「ひつまぶし」の文字は、鰻を細かく刻んでご飯にまぶした料理の提供であると理解するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を有しないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2006-25186
【審決日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【事案】
本願商標は、「ひつまぶし」の平仮名文字を横書きしてなり、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、平成17年12月27日に登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、『蒲焼きを細かく刻んで米飯に混ぜた料理』を認識させる『ひつまぶし』の文字を普通に用いられる方法で表示してなるから、これをその指定役務に使用しても、単に役務の質(内容)、提供の用に供する物を表示するにすぎないと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
1 本願商標は、前記第1のとおり「ひつまぶし」の文字よりなるものであるところ、「ひつまぶし」の文字(語)についてみると、鰻を細かく刻んでご飯にまぶした料理として知られ、また、鰻を取り扱う店舗において、料理名の一つとして広く使用されている事実が認められる。
そして、上記した実情は、以下の各種新聞記事の記載、及びインターネットの情報からも裏付けられる。
(1)1998.06.25 毎日新聞地方版/静岡には、「[面白ばなし]うなぎの櫃まぶし/愛知」の見出しのもと「・・・「名古屋の名物が食べたい」と言われ「うなぎの櫃(ひつ)まぶし」をごちそうした。・・・この料理が生まれたのは、うなぎが人工養殖されていなかった時代とか。型が崩れて捨てるかば焼きが多く、ある時「もったいない」と、型崩れのうなぎをちぎってご飯にまぶしたところ、客に大受けしたそうだ。」との記載。
(2)1999.02.20 朝日新聞名古屋夕刊 9頁には、「愛知県一色町生田・千間(アベニュー・アベニュー)【名古屋】」の見出しのもと「ウナギといえば、うなどん、ひつまぶし、かば焼きを使った料理が思い浮かぶが、実は様々な食べ方ができる素材だ。」との記載。
(略)
2 請求人(出願人)は、「ひつまぶし」商標の権利者であり、明治6年創業以来、鰻料理店舗を持ち、名古屋を始め東海地区を中心とする一般社会の鰻料理の需要者に広く「鰻料理の提供」及び「持ち帰り用鰻料理」の役務を提供し使用した結果、自他役務識別性を有する旨、また、少なくともサービスマーク制度が法律化された時点で、自己の業務に係る指定役務「飲食物の提供」を表示するものとして、需要者の間に広く認識される程度の信用を形成しており、周知商標としても登録を受けることができる旨主張し、甲第1号証ないし甲第17号証(枝番を含む。以下、同じ。)及び検甲第1号証を提出している。
そこで、請求人(出願人)提出の甲各号証についてみるに、請求人(出願人)は、「ひつまぶし」商標(登録第1996631号)を昭和60年6月14日に登録出願し、「第32類:食肉,卵,食用水産物,野菜,果実,加工食料品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として同62年11月20日に設定登録されている商標の権利者(甲第1号証)であり、「御食事」として「鰻丼」、「ひつまぶし」、「長焼定食」、「天麩羅定食」及び「かしわ定食」の記載がある請求人(出願人)の昭和30年当時と推認できるお品書き(甲第13号証の4:検甲第1号証)、及び「名物 ひつまぶし」の記載のある店舗カタログ及びハローページ(甲第3号証及び第4号証)、甲第14号証ないし甲第17号証により、請求人(出願人)は、少なくとも昭和30年頃より現在において、食事として「ひつまぶし」を提供していると認められる。
しかしながら、「ひつまぶし」は、お品書きにあるように、「鰻丼」、「長焼定食」等の料理名と同じ欄に書いてあることより、料理名として認識されるとみるのが相当であり、飲食物の提供について使用する商標として広く認識されているとはいい難い。
また、出願に係る商標が自他役務の識別力を有するか否かの判断時期は、査定又は審決時と解されるものであることからすれば、「ひつまぶし」の文字(語)は、現在において、鰻料理を提供している各店舗における料理名の一つとして一般に使用されていること前記1のとおりであり、本願商標は、その指定役務との関係において、鰻を細かく刻んでご飯にまぶした料理の提供であると理解するにとどまり、自他役務の識別標識としての機能を有しないものであるといえるから、請求人(出願人)の使用の事実、あるいは商品における登録商標があるとしても、その主張は採用することができない。
よって、結論のとおり審決する。
「揚子江」の文字は、商品が「長江の下流域にある化学工場において生産された肥料」と理解・認識させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服平成11-3745
【審決日】
【事案】
本願商標は、「揚子江」の文字を横書きしてなり、第1類「肥料」を指定商品として、平成9年9月25日登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、『本願商標は、「揚子江」の文字を普通に用いられる方法で書してなるにすぎないところ、該文字は、「ヤンツーチアン」とも称呼され、武漢等の、長江の流域の局地的な地域名(地理学上では、長江の下流の局地的な名称)であり、武漢(ウーハン)等においては、本願指定商品の工業的生産、取引も行われていること明らかであるから、このような長江下流域の地域名(ヤンツーチアン)を、本願指定商品に使用しても、単に、その商品の生産地または生産地域名、または販売地を表示するものとして直観し認識するに止まり、なんら自他商品を区別する標識としての機能を果たすことができないものと認めるを相当とする。したがって、本願商標は、商標法第3条第1号第3項に該当する。』旨認定して、本願を拒絶したものである。
審決における判断
よって判断するに、本願商標は、「揚子江」の文字を横書きしてなるところ、原審において認定したとおり、「揚子江」は、「長江の別称であって、中国最大の河川でチベット高原に源を発し、青海、雲南、湖北、湖南、江西、江蘇、などの各省を経て東シナ海に注ぐ。本流域の主要都市は、重慶、宜昌、武漢、九江、鎮江、揚州、南京、上海など。」であり(三省堂編修所編者「コンサイス外国地名事典」株式会社三省堂、1985年12月10日改訂版第1刷発行)、また、その都市の中で特に、「九江」は、「江西省北部の都市。揚子江中流右岸に位置。綿紡績・燐酸肥料工場がある。」(同「コンサイス外国地名事典」)と認められるものである。
してみれば、「揚子江」の文字を普通に用いられる方法で書してなる本願商標を、その指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、該商品が「長江の下流域にある化学工場において生産された肥料」と理解・認識させるに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものとは認められないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は商標法第3条第1号第3項に該当し、登録することはできない。
なお、請求人は、本願商標が商標法第3条第1号第3項に該当するとしても、使用により識別力を有するにいたったと十分認められるので、商標法第3条第2項に該当すると主張し、その事実を立証するために甲第1号証乃至同第3号証を提出している。
しかしながら、本願商標については前記の判断されること叙上のとおりであり、請求人の提出に係る書証をもってしても、本願商標が商標法第3条第2項に該当する要件を具備するに至ったものとは認めがたいから、同人の主張は採用することはできない。
よって、結論のとおり審決する。

