商標登録していないとどうなるのですか?
商標登録していないだけで、他人もそれを使わない、登録もしないのであれば、特にどうなるということはありません。
登録していない商標でも、このようなときには使い続けることが可能です。
しかし、商標登録していないと、誰でもその商標を使える状態になっています。
商標登録していないと、誰か他の第三者が特許庁に出願すれば、登録できる状態でもあります。
他人が先に商標登録してしまうと、登録した他人の商標と同一か、類似である場合には、使用できなくなってしまうおそれがあります(商標法第25条、第37条)。
商標権者は、使用差止や、商品や設備の除去を請求することもできるからです(商標法第36条)。
侵害の停止、予防の請求
商標登録をしていなかったときに、他人によって同一商標や、類似商標を登録されてしまうと、商標権者から、商標権侵害だといわれ、侵害の停止や予防を請求される可能性があります。
このため、せっかく作った商品や、カタログ、パッケージ、広告などを廃棄したり、作り直したりしなければならないこともあります。
商標権者、専用使用権者は、侵害の停止や予防の請求とともに、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却、その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができます(商標法第36条)。
また、商標検査に損害が生じていた場合には、損害賠償請求をされるおそれもあります。
取引先などに迷惑がかかることも
取引先に対しても、商標権侵害とされた場合には、侵害品を取り扱ったことによる迷惑をかけてしまう可能性があります。
侵害とされた商品の廃棄などをしなければならない場合など、取引先からの信頼を失っては大変です。
消費者によって、悪い評判が広まるおそれもあります。
商標登録していなくても、登録されなければ使える?
最初に述べたように、しかし、商標登録していないと、誰でもその商標を使える状態になっています。
だから、問題なく使えているので、登録しなくてもいいと考えている人もいるでしょう。
実際、世の中で使用されている商標が、皆、登録されているわけではありません。
模倣品が出回るおそれがあります。
誰も登録していない商標の場合には、誰でも自由に使える状態になっているため、特に商品が売れたりすると、偽物が出回ることが多くなります。
費用をかけて宣伝をして、ヒット商品になるほど、偽物、偽ブランド品が出てくるため、経済的に損失をこうむります。
取引にも不利になるおそれがあります
広告宣伝費や販売管理費を投下しても、偽物が簡単に出回ってしまうのでは、取引先も躊躇するでしょう。
商標登録をしていることが、取引の条件になる場合があります。
特に大手の商社、通販会社、ネットEC大手など、商標登録をしていないと取引できないか、あるいは取引条件が不利になる場合があります。
消費者が本物と偽物をうまく区別できなくなります
商標登録していないと、似た商標が出てきてしまうため、間違えて偽物を購入する人も増えることがあります。
すると自社の売上、利益が減少します。
偽物の品質が悪く、粗悪品であった場合には、本物と勘違いした消費者から、自社の評判が悪くなる可能性があります。
不正競争防止法などにより、偽物を排除できる場合もありますが、仮にできたとしても、商標登録した場合には権利の所在が明確であるのに対し、商標登録していないと、その証明が難しく、時間もかかります。
登録できない商標の場合にはどうする?
普通名称や品質表示など、登録できない商標である場合には、もともと商標登録ができません。
それが理由で、仕方なく登録していない場合もあるでしょう。
こうした場合でも、ロゴなどにすると登録できてしまいます。
しかしデザインした商標にしても、声に出してみると個性のない言葉であるため、普通名称や品質表示などをそのまま商標にしてしまっては、他と区別がつかないために不利です。
個性的、独創的な商標を考えたり、別途マスコットキャラクターを作って宣伝するなど、自社の商品やサービスを区別でき、際立つようにすることが大切です。
商標登録には、他人が登録してしまうリスクを防ぐ意味のほか、模倣を防いで自社の商標を周知させる意味があります。
個人でも商標登録はできますか、注意点は?
