登録商標とは何ですか?
登録された商標のことを登録商標(registered trademark)といいます。
特許庁に商標登録出願をして、登録査定が来たのちに登録料を納付することで、登録手続きが完了します。
これにより発生する権利が商標権です。
「登録商標」とは
商標法第2条第5項に、次のように規定されています。
この法律で「登録商標」とは、商標登録を受けている商標をいう。
「登録商標」と「商標登録」との違い
「商標登録(trademark registration)」の意味は「商標登録すること」です。
「登録商標(registered trademark)」とは意味が異なります。
登録商標をわかりやすく簡単に、動画で解説
登録商標の効果
商標登録をすると、その商標を、指定商品・指定役務について独占的に使用できる専用権が生じます。
また、同一の商標と、類似の商標を、他人が使用することを防げる(禁止権)ようになります。
さらに、同一の商標、類似の商標を、他人が登録することを防ぎます。
類似の商標には、次の3つがあります。
同一商標で、類似の商品・役務について使用する商標
類似商標で、同一の商品・役務について使用する商標
類似商標で、類似の商品・役務について使用する商標
商標登録すると、権利が設定される
専用権は、「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。」(商標法第25条)ことによるものです。
禁止権は、「次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用(以下、略)」(商標法第37条)とあることによる効果です。
登録商標に生じる手続的な効果
商標登録証が発行される
商標登録をすると、商標登録証が発行されます。
商標登録証は、賞状のような書面で、権利の内容を明らかにしたものですが、登録証の発行そのものは権利の創設に直接かかわるものではありません。
商標公報に掲載される
商標登録をすると、商標公報に掲載されます。
登録商標は、異議申立の対象とされる
商標公報の発行から2か月間、異議申立の対象となります。
登録異議申立は誰でも行うことができ、商標掲載公報の発行の日から2月以内に限り、商標登録が登録されるべきでないことを理由として、取消を求めるものです。
商標権の存続期間が定まる
商標登録をすると、登録日を基準に、権利期間の起算日となり、更新登録期限もその日を基準に算定されます。
商標権の存続期間は、設定の登録の日から10年をもって終了しますが、商標権者の更新登録の申請により更新することができます。
登録商標の模倣を防ぎ、安心して使い続けられるようになります
商標権がもつ専用権によって、登録は独占的に商標を使用できます。
それだけでなく、類似商標の使用を禁止することができるため、紛らわしい商標を他人が許可なく使用することができなくなります。
このため、商標は真似されにくくなり、安心してビジネスを進め、ブランドの宣伝をして広めることができます。
もちろん、登録商標に類似する、他人の紛らわしい商標は登録することもできません。
登録商標があれば、偽ブランド品を排除できるようになります
仮に無断で類似商標を使用した場合には、登録商標の権利者は、他人に対し、使用差し止めや損害賠償請求をすることができるようになります。
登録商標は、権利は国家によって設定登録されているため、権利の存否を争う余地がありません。
迅速に裁判手続きなどによって模倣品を排除することができます。
また、損害額の算定などについて、商標権者の便宜を図る規定も、商標法にはあります。
さらに、税関における輸入差止や、偽ブランド品の警察による取り締まりもできるため、偽ブランド商品などが出回ることを防ぎます。
登録商標の表示をすることができます
登録商標(registered trademark)であることを明示し、商品やパッケージ、説明書、ウェブサイト、広告などに表記することができます。
表記方法に決まりはありませんが、「登録商標」「商標登録第*******号」のような表記や、商標に®マークを付す方法などがあります。
®マークは、Registered Trademarkの略で、登録されていることを意味するものとして、慣例的に使用されています。
登録商標であることを明示し、普通名称化を防げるようになります
普通名称とは、商品や役務について、一般的な名称として誰もが使える言葉です。
商標が広まり有名になると、まるで一般的な名称のような知名度を獲得することがあります。
しかし、登録商標であることを明示していれば、他人の使用を中止すること、登録した商標であると注意喚起をすることができます。
登録した後に、事後的に普通名称になってしまうと、誰もが使えることになってしまいます。
したがって適正な商標管理をして、他人の不適切な使用がされていないかを注意するようにすれば、普通名称化を防ぐことができます。
登録商標は、他人に使用許諾することもできます
登録商標は、ライセンスによって第三者に商標を使用させることもできます。
商標が知られ、需要者の間でも信用が高まり、評価されるようになると、取引先などから商標を使用したい、ビジネスを協力して行いたいという申し出がされることがあります。
ライセンスをすることにより、ビジネスの拡大を図ったり、ライセンス料による経済的な利益を得ることもできるようになります。
信用が保護される結果、さまざまなビジネス上の恩恵を得られるようになります
このようにして、商標登録されたブランドは、紛らわしい商標を排除でき、ブランドが日本全国に知れ渡るように、積極的なビジネス展開をすることも可能になります。
商標登録をすると、取引先などからの信頼や、知名度も上昇します。
消費者からも、適正に使用される商標によって、ブランドの信頼が向上し、求人などにおいても有利になります。
たとえば、就職人気が高まり、採用活動を有利に進められることもあるでしょう。
商品を取り扱いたい、ビルにテナントとして入居してほしいなど、さまざまなビジネスチャンスが生まれる機会も増えることになります。
ライセンス契約の種類には、どのようなものがありますか?
