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「ボランティア」「NPO」の商標登録の取消しは正しかったのか? -2006年08月11日
商標登録をはじめとする知財ニュースでの誤報や、誤解を招く表現は、商標に関していえば、そのほとんどが次のいずれかが理解されていないことに起因しています。
(1)商標登録は、登録された業務(商品またはサービス)の範囲のみについて独占使用権があること。
(2)登録商標であっても、自らのブランド名(商品名やサービス名、ブランド名など)として使用する場合、つまり商標として使用する場合にのみ、商標権侵害の問題となること。
(3)商標登録された言葉であっても、商品・サービスの普通名称や、それらの品質表示等にすぎない言葉は、誰もが使用できること。
雑誌についての商標登録「ボランティア」「NPO」に対する異議申立
角川書店が「ボランティア」「NPO」という言葉を商標登録したことに対し、第三者から特許庁に異議申立が提出され、審理の結果、登録が取り消されたことがありました。
これは、正しかったのでしょうか。
(1)角川書店は、特許庁で決められている商品の区分を第16類として、指定商品「新聞、雑誌」についてのみ、商標登録を行い、独占権を得ました。
あくまでも新聞、雑誌のタイトルのみを独占することとなり、指定商品以外でほかの人が使用をしても、この商標権を侵害することにはなりません。
にもかかわらず、当時の報道や関係者の発言でも、「NPO」という言葉を含む新聞、雑誌は発行できなくなるといった誤解や、さらに極端な誤解では「NPO」という言葉が独占されるかのような論調がありました。「NPO」という言葉を含んでいても商標全体として類似しないタイトルであれば、新聞、雑誌についても使用可能ですし、それ以外の類似しない商品やサービス、非営利活動について「NPO」を使用可能であることは明らかでした。
(2)角川書店の商標が登録されていても、商標として使用しなければ商標権侵害にはなりません。
たとえば新聞や雑誌での文章中での言葉の使用や、書籍のタイトル内での言葉の使用は単なる著作物の内容であって、商標として使用しているわけではありません。また、角川書店の雑誌の名称として記載しても、角川書店以外の人のブランド名として記載しているわけではなく、問題ありません。
(3)特定非営利法人の英文略称である「NPO」は、当然に誰でも使用できるもので、普通名称、慣用商標、役務の質や内容などを普通に表示する使用が自由であることは、商標法第26条に明記されています。
雑誌について一般的な言葉を商標登録することは認められているはずなのに
しかも、商標法にしたがって登録すべきかどうかの審査を特許庁では行いますが、その際の審査基準として、「商品やサービスの質や内容を普通に表示する言葉であっても、「新聞、雑誌」については原則として登録を認めることが記載されています。
「NPO」の登録はこれに沿ったものだったのです。
「世界」「相撲」「よいこ」「おともだち」「現代」「モーニング」「FRIDAY」「環境教育」「ランチタイム」「学習まんが」「世界の絵本」「パーティー/PARTY」(/は改行を示す)「デザート/DESSERT」「フラワー」「保育園」「入学準備」などは、いずれもごく普通の書体で、新聞や雑誌について商標登録されています。
しかしこれらの言葉が使えなくなったなどという話はもちろんありません。
「NPO」「ボランティア」の商標登録を取り消したことによって、誰もが「NPO」という新聞・雑誌を発行できますが、同じ名称の雑誌が発行されたり、悪意でタイトルを模倣した雑誌を発行されたりするおそれがあります。
むしろ、登録を認めないことは、悪意の模倣を許してしまうおそれがあります。こうなると商標の信用に関わる問題であると思います。