出願後に、指定商品・指定役務を追加したいのですが?
指定商品・指定役務の範囲を拡大することはできません
商標登録出願は、政令で定める商品及び役務の区分に従って、商標の使用をする商品・役務を指定して行う必要があります(商標法第6条)。
ところで、商標を出願した後に、当初には想定していなかった商品や役務について、商標を使用することになることもあると思います。
出願後の補正では、指定商品・指定役務の削除、範囲を狭める訂正は可能
商標登録出願の手続では、出願内容の変更をする補正という手続もあります。
一部の指定商品・指定役務の削除や、区分の削除については、問題なく認められます。
たとえば「菓子」を「チューインガム」に補正するように、元の商品・役務をさらに限定するような補正は、可能です。
「食器類」から「コップ,茶わん」への補正 や、「娯楽施設の提供」から「カラオケ施設の提供」への補正をすることは、新しいものを加えたように見えて、範囲を縮小しているため、認められます。
しかし、出願時には含まれていなかった指定商品・指定役務を追加することは、認められません。
補正では、区分の追加、指定商品・指定役務の範囲を広げると、要旨の変更として却下されます
出願後に区分を追加したり、指定商品・指定役務を出願時より広い範囲に変更したりすることは、要旨の変更として、その補正が却下されます。
区分を追加する補正のほか、同じ区分に含まれる商品・役務であって、出願時には含まれていなかったものを追加することも、要旨の変更です。
商標法(第16条の2)では、
「願書に記載した指定商品若しくは指定役務又は商標登録を受けようとする商標についてした補正がこれらの要旨を変更するものであるときは、審査官は、決定をもつてその補正を却下しなければならない。」
とされています。
要旨の変更かどうかは、次のように考えます。
たとえば「菓子」を「菓子及びパン」に補正するように、元の商品・役務にさらに追加するような補正は、要旨の変更として認められません。
「コップ,茶わん」から「食器類」への補正 や、「カラオケ施設の提供」から「娯楽施設の提供」への補正をすることは、範囲を拡大しているため、認められません。
願書に記載した、商標登録を受けようとする商標についてした補正が、その要旨を変更するものであるときは、特許庁の審査で補正が却下されます。
指定商品・指定役務や、区分を追加したいときは?
どうしても商品・役務の追加をしたい場合には、新規に出願をするということになります。
したがって、同じ商標について、これらを追加する権利が必要であれば、その指定商品・指定役務や区分について、最初から出願をし直して登録することが必要です。
指定商品や指定役務を追加したいということは、出願前によく検討をしておけば、たいていの場合は避けられます。
ただ、出願時には考えもしなかった事業の拡大をする場合などに、ありうるかもしれません。
取扱商品の拡大などにより、区分を新たに追加したいということはありえます。
特に、登録後に時間がたって、区分を増やしたいために、新規に出願をすることがあります。
なお、補正が却下された後に、その手続補正書の内容での新出願とするという方法もあります(商標法第17条の2第1項において準用する意匠法第17条の3第1項)。
指定商品・指定役務や、区分を増やすための新規登録の注意点
追加したい商品・役務についてだけの新規出願をするのか、それとも追加したい商品・役務を含めた、出願全体を最初からやり直して新規出願とするのか、慎重に検討しなければなりません。
出願全体を最初からやり直す場合には、従来の出願は取り下げるのか、取り下げる場合にはそのタイミングはいつにするのか、弁理士に相談して判断してもらうのがよいでしょう。
たとえば、同一の商標について、第9類だけで登録しているときに、区分の追加が必要になって、第42類での登録を新規に行う場合があります。
このケースでは、1つの商標登録だったものが2つの商標登録となります。
登録後10年経過して、更新登録する際にも、2件それぞれについて更新登録をしなければなりません。
あるいは、同一の商標について、第3類「化粧品」だけで登録しているときに、指定商品の追加が必要になって、第3類「せっけん類,香料類」での登録を新規に行う場合もあるかもしれません。
このケースでは、1つの商標登録だったものが、2つの商標登録となります。
同じ1つの区分であるにもかかわらずです。
区分ごとにかかる更新登録料が、1区分で済むはずのものが2倍かかってしまいます。
上記の例で、更新登録のタイミングで、あえて更新登録をせずに、「第9類、第42類」の新規出願をして、それが登録になれば1つの登録にできるという方法もあります。
同様に、更新登録をあえてせずに、第3類「化粧品,せっけん類,香料類」の新規出願をして、それが登録になれば1つの登録にできるという方法もあります。
出願中に追加をしたい場合にも、似たような方法をとる場合もありえます。
こうした場合には、更新登録とのタイミング、他人の出願との関係で、確実に登録できそうなものか、慎重に調査して、検討しなければなりません。