日本語とアルファベットの両方を登録する必要がありますか?
日本語の商標と、とアルファベットの商標は、両方を登録することもできますが、商標の使用態様、言葉の意味や発音、使用予定その他も考えて、一つだけの登録とすることもあり、個別に検討し決めるのがよいでしょう
日本語の商標とアルファベットの商標は、別々に登録することが可能です。
ただしこの場合には、2つの商標を登録することになり、別個の手続になりますので、費用などもそれぞれについてかかります。
一つだけの商標登録で済ませる方法は?
一方、日本語の商標か、またはアルファベットの商標かの、どちらか1つだけを登録することで十分であり、問題ないケースも多くあります。
さらに、日本語の商標と、アルファベットの商標とを併記して、1つの商標として出願し、登録することもあります。
この場合には、日本語と、アルファベットとを、改行を入れて2段に併記する方法や、通常のアルファベット文字にフリガナのように小さく日本語を併記する方法、その他の方法があります。
商標法ではどうなっている?
商標法では、登録商標の独占的効力については、
(商標権の効力)
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。
とされています。
また、登録商標に類似する商標の使用については、同一・類似の指定商品・指定役務について使用することは、商標法第37条で、商標権侵害とみなされることになります。
商標が登録されれば、商標権は登録商標に類似する商標も権利の範囲内となりますので、色彩が異なる商標や、文字の書体が異なる商標、大文字と小文字の違い程度では、類似範囲とされます。
ちょっと変えただけで権利が守られなくなるのでは、商標制度の意味がなくなってしまうため、類似範囲が設けられています。
類似する商標により商標の真似や、偽ブランドなども防ぐことにより、登録商標は守られます。
日本語とアルファベットが類似商標であれば、どちらかだけの登録でもよい
それでは、日本語商標とアルファベット商標とは、類似商標と判断されるのでしょうか?
商標法第4条での商標の類似判断には、商標の読み方で判断する称呼類似、商標の見た目で判断する外観類似、商標の意味合いで判断する観念類似が用いられます。
アルファベットを普通に読めばそのまま日本語商標になる場合には、類似商標といえるでしょう。
このときの注意点としては、アルファベットが創作した造語である場合や、わが国では一般的でない単語、一般的ではない言語であるために、読み方がわからないことが普通である場合には、類似商標とは言えないケースがありそうなことです。
アルファベットを日本語に翻訳すれば、そのまま日本語商標になる場合には、誰もが知っているような単語であれば、類似商標である可能性があります。
しかし、多様な意味合いがあるアルファベットの文字列であったり、わが国では一般的でない単語、一般的ではない言語であるために、意味合いがわからないことが普通である場合には、類似商標とはいえないケースがありそうです。
日本語とアルファベットが、社会通念上同一の商標であれば、どちらかだけの登録でもよい
商標法第38条第5項では、商標権侵害の損害額の推定や、3年以上不使用の商標の取消に関して、下記のように規定しています。
「指定商品又は指定役務についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。第五十条において同じ。)」
社会通念上同一と認められる商標には、下記が含まれると解釈できます。
書体のみの変更を加えた、同一の文字からなる商標
ひらがな、カタカナ、ローマ字の文字の表示を相互に変更して、同一の称呼と、同一の観念を生じる商標
外観において同視される図形からなる商標
ひらがなやカタカナと漢字、縦書きと横書きの変更など、その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標
一つだけの商標登録で済ませるための検討
結局のところ、日本語の商標と、アルファベットの商標とが、明らかに類似商標か、社会通念上同一の商標である場合には、日本語かアルファベットの、どちらか1つの商標登録だけでも問題ありません。
どちらを選ぶかは、商標の使用態様、言葉の意味や発音、使用予定その他も考えて、一つだけの商標とすることもあり、個別に検討します。
主として日本語で使用するのであれば、日本語の商標でよいでしょう。
アルファベットで使用することが主体であれば、そちらでの登録がよいでしょう。
海外でも出願を検討する場合には、やはりアルファベットの商標がよいでしょう。
日本語かアルファベットか、検討の際の注意点
ただし、創作した造語であったり、一般にはなじみのない単語で読み方がわかりにくいアルファベットなどの場合には、日本語とアルファベットの両方それぞれで商標登録をすることが考えられます。
あるいは、日本語と、アルファベットとを、改行を入れて2段に併記する方法や、通常のアルファベット文字にフリガナのように小さく日本語を併記する方法などがあります。
海外でも登録を検討する場合には、日本語とアルファベットの両方それぞれを別に商標登録したほうがよいこともあります。
類似商標調査の結果、他の商標との類似関係を見て検討し、日本語とアルファベットのどちらで出願するのがいいか、決定することもあります。
どのような方法が一番いいのかは、ケースバイケースですので、一概にはいえません。
具体的には、ご相談、ご依頼をいただいてから、個別に検討のうえ決定することになるでしょう。