カテゴリー
事務所通信 | NEWS LETTER | 当サイトのお知らせ | 弁理士業務雑感
商標登録 | 商標豆知識 | 商標あれこれ | 検索してみる
デザイン | ブランドロゴ | マスコットキャラクター | ゆるキャラ
商標登録事務所通信 ≡ 記事一覧
商標による店舗の外観・内装の保護 -2019年09月10日
商標制度による店舗の外観・内装の保護と、そのための法改正や基準作りが、具体的なスケジュールにのってきそうです。
2019年9月19日開催予定の、産業構造審議会知的財産分科会商標制度小委員会・第27回商標審査基準ワーキンググループにおいて、「店舗の外観・内装の商標制度による保護等について」が議題にあげられています。
店舗の外観・内装の模倣等を防ぐための保護については、従来、不正競争防止法による保護がなされてきました。
また、物品のデザインを保護する意匠登録の制度や、立体商標の制度を活用して、部分的にはこれまでも保護が図られてきました。
店舗の外観・内装の保護といっても、無制限に権利を設定して保護していては、きりがなく、イメージとしては、著名なカフェチェーンの外観や、コンビニエンスストア、銀行など、チェーン店の統一されたデザインの周知になっている外観・内装等について、保護する制度の拡充が検討されているところです。
昨年12月に開催された第4回商標制度小委員会では、
「我が国の商標制度において、店舗の外観・内装は、店舗の外観・内装の立体形状それ自体が独立して出所を認識させるものであれば、立体商標としての保護の対象となり得る。」とされ、
新しいタイプの商標として既に導入されている、店舗の特定の位置に付する標章は位置商標、店舗に用いられる色彩は色彩のみからなる商標として、現行制度でも保護の対象となり得ることも明確にしていました。
店舗の外観・内装の商標制度による保護について(PDF)
店舗の外観・内装は、店舗の機能や美観の面からも各種の工夫がなされ、特に大規模チェーン店などでは統一したデザインで使用され、企業や店舗のブランディングのめに保護を認める必要性が議論されてきました。実際に模倣される事例も後を絶たないことから、商品等の出所を示す外観はトレードドレスとして、国際的にも保護される制度を設ける国もあります。ただしトレードドレスの定義も、保護の対象や法制度もまちまちです。
トレードドレス(Wikipedia)
参考判例:
コメダ珈琲店事件(平成27年(ヨ)第22042号)
2016年12月、東京地方裁判所において、店舗外観が不正競争防止法上の「商品等表示」に該当することが認められ、コメダ珈琲店の店舗外観と類似する店舗外観の使用禁止を認める仮処分決定が下されました。
コメダ珈琲店の店舗外観は、立体商標の登録によっても保護されています。
このような流れを受けて、
産業構造審議会知的財産分科会第5回商標制度小委員会(2019年8月)では、今後の対応の方向性として、特許庁による店舗の外観・内装の保護に関する調査研究、海外の制度・運用及び事例、わが国商標制度上の法制面・運用面の論点整理などを行うとしています。
参考資料 店舗の外観・内装の商標制度による保護等について(PDF)
この中で、商標制度において店舗の外観・内装を保護する場合の権利範囲の特定方法等については、具体的な検討として、下記の3案の検討を行っています。
「A案:
立体商標、位置商標、色彩のみからなる商標等を組み合わせた商標を新しいタイプの商標として認め、登録により保護を与える案。権利範囲が広くなり得るのがメリットだが、諸外国の制度との整合性が低く、第三者の商標選択の幅が狭まることや、調査負担が増大するとの懸念もある。」
「B案:
店舗の外観又は内装からなる立体商標を出願する際に、商標を構成する要素を実線で、構成しない要素を破線等で描くことを認めるとともに、商標の詳細な説明を願書に記載できるようにする案。既存の立体商標制度をより柔軟な制度としつつ、権利範囲を明確化できるのがメリットである。」
「運用の見直し:
立体商標・位置商標・色彩のみからなる商標で、店舗の外観・内装を保護しやすくするため、商標の特定に関する商標審査基準・便覧を見直す。」
その結果、現行の立体商標制度の見直しによって店舗の外観・内装を登録するB案が望ましく、運用の見直しを行うことが望ましいと結論づけるとともに、一方で安易に店舗の外観・内装が登録されることにより、店舗デザインの選択の幅が限定されることや、無用な紛争が増加することは好ましくないとして、今後、制度の検討がされることとなりそうです。
なお、意匠法においても、従来は、建築物は「物品(=動産)」に含まれないことから意匠権で保護することがきなとされてきましたが、「特許法等の一部を改正する法律(令和元年5月17日法律第3号)の成立によって意匠法も改正され、意匠の定義に「建築物…の形状等」が追加されました。
改正意匠法が施行された後は、建築物の外観デザインについても意匠権の保護対象とされることになります。