個人の名義で、商標登録出願を行い、登録を受けることは可能です、注意点は下記の通りです
商標登録は、個人または、法人格のある団体名義での登録ができます。
したがって、個人の名義で、商標登録出願を行い、登録を受けることは可能です。
個人が出願をする場合には、商標登録願の出願人の氏名の欄が、そのまま登録時には権利者となります。
氏名は本名でなければなりません。
なお、出願人は、2名以上の共同出願とすることも可能です。
たとえば複数の個人での共同出願や、個人と法人との共同出願とすることも可能です。
出願にあたり住所の記載についての注意点
出願人の、住所または居所の欄に、住所を番地までは記載しなければなりません。
住所とは、生活の本拠であり、原則として住民票と一致する場所のことをいいます。
居所は、生活の本拠に準じ、住民票の場所ではないが、一定の生活の場所となるところをいいます。
出願人の住所公開についての注意点
個人情報保護の観点からいえば、商標登録出願人の氏名は、特許庁のデータベース検索などでは表示され、個人の場合には住所は市町村までが表示されます。
しかし、商標公報そのものを見れば、番地までが公開されます。
番地までを公開しなくない場合、その他、住所が頻繁に変わる職業などである場合などに、居所で手続きをすることが便利です。
ただ、権利者を特定するものなので、出願人とは縁もゆかりもない住所を記載して登録することは避けなければなりません。
同姓同名の人がいる可能性もあるため、権利者の所在の証明が難しくなってしまいかねません。
個人事業での商標登録について
個人で事業を行っている方も、もちろん商標登録をすることができます。
ただし、個人事業では法人格がないために、屋号を出願人・権利者とすることはできません。
あくまでも氏名での手続きとなります。
法人での代表者名義での登録について
株式会社や一般社団法人など、法人格はあるが、代表者その他の個人での名義で登録することもできます。
実際にそのようなケースも多くあります。
この場合には、個人の権利を、法人に使用許諾するという形になることが多いと思います。
法人から個人へ、あるいは個人から法人へ、名義変更をする場合があります。
たとえば、会社の設立準備中に個人で出願をし、後に会社に商標を譲渡するような場合です。
逆に、法人から個人への譲渡のケースでは、重要な財産の譲渡とされる場合があり、取締役会決議が必要となることがあります。
こうした、個人と法人間で生じる、商標の使用料や、商標権の財務・税務上の取り扱いについては、税理士などの専門家に相談されるのがよいでしょう。
どういう人が商標権者になれますか?
個人または、法人格のある団体であれば、商標権者になることができます
商標登録出願人が特許庁に出願をし、登録されたときに、商標権者となります。
したがって、商標登録出願人は、個人または、法人格のある団体でなければなりません。
商標登録後に、譲渡や相続などによって、権利者が変更になる場合もあります。
このようなときにも、新たに権利者となる者は、個人または、法人格のある団体でなければなりません。
個人の場合
個人は、商標登録出願をして、権利者になる資格があります。
2名以上の共同出願や、法人との共同出願をして、共有の権利とすることもできます。
登録後に共有の権利とすることも可能です。
商標登録を受けるためには、権利能力を有する者であることが必要です。
商標権は、財産権の一種であるとともに、公的機関に対して手続を行い、登録という行政処分を受けるものであるため、民法にいう権利能力を必要としたものです。
自然人は出生により権利能力が認められる(民法第3条第1項)ため、未成年者でも商標権者となることができます。
法人の場合
権利能力を有するためには、法人格を有する団体であることが必要です。
任意団体や、個人事業の事業体など、権利能力なき社団それ自体は権利能力を有しておらず、権利・義務の主体にはならないため、商標権者にはなれません。
このような場合には、任意団体や個人事業の代表者個人で、商標登録を受けるなどの方法が一般的にはとられます。
法人は、具体的には、株式会社などの会社法に定める法人のほか、国や地方公共団体、独立行政法人、農業協同組合、漁業協同組合、林業組合、事業協同組合、商店街振興組合、弁理士法人、日本弁理士会のような団体などの、特別の法律によって法人格を付与された団体を含みます。
外国人の場合
なお、外国人の場合には、日本国内に住所または居所を有する者、法人であれば営業所を有する者は権利能力を有します。
それ以外の場合には、そのものの属する国が、日本と相互主義をとっているか、条約に別段の定めがある場合に、権利能力を有します。
相互主義とは、外交や通商などについて、相手国の自国に対する待遇と同様の待遇を、相手国に対して付与することとしたものです。
外国法人の場合には、当該国の法令により、日本と同等の法人格を設定した法人であれば、商標権sでゃとなることができます。
団体商標、地域団体商標についての特別の要件
その他、団体商標、地域団体商標については、別途、特別な要件があります。
団体商標
団体商標とは、事業者を構成員に有する団体がその構成員に使用させる商標です。
団体商標の登録を受けられるのは、民法34条の規定により設立された社団法人若しくは事業協同組合、その他の特別の法律により設立された組合(法人格を有しないものを除く)、またはこれらに相当する外国の法人です。
地域団体商標
地域団体商標は、「地域の名称+普通名称や慣用商標」から構成された地域ブランドの商標について、一定要件のもとに登録を認める制度です。
事業協同組合、農業協同組合、漁業協同組合など、あるいは商工会、商工会議所、特定非営利活動法人などの適格な団体であって、自由にその構成員として加入することができるものであることを、書面の提出により証明できる者が、権利者となることができます。
地域団体商標の場合には、同一地域で同一商標を使用する複数の団体がある場合には、これらが共同で出願をしなければ、登録されません。
商標は必ず登録しなければならないのですか?