独占的に使用を許諾する専用使用権と、重ねていくつも許諾できる通常使用権とがあります
商標権には、私権としての財産権的な側面があります。
そこで、使用許諾、いわゆるライセンス契約をすることにより、他人の商標権の使用を許諾することができます。
また、他人に商標権を独占的に使用許諾することもできます。
使用許諾にあたっては、使用地域、使用期間、使用態様(商品ジャンル、使用方法など)などの範囲を決めて、許諾することができます。
契約自由の原則によるものです。
なお、使用許諾には、複数の他人の許諾可能な通常使用権と、独占的に許諾する独占的通常使用権、および独占的使用権を特許庁に登録することにより発生する専用使用権があります。
通常使用権
商標権者は、その商標権について通常使用権を許諾することができます。
通常使用権は、登録商標を使用できる権利です。
通常使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を有します。設定行為で定める範囲は、期間、地域、使用範囲(指定商品・指定役務)などであり、商標権者との契約により定めます。
通常使用権の発生
通常実施権の設定は、特許庁が備える登録原簿に登録しなくても、契約によって効力を生じます。
通常使用権の移転
通常使用権は、商標権者(専用使用権についての通常使用権にあっては、商標権者及び専用使用権者)の承諾を得た場合、相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができます。
通常使用権が共有に係るときは、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又はその持分を目的として質権を設定することができません。
質権・再使用許諾の設定
通常使用権者は、商標権者(専用使用権についての通常使用権にあっては、商標権者及び専用使用権者)の承諾を得た場合に限り、その通常使用権について質権を設定し、又は他人に通常使用権を許諾することができます。
通常使用権者は、質権者があるときは、その承諾を得た場合に限り、その通常使用権を放棄することができます。
通常使用権を登録したときの効力
通常実施権は、その登録をしたときは、その特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権をその後に取得した者に対しても、その効力を生じます。
通常実施権の移転、変更、消滅若しくは処分の制限又は通常実施権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅若しくは処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができません。
独占的通常使用権
後述するように、独占的な専用使用権は登録することにより発生します。
しかし登録しなくても、独占的な使用許諾のライセンス契約をすることにより、独占的な通常使用権とすることも可能です。
専用使用権
商標権者は、その商標権について専用使用権を設定することができます。
専用使用権は、登録商標を独占的に使用できる権利です。
専用使用権者は、設定行為で定めた範囲内において、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有します。設定行為で定める範囲は、期間、地域、使用範囲(指定商品・指定役務)などであり、商標権者との契約により定めます。
専用使用権の発生
専用使用権の設定は、特許庁が備える登録原簿に登録しなければ、その効力を生じません。
専用使用権の移転
専用使用権は、商標権者の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができます。
相続その他の一般承継によるものを除き、専用使用権の移転は、登録しなければ、その効力を生じません。相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければなりません。
質権・再使用許諾の設定
専用使用権者は、商標権者の承諾を得た場合に限り、その専用使用権について質権を設定し、又は他人に通常使用権を許諾することができます。
専用使用権者は、質権者、許諾による通常使用権者があるときは、これらの者の承諾を得た場合に限り、その専用使用権を放棄することができます。
専用使用権の変更等の効力
専用使用権の変更、消滅(混同又は特許権の消滅によるものを除く。)又は処分の制限は、登録しなければ、その効力を生じません。
商標権は全国一律のものですか?
