商標制度の目的や、商標の機能とはどのようなものですか?
商標を保護することによって取引の信用維持を図り、需要者の利益を保護することが商標法の目的で、商標は使用されることにより様々な機能を発揮します
商標法は、商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする法律です。
商標とは何か、商標登録できない商標、商標登録の手続、商標権の内容、商標権侵害に対する措置などについて規定しています。
商標制度の趣旨
その趣旨は、下記の通りです。
「商標を使用する者は商品や役務の提供に係る物品等に一定の商標を継続的に使用することによって業務上の信用を獲得するものであるが、この信用は有形の財産と同様に経済的価値を有する。全く同様の質を有する商品又は役務が、それに使用される商標の相違によってその市場価格を異にしていることは通常みられる現象である。したがって、商品の製造業者若しくは販売業者又は役務の提供者は絶えず自己の商品又は役務に使用される商標に対し、細心の注意を払い、不正な競業者が自己の商標と紛らわしい商標を使用して自己の商品又は役務と混同を生ぜしめるような行為を排除しようとする。そのような不正な競業者の不正な行為に対する法規として不正競争防止法(平成五年法律第四七号)及び商標法が存在するのである。商標を使用する者の業務上の信用を維持するという目的は、不正競争防止法も商標法も共通のものであるが、商標法が商標権を設定するという国家の行政処分を媒介としている点が不正競争防止法と異なるところである。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)
つまり、不正競争防止法は取引の協業秩序を維持するための基本的な法律ですが、争いがあってから侵害行為を排除するもので、事業をする者からすれば、法的安定性がありません。
そこで、あらかじめ国家による権利設定という行政処分、すなわち商標登録を行うことにより、事業を行うにあたっての法的安定性を図ったものということができます。
「『商標を保護することにより』とは、右の趣旨をあらわしているということができる。
また、商標を保護することは、一定の商標を使用した商品又は役務は必ず一定の出所から提供されるということを確保することになる。消費者等の側からみて、過去において一定の商標を付した商品を購入し、又は役務の提供を受けて満足した場合、当該商標を付した商品又は提供を受けた役務が出所の異なったものであったというのではその利益を害することになる。
したがって、一定の商標を使用した商品又は役務は一定の出所から提供されるという取引秩序を維持することは、消費者等の利益を保護することになると同時に、商品及び役務の取引秩序の維持ということを通じて産業の発達にも貢献することとなるのである。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)
商標の機能
一定の商標を付した商品や、商標を用いて提供されるサービスは、一定の出所から提供されるものであるという秩序が形成されることは、消費者の利益を保護することにもなります。
商標の4大機能として、下記のそれぞれの機能があげられます。
(1)自他商品等識別機能
取引の中で発揮される商標は、ある商品やサービス(役務)と、別の商品やサービス(役務)とを識別できる、自他商品等識別機能をもっています。
この識別標識として機能する商標は、その本来の機能から派生して、様々な働きをするものです。
(2)出所表示機能
一定の商標を付した商品や、商標を用いて提供されるサービスは、一定の出所から提供されるものであることを認識させる機能です。
出所表示は、製造業者を示すもののほか、販売業者、輸入業者、業界団体などを示すものとして機能することもあります。
(3)品質等保証機能
一定の商標を付した商品や、商標を用いて提供されるサービスは、同一の商品の品質や、同一のサービスの質を有しているであろうと、取引者・需要者に認識させる機能です。
(4)広告宣伝機能
広い意味では商標の機能ともいえますが、広告を含むマーケティング活動において商標が使用される結果、発揮させる機能です。
一定の品質や、消費者に対するブランド認知、好感度の向上を得られるよう、適切な商標管理を行うことが要求されます。