必ず登録しなければならないわけではありませんが、他人による模倣、他人よる商標登録を防ぐためには、商標登録が必要です
商標として使用する文字やマークなどを、必ず登録しなければならないというものでもありません。
商標登録をしなくても、他人の権利を侵害しない限りは、その商標を使用することが可能です。
少なくとも、商標登録をしない場合でも、他人の権利を侵害するおそれがないかどうか、商標調査により確認することが必要です。
登録していないと、他人による模倣は防げません
商標登録は、特許庁に出願をして、審査の結果、登録されることにより、独占的な権利となるものです。
商標法では、この独占権について、下記のように規定しています。
(商標権の効力)
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
(侵害とみなす行為)
第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
(後略)
つまり、登録商標と、同一または類似の商標を、他人が勝手に使用することは原則としてできなくなります。
しかし、商標登録をしていない場合には、このような権利はありません。
自分が使っている商標と、同一または類似の商標を、他人が勝手に使い始めても、それをやめさせるなどの権利行使はできません。
したがって、模倣を防ぐためには、商標登録することが必要です。
登録していないと、他人が後から商標登録してしまうおそれがあります
商標登録をしていない場合には、後から同じような商標を他人に出願され、登録されてしまう可能性があります。
不正の目的による他人の出願など、登録が認められない場合もありますが、たまたま同じような商標を他人が考えて登録することが、法令上問題なく認められることもあります。
すると、以前から使用していた人であっても、その商標が著名になっているなどの特別のケースでない限り、今まで使用していた商標であっても、他人の登録後には使用できなくなってしまう可能性があります。
会社名、店舗名、ウェブサイト名、主要な商品名やサービス名などは、商標登録されることをお勧めいたします。
商標とは何ですか?
商標とは、文字、図形、記号、立体的形状や色彩またはこれらの結合、音などを、商品・サービスについて使用するもので、文字商標、図形商標、立体商標、新しいタイプの商標などのさまざまな商標があります
商標登録をする商標といえば、一般的にはロゴやネーミングが思いうかびます。
商品名やサービス名、ブランドのロゴなどが代表的なものでしょう。
一方、国際的調和の観点から、近年、商標法により保護される商標の種類にも、さまざまなタイプの新しいものが生まれています。
そこで今回は、一般的な商標から、新しいタイプの特殊な商標までの種類について解説します。
商標とは?