商標権は、日本国内全域で一律の権利です
商標権は、各国ごとの法律によっても設定される権利です。
日本では商標法によって商標権を得るための手続や要件、商標権の効力などが定められています。
したがって、商標権は、日本の法令の効力が及ぶ全国すべての範囲にわたって、同じ強い効力が認められます。
ひとことでいえば全国一律の権利です。
商標登録は各国で独立
商標登録は、各国の商標法に基づき、それぞれの国の特許庁などの官庁に対し、登録手続きをするもので、それぞれの国ごとに権利が生じます。
各国の商標の制度は、国ごとにやや違いはありますが、条約などによって保護の効力が定められ、一定の保護レベルがされるように国際協力が図られています。
工業所有権の保護に関するパリ条約では、 第6条の商標の登録の条件、各国の商標保護の独立において、
「商標の登録出願及び登録の条件は,各同盟国において国内法令で定める。」
「いずれかの同盟国において正規に登録された商標は、他の同盟国(本国を含む。)において登録された商標から独立したものとする。」
とされています。
権利は国ごとに発生し、手続も各国ごとに定めることとされているのです。
海外でも、商標権は国ごとに設定されるものですが、たとえば欧州の商標制度のように、条約加盟国域内において登録を認める制度もあります。
日本国内での商標権の効力
商標権は、独占的権利であるため、他人の使用を禁止する効力を有します。
また、同一・類似の他人の商標が登録されるのを阻止する効力を有しています。
商標法では、独占権について下記のように規定しています。
(商標権の効力)
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
この独占権に付随して、下記のように他人の無断使用を差し止める差止請求権のほか、損害賠償請求権についても規定されています。
(差止請求権)
第三十六条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
さらに、同一商標のみならず、類似商標の使用を禁止する禁止権についても規定されています。
(侵害とみなす行為)
第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
(後略)
商標権の財産権的側面
商標権は行政処分によって発生する公法的権利であると同時に、設定された商標権には、私権としての財産権的な側面があります。
実際、商標権は企業の財務諸表では無形資産として計上されますし、商標権を譲渡すれば対価を得ることが可能な場合があります。また、相続の対象ともなります。
また、使用許諾いわゆるライセンス契約をすることにより、他人の商標権の使用を許諾することができます。
商標の使用は、商標権者自らがすることもできますし、使用許諾をした使用権者に使ってもらうこともできます。
こうした場合、使用許諾の範囲を決めるのが通例ですが、全国で使用を許可することもできますし、地域ごとに範囲を決めて、それぞれ別の使用権者に使用してもらうこともできます。
商標権の使用許諾
商標権自体は、全国一律の権利ですが、使用許諾にあたっては、使用地域、使用期間、使用態様(商品ジャンル、使用方法など)などの範囲を決めて、許諾することができます。
契約自由の原則によるものです。
なお、使用許諾には、複数の他人の許諾可能な通常使用権と、独占的に許諾する独占的通常使用権、および独占的使用権を特許庁に登録することにより発生する専用使用権があります。
関連ページ:
商標権とは何ですか?
