商標「金比羅製麺」は、「宗教法人金刀比羅宮」の略称として出願時から現在まで全国的に知られた「金毘羅」の文字を含み、「宗教法人金刀比羅宮」から登録することについての承諾を得ていないから、商標法第4条第1項第8号に該当するとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2013-18640
【審決日】平成26年10月21日(2014.10.21)
【事案】
本願商標は、別掲1のとおり、「金比羅製麺」の漢字を横書きしてなり、第29類「カレーうどんのもと,油揚げ,魚介類の天ぷら,かつお節,干しえび,焼きのり」、第30類「うどんのめん,その他穀物の加工品,めんつゆその他の調味料,香辛料」及び第43類「飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として、平成24年2月9日に登録出願されたものである。

【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、香川県仲多度郡琴平町所在の宗教法人金刀比羅宮の著名な略称である『金比羅』の文字をその構成中に含むものであり、かつ、その者の承諾を得ているものとは認められない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。」旨判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
1 商標法第4条第1項第8号について
商標法第4条第1項第8号において、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」は、商標登録を受けることができない旨規定している。
そして、 最高裁平成16年(行ヒ)343号判決(判決日 平成17年7月22日)において、この規定の趣旨は、「人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても、一般に氏名、名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には、本人の氏名、名称と同様に保護に値すると考えられる。」旨、判示されている。
2 商標法第4条第1項第8号の該当性について
(1)本願商標の構成について
本願商標は、前記1のとおり、「金比羅製麺」の文字からなるところ、「金比羅」の語は、「仏法の守護神の一つ,香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)のこと。」を、また、「製麺」の語は、「麺類を製造すること。」(ともに、広辞苑 第六版)をそれぞれ意味する語であることが認められる。
(2)「金比羅」の著名性について
ア 「金刀比羅宮」について
香川県仲多度郡琴平町所在の「宗教法人金刀比羅宮」が、古くから「こんぴら(金毘羅・金比羅)」に敬称を付して「金毘羅さま」、「こんぴらさん」等と親しみを込め称されてきたことは、例えば、別掲2の記載からも、一般に広く知られているといえる。
イ 「金比羅」について
上記アのとおり「宗教法人金刀比羅宮」が古くから「こんぴら(金毘羅・金比羅)」に敬称を付して「こんぴらさん」等と称されていること、上記(1)のとおり「金比羅」の文字が「香川県の金刀比羅宮(ことひらぐう)」を意味する語として広辞苑に掲載されていること、別掲3(1)ないし(3)のとおり、広辞苑以外の一般的な辞書にもその意味が掲載されていること、及び別掲3(4)ないし(9)のとおり、「金刀比羅宮に参詣すること」を「金比羅参り」と称していることから、本願商標の構成中の「金比羅」の文字は、「宗教法人金刀比羅宮」の略称として、本願商標の出願時において全国的に知られ、その状態が現在も継続しているものと認められる。
(3)「他人の承諾」を得たものであるかについて
請求人は、香川県仲多度郡琴平町所在の「宗教法人金刀比羅宮」から、本願商標を登録することについての承諾を得たことを証明するための書類(承諾書等)を提出していない。
したがって、本願商標は、これを登録することについて、他人の承諾を得たものとは認められない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)で認定したとおり、本願商標は、他人の名称(宗教法人金刀比羅宮)の著名な略称(金比羅)を含む商標であって、かつ、当該他人の承諾を得ているものとは認められないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものといわざるを得ない。
3 請求人の主張について
請求人は、「宗教法人金刀比羅宮」を略称する場合、「金比羅」単独で呼び捨てでは使用されず、敬称を付して「金比羅さん(様)」「金比羅宮」等のように使用されるのが通常である旨、「金比羅」という語は、香川県仲多度郡琴平町を含むその周辺地域を示す地名として認識されている旨、及び本願商標は、地名「金比羅」と名称「製麺」からなり、一連して称呼され、一連結合して識別力を持つ商標「金比羅製麺」として認識される商標である旨主張している。
しかしながら、「金比羅」の語が単独では使用されずに敬称を付して使用されることが多いとしても、「金比羅」の部分が「宗教法人金刀比羅宮」を指し示していることにはかわりがないものであるし、また、「金比羅」の語が「宗教法人金刀比羅宮」の著名な略称として認められることは、上記2(2)で認定したとおりである。
また、金刀比羅宮のみならず、その付近一帯を表す場合に「金比羅」の語が使用されている場合があるとしても、例えば「コンサイス日本地名事典<第5版> 株式会社三省堂」には、「ことひら 琴平」の見出しに「香川県中南部、仲多度郡琴平町。金刀比羅宮の門前町。【旧称】金毘羅」の記載はあるものの、「金比羅」の見出し及びその説明は掲載されていない。
そうとすれば、「金比羅」の文字は、地名を表したものと認識されるというよりは、「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして認識されると判断するのが相当である。
したがって、請求人の主張はいずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第8号に該当し、登録することができない。
したがって、本願商標が同号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。

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