商標登録により保護される「商標」とは、法律では次のように定義されています。
「人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)」であって、業として商品を生産したり、役務を提供したりする者が、その商品または役務について使用するもの」です。
ごく普通に思いつく商標としては、商品やサービスのブランド名、会社名や、それらのロゴ、イメージキャラクター、業界団体等のマークなどがあげられます。
これらは、文字、図形、記号、色彩や、これらの結合した商標ということになります。
ウェブサイトの名前や、個人事業の屋号なども、商品または役務について使用するものであれば、登録をすることにより保護されます。
商標とは、事業について使用するもの
商標の定義として、もう一つの特徴は、業として商品を生産したり、役務を提供したりする者が、その商品または役務について使用するものだという点です。
事業として使うものが商標であるため、たとえば芸術のデザインなどは著作物にはなるかもしれませんが、商標ではありません。
一方、ボランティア団体のマークなど、たとえ無償で提供するサービスの名前やマークであっても、継続的に行われる事業であれば、業として使用する商標であるといえます。
商品商標と役務(えきむ)商標
業として使用する商標には、商品の名称やブランド名などをあらわす商品商標(trademark)と、サービスの名称やブランド名などに使用する役務商標(servicemark)とがあります。
商標は、業務の分野に応じて、45ある区分の中から分野を指定して登録をします。
第1類から第34類までが商品の区分、第35類から第45類までがサービス(役務)の区分です。
出願をする場合には、商品商標とは、第1類から第34類を指定するもの、役務商標とは、第35類から第45類までのいずれかの区分を指定するものといえます。
出願される商標は、従来の普通のネーミングやロゴが大半
さまざまなタイプの商標や、新しい制度などの特殊な商標の種類について見てきました。
しかし実際には、出願され登録されるもののほとんどは、従来の、文字、図形などの組み合わせの商標です。
しかし、普通の商標にも、さまざまなタイプがありますね。
文字商標は、普通の書体の文字でもよく、デザインされた書体でもよく、どのような形で登録するか、検討することが必要です。
ロゴにもいくつかのタイプがある場合がありますし、カラーの商標や、単なる黒の商標で登録することもあります。
普通の商標にもさまざまなタイプがある
どのような商標であれば登録できそうか、様々な観点から検討を行い、調査をしてから決定しなければなりません。
標準文字商標
特許庁が指定する書体での登録となる標準文字は、登録されれば、書体に限定されず、文字通り、その文字だけで権利がとれるものです。
文字商標
標準文字ではない、画像で商標を作成する場合でも、ごく普通のありふれた書体の文字であれば、権利の範囲としてはやはり、書体やデザインに左右されない権利となります。
図形商標
ロゴや、ロゴと文字との組み合わせ、キャラクターなどで登録するものは、図形商標です。
普通の書体の文字だけでは、ありふれていて権利が取れそうもない場合や、デザイン自体の特徴を権利にしたい場合には、図形商標での登録を検討することになります。
登録する商標を決定するには、弁理士に相談して解決!
日本語の商標と、アルファベットの商標とを併記して1つの商標としたり、アルファベットの商標に小さくフリガナを振ったりして出願することもできます。
これらは、どのような形で出願をすれば登録になりそうか、事前に調査をしたうえで検討します。
また、ネーミングを1つに絞る前に、いくつかの候補がある段階で、商標調査をする方が無駄がありません。
ロゴを制作する前に、ネーミングの段階で商標調査をしておかないと、できたロゴが使えないということにもなりかねません。
このあたりは経験がものをいいますので、商標に詳しい弁理士に相談をしましょう。
できれば、出願の手続きだけではなく、ネーミングの選定やロゴデザインの段階から、相談できる体制を作っておければ、安心です。
商標をわかりやすく簡単に、動画で解説
特殊な商標、新しいタイプの商標
近年、知的財産の保護の国際的な調和の観点から、音商標、ホログラム商標、位置商標、色彩のみの商標などの新しいタイプの商標も保護対象とされています。
立体商標
立体商標とは、3次元の立体的な形状や、立体形状と文字、図形などとの組み合わせ商標について、商標登録を認める制度です。
実例としては、不二家のペコちゃん、早稲田大学の大隈重信の銅像、ケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダースの人形、明治製菓のサイコロキャラメル、キューピーのキューピー人形など、様々なものが登録されています。
形状だけでは登録されるのが難しく、また立体のデザインについては、デザインの権利である意匠登録との使い分けを考えることも考慮します。
動き商標
動き商標とは、文字や図形等が時間の経過にともない、変化する商標のことをいいます。
たとえば、テレビやコンピューター画面等に映し出されて変化する、文字や図形などがあります。
コマーシャル映像や、インターネットで使われるアニメーションのロゴなどで、時間の経過につれて変化するものが、動き商標の一例です。
ホログラム商標
ホログラム商標とは、文字や図形等がホログラフィーなどの方法により、見る方向によって変化する商標のことです。
たとえば、クレジットカードの表面に、見る角度によって異なる文字や図形等が見えるものなどが、ホログラム商標に含まれます。
色彩のみからなる商標
色彩のみからなる商標とは、単色や複数の色彩の組合せのみからなる商標であって、輪郭なく使用できるもののことです。
そのほか、商品の包装紙や、広告用の看板等の色彩を付する対象物によって、統一して用いられる色彩が考えられます。