商標権は、独占的に商標を使用できる専用権と、類似商標の使用をさせない禁止権をもち、商標権侵害行為を排除できる効力がある権利です
商標権は、知的財産権の中でも、ネーミングやロゴなどの商標について、独占権を与え、保護する制度です。
特許庁に登録された商標権は、その商標と、指定した商品・役務により権利の範囲が定まります。
知的財産権には、特許庁に登録して権利が発生する産業財産権と、登録しなくても権利が発生する著作権などがあります。
産業財産権には、特許権、実用新案権、意匠権があります。
商標権の、他の知的財産権との違い
特許権・実用新案権との違い
特許権や実用新案権は、発明などの新しい技術を使った物や構造、その製造方法などを保護する技術的な権利です。
意匠権との違い
意匠権は、物のデザインを保護する権利です。
これらは、技術進歩にしたがって次第に陳腐化し、新しい技術が生まれると普遍的な技術となるため、一定期間後は権利が終了し、社会に公開されます。
著作権との違い
著作権は、文化の発展のため、文章や絵画、建築、写真、彫刻などを保護する権利です。
登録をしなくても、権利は創作のときに発生します。
管轄は特許庁ではなく、文化庁です。
商標権
これに対し商標権が保護するのはブランドです。
商標を使用し続けることにより、ブランドの信用が高まるため、商標権は更新することができ、半永久的に権利を維持することも可能です。
商標権の効力
商標権は、独占排他的な効力を持つ、強い権利です。
専用権
商標権は、指定商品または指定役務について登録商標の使用をする独占的権利であるため、他人の使用を禁止する専用権としての効力を有しています(商標法第25条)。
禁止権
さらに、同一商標のほか、類似商標を指定商品または指定役務について使用すること、さらにはこれらに類似する商品・役務について、他人が商標を使用することを禁止する効力があります(商標法第37条)。
差止請求権
商標権者・専用使用権者は、自己の商標権・専用使用権を侵害する者や、侵害するおそれがある者に対し、侵害の停止・予防を請求することができます。
さらに、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却、その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができます。
損害賠償請求権
故意または過失によって、商標権を侵害した者に対し、これによって生じた損害について、不法行為に基づく賠償請求をすることが可能です。
他人の商標登録を排除する効力
また、同一・類似の他人の商標が登録されるのを阻止する効力を有しています。
商標権が設定されると、同一の商標はもちろん、類似の商標であっても、同一または類似の指定商品・指定役務について、他人が商標登録することはできません。
商標権の効力の制限
商標権は、一定の場合には権利行使できない制限があります。
商標権の効力が及ばない範囲
次に掲げる商標には、商標権の効力が及ばず、使用の差止請求などをすることが認められません。
自己の肖像・氏名・名称や、著名な雅号、芸名、筆名、これらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
氏名、会社名、著名なペンネームやグループ名など
指定商品・類似商品の普通名称、品質表示
指定商品・類似商品の普通名称、品質表示等産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産、使用の方法・時期、その他の特徴、数量、価格などを普通に用いられる方法で表示する商標
指定役務・類似役務の普通名称、品質表示等
提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法・時期、その他の特徴、数量、価格を普通に用いられる方法で表示する商標
その他の一定の場合
識別力がない態様の商標など
先使用による商標の使用
商標登録出願前から、本国内において、不正競争の目的でなく、同一・類似商標を使用していた結果、出願の際には既に、需要者の間に広く認識されている先使用権者は、継続してその商品・役務について商標の使用を継続でき、使用の差止請求などをすることが認められません。
その他にも、一定の場合に、商標権の効力の例外があります。
商標権の活用
商標権は、無形の知的財産であるため、さまざまな活用ができます。
商標権は財産権でもあるため、使用権の設定をすることができます
商標権はライセンスをすることにより、使用権の設定をすることができます。
専用使用権
独占的な使用権である専用使用権は、登録することにより設定されます。
通常使用権
非独占的で重ねていくつも設定できる通常使用権は、契約により発生します。
商標権は、権利の移転をすることができます
商標権は譲渡や相続などにより移転することができます。
指定商品・指定役務ごとに分割して移転することも可能です。
商標権の発生
