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2024(令和6)年4月1日商標法4条1項8号(他人の氏名等)、第11号(他人の類似商標)等の改正法施行 -2023年11月25日
2023年11月24日、商標法改正に関する下記の法令が閣議決定されました。
「不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」
「不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」
第211回通常国会で成立した「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が2023年に成立したことを受けて、その施行期日を定め、不正競争防止法施行令、商標法施行令、商標登録令、特許法等関係手数料令、関税法施行令の関係規定が整備されたことになります。
これにより、他人の氏名等を含む商標についての商標法第4条第1項第8号、他人の類似商標についての第4条第1項第11号と、その関連の先願についての第8条、その他の改正が、2024年(令和6年)4月1日に施行されることが決まりました。
不正競争防止法改正関連の措置事項、中小企業の特許に関する手数料の減免制度の見直しを除く、商標に関する規定の改正について解説します。
「不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」及び「不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令」が閣議決定されました 特許庁6
不正競争防止法等の一部を改正する法律要綱[PDF] 特許庁
商標法第4条第1項第8号(他人の氏名等を含む商標)
商標法の一部改正により、商標登録を受けることができない商標として従来、他人の氏名・名称登録含む商標は登録できないこととされていました。
この要件を緩和し、登録できない商標が下記のような内容に改正されます。
第4条第1項第8号
「他人の肖像若しくは他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であって、政令で定める要件に該当しないもの。」
他人の氏名を含む商標を登録するためには、次の(1)、(2)の要件を満たす必要があります。
(1)他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)ではないこと
自分の氏名を含む商標であっても、それが同姓同名の他人が存在する場合には、従来、商標登録ができませんでした。
改正法により、同一の業務の分野(商標の使用をする商品役務の分野)において需要者に広く認識されている他人の氏名がある場合だけに限定され、それ以外は登録できるようになります。
(2)他人の氏名を含む商標であって、政令で定める要件に該当するもの
他人の氏名を含む商標が例外を除き登録できることとなりますが、それだけだと不正目的の登録を防ぐことが困難です。
そこで政令で、他人の氏名を含む商標に係る具体的な要件として、無関係な者による出願や不正の目的を有する出願等の濫用的なものは拒絶できるように規定されています。
具体的には、次の要件が規定されています。
「商標法第四条第一項第八号の政令で定める要件は、次の各号のいずれにも該当することとする。
一商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること。
二商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと。」
つまり他人の氏名を含む商標であっても、商標登録が認められるのは次の要件を満たす商標です。
1 他人の氏名が、商標を使用する商品・役務の分野において、需要者の間に広く認識されている氏名ではないこと
2 出願した商標に含まれる他人の氏名が、商標登録出願人との間に相当の関連性がある氏名であること。
3 商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと
商標法第4条第1項第11号(他人の類似商標)
類似商標がある場合の例外として、コンセント制度、つまり先行する登録商標の権利者の同意があれば、類似する商標であっても併存登録を認める制度が導入されます。
他人の類似商標がある場合の要件を緩和し、第4条に第4項を新設して、例外規定が設けられました。
第4条第4項
「第一項第十一号に該当する商標であっても、その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて同号の他人の承諾を得ており、かつ、当該商標の使用をする商品又は役務と同号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないものについては、同号の規定は、適用しない。」
つまり他人の類似商標があっても、商標登録が認められるのは次の要件を満たす商標です。
1 出願人が、商標登録を受けることについて、類似商標の商標権者である他人の承諾を得ていること
2 他人の類似商標の商標権者、専用使用権者、通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないこと
「他人の承諾」は、商標登録出願に係る商標の登録について承諾する旨の引用商標権者の意思表示であって、査定時においてあることを必要とすることになります。
商標法第8条(先願)
商標法第4条第1項第11号の改正と合わせるため、先願・同日出願について規定する第8条についても、次のような改正法が施行されます。
先願
第8条第1項
「同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又第八条同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について異なった日に二以上の商標登録出願があったときは、最先の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。ただし、後の日に商標登録出願をした商標登録出願人(以下この項において「後出願人」という。)が、商標登録を受けることについて先の日に商標登録出願をした商標登録出願人(当該商標登録出願人が複数あるときは、当該複数の商標登録出願人。以下この項及び第六項において「先出願人」という。)の承諾を得ており、かつ、当該後出願人がその商標の使用をする商品又は役務と当該先出願人がその商標の使用をする商品又は役務(当該商標が商標登録された場合においては、その登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務)との間で混同を生ずるおそれがないときは、当該後出願人もその商標について商標登録を受けることができる。」
商標法第8条第1項は、異なる日に2以上の同一・類似の商標登録出願があったときは、先に出願した出願人が登録を受けられるという規定です。
後の出願人は登録が認められません。
後の出願でも、次の要件を満たせば商標登録が認められます。
