商標権とは何ですか?
商標権は、独占的に商標を使用できる専用権と、類似商標の使用をさせない禁止権をもち、商標権侵害行為を排除できる効力がある権利です
商標権は、知的財産権の中でも、ネーミングやロゴなどの商標について、独占権を与え、保護する制度です。
特許庁に登録された商標権は、その商標と、指定した商品・役務により権利の範囲が定まります。
知的財産権には、特許庁に登録して権利が発生する産業財産権と、登録しなくても権利が発生する著作権などがあります。
産業財産権には、特許権、実用新案権、意匠権があります。
商標権の、他の知的財産権との違い
特許権・実用新案権との違い
特許権や実用新案権は、発明などの新しい技術を使った物や構造、その製造方法などを保護する技術的な権利です。
意匠権との違い
意匠権は、物のデザインを保護する権利です。
これらは、技術進歩にしたがって次第に陳腐化し、新しい技術が生まれると普遍的な技術となるため、一定期間後は権利が終了し、社会に公開されます。
著作権との違い
著作権は、文化の発展のため、文章や絵画、建築、写真、彫刻などを保護する権利です。
登録をしなくても、権利は創作のときに発生します。
管轄は特許庁ではなく、文化庁です。
商標権
これに対し商標権が保護するのはブランドです。
商標を使用し続けることにより、ブランドの信用が高まるため、商標権は更新することができ、半永久的に権利を維持することも可能です。
商標権の効力
商標権は、独占排他的な効力を持つ、強い権利です。
専用権
商標権は、指定商品または指定役務について登録商標の使用をする独占的権利であるため、他人の使用を禁止する専用権としての効力を有しています(商標法第25条)。
禁止権
さらに、同一商標のほか、類似商標を指定商品または指定役務について使用すること、さらにはこれらに類似する商品・役務について、他人が商標を使用することを禁止する効力があります(商標法第37条)。
差止請求権
商標権者・専用使用権者は、自己の商標権・専用使用権を侵害する者や、侵害するおそれがある者に対し、侵害の停止・予防を請求することができます。
さらに、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却、その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができます。
損害賠償請求権
故意または過失によって、商標権を侵害した者に対し、これによって生じた損害について、不法行為に基づく賠償請求をすることが可能です。
他人の商標登録を排除する効力
また、同一・類似の他人の商標が登録されるのを阻止する効力を有しています。
商標権が設定されると、同一の商標はもちろん、類似の商標であっても、同一または類似の指定商品・指定役務について、他人が商標登録することはできません。
商標権の効力の制限
商標権は、一定の場合には権利行使できない制限があります。
商標権の効力が及ばない範囲
次に掲げる商標には、商標権の効力が及ばず、使用の差止請求などをすることが認められません。
自己の肖像・氏名・名称や、著名な雅号、芸名、筆名、これらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
氏名、会社名、著名なペンネームやグループ名など
指定商品・類似商品の普通名称、品質表示
指定商品・類似商品の普通名称、品質表示等産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産、使用の方法・時期、その他の特徴、数量、価格などを普通に用いられる方法で表示する商標
指定役務・類似役務の普通名称、品質表示等
提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法・時期、その他の特徴、数量、価格を普通に用いられる方法で表示する商標
その他の一定の場合
識別力がない態様の商標など
先使用による商標の使用
商標登録出願前から、本国内において、不正競争の目的でなく、同一・類似商標を使用していた結果、出願の際には既に、需要者の間に広く認識されている先使用権者は、継続してその商品・役務について商標の使用を継続でき、使用の差止請求などをすることが認められません。
その他にも、一定の場合に、商標権の効力の例外があります。
商標権の活用
商標権は、無形の知的財産であるため、さまざまな活用ができます。
商標権は財産権でもあるため、使用権の設定をすることができます
商標権はライセンスをすることにより、使用権の設定をすることができます。
専用使用権
独占的な使用権である専用使用権は、登録することにより設定されます。
通常使用権
非独占的で重ねていくつも設定できる通常使用権は、契約により発生します。
商標権は、権利の移転をすることができます
商標権は譲渡や相続などにより移転することができます。
指定商品・指定役務ごとに分割して移転することも可能です。
商標権の発生
商標権は、設定の登録により発生します。
設定の登録とは、登録査定の後に、登録料を納付して、特許庁が備える登録原簿への登録が行われた時です。
登録査定から登録料の納付まで
拒絶理由がないとき、あるいは拒絶理由通知に対し、意見書・手続補正書等の書類を提出し、拒絶理由が解消した場合には、登録査定となります。
商標登録出願のフローチャートを示します。
黒字に白抜き文字のところが、出願人・代理人が行うアクションです。
白地に黒文字のところは、特許庁が行う処理です。
登録査定の場合には原則として10年分の登録料を納付すれば、登録になります。
なお、5年ごとに2回に分けて分割納付することもできますが、納付する登録料は割増になります。
商標権は、設定の登録により発生
登録料を支払えば、登録となりますが、商標法では下記のように規定されています。
(商標権の設定の登録)
第十八条 商標権は、設定の登録により発生する。
2 第四十条第一項の規定による登録料又は第四十一条の二第一項の規定により商標登録をすべき旨の査定若しくは審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付すべき登録料の納付があつたときは、商標権の設定の登録をする。
商標公報
商標が登録されたときは、商標公報に掲載されます。
商標権者の氏名または名称、商標登録出願の番号、願書に記載した商標、指定商品または指定役務、登録番号及び設定の登録の年月日、その他の必要事項が掲載されます。
商標公報は、設定の登録があってから発行されるもので、権利の発生には直接は関係なく、登録後に異議申立をする人の便宜ともなり、商標公報に掲載される日が、異議申立期間の算定基準日となります。
商標登録証
後日、登録番号が付き、商標登録証が送られてきます。
商標登録証も、権利の発生に直接的に関係するものではありません。
商標登録証は、賞状のような証書ですが、権利の存在を証明するものは、登録されていることの公的な証明である特許庁の登録原簿です。
商標登録証は、紛失・破損等した場合には再交付を申請することができます。
商標権をわかりやすく簡単に、動画で解説
具体例
登録第69105号
牛乳石鹸共進社株式会社
登録第3212860号
株式会社ひよ子
登録第3007352号
東海旅客鉄道株式会社
登録第5282556号
協同組合飛騨木工連合会
商標権の存続期間
商標権の存続期間は、設定の登録の日から10年をもって終了しますが、商標権者の更新登録の申請により、10年ごとに更新することができます。
商標権の消滅
商標権は、存続期間の更新をしなかったときは、消滅します。
また、登録の際に5年ごとの分割納付にした場合で、後期5年分を納付しなかったときにも消滅します。
登録後に、異議申立、無効審判、取消審判により権利の消滅が確定した場合にも、消滅します。
また、相続人の不存在の場合、商標権を放棄した場合にも消滅します。
関連ページ:
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