たとえ特定ジャンルの商品やサービスについての登録であっても、色彩を独占させることはむやみには認められません。
著名なもの、たとえば、消しゴムのパッケージの色を特定の3色にすることや、銀行やコンビニエンスストアのカラーなどに登録事例がみられます。
音商標
音商標とは、音楽、音声、自然音などの、音により構成される商標であり、聴覚で認識される商標のことです。
登録にあたっては、楽譜の提出など、手続きにも特徴があります。
たとえば、テレビCMに使われるサウンドロゴ、パソコンの起動音、ジングルなどが想定され、登録例にもこのようなものがあります。
位置商標
位置商標とは、図形などを商品等に付す場合に、その位置が特定される商標のことです。
たとえば、「包丁の柄の中央部分の周縁に図形を付した商標」、「ゴルフクラブ用バッグの側面下部に図形を付した商標」などがあげられます。
出願人の資格による特別な商標制度
これまでは、商標の構成によるさまざまな種類を紹介してきました。
一般の商標では、会社や財団法人などの法人格のある団体か、個人であれば、出願人となる資格があります。
こうした通常の商標登録の手続きとは異なる、出願人の資格に基づく特別の制度としては、下記のものがあります。
団体商標
団体商標とは、事業者を構成員に有する団体が、その構成員に使用させる商標です。
商品・役務の個別の出所を明らかにするものではなく、団体の構成員が扱う商品やサービスとしての共通的性質を表示する商標をいいます。
団体商標となりうるものの一例としては、たとえば、長野県の味噌の製造販売業者の団体が扱う「信州味噌」、あるいは京都の織物業者が扱う「西陣織」、羊毛製品についての団体が扱う「ウールマーク」について、構成員に使用させる商標を団体が登録するものがあげられます。
地域団体商標
地域団体商標は、「地域の名称+普通名称や慣用商標」から構成された商標について、地域の団体による登録を認める制度です。
「地名+商品名など」を単に普通の文字であらわしただけの商標は、一定の要件を満たし、一定の周知性がある場合に限り、登録することができます。
地域の名産品や特産品などの地域ブランドを活性化し、保護するために設けられている制度です。
事業協同組合、農業協同組合、漁業協同組合などの適格な団体であって、自由にその構成員として加入することができるものである必要があります。
また、団体の構成員に使用させる商標に限ります。
さらに、団体またはその構成員の商品・役務を表示するものとして、たとえば隣接都道府県や地域で周知となっているものでなければなりません。
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商標と著作権との違いは?
商標は事業を行う際の識別標識で登録によって権利が発生し、著作権は文化の保護のために創作と同時に権利が発生します
商標と著作権、どちらも聞いたことがある人は多いでしょう。
ネット上のコンテンツを利用したり、書き込んだりする際に、これらに注意するようにという話もよく耳にします。
知的財産の権利であることはなんとなくわかっても、その違いや、どちらで保護されるものなのか、わからない点もあるのではないでしょうか。
そこで商標と著作権の違いについて、整理して解説します。
商標と著作権の制度の違い
商標
商標登録は、商標を保護するために、特許庁に対して出願をし、ネーミングやロゴなどの登録をする制度です。
商標法では、
「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする」(商標法第1条)
とされています。
つまり、商標登録の制度は、ネーミングやロゴなどの事業に使用する識別標識を保護し、取引の信用秩序を維持するための、産業政策によるものです。
手続の管轄は、経済産業省の外郭官庁である特許庁となります。
著作権
著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものをいい、創作した時点で著作権が発生し、登録手続きをする必要がありません。
著作権法では、
「著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする」(著作権法第1条)
とされています。
つまり、著作権の制度は、文芸、音楽、美術、映像などの著作物を保護し、文化の発展とその成果の公正な利用を維持するための、文化政策によるものです。
なお、著作者の権利を明確にしたり、ライセンス契約や権利の譲渡等をするなどの便宜上、創作年月日の登録や、第一発行年月日の登録、実名の登録、権利についての登録をすることができます。
手続の管轄は、文部科学省の外郭官庁である文化庁となっています。
権利の期間の違い
著作権には、複製権、翻案権、頒布権などのさまざまな権利があり、さらに元の著作物を利用した二次的著作物の権利があるなど、複数の権利の束のような性格があります。
さらに著作権には、著作者の氏名表示権、公表権、同一性保持権といった人格権という側面もあります。
こうした違いを除けば、独占的に使用、利用できる権利という点では似ています。
著作権は、著作物の創作と同時に発生し、原則として、著作者の死後70年を経過するまでその権利が存続します。
一方、商標権は、登録日から10年間ですが、10年ごとに更新し、希望すれば半永久的に保有できるという特徴があります。
長く使用すればするほど、一般的には商標に付随する信用が増大するためです。
商標と著作権の保護対象の違い
最も注意するべき点は、商標と著作権それぞれの保護対象の違いです。
独創的なネーミングを考えた時に、うろ覚えの知識では、もしかしたら著作権で守れるのではないかと勘違いしてしまうかもしれません。
デザイナーに依頼してロゴを制作したときには、ロゴのデザインを、著作権ごと譲渡してもらうなどの契約をすることがあります。
そこでロゴのデザインには元々著作権があると安心してはいませんか?