商標権は、設定の登録により発生します。
設定の登録とは、登録査定の後に、登録料を納付して、特許庁が備える登録原簿への登録が行われた時です。
登録査定から登録料の納付まで
拒絶理由がないとき、あるいは拒絶理由通知に対し、意見書・手続補正書等の書類を提出し、拒絶理由が解消した場合には、登録査定となります。
商標登録出願のフローチャートを示します。
黒字に白抜き文字のところが、出願人・代理人が行うアクションです。
白地に黒文字のところは、特許庁が行う処理です。
登録査定の場合には原則として10年分の登録料を納付すれば、登録になります。
なお、5年ごとに2回に分けて分割納付することもできますが、納付する登録料は割増になります。
商標権は、設定の登録により発生
登録料を支払えば、登録となりますが、商標法では下記のように規定されています。
(商標権の設定の登録)
第十八条 商標権は、設定の登録により発生する。
2 第四十条第一項の規定による登録料又は第四十一条の二第一項の規定により商標登録をすべき旨の査定若しくは審決の謄本の送達があつた日から三十日以内に納付すべき登録料の納付があつたときは、商標権の設定の登録をする。
商標公報
商標が登録されたときは、商標公報に掲載されます。
商標権者の氏名または名称、商標登録出願の番号、願書に記載した商標、指定商品または指定役務、登録番号及び設定の登録の年月日、その他の必要事項が掲載されます。
商標公報は、設定の登録があってから発行されるもので、権利の発生には直接は関係なく、登録後に異議申立をする人の便宜ともなり、商標公報に掲載される日が、異議申立期間の算定基準日となります。
商標登録証
後日、登録番号が付き、商標登録証が送られてきます。
商標登録証も、権利の発生に直接的に関係するものではありません。
商標登録証は、賞状のような証書ですが、権利の存在を証明するものは、登録されていることの公的な証明である特許庁の登録原簿です。
商標登録証は、紛失・破損等した場合には再交付を申請することができます。
商標権をわかりやすく簡単に、動画で解説
具体例
登録第69105号
牛乳石鹸共進社株式会社
登録第3212860号
株式会社ひよ子
登録第3007352号
東海旅客鉄道株式会社
登録第5282556号
協同組合飛騨木工連合会
商標権の存続期間
商標権の存続期間は、設定の登録の日から10年をもって終了しますが、商標権者の更新登録の申請により、10年ごとに更新することができます。
商標権の消滅
商標権は、存続期間の更新をしなかったときは、消滅します。
また、登録の際に5年ごとの分割納付にした場合で、後期5年分を納付しなかったときにも消滅します。
登録後に、異議申立、無効審判、取消審判により権利の消滅が確定した場合にも、消滅します。
また、相続人の不存在の場合、商標権を放棄した場合にも消滅します。
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使用しない商標を、他社に売ったりライセンス契約をしたりできますか?
商標は、商標権者が使用せずに他人に使用許諾することもでき、譲渡等をすることもできますが、最初から使用予定に疑義があるなど一定の場合には登録できない、登録後の取消などの注意すべき点があります
商標は、使用をするか、少なくとも使用をされるご予定・可能性があるものについて登録をするものです。
この場合、商標を使用するのは、商標権者には限定されず、使用許諾いわゆるライセンス契約により他人に使用させることを前提とするものであっても、問題ありません。
団体商標や、地域団体商標のように、団体の構成員という他人に使用させることを前提とした制度もあります。
通常の商標権であっても、たとえばフランチャイズ契約のように、他人に使用許諾することを想定している場合など、商標権者が使用せずに、あるいは商標権者とともに使用許諾を得た他人が使用することも一般的に行われています。
使用しないことが明らかな商標については、登録ができません
ただし、商標登録出願においては、「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をしないことが明らかな商標については、登録されません(商標法第3条第1項柱書)。
「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をしないとは、たとえば、下記のような場合です。
1.出願人の業務の範囲が法令上制限されているために、出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合
2.指定商品又は指定役務に係る業務を行うことができる者が法令上制限されているため、出願人が指定商品又は指定役務に係る業務を行わないことが明らかな場合
他人の著名商標、不正目的と出願など、出願をしても登録されないか、登録後に取消、無効になる場合もあります。
他人の著名商標や、不正目的で利益を得るための商標など、一定の商標は拒絶理由に該当し、登録されません。
