標章とは何ですか?
標章とは、文字、図形、記号、色彩などからなる文字や図形の表示のことで、これを商品やサービスについて使用する識別標識として使用するものが商標です
平成26年の商標法改正までは、標章については、商標法第2条第1項において「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合』と定義されていました。
ネーミング(文字)や、名称とマークの組み合わせ(文字+図形)、色つきのマーク(図形+色彩)、立体形状などが含まれるものです。
前記の法改正により、色彩のみからなる商標、音商標が新しいタイプの商標として認められました。
これに合わせて、「標章」の定義は、下記のように改正されました。
「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの」
ひとことでいえば、標章とは、ネーミングやマークなどのことで、これらに立体的形状や音などの特殊なものを含むものということになります。
商標とは、標章のうち、商品やサービス(役務)について使用する識別標識
これら標章のうち、商品やサービス(役務)について使用する識別標識が、商標です。
「商標」とは、標章(人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの)のうち、下記のように、商品またはサービス(役務)について使用するものです(商標法第2条第1項)。
一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
色彩を構成要素としていることについては、
「平成二六年の一部改正が行われるまでは、独立して商標の構成要素となることができず、文字、図形又は記号などと結合してはじめて構成要素となることができるものとされていた。また、打ち抜いたものや透明なガラス等に描いたものには色彩はないといえるので、この場合には色彩は当然に構成要素ではないが、それはちょうど文字だけからできている商標では図形及び記号が構成要素になっていないのと同様の関係に立つのである。」との解説があります。
(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)
商品とは、「商取引の目的たり得るべき物、特に動産をいう。」とされています。
役務(えきむ)とは、「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的たりうべきものをいう。」とされています。
通常使用されるサービス業の「サービス」のことと考えていいかと思います。
商標を「使用」するとは?
商標の「使用」については、商標法第2条第3項及び第4項において、「この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう」として、詳細に定められています。
一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
九 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為
十 前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為
また、商品その他の物に標章を付することには、次の各号に掲げる各標章については、それぞれ当該各号に掲げることが含まれる、とされています。
一 文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合の標章 商品若しくは商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告を標章の形状とすること。
二 音の標章 商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告に記録媒体が取り付けられている場合(商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告自体が記録媒体である場合を含む。)において、当該記録媒体に標章を記録すること。」
登録に際しては、現実に使用されていなくてもよい
登録される商標は、現実に使用しているものでなければならないのかという問題があります。
これについては、下記の解説にある理由から、いまだ使用が開始されない商標でも登録が認められています。
「登録主義においては、現実に商標の使用をしていることを商標登録の要件とすると、折角使用をしてその商標に信用が蓄積しても、出願した場合に不登録理由があることによって不登録となるような事態が予想されるから、あらかじめ使用者に将来の使用による信用の蓄積に対して法的な保護が与えられることを保証すべきであり、そのためには現実にその商標の使用をする予定のある者には、近い将来において保護に値する信用の蓄積があるだろうと推定して事前に商標登録をすべきだというのである。そして、一定期間以上使用をしなければ事後的に商標登録を取り消せばよいというのである。」
(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕)
また、商標を使用するのは、出願人(権利者)自身に限られるのか、また現実に使用しているものでなければならないのかという問題があります。
「商標登録の対象となる商標は自ら使用をしているもの、あるいは使用をしようとするものに限るのか、他人に使用をさせるものでもよいのかという問題については次のように考えられる。旧法は、商標権の譲渡をその営業とともにする場合に限ったり、使用許諾制度を認めていない等の理由から自ら使用をする意思がなければならないということができるのであるが、現行法では、商標権の自由譲渡を認め、使用許諾制度を採用したこと等から必ずしも旧法と同様に考えられない。しかし、当初から自ら使用をするものでないものに排他独占的な権利を設定するのは妥当ではない反面、いったん権利が設定された以上はその処分は一つの私的財産権として私的自治に委せた方がよいとの見解から、現行法においても商標登録は『自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標』」に限っているのである。」
(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第20版〕)
現実の特許庁の審査では、個人の出願人による「株式会社」等の文字を含む商標や、広範に商品・役務が指定されており使用の意思に疑義があるもの等について、一定の場合に拒絶理由が通知されます。