ここで安心してしまうと、後で問題が生じるかもしれません。
著作権の保護対象の種類
著作物の種類には、たとえば下記のものがあります。
論文、小説、脚本、詩歌、俳句、講演などの、言語の著作物
楽曲や、楽曲を伴う歌詞などの、音楽の著作物
日本舞踊、バレエ、ダンスなどの舞踊、パントマイムの振り付けなどの、舞踏、無言劇の著作物。
絵画、版画、彫刻、漫画、書、舞台美術、美術工芸品などの、美術の著作物。
建造物自体や、その設計図などの、建築物の著作物。
地図、学術的な図面、図表、模型などの、地図、図形の著作物。
劇場用映画、テレビ映画、ビデオソフトなどの、映画の著作物。
写真の著作物
プログラムの著作物
上記の著作物(原著作物)を翻訳、編曲、変形、翻案し創作した、二次的著作物。
百科事典、辞書、新聞、雑誌、詩集などの、編集著作物。
データベースの著作物
このうち、商標との関係で、商標でも著作権でも保護されるものはどれでしょうか。
別の言い方をすると、著作権のある商標はどれなのか、ということについて検討してみます。
ネーミングなどの文字商標は、言語の著作物にあたるか?
著作権法で保護される著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものです。
また、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属するものであることも必要です。
一般にネーミングは、商品やサービスの名称であって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属さないものであるほか、思想または感情の表現ではありません。
さらに、短い言葉であるため、独創的なネーミングであっても、創作的に表現したとまでは認められないといえます。
ネーミングに著作権が認められることはほぼないといってよいでしょう。
ネーミングの公募などの募集要項で、著作権は主催者に帰属する、といったような決まりがある場合でも同じです。
後から著作権を主張されてもめることを防ぐために、念のために入れた規定だと考えられるためです。
キャッチフレーズなどの文字商標は、言語の著作物にあたるか?
企業のスローガンや、標語、商品の宣伝文句などの、いわゆるキャッチフレーズは、そもそも商標登録が認められないことが多いものです。
指定商品・指定役務の宣伝広告や、指定商品・指定役務との直接的な関連性は弱いものの企業理念・経営方針等を表示する標章のみからなる商標については、識別力のない商標(商標法第3条第1項第6号) であるとして登録されません。
商標登録が認められなかった事例としては、「パールブリッジを渡ってきました」、「さわやかさをお届けします」、「たっぷりカリフォルニア太陽の味」などがあります。
一方、「マックスはあなたの手!」は登録が認められました。
こうしたキャッチフレーズについても、大半は短い文章であり、創作性が認められず、著作権がないものがほとんどだといえます。
著作物であるかどうかが争われた裁判例としては、スピードラーニング事件というものがあります。
知財高裁は
「キャッチフレーズのような宣伝広告文言の著作物性の判断においては、個性の有無を問題にするとしても、他の表現の選択肢がそれほど多くなく、個性が表れる余地が小さい場合には、創作性が否定される場合があるというべき」
として、
「他の表現の選択肢はそれほど多くない」、「語句の選択は、ありふれたもの」だと判断しタコの事例では、著作物であることを否定しています(知財高判平成27年11月10日).
ロゴなどの図形商標は、美術の著作物、図形の著作物にあたるか?