万一、登録された場合であっても、登録後に異議申し立てがされて取り消されたり、無効審判により無効になるおそれがあります。
また、このような目的で登録した商標が、商標単独で高く売れたり高額な使用料を得られたりすることはほとんど聞きません。
なお、著名な他者の商標や、氏名等、あるいはドメイン名等は商標登録されず、また事案によっては不正競争行為とされることがあります。
この他にも、商標権者や使用権者による不正使用を理由として、商標権が取り消される場合がありえます。
3年以上の不使用を理由とする取消の場合も
このような不正目的の出願や、不正使用のような商標ではなく、正当に出願され登録された商標であっても、実際に使用しているかどうかの審査はされないものの、3年以上不使用の場合に取り消されることもあります。
商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれかが商標の使用をしているか、使用の準備を具体的に行っていること、あるいは不使用について正当な理由があると認められた場合には、取り消されません。
日本国内での商標権の効力
商標権は、独占的権利であるため、他人の使用を禁止する効力を有します。
また、同一・類似の他人の商標が登録されるのを阻止する効力を有しています。
商標法第25条では、独占権について「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。」と規定しています。
この独占権に付随して、他人の無断使用を差し止める差止請求権のほか、損害賠償請求権についても規定されています。
同一商標のみならず、類似商標の使用を禁止する禁止権についても規定されています。
これらは、国の設定登録により権利が発生するという、商標権の公法的側面です。
商標権の私権としての側面
商標権は行政処分によって発生する公法的権利であると同時に、私権としての財産権的な側面があります。
商標権は企業の財務諸表では無形資産として計上されますし、商標権を譲渡すれば対価を得ることが可能な場合があります。また、相続の対象ともなります。
したがって、商標権を適法に譲渡することに、何ら問題はありません。
事業譲渡に伴い商標権を移転することも、一般的に行われます。
単独の権利を共有にするなど、商標権の持ち分を移転することも可能です。
商標権を、指定商品・指定役務ごとに分割して移転することも可能です。
なお、商標権の移転については、譲渡証書などを添付して、特許庁に対し「商標権移転登録申請書」を提出する必要があります。
商標権の使用許諾
使用許諾いわゆるライセンス契約をすることにより、他人の商標権の使用を許諾することができます。
商標の使用は、商標権者自らがすることもできますし、使用許諾をした使用権者に使ってもらうこともできます。
使用許諾には、複数の他人の許諾可能な通常使用権と、独占的に許諾する独占的通常使用権、および独占的使用権を特許庁に登録することにより発生する専用使用権があります。
商標権自体は、全国一律の権利ですが、使用許諾にあたっては、使用地域、使用期間、使用態様(商品ジャンル、使用方法など)などの範囲を決めて、許諾することができます。
契約自由の原則によるものです。
商標登録するとどのようなメリットがありますか?
商標登録をすると、独占的に使用でき、類似商標の使用や登録を禁止できる商標権が得られるため、商標を保護し、模倣を防ぐことができるメリットや、財産権として活用できるメリット、事業の信用が守られるメリットがあります
商標登録することのメリットは、その強い効力にあります。
商標権が発生すると、商標権者は、指定商品または指定役務について登録商標の使用をする権利を専有します。
商標を使用することについての独占権です。
商標権は、日本国内全域での権利で、全国的にメリットが得られます
商標権は、各国ごとの法律によっても設定される権利です。
日本では商標法によって商標権を得るための手続や要件、商標権の効力などが定められています。
商標権は、日本の法令の効力が及ぶ全範囲での、全国一律の権利です。
つまり全国を市場に、独占的な権利を得てビジネスを行うことができます。
独占的に使用できる効力とメリット
商標権は、独占的権利であるため、他人の使用を禁止する専用権としての効力を有します。
また、同一・類似の他人の商標が登録されるのを阻止する効力を有しています。
このため、事業を行う上で模倣や混同を防ぎ、ビジネスを有利に進められるメリットがあります。
取引先や消費者にとっても、ブランドの信用が守られるというメリットがあります。
商標法では、独占権について下記のように規定しています。
独占的な使用権として登録された専用使用権が設定されたときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有します。
(商標権の効力)
