店舗名の商標登録に注意点はありますか?
商標は、商品名、サービス名などのブランド名や、会社名、店舗名などの識別標識です。
登録することにより独占的に使用する権利が得られます。
登録できる商標は、ネーミングなどの文字商標、ロゴなどの図形商標のほか、立体商標や、その他の特殊なタイプの商標があります。
店舗名の商標
店舗には、さまざまな業種の、各種の態様での店舗があります。
一店舗だけのお店もあれば、チェーン展開を行う大規模店舗、フランチャイズ店舗などがあります。
また、実店舗と、オンラインのEC店などもあります。
商標は、商品または役務について使用され、少なくとも一つの商品・役務区分を指定して登録します。
役務とは、一般的にはサービス業といわれる業態です。
店名は登録しなくても使用できることもありますが、他人に同一・類似の商標登録がされてしまうと、使えなくなる場合があり、注意が必要です。
店名は、店を識別するためのネーミング
生花店、宝石ショップ、コンビニエンス店などの、主として商品をは販売する店舗のほか、クリーニング店、飲食店などのように、サービスを提供する店舗もあります。
携帯電話販売店のように、商品販売とサービス提供を行う店舗もあるでしょう。
「生花店」、「クリーニング店」のような言葉は、店舗の業種を示す一般的な普通名称です。
これでは、他の生花店やクリーニング店との区別ができないため、独創的な店舗名を付して、商売を行うのが普通です。
店名は識別標識
オリジナルな店名は、消費者に知られれば商売繁盛につながり、提供される商品やサービスの満足度が高ければ、店名と商売の信用とが結びつき、顧客獲得、売り上げ増大、広告宣伝に効果があります。
商標は、信用の伴った事業の識別標識です。
なお、店名と似た言葉に「屋号」があります。
屋号も、店名と同じような意味合いで使われることもありますが、法人の会社名に対し、個人事業の名称という意味合いもあります。
店名を商標登録する意味
商標登録は、商品やサービスを識別するための識別標識、営業標識として使用される商標を、独占的に使用するために登録するものです。
特許庁に手続をして、登録がされれば、第三者は使用することができません。
したがって、他人より先に登録することが重要です。
他人の登録商標に注意
もしも他人に商標登録されてしまった場合には、使用することが難しくなる場合があります。
使用許諾を得るなどしないと、商標権侵害とされるおそれがあります。
商標権は全国的な権利です。
商標権侵害の場合には、使用の差止請求や、損害賠償請求がされる可能性があります。
すると、店舗名を変更したり、図形商標の場合にはロゴをデザインし直したりしなければならないこともあります。
大きな損失となるため、店名を考えたとき、ロゴを制作するときには、商標調査をすることが大切です
店名を商標登録すれば、店舗名の模倣を防げる
他人の模倣を防ぐためにも、商標登録することがおすすめです。
他人の無断使用を禁止できないと、商売がうまくいった場合に、似た店名を使った競合店が出現するおそれがあるためです。
店舗名の商標登録をするための区分は?
商品を販売する店舗と、サービスを提供する店舗とでは、商品・役務の区分をどのように指定したらよいかについて、説明しましょう。
なお、商標登録をするにあたり、指定商品・指定役務とその区分は、少なくとも一つ以上、指定する必要があります。
複数の区分を指定することも可能です。
役務区分
役務を提供するサービス業の場合には、区分の指定方法はわりと単純です。
ただしインターネット関連業種や、それ以外の業種でも、どの区分が必要かの判断が難しい場合があります。
クリーニング店の場合
下記のような区分での登録をします。
業務内容により、他の指定役務や区分が必要なこともあります。
第37類:
毛皮製品の手入れ又は修理,洗濯,被服のプレス,被服の修理
飲食店の場合
下記のような区分での登録をします。
業務内容により、他の指定役務や区分が必要なこともあります。
第43類:
飲食物の提供
商品区分
商品を販売する店舗の場合には、区分の指定方法には、いくつかの考え方があります。
オリジナル商品の製造・販売
たとえば、オリジナルブランドの服を販売するアパレル店であれば、下記の区分が必要です。
第25類:
被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物
仕入れ販売による小売店
オリジナルブランドがなく、仕入れた商品の販売のみを行うアパレル店であれば、同様に第25類での登録もできます。
店の看板や広告、包装などで、商品「被服」等について商標を使用することに変わりはないためです。
第25類:
被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物
小売・卸売(小売等役務)
しかし小売業・卸売業であっても、デパートやスーパー、あるいは総合商社のように、広範な範囲の商品を取り扱う場合に、あらゆる商品区分について登録をすることは、費用も高額、手続も煩雑です。
また、オリジナルブランドの製造販売をしない区分については、商標は、店舗のブランド名ではあっても、商品のブランド名ではありません。
一方、小売業などには、店舗設計や品揃え、商品展示、接客サービス、カタログを通じた商品の選択の工夫等といった、顧客に対するサービス業のような一面もあります。
そこで、各種商品のそれぞれの区分で登録する方法以外に、「商品の小売または卸売に関する便益の提供」という役務について、登録できるようにされています。
たとえば下記のような指定方法です。
第35類:
被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供
店舗名を商標登録する方法と注意点
店名の商標登録は、識別標識、営業標識である店名を保護し、模倣を防ぐための必要です。
店名を商標として、独占的に使用するために登録するものです。
インターネット上の店舗についても、同様に考えることができます。
特許庁に手続をして、登録がされれば、独占的に使用することができ、類似商標の無断使用をやめさせることが可能です。
製造や、独占輸入なども行うオリジナルブランドであれば、商品区分でも必要な登録をするのがよいでしょう。
オリジナルブランドではなく、他社からの仕入れ商品を取り扱うだけの場合には、第35類の小売等役務の商標登録を活用することができます。
総合小売り
デパートやスーパー、大規模ECサイトなどのように、取り扱い商品が多岐にわたる場合には、第35類の小売等役務の中でも、
「衣料品・飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
のような指定をすることが可能です。
また、あらゆる飲食料品を取り扱う場合には、
「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」
のような指定をすることが可能です。
小売等役務の注意点
小売等役務の商標登録は、広範は範囲での役務の指定が可能です。
しかし、使用意思がないか、疑義のある小売等役務を多数指定する場合には、拒絶理由通知(第3条第1項柱書)を受け、商標の使用意思を確認するため、証拠の提出が必要となる場合があります。
商品区分と役務区分の指定
商品を販売するとともに、サービスの提供もする店舗の場合には、商品と役務それぞれの区分を指定することもできます。
コーヒーの販売と、焙煎などの加工をする店舗
第30類:コーヒー
第40類:コーヒーの焙煎・加工
飲食物の提供と、持ち帰り用の販売をする店舗
第30類:和菓子
第43類:和菓子を主とする飲食物の提供
店舗名の登録は、業種により、その使用態様にもよって、指定商品・役務の記載などにさまざまな検討を必要とします。
登録の費用なども考慮しつつ、最適な方法を当サイトではご提案しています。
店名の保護と、模倣の排除には、お店の実情に合わせた効果のある商標登録をすることが大切です。