文字に一定のデザインを施したフォントには、著作権が認められません。
フォントの使用にあたり規約が定められていることはあっても、利用者との契約に過ぎず、著作物だという根拠にはなりません。
文字をデザインしたロゴであっても、著作権はまず認められないことがほとんどです。
この点は、ネーミングの場合と同様に、文字をデザインしたロゴは、商品やサービスの名称であって、文芸、学術、美術、音楽の範囲に属さないものであるほか、思想または感情の表現ではありません。
独創的なデザインであっても、著作物といえるほどの創作性はほとんどの場合にはないといってよいでしょう。
裁判例としては、アサヒビールのロゴ「Asahi」の著作物性が争われた事件があります。
東京高裁では、
「文字は万人共有の文化的財産ともいうべきものであり、また、本来的には情報伝達という実用的機能を有するものであるから、文字の字体を基礎として含むデザイン書体の表現形態に著作権としての保護を与えるべき創作性を認めることは、一般的には困難」
としています。
さらに、
「仮に、デザイン書体に著作物性を認め得る場合があるとしても、それは、当該書体のデザイン的要素が『美術』の著作物と同視し得るような美的創作性を感得できる場合に限られることは当然である。」
とされました(平成8年1月25日)。
美術の著作物と同視し得るほどの創作性がある場合に、著作権が認められる余地は残されています。
しかし、ネーミングやロゴなどの商標が、著作権で保護されると考えてしまうことは、たいへん危険であることがおわかりいただけるでしょう。
キャラクターの図形商標、立体商標、音商標は、美術や音楽の著作物にあたるか?
特殊な態様の商標としては、キャラクターの図形や、立体商標が美術の著作物にあたるかどうか、音商標が音楽の著作物にあたるかどうかということも、検討してみたいと思います。
図形商標の場合でも、キャラクターの絵などの場合には、著作物性が認められる可能性が高いといえます。
漫画のキャラクターなどは、もともと著作物の中に登場する絵であって、文字をデザインした図形商標にくらべ、創作性が高いものだからです。
後述するように、漫画「ポパイ」の事例では、「ポパイ」、「POPEYE」という名称には著作物性が認められなかったものの、絵柄については認められています。
三次元の立体からなる商標については、看板などの立体では著作権はないものが多いと考えられます。
しかし立体商標の場合にも、キャラクターの無為ぐるみなどには、著作物性が認められるケースも多いのではないかと思います。
音の商標については、楽曲の長さや創作性にもよりますが、著作物性が認められるケースは多いであろうと推察されます。
他人の著作物を勝手に商標登録できる?
商標法第4条第1項第7号では、「公の秩序または善良の風俗を害するおそれがある商標は、商標登録することができない」と規定しています。
一例としては、その商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反するような場合や、他の法律によってその使用が禁止されている商標、国際審議に反するような商標である場合などには、公序良俗に反するとして、登録が認められません。
仮に審査を通過して登録されてしまった場合でも、登録後に無効審判を請求して権利を無効にすることができます。
「ポパイ」の特徴を顕著に表した図形を配した商標の登録は、一見して漫画の「ポパイ」そのものを直ちに認識させ、他人の著名な標章の盗用と推認し、商標法第4条第1項第7号に該当し無効であるとされた事例があります(無効昭和58-19123)。
この特許庁での無効審判では、「ポパイ」の文字自体は著作物ではないとしながらも、
「本件商標が、『ポパイ』の図形を直ちに想起させるものである以上、本件商標の使用にたいして著作権が及ぶことに変わりはない。」
として、ポパイのキャラクター図形の著作物性を認めています。
なお、商標権が他人の著作権と抵触するものである場合には、無効審判で権利を無効にする手続のほか、
「商標登録出願の日前に生じた他人の著作権若しくは著作隣接権と抵触するときは、指定商品又は指定役務のうち抵触する部分についてその態様により登録商標の使用をすることができない。」という規定もあります(商標法第29条)。
商標と著作権についての注意点
以上、商標と著作権の違いについてみてきましたが、創作性のあるキャラクターなどを除けば、著作権法では商標は保護できないことがわかります。
著作権の相談に対応できる特許事務所もあります。
デザインしたロゴなどの、創意工夫をした商標であっても、商標登録については専門家である弁理士に相談をするのがよいでしょう。