第25条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。
類似商標も使用禁止できる効力とメリット
同一商標のみならず、類似商標の使用を禁止する禁止権についても規定されています。
つまり、同一商標のほか、類似商標を指定商品または指定役務について使用すること、さらにはこれらに類似する商品・役務について、他人が商標を使用することを禁止する効力があります。
同一商標だけではなく、類似のものも含め、他人による模倣を防ぐことができるのがメリットです。
商標法では、侵害に関する条文において、下記のように規定されています。
(侵害とみなす行為)
第37条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
1 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
(後略)
侵害行為を排除できる効力とメリット
上記の独占権、禁止権に付随して、他人の侵害行為等について、無断使用を差し止める差止請求権のほか、損害賠償請求権についても商標法で規定されています。
商標権が侵害されると、差止請求権、損害賠償請求権などを行使することができます。
(差止請求権)
第36条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 商標権者又は専用使用権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。
損害賠償請求は、民法第709条の不法行為による損害賠償請求権に基づくものです。
なおその特則として、商標法では下記のように規定されています。
(損害の額の推定等)
第38条 商標権者又は専用使用権者が故意又は過失により自己の商標権又は専用使用権を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求する場合において、その者がその侵害の行為を組成した商品を譲渡したときは、次の各号に掲げる額の合計額を、商標権者又は専用使用権者が受けた損害の額とすることができる。
(後略)
これにより、模倣品などの商標権侵害が生じた際には、権利の所在があらかじめ明確になっているばかりでなく、損害額の推定などにも権利者に便宜となる規定があるため、迅速に侵害の排除ができるというメリットがあります。
商標権の財産権的側面とメリット
商標権は行政処分によって発生する公法的権利であると同時に、設定された商標権には、私権としての財産権的な側面があります。
つまり、知的財産としてさまざまな活用ができ、利益を得られるというメリットがあります。
商標権は企業の財務諸表では無形資産として計上されますし、商標権を譲渡すれば対価を得ることが可能な場合があります。また、相続の対象ともなります。
また、使用許諾いわゆるライセンス契約をすることにより、他人の商標権の使用を許諾することができます。また、他人に商標権の一部または全部を使用許諾することもできます。
使用許諾にあたっては、使用地域、使用期間、使用態様(商品ジャンル、使用方法など)などの範囲を決めて、許諾することができます。
契約自由の原則によるものです。
なお、使用許諾には、複数の他人の許諾可能な通常使用権と、独占的に許諾する独占的通常使用権、および独占的使用権を特許庁に登録することにより発生する専用使用権があります。
商標の正当な使用により信用が蓄積されブランドが育つメリット
商標は、正当に使用し、それを継続することにより、商標を世に知らしめ、信用が創造、蓄積され、広告的な機能も発揮することとなります。
そのため、特許権などの他の知的財産権とは異なり、10年間の商標権の存続期間が経過しても10年ごとに、希望する間は更新登録をすることができます。
商標に信用が蓄積されるということは、商標権者にとっては長期にわたってブランドの信用が維持され、増大させることもできるというメリットがあります。
消費者にとっても、偽ブランドが排除されることにより、商品やサービスの適切な選択ができ、市場の秩序が守られるというメリットがあります。
商標登録をせずにいたら他人に登録されていて、どうしたらいいですか?
弁理士の無料相談を活用し、状況の確認、対応の検討をすることが大切です
まずは冷静に、状況を見きわめて検討する必要があります。
たまに権利者側に連絡をとろうとするご相談者がおられますが、くれぐれも拙速にそのようなことはせず、いち早く弁理士にご相談ください。
他人の商標を無効または取り消しにできないかどうか
権利者の登録内容や出願時期等を調べ、その商標権を無効または取消にできないかどうか、検討いたします。
たとえば、識別力がない(商標法第3条第1項各号)、あるいは類似商標があるのに登録されている(商標法第4条第1項第11号)等の無効理由がないかどうか、といった検討をいたします。さらに、ご相談者の商標は登録していないけれど、周知・著名になっているものではないでしょうか?