・先願の商標登録出願人の承諾を得ること
・先願商標との間で、混同を生ずるおそれがないこと
が必要となります。
同日出願
第8条第2項
「同一又は類似の商品又は役務について使用をする同一又は類似の商標について同日に二以上の商標登録出願があったときは、商標登録出願人の協議により定めた一の商標登録出願人のみがその商標について商標登録を受けることができる。ただし、全ての商標登録出願人が、商標登録を受けることについて相互に承諾しており、かつ、それぞれの商標の使用をする商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないときは、当該全ての商標登録出願人がそれぞれの商標について商標登録を受けることができる。」
商標法第8条第2項は、同じ日に2以上の同一・類似の商標登録出願があったときは、出願人の協議により定めた出願人のみが登録を受けられるという規定です。
その例外として、次の要件を満たせば商標登録が認められます。
・同日出願の商標登録出願人の承諾を相互に得ること
・先願商標との間で、混同を生ずるおそれがないこと
が必要となります。
同日出願の協議が成立しないとき
第8条第5項
「第二項本文の協議が成立せず、又は前項の規定により指定した期間内に同項の規定による届出がないとき(第二項ただし書に規定するときを除く。)は、特許庁長官が行う公正な方法によるくじにより定めた順位における最先の商標登録出願人のみが商標登録を受けることができる。ただし、当該くじにより定めた順位における後順位の商標登録出願人(以下この項において「後順位出願人」という。)が、商標登録を受けることについて先順位の商標登録出願人(当該商標登録出願人が複数あるときは、当該複数の商標登録出願人。以下この項及び次項において「先順位出願人」という。)の承諾を得ており、かつ、当該後順位出願人がその商標の使用をする商品又は役務と当該先順位出願人がその商標の使用をする商品又は役務(当該商標が商標登録された場合においては、その登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務)との間で混同を生ずるおそれがないときは、当該後順位出願人もその商標について商標登録を受けることができる。」
商標法第8条第5項は、同じ日に2以上の同一・類似の出願があり、出願人の協議により決められなかったときに、くじで優先順位を決めるという規定です。
その例外として、次の要件を満たせば商標登録が認められます。
・同日出願の協議が成立せずくじにより順位を定めた場合に、先順位の商標登録出願人の承諾を得ること
・先願商標との間で、混同を生ずるおそれがないこと
が必要となります。
同日出願の協議が成立せずくじにより順位を定めた場合に、先順位の商標権が移転されたとき
第8条第6項
「第一項ただし書又は前項ただし書の場合において、先出願人又は先順位出願人の商標が商標登録され、その登録商標に係る商標権が移転されたときは、その登録商標に係る商標権者を先出願人又は先順位出願人とみなして、これらの規定を適用する。」
商標権の移転等に係る混同防止表示請求
第4条第1項第11号、第8条の規定の改正により、承諾があって、かつ混同を生ずるおそれがないときは、類似商標同士が併存する事態が想定されます。
この場合に、事後的に類似商標どうしが混同を生じるようになったときは、弊害が生じます。
そこでこのために混同防止表示請求が規定されました。
第24条の4
「次に掲げる事由により、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なった商標権者に属することとなつた場合において、その一の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の指定商品又は指定役務についての登録商標の使用により他の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者の業務上の利益(当該他の登録商標の使用をしている指定商品又は指定役務に係るものに限る。)が害されるおそれのあるときは、当該他の登録商標に係る商標権者又は専用使用権者は、当該一の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者に対し、当該使用について、その者の業務に係る商品又は役務と自己の業務に係る商品又は役務との混同を防ぐのに適当な表示を付すべきことを請求することができる。
一第四条第四項の規定により商標登録がされたこと。
二第八条第一項ただし書、第二項ただし書又は第五項ただし書の規定により商標登録がされたこと。
三商標登録をすべき旨の査定又は審決の謄本の送達があつた日以後に商標登録出願により生じた権利が承継されたこと。
四商標権が移転されたこと。」
商標権の移転等の後に不正競争目的で混同を生じたときの取消審判
第4条第1項第11号、第8条の規定の改正により、承諾があって、かつ混同を生ずるおそれがないときは、類似商標どうしが併存する事態が想定されます。
この場合に、事後的に類似商標同士が混同を生じるようになったときは、弊害が生じます。
このため、混同を理由とした商標権の取消審判が規定されました。
第52条の2
「第二十四条の四各号に掲げる事由により、同一の商品若しくは役務について使用をする類似の登録商標又は類似の商品若しくは役務について使用をする同一若しくは類似の登録商標に係る商標権が異なった商標権者に属することとなった場合において、その一の登録商標に係る商標権者が不正競争の目的で指定商品又は指定役務についての登録商標の使用であって他の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、その商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」
e-Filingにより商標の国際登録出願を行う手数料の納付(2024年1月1日施行)
今回の商標法改正では、国際登録出願を電磁的方法で行うe-Filingでの手数料の納付についても規定されました。
この規定は2024年1月1日から施行されます。
第68条の2第5項
「国際登録出願を電磁的方法(政令で定めるものを除く。)によりしようとする者は、実費を勘案して政令で定める額に相当する額を議定書第二条に規定する国際事務局(以下「国際事務局」という。)に納付しなければならない。」
第68条の3
「特許庁長官は、国際登録出願の願書及び必要な第六十八条の三特許庁長官は、国際登録出願の願書及び必要な書面を国際事務局に送付しなければならない。」
改正法において、e-Filingにより商標の国際登録出願を行う者は、政令で定める額に相当する額をWIPO国際事務局に納付しなければならないとしたところ、政令で定める額を1件につき9000円と政令で規定されました。
今回の改正を受けまして、2024年4月1日に施行される改正商標法の理解を深めるため、当サイトのコンテンツを下記の通り改訂いたしました。
他人の氏名等を含む商標についての商標法第4条第1項第8号、他人の類似商標についての第4条第4項と、先願についての第8条についての加筆訂正を行っております。