公序良俗違反の商標にはどのようなものがありますか?
社会公共の利益・一般的道徳観念に反するような商標や、法律で使用等が禁止されている商標、特定の国や国民を侮辱する商標、国際信義に反する商標、商標出願の経緯に社会的相当性を欠く商標など、商標法の予定する秩序に反するものが相当します
公序良俗を害するおそれがある商標(商標法第4条第1項第7号)は、登録が認められません。
商標法第4条第1項第7号では、公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある商標は、登録されないと規定されています。
一例として、下記のものが該当します。
商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合
「差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形」に該当するか否かは、特にその文字又は図形に係る歴史的背景、社会的影響等、多面的な視野から判断されます。
時代により公序良俗や道徳観念が変遷する場合があるためです。
「OldSmuggler」の文字は、密輸者(密輸商人を含む。)、酒類密造者の意味を有する「Smuggler」の文字を含むものであり、自他商品識別の標識としては不穏当であるとされました(昭和30年抗告審判第15号)。
「ごまの蠅」の文字は、懐中のスリまたは詐欺等を意味する用語であり、公の秩序、善良の風俗を害するおそれがあるとされました(昭和29年抗告審判第825号)。
商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合
「白書」の文字は、中央省庁が編集する政府刊行物の名称に用いられるところ、本願商標「企業市民白書」の文字をたとえば印刷物に使用した場合、これに接する取引者、需要者は政府発行の刊行物であるかのように誤認するおそれがあるとされました(東京高平成11年(行ケ)第394号)。
他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標
「特許管理士会」の漢字を横書きし、第26類「書籍、雑誌、その他本類に属する商品」を指定商品とする商標について、公序良俗違反であり無効とされました(東京高平成10年(行ケ)第299号)。
米国の大統領府を意味する「ホワイトハウス」は、公序良俗に反する商標であるとされました(審判昭60-2315)。
「ポパイ」の特徴を顕著に表した図形を配した商標は、一見して漫画の「ポパイ」そのものを直ちに認識させ、他人の著名な標章の盗用と推認し、公序良俗違反であり無効とされました(審判昭S59-19123)。
商標出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない商標
「昭和大仏」の文字は、宗教法人青龍寺の境内に建立された大日如来座像を示すものであり、無断で出願をした行為は、社会の一般道徳観念に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるとされました(審判昭60-18883)。
町内の各業者に対し使用が奨励されていることを十分承知していながら、「母衣旗」(ほろはた)の名称による利益の独占を図る意図で出願した商標は、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗いはであるとされました(東京高平成10年(行ケ)第18号)。