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他人の氏名を含む商標(商標法第4条第1項第8号)の登録事例 -2025年06月14日
2024年4月1日以降、他人の氏名を含む商標については、その他人の承諾を得ていなくても、一定の要件を満たせば登録が認められるようになりました。
商標法第4条第1項第8号を含む改正法の施行から8か月以上たった翌2025年以降、登録例がみられるようになっています。
他人の氏名(商標の使用をする商品・役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名)の審査の具体的要件
商標法第4条第1項第8号では、次の商標が登録が認められないとされています。
(1)他人の肖像
(2)他人の氏名(商標の使用をする商品・役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名)・名称
(3)他人の著名な雅号、芸名、筆名
(4)上記(1)~(3)の著名な略称
を含む商標であって、その他人の承諾を得ていないもの。
「商標の使用をする商品または役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名」の審査に関する具体的な取扱い
商標の使用をする商品・役務の分野において、需要者の間に広く認識されている氏名以外については、登録の対象とされますが、商標審査便覧では、次のように具体的な取り扱いを明示しています。
「商標の使用をする商品又は役務の分野」の判断にあたっては、人格権保護の見地から、当該商標の指定商品・指定役務のみならず、その他人と関連性を有する商品・役務のほか、他人が製造・販売する商品や提供する役務等に限られない、当該他人の活動をも勘案するとされています。
なお、その際には、出願された商標の指定商品・指定役務と、他人と関連性を有する商品・役務等の業種、性質、需要者の範囲等、両者の関係性が考慮されます。
「需要者の間に広く認識されている氏名」とは、その分野において「需要者の間に広く認識されている氏名」であり、その判断にあたっては、その他人の氏名が認識されている地理的・事業的範囲を十分に考慮したうえで、その商品・役務に氏名が使用された場合に、その他人を想
起・連想し得るかどうかに留意することとされています。
周知性の判断に際しては、その他人の氏名が認識されている範囲を十分に考慮し、その商品または役務に氏名が使用された場合に、相当程度の需要者が当該他人を想起・連想し得るかどうかの観点から審査され、全国的に知られている者や分野におけるすべての需要者層に知られている者でなくとも周知であることもあります。
他人の氏名を含む商標について政令で定める要件の審査に関する具体的な取扱い
他人の氏名を含む商標であって、商品・役務について需要者に広く知られた他人が存在しないものであっても、政令で定める要件に該当しないものは、登録されません。
政令の要件は、具体的には、次の要件が規定されています。
1 商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること。
2 商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと。
「相当の関連性」について
「相当の関連性」の判断においては、登録後は氏名が商標として使用されることに鑑み、出願商標に含まれる氏名と出願人自身または出願人の業務との結びつきの程度が考慮されます。
「相当の関連性」があるものと判断する場合とは、出願人自身の氏名、創業者や代表者の氏名、出願前から継続的に使用している店名などのほか、出願時においては使用していなくても、使用の準備を相当程度進めている等、使用していることと同視できるような事情が確認できる場合などです。
「相当の関連性」があると考えられる例として、次のものがあげられます。
・商標に含まれる他人の氏名が、出願人の雅号、芸名又は筆名である場合
・商標に含まれる他人の氏名について、芸能事務所たる出願人が考案した芸名であって、出願人と業務上の関係がある者が使用している場合
・商標に含まれる他人の氏名について、出願人がその氏名を使用した商品を製造・販売することを内容とするライセンス契約を当該他人と結んでいる場合
・商標に含まれる他人の氏名について、出願人が自己の業務に係る商品または役務の出所を表示するキャラクター名として使用している事実がある場合
「相当の関連性」は、商標構成中の文字としての「他人の氏名」との関連性であって、実在する他人との関連性は必要ありません。
ただし同姓同名のすべての他人から承諾を得ている事実があれば、当該他人の人格的利益を害するおそれは低いと考えられるため、これを「相当の関連性」があると判断する要素として考慮されます。
他人の氏名を含む商標の登録事例
登録第6889089号
登録日:令和7(2025)年 1月 24日
出願日:令和6(2024)年 4月 1日
商標:KENKIKUCHI
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:
第14類
貴金属製置物,キーホルダー,身飾品(「カフスボタン」を除く。),ペンダント,バングル,指輪,ブローチ,ネックレス,チェーン(宝飾品),ブレスレット,ピアス,貴金属製のベルト飾り,カフスボタン,身飾品用留め金具,時計,宝飾品用チャーム
第18類
蹄鉄,かばん類,袋物,財布,カード入れ,かばん用ベルト,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄,革ひも
第25類
男性用・女性用及び子供用の被服,カフス,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物
登録第6895827号
登録日:令和7(2025)年 2月 13日
出願日:令和6(2024)年 4月 1日
商標:山岸一雄大勝軒
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:
第30類
菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,食用粉類
第43類
飲食物の提供,中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供
登録第6895828号
登録日:令和7(2025)年 2月 13日
出願日:令和6(2024)年 4月 1日
商標:山岸一雄
商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務:
第30類
菓子(肉・魚・果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,食用粉類
第43類
飲食物の提供,中華料理その他の東洋料理を主とする飲食物の提供
他人の氏名を含む商標についての出願人の対応
上記の登録例のうち、最初のものは個人による出願です。
次の2つの登録例は、中華料理店などを営む法人による出願です。
他人の氏名等を含む商標登録出願については、拒絶理由通知を受けて対応するほかに、あらかじめ上申書の提出などにより出願人が対応することもできます。
上記の具体例のうち、最初のものはストレートに登録され、後の2つの例では上申書により下記の説明がなされ、拒絶理由通知を受けることなく登録が認められました。
1.相当の関連性について
本願商標はラーメン店創業者である故人の氏名であり、各種資料において記載があること。
2.不正の目的について
出願人は、個人が存命中に商標出願をすることについて承諾を得ており、以前に別の出願で承諾書の原本を提出してあること。
また出願人は店舗及び通販サイト等において商標として幅広く使用していること。
3.他人の周知商標について
商標の使用をする商品・役務の分野において、需要者の間に広く認識されている商標としては他に存在していないこと。