備しないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】平成11年審判第16888号
【審決日】平成12年10月30日(2000.10.30)
【事案】
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第29類「乳酸菌飲料」を指定商品として、平成9年4月1日に立体商標として登録出願されたものである。

【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、多少デザインが施されてはいるが特異性があるものとは認められず、通常採用し得る形状の範囲を超えているとは認識し得ないので、全体としてその商品の形状(収納容器)の一形態を表したものと認識させる立体的形状のみよりなるものといわざるを得ないから、これをその指定商品について使用しても、単に商品の包装(収納容器)の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。
審決における判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
また、意匠法等により保護されている形状等について重ねて又はその権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。
(3)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおりであって、液体等を収納する容器そのものを表した立体的形状よりなるものであるから、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、単に商品「乳酸菌飲料」の収納容器を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
請求人は、本願商標の形状は決して特異性がないものではなく、通常採択し得る形状でもない旨主張する。
しかしながら、請求人も参考資料第13号を提出しているように、「乳酸菌飲料」を取り扱う業界においては、その取り扱う商品が液体であるが故に、特徴をもたせた形状の容器を多種類採用し、その容器に商品を収納して販売していることは一般に行われているところであって、本願商標を構成する収納容器の特徴は、商品等の機能(飲み易さ、持ち易さ等)や美感(見た目の美しさ)を効果的に際立たせるための範囲内のものというべきである。
しかして、本願商標は、前記認定のとおり、ややその形状が特徴的なものであっても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品等の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないことは(1)で述べたとおりである。
(4)立体的形状からなる商標であっても、商品又はその包装の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、また、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること・・・」としている(前掲答申P31参照)。
そして、商品又はその包装の形状であっても、使用により自他商品の識別力を取得する場合があり、そのときには、識別力を認めて登録することは前示のとおりである。
(5)請求人は、「本願商標は、永年使用の結果、自他商品を識別する機能を具有するに至っているものであるから、商標法第3条第2項の規定が適用されるべきである。」旨主張し、原審において参考資料第1号乃至同第8号(枝番を含む。)を提出し、さらに、当審において同第9号乃至同第16号(枝番を含む。)を提出した。
そこで、請求人提出の各参考資料について検討するに、同人が本願商標の使用に係る実績として提出した参考資料第2号乃至同第5号(枝番を含む。)は、その資料中に記載されている本願商標と同一と認められる収納容器には、いずれも「ヤクルト」の文字が表示されているものである。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られると解される。
しかして、本願商標と使用商標の異同は置くとしても、前示のとおり、収納容器の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、或いは、その美感を追求する等の目的で選択されるものであって、本来的(第一義的)には、商品の出所を表示し自他商品を識別する標識として採択されるとはいえないものであり、その識別機能を果たすものとしては文字、図形又は記号等が適しているため、専らこれらが自他商品の識別標識として採択、使用されていることは顕著な事実であること及び前示認定のとおり、本願商標に係る形状が収納容器の一形態を表示するに過ぎないものであることからすれば、前記参考資料中の商品「乳酸菌飲料」は、「ヤクルト」の文字商標により識別されているというべきである。
また、参考資料第7号の1乃至54は、公的機関や同業組合等により証明がなされているものではあるが、その証明書が「証明願」を表題とする一枚の用紙のみであるため、証明者が安易に署名、押印をしたのではないかという疑問及び証明書に記載の文面からみて、果たして証明者が本願商標(収納容器の形状)自体が立体商標として自他商品識別機能を有するに至っているとの認識に基づいて証明したものであるか否かの疑問を否定し得ないものであり、さらに、「本件商標に係る収納容器の形状のみを見て請求人の業務に係る商品であるとの認識を示した者が82.9%である。」旨の主張の根拠とする参考資料第16号は、「ヤクルト容器アンケート」と題するものであるが、他社が乳酸菌飲料の収納容器として採用している類似の容器(例えば、参考資料第14号)との比較がなされていないことやアンケート中に「ヤクルト」「ヤクルト以外の商品」の文言の記載が認められ、アンケート対象者がその文言に誘導された可能性も否定できないことから、前記参考資料は俄には採用し難い。
なお、参考資料第8号の1乃至10は、本願商標と同一と認められる収納容器の外国における登録例であるが、諸外国における立体商標の登録制度と我が国のそれが同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認められないから、これに基づく主張は採用の限りでない。
その他、請求人提出の参考資料を総合してみても、本願商標それ自体が自他商品の識別標識としての機能を有するに至っているとするには十分とはいえないものであるから、先の認定を覆すに足りない。
4 結 論
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。

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