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「チバニアン」? それなら「ジュラ紀」だって「安土桃山」だって登録されている -2017年11月18日

まるで商標登録をされたら、その言葉は使えなくなるかのような誤解で、大騒ぎする報道が多すぎます。

地球の歴史で「チバニアン」は「千葉時代」を意味するラテン語で、約77万~12万6千年前の地質年代を示します。年代の国際標準となる基準地の地層とその名称を国際地質科学連合に申請し、これが承認されたものです。

一方、登録されニュースになっている商標は、下記のものです。

登録第5929242号
登録日 平成29年(2017)3月3日
商標 チバニアン(標準文字商標)
権利者 (個人)
【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
第14類 貴金属,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,宝石箱,身飾品,貴金属製靴飾り,時計
第16類 紙類,文房具類,印刷物,書画
第28類 おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,囲碁用品,チェス用品,運動用具,釣り具

他に、第30類「ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当」と、第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定した出願もあります(商願2017-74481 )。

商標は、「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」、「業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの」で、自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標は、所定の拒絶理由に該当しなければ、登録されます。
年代、時代に関することでいえば、その「役務の提供の時期」(商標法第3条第1項第3号)、「現元号」(商標法第3条第1項第6号」)あたりに該当すれば、登録されませんが、該当する拒絶理由がなければ、登録されるのはごく当たり前のことです。

そして、地質年代を示す言葉が商標登録されたからといって、地質年代を示す言葉としてその言葉が使用できなくなるなどということもありません。
現に報道各社以下、皆、普通に使用しているではありませんか。
ましてや、商標登録されたのは、地質年代を示す言葉として国際機関に承認されるより前の話です。

なお、日本の研究チームの国立極地研究所などが、上記登録の内の第16類「印刷物」について「申し立てた異議を特許庁が認め、登録の一部を取り消す決定をした」(産経新聞)との報道があります。

報道を見た時点では、
「(エ) 『書籍』、『放送番組の制作』等の商品又は役務について、商標が、需要者に題号又は放送番組名(以下『題号等』という。)として認識され、かつ、当該題号等が特定の内容を認識させるものと認められる場合には、商品等の内容を認識させるものとして、商品の『品質』又は役務の『質』を表示するものと判断する。」(商標法第3条第1項第3号 商標審査基準)
に該当するから、書籍を含む印刷物が取り消されるものだと考えていました。
しかし特許庁では、本件商標を第16類「印刷物」に使用した場合、「これに接する取引者,需要者は,公的機関である共同研究チームに係る千葉セクション(GSSP)に関する書籍,論文等であるかのごとく,誤認するおそれがあり,ひいては,商取引の秩序を乱し得るおそれがあり,また,社会公共の利益を害することになる」として、商標法第4条第1項第7号に該当するとしました。
この結論には異論あるいは違和感を感じる人もいるのではないかと思いますが、3条1項3号では無理だったのか、抜け駆け的な出願に警鐘を鳴らしているのか。
いずれにしても、書籍等を含む印刷物については、ごく当たり前の結論であると同時に、それ以外の指定商品については登録されたままであっても、ごく普通のことだと思います。

「チバニアン」を登録した人が「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をする」のであれば、商標法の目的通りです。
異議申立てをした研究チームにしても、研究対象である地質年代を示す言葉として使用するだけであり、「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をする」言葉でもありません。

「新聞、雑誌等の『定期刊行物』の商品については、商標が、需要者に題号として広く認識されていても、当該題号は特定の内容を認識させないため、本号には該当しないと判断する。」とされますので(商標法第3条第1項第3号 商標審査基準)、指定商品を最初から「新聞,雑誌,定期刊行物,その他の印刷物」等とでもしておけば、一部は取り消されないで済んだのではないかとも思えます。このあたり、弁理士の腕の見せ所です。ただし、3条1項3号の適用ではなかったため、なんともいえません。

報道機関は、報道するネタがほしくて騒ぐのかも知れませんが、一緒になって騒ぐのはいかがかと思いますし、一般の方々が商標についての理解を深めるどころか、かえって誤った認識が広がるのではとの懸念も感じます。
※大量の出願をして手数料を払わないことで有名な人とも違います。出願人のプライバシーへの配慮も必要です。

地質年代であれば、とっくに他にも登録はあります。

2017111501.jpg
登録第4531026号「ジュラ紀」
登録日 平成13年(2001)12月21日
権利者 アムテック株式会社
第3類:せっけん類,香料類,化粧品,他(略)

歴史年代でも、とっくに登録はあります。

登録第5088296号「安土桃山」
登録日 平成19年(2007)11月2日
権利者 株式会社シャンソン化粧品
第30類:食品香料(精油のものを除く。),茶飲料,茶,他(略)
第32類:ビール,茶を加味した清涼飲料,その他の清涼飲料,他(略)

ほかにも、現元号でなければいろいろ登録できます。
おそらく「平成」の出願もたくさんされるでしょう。

登録第3265661号「昭和\Showa」
権利者 昭和楽器製造株式会社
第15類:楽器,演奏補助品,音さ,調律機

登録第2639022号「大正」
権利者 大正製薬株式会社 ※他に登録多数
第9類:映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ
第16類:印刷物,書画,写真,写真立て
他(略)

登録第279379号「明治」
権利者 明治ホールディングス株式会社 ※他に登録多数
第29類:食肉,塩辛,うに(塩辛魚介類),他(略)

登録第3158035号「明治」
権利者 明治安田生命保険相互会社
第36類:生命保険の引受け

ちなみに、「世界」も「日本」も登録商標です。
それで、誰か困りましたか?

登録第1798995号「世界」
権利者 セネファ株式会社
第5類:もぐさ,薬剤,他(略)

登録第2428659号「世界」
権利者 株式会社岩波書店
第16類:雑誌

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登録第36776号「日本」
登録日 明治42年(1909)6月16日
権利者 松田薬品工業株式会社
第5類:ばんそうこう,モルヒネ,水剤,浸剤,錠薬,生薬,石灰,硫黄(薬剤),鉱水,打粉,もぐさ,防腐剤,防臭剤(身体用のものを除く。),駆虫剤,包帯,綿紗,綿撒糸,脱脂綿,医療用海綿


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