ユーザーが自分で入力し商標検索するサイトをお勧めしない理由
最近、商標検索が簡単にでき、出願依頼がすぐにできるという、弁理士事務所が関与して運営するサイトがあります。
中には、AIが自動で判断してすぐに出願までできるなどといっているものもあります。しかしよく見ると、利用者が自分で出願書類を作成する支援ソフトウェアであると、小さく書いてあったりします。
AIは発展途上の試行段階であるばかりでなく、ユーザーの頭の中にある考えをヒアリングするわけでもなく、実用化できても、弁理士が専門知識を駆使しながら補助ツールとして使うべきものです。
商標検索調査は、特許庁が提供するJ-Plat Pat(特許情報プラットフォーム)で、一般的には十分です。
サイトにアクセスして、検索のためにデータを入力するのは、必ずしも専門知識のないユーザーです。操作には知識や習熟が必要です。
登録したい商標を入力して検索しただけでは、調査不十分
商標を複数の読み方(称呼)で検索したり、商標の一部分を分離して検索したり、類似商標以外の調査をしたり、検索以外の識別力調査・検討をしたりという、弁理士が行う通常の作業が省かれては、まったく不十分です。
専門知識に乏しいユーザーの入力そのものが間違っている場合には、アウトプットも間違ったものとならざるをえません
調査・登録すべき区分(指定商品・指定役務)の選択には注意深い判断が必要です。
一例として。
ユーザーは電気製品のチラシや広告に商標を使用すると考え、第9類ではなく、第35類の広告業を指定してしまった場合。
あるいは電子計算機用プログラムに関する業務で、第9類か第42類か、あるいはそれ以外か、ユーザーが適切な判断をできないままに入力してしまった場合。
商品区分なのか、第35類の商品の小売又は卸売についての便益の提供なのか、ユーザーが適切な判断をできないままに入力してしまった場合。
出てきた検索結果を検討し判断するのにも、経験と実績と、専門知識が必要になります。
商標の使用態様の確認、業務内容の確認、今後使用したい計画などは、弁理士がヒアリングしなければ判断できません
本来なら、弁理士がユーザーからのヒアリングをしたうえで、どのような調査が必要で、どのようなワードを入力して、どの種類の検索をするべきか判断するものです。
専門的判断を経た後に、ユーザーの要望や目的に合った適切な検索調査をするのでない限り、適切な検索結果を得て判断することはできません。
弁理士は、「依頼者と十分な意思の疎通」、「事件の内容及び依頼の目的を的確に把握し、受任した事件の処理について必要な説明及び助言」(弁理士倫理第9条の2)を行うことが、法令で義務付けられているのです。
ユーザーが自分で入力し、検索できる弁理士事務所サイトを利用することは推奨できません。
弁理士自らの作業で検索調査をしてもらうのが一番
商標登録の依頼を検討している方であれば、 無料検索トライアルなどもありますし、商標の実務に習熟し、経験と実績のある弁理士に自ら作業をしてもらい、検索調査と助言をしてもらうのが一番です。
たとえば、10ある商標の候補を、1~3つにまで絞り込む、予備的な検索をユーザー自身がすることはいいかもしれません。
その場合でも、特許庁のJ-Plat Patを使用して、最新のデータと、豊富なヘルプとを参照しながら、行うべきものと思います。上記の例では、1つに絞り込むまで自分でやるよりも、2~3に絞り込んだ後は、商標専門の弁理士に検索・調査をしてもらった方がよいでしょう。