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役務について使用する商標(サービスマーク)とは?

独立して取引対象となり、他人のために行うサービスである役務について、サービス提供にあたり商標を付した物や広告を使うなどして使用をする商標を、役務商標(サービスマーク)といいます

商標法でいう役務とは、サービスのことで、独立して取引対象とすることができ、他人のために行う労務または便益をいいます。

役務は、具体的には、広告や、経営コンサルティング、放送業、クリーニング業、不動産業や金融業、運送業、旅行業、レストランやホテルなどがありますが、取引として提供されるものに限られます。
家庭内や、自社内で行われる労務または便益は、商標法でいう役務ではありません。
なお、営利・非営利を問わず、広い意味合いでの経済活動として継続的に提供されるものは含まれます。

商品販売の際に付随して提供される役務は、一定要件のもとに、小売等役務として、商標法での保護の対象となりました。

商標登録出願においては、商標を使用する商品または役務(サービス)を指定して、手続を行います。

役務商標(サービスマーク)とは

サービス(役務)について使用する商標を、サービスマーク(servicemark, SM)といいます。
商品について使用する商標である「商品商標、トレードマーク」(trademark, TM)と区別する場合に主として用います。

実際には、商品について使用する商標も、サービスについて使用する商標も、日本の商標法においては同じ扱いであり、商標登録制度は同一の1つの制度であるため、これら全体を広い意味合いで商標(trademark)と称することが一般的です。

また、役務について商標を使用することの定義については、商標法第2条第3項に規定されており、「役務について」「商標の」「使用をする」ということについては、単に一般的な言葉遣いとしてではなく、法律用語として、たとえば下記の重要な規定があります。

役務に関連する商標法の規定

商標権の効力として、「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。」(商標法第25条)とされており、商標権が強力な独占権たるゆえんです。

また、登録商標と同一の商標を、正当な権原なく、指定商品・指定役務と同一の商品・役務に使用することは商標権侵害となり(商標法第36条)、これを専用権といいますが、商標法第37条では商標の類似範囲にまで効力を広げ、「指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用」その他の行為を、「商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす』ものとしています。これを禁止権といいます。

その他、登録商標を継続して3年以上使用していないことを理由とする不使用取消審判など、商標の使用の概念は、重要なものです。

役務商標について「使用」するとは?

商標登録をすると、商標を使用することを独占できます。
承諾なく勝手に商標を使用すると、商標権侵害となるおそれがあります。

また、商標登録をする手続きの中で、商標を実際に使用するかどうか、使用意思の確認を求められることがあります。
さらに商標登録をしても、3年以上正当な理由なく使用していないと、不使用を理由として取消を請求されるおそれがあります。

このように商標の「使用」には重要な意味合いがあります。
「商標の使用」ということについては、商標法第2条第3項に規定されており、商品について使用する行為を下記のように定めています。

「商標の使用」ということについては、商標法第2条第3項に規定されており、商品について使用する行為を下記のように定めています。

「3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
(中略)
 三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
 四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
 五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
 六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
 七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
 八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
 九 音の標章にあつては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為
 十 前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為」

役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付する行為

たとえば、電車での輸送サービスで、商標を切符などに商標を印刷等することです。

三号は、「『役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。)』に標章を付する行為を『使用』とするものである。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)。

レストランの食器に商標を付す行為、レンタカーの車体に商標を付す行為なども含まれます。

役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為

たとえば、電車での輸送サービスで、商標を電車や駅員の制服などに商標を印刷等することです。

四号は「『役務の提供に当たり役務の提供を受ける者の利用に供する物』に標章を付したものを用いて実際に役務を提供する行為であり、実際のサービス取引の局面での『使用』を規定するものである。」

レストランの食器に商標を付したものを用いて料理を提供する行為、レンタカーの車体に商標を付したものを貸し出すサービスをする行為なども含まれます。

役務の提供の用に供する物に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為

たとえば、飲食店のサービスで、商標を食器に印刷等したものを見えるように置いておくことです。

五号は、「役務の提供の用に供する物」に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為である。なお、この場合『役務の提供の用に供する物』は、役務の提供を受ける者の利用に供する物を含み、これより更に広い概念である。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)。

レストランやレンタカーサービスのメニューや料金表に商標を付したものを展示する行為なども含まれます。

役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為

たとえば、クリーニング店のサービスで、仕上がった服に商標のついたタグやハンガーなどを提供することです。

六号は、「役務の提供の対象となる役務の提供を受ける者の物に標章を付する行為である。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)。

バスの定期券、映画のパンフレット、病院の診察券などに標章を付す行為なども含まれます。

電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為

七号は、「サービスマークの使用行為として、ネットワークを通じたサービス提供行為を定めたものである。改正前の三号から六号までの各規定では、ネットワークを通じたサービス提供行為の保護が明確でなかったため、『映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為』と定義することでこの点の明確化を図った。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)。

たとえば、役務を提供するウェブサイトに商標を表示してサービスを提供する行為があげられます。

商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為

たとえば、サービスの広告や価格表、取引書類などに商標を印刷等して配布したり、インターネットでこれらの情報を提示したりすることです。

八号は、「商標の広告的使用を定義したものである。商標の広告的な使い方にも信用の蓄積作用があり、また、このような他人の使い方は商標の信用の毀損を招くという理由で、商標を広告等に用いる場合もその『使用』とみるべきだという見地から、現行法ではこれを商標の使用の一態様としてとらえたのである。したがって、商品が製造される前あるいは役務が提供をされる前にその商品又は役務に使用する予定の商標をあらかじめ新聞、雑誌などに広告するような場合は、その広告は既に商標の使用となるのである。この結果、旧法と異なる点は、不使用取消審判(五〇条)について、広告による使用があれば、不使用取消しを免れることとなる点である。また、他人によるこのような使用によって民事責任が生ずるかどうかは、従来解釈上はっきりしていなかったが、これを明文化した意味もある。なお、単に不使用取消しを免れるためだけの名目的な使用の行為があっても、使用とは認められない。刑罰等については従来も罰則が課せられていたのでほとんど差異はない。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)。
なお、運送サービスの広告、レストランサービスの広告、広告業を行う広告会社の広告などは該当しますが、たとえば衣服の広告は、衣服という商品について使用するものであって、役務について使用するものではありません。

音の標章にあっては、前各号に掲げるもののほか、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為

九号は、「平成二六年の一部改正により音商標が保護対象となったことに伴って新設されたものであり、音の標章について、機器を用いて再生する行為や楽器を用いて演奏する行為といった、商品の譲渡若しくは引渡し又は役務の提供のために実際に音を発する行為を音の標章の使用行為としている。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)。

前各号に掲げるもののほか、政令で定める行為

一〇号は、「平成二六年の一部改正により、商標の定義が一部政令に委任されたことに伴って新設されたものである。
すなわち、一項の『その他政令で定める』標章が追加された際に、当該標章に必要な使用行為についても併せて整備することができるよう、標章の使用の定義も政令委任したものである。」(「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第20版〕)。

立体商標や音商標について「使用」するとは?

商標法第3条第4項においては、

「4 前項において、商品その他の物に標章を付することには、次の各号に掲げる各標章については、それぞれ当該各号に掲げることが含まれるものとする。
 一 文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合の標章 商品若しくは商品の包装、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告を標章の形状とすること。
 二 音の標章 商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告に記録媒体が取り付けられている場合(商品、役務の提供の用に供する物又は商品若しくは役務に関する広告自体が記録媒体である場合を含む。)において、当該記録媒体に標章を記録すること。」

とされています。

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