また、権利者との間で、過去に取引や契約交渉があったなどの、特別なご事情に心当たりがないでしょうか。公序良俗に反した登録(商標法第4条第1項第7号)、不正目的での著名商標にただ乗りした登録(商標法第4条第1項第19号)であるかもしれません。
登録時期によっては、異議申立をすることができる場合もあります。
あるいは、継続して3年以上不使用になっている商標ではないでしょうか。不¥使用を理由とした取消審判を請求できる可能性があります。
無効審判等は、手続をすれば反論の機会のため、相手方にもその書類が送付され、当事者対立構造となります。
このようなわけで、拙速に相手に連絡を取ったりしないよう、弁理士に相談して対応を考えましょう。
今から自分の商標を登録できないかどうか
また、並行して商標登録出願を行い、商標権が無効、取消になった場合に備えておくことも必要である場合が多いです。
そのほか、契約交渉によって商標権の一部または全部を譲り受けたり、ライセンス交渉をしたありすることになる場合もありますが、その場合でも、商標登録出願はしておいた方がいいケースがあります。
交渉等に当たっては、必要に応じ弁護士をご紹介することもあります。
無効も取消も、さらに交渉もうまくいかない場合には、相手から商標権侵害と言われかねないリスクもあります。こちらの面からも弁理士は慎重に検討いたします。
他人の商標があっても使用可能かどうか
たとえば、相手の出願前から、ご相談者の商標は使用された結果、周知なものとなっていた場合には、先使用権(商標法第32条)を主張して、使用継続可能な場合があります。
また、ご相談者の名称や、指定商品等の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途等、あるいは指定役務等の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途等を、ご相談者が普通に用いられる表示方法で使用するなどの場合には、それが登録商標の使用であっても、権利の効力が及ばず(商標法第26条)、商標権侵害とはならない場合があります。
専門家以外の独自判断は厳禁
これらは専門的な検討を要し、審決例、判決例などまで調査するなどして、さらにご相談者の主張を立証、補強する証拠を必要としますので、商標に詳しい弁理士に相談する必要があります。
登録された商標の内容を、後から変更することはできますか?
商標の登録内容は、後から変更はできないため、必要であれば新規の登録などを考えるのがよいでしょう
商標を出願したり、あるいは審査を経て登録された後に、実際には少し違う商標を使うことになったりするケースがあります。
ネーミングを少し変えたり、ロゴのデザインを変更したりする場合です。
このようなときはどのように対応したらよいかについて、解説します。
商標の登録内容は、変更できないのが原則
結論から述べてしまうと、登録後になって、登録されている商標の内容を変更することはできません。
特許などの場合には、不明瞭な記載の訂正、特許請求の範囲の減縮などに限って、訂正する手続きがあるのとは異なります。
商標の場合には、商標そのものと、指定商品・指定役務の記載によって権利が明確に定められ、権利になった時点でこうした不明瞭な点はありません。
また、審査を経て登録されたものであるため、登録後に変更すると、審査をした意味がなくなってしまうためです。
権利の一部放棄と、出願人の変更などは可能
複数の区分のうち、一部の区分全体を放棄したり、一部の指定商品・指定役務を放棄したりということは可能です。
商標権の一部抹消という手続きにより行います。
わざわざ権利を一部放棄するということに利益はないように思えますが、他人の商標登録出願との関係で、登録した商標権の一部は使用しないので放棄するといった場合に、この手続きをすることがあります。
一部放棄は、商標の審査を再度する必要がないため、手続きが認められています。
商標権者の変更も、権利の内容そのものには変更がないため、認められます。
譲渡や相続、会社の合併などによる権利者の変更のほか、結婚などによる氏名の変更、会社名の変更、住所の変更などの手続きをすることができます。
商標そのものを変更したときは?
ネーミングを変更したり、ロゴのデザインを変更したような場合には、商標を登録後に変更することは一切認められません。
したがって、変更後の商標についての権利が必要であれば、最初から出願をし直して登録することが必要です。
特に、変更後の商標が、登録した商標と類似しないものである場合、その可能性が強い場合には、細心の注意を払わなければなりません。
そもそも、変更後の商標と、同一か類似の商標がないかどうか、調査をして問題ない場合でないと、安心して使用することもできません。
変更後の商標が、登録した商標と類似しない場合には、新たな商標登録出願をして、早めに登録することが必要です。
登録した商標に、1文字か2文字付け加えただけでも、元の商標とは類似しない商標になってしまうことがあります。
変更後の商標が、登録した商標と類似する場合には、もう少し安心です。
第三者は、登録商標と類似する商標を登録することができないため、変更後の商標を登録されてしまうおそれが少ないためです。
少ないと書いたのは、類似するかどうかは、結局は特許庁の審査しだいなので、微妙なケースがありうるためです。
やはり、新たな商標登録出願をして、登録をしたほうがよいでしょう。
指定商品・指定役務や、区分を追加したいときは?
指定商品・指定役務の追加や、区分の追加をすることも、商標の登録後には一切認められません。
したがって、同じ商標について、これらを追加する権利が必要であれば、その指定商品・指定役務や区分について、最初から出願をし直して登録することが必要です。