商標「モッタイナイ!を、おいしい!に。」は、指定商品との関係において、これに接する取引者、需要者は「まだ食べられるのに捨てられてしまう食材をおいしい食品に変えていく」ほどの意味合いを表す標語(スローガン)の一種として認識、理解するにすぎず、本願商標は自他商品の出所識別標としては認識しえないから、商標法第3条第1項第6号に該当するとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2024-16322
【審決日】令和7年6月18日(2025.6.18)
【事案】
1 手続の経緯
本願は、令和5年10月25日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 3月26日付け:拒絶理由通知書
令和6年 5月 8日 :意見書の提出
令和6年 8月14日付け:拒絶査定
令和6年10月10日 :審判請求書の提出
2 本願商標
本願商標は、「モッタイナイ!を、おいしい!に。」の文字を標準文字で表してなり、第33類「アルコール飲料(ビールを除く。),アルコールエキス(ビール用のものを除く。),清酒,焼酎,合成清酒,白酒,直し,みりん,洋酒,果実酒,酎ハイ,カクテル,麦芽又は麦を使用したビール風味のリキュール,麦芽又は麦を使用しないビール風味のアルコール飲料,中国酒,薬味酒」を指定商品として登録出願されたものである。
【拒絶理由】
原審において、「本願商標は、「モッタイナイ!を、おいしい!に。」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「モッタイナイ」の文字は、「有用なのにそのままにしておいたり、むだにしてしまったりするのが惜しい。」の意味を有する「勿体ない」の片仮名表記と容易に認識されるものであり、「!」の文字は、「感動・興奮・強調・驚きなどの感情を表す符号」であり、「おいしい」の文字は、「物の味がよい。うまい。」の意味を有する語である。そして、昨今、食品ロス削減のための様々な取り組みが注目されているところ、この登録出願に係る指定商品を含む食品分野において、「モッタイナイ!を、おいしい!に。」に通ずる「もったいないをおいしいに」、「もったいない、を おいしいに。」及び「「もったいない」を「おいしい」に」などの文字が、「まだ十分食べられるのに捨てられてしまう食材をおいしい食品に変えていく」ほどの意味合いで、食品ロス削減のためのスローガンに使用されている実情が見受けられる。そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者は、「まだ十分食べられるのに捨てられてしまう食材をおいしい食品に変えていく」という、食品ロス削減のためのスローガンであると認識するにとどまり、自他商品の識別標識として機能しないとみるのが相当であるから、本願商標は、何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものというべきである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、拒絶したものである。
審決における判断
(1)商標法第3条第1項第6号該当性について
本願商標は、「モッタイナイ!を、おいしい!に。」の文字を標準文字で表してなるところ、本願の指定商品との関係において、その構成中の「モッタイナイ」の文字は「そのものの値打ちが生かされず無駄になるのが惜しい。」を意味する「もったいない(勿体無い)」の語を片仮名表記したものと理解されるものであり、「おいしい」の文字は「美味である。」を意味する語であって、各語の後に「感嘆や強調を表す感嘆符」である「!」の記号を配し、「モッタイナイ!」の後に配された「を」の文字は「(格助詞)体言またはそれに準ずるものを受ける。対象を示す」等を、「おいしい!」の後に配された「に」の文字は「(格助詞)変化の結果を示す。」等を、「、」は「一つの文の内部で、語句の断続を明らかにするために、切れ目に施す点。」を、「。」は「文の切れ目に打つ記号。」(いずれも出典は「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)をそれぞれ表す語である。
そして、別掲1の情報にあるように、昨今、食品ロスの削減に向けて、食べられる食品を捨てることを「もったいない」と表現し、その「もったいない」を見直すために、各省庁や地方公共団体をあげて、様々な取り組みが行われており、また、原審提示の情報や別掲2の情報にあるように、本願の指定商品に関連する分野において、「モッタイナイ!を、おいしい!に。」に通ずる「もったいないをおいしいに」や「もったいないをおいしく」等の語が、「まだ食べられるのに捨てられてしまう食材をおいしい食品に変えていく」ほどの意味合いで、食品ロスの削減に向けた取組み等を表す標語(スローガン)として使用されている実情が確認できる。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、食品ロスの削減に向けた取組み等を表す標語(スローガン)の一種として認識、理解するにすぎず、本願商標は自他商品の出所識別標としては認識し得ないものというのが相当である。
したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべきであるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標が、読点「、」、句点「。」及び符号「!」を用いつつ、視覚的に一体感と特異性を持たせている点に特徴があり、かかる構成においては、文の最後とはいえない位置に「!」を2回配し、このような表現方法は、一般的ではなく、全体として特殊な構成態様であり、また、構成全体として特定の意味合いを認識することができない造語である旨主張している。
しかしながら、本願商標の構成中、「!」は「感嘆や強調を表す感嘆符」を表す記号であって、「モッタイナイ」及び「おいしい」という語の意味を感嘆、強調する以外の意味合いを想起させないうえ、また、「。」は句点を、「、」は読点を表す記号にすぎず、これらの記号の有無によって、上記(1)のとおり、本願商標の意味合いが変わるものではなく、また、請求人が主張する構成全体として特定の意味合いを認識することができない造語であることを裏付ける証左もない。
イ 請求人は、形容詞である「もったいない(勿体無い)」の語を「モッタイナイ」と片仮名文字で表すことは必ずしも一般的であるとまではいえず、また、「おいしい」の後に「に」を使用することも通常の用法ではない旨主張している。
しかしながら、別掲3のとおり、本願の指定商品に関連する分野において、「もったいない(勿体無い)」の語を「モッタイナイ」と片仮名表記することが一般に行われており、また、上記(1)のとおり、「もったいないをおいしいに」等の語の使用の実情を踏まえれば、「おいしい」の後に「に」を使用することも特異な用法であるともいえない。
ウ 請求人は、「もったいない」の語を含む、又は「~を~に」という文型で構成された過去の商標登録例を挙げ、本願商標も自他商品の識別力が認められるべきである旨主張している。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものであるか否かの判断は、当該登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と指定商品との関係や、その商品の分野における取引の実情をも踏まえて、個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の挙げた登録例は、商標の構成態様が本願商標とは異なるものである点において、本願とは、事案を異にするものというべきであり、また、過去の登録例が存在することをもって、上記判断が左右されるものではない。
エ したがって、請求人の上記アないしウの主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。

商標の拒絶理由(登録できないもの)一覧に戻る
関連ページ:

