商標「粉雪」は、種苗法に基づき馬鈴薯の品種名として登録されている「コナユキ」に類似し、指定商品である第31類「ハオルシア,ハオルシアの苗,ハオルシアの種子」は種苗に類似する商品であるから、商標法第4条第1項第14号に該当するとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2018-7967
【審決日】令和1年7月24日(2019.7.24)
【事案】
本願商標は、「粉雪」の文字を標準文字で表してなり、第31類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成28年12月22日に登録出願されたものである。
その後、本願の指定商品については、原審における平成29年12月28日提出の手続補正書により、第31類「ハオルシア,ハオルシアの苗,ハオルシアの種子」と補正された。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、種苗法に基づき「Solanum tuberosum L.」(ばれいしょ種)の品種名として登録されている「コナユキ」(品種登録第21865号)と類似のものであり、かつ、その品種の種苗に類似する商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第14号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
(1)本願商標について
本願商標は、前記1のとおり、「粉雪」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は「粉のようにさらさらとした細かい雪。」(「広辞苑第六版」(株式会社岩波書店))の意味を有する語として慣れ親しまれているものであるから、本願商標は、その構成文字に相応して、「コナユキ」の称呼及び「粉のようにさらさらとした細かい雪。」の観念を生じるものである。
(2)引用標章について
ア 原審において本願の拒絶の理由として引用した種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称は、「コナユキ」の文字からなり、「ばれいしょ種」の品種名として、平成24年7月26日に、種苗登録第21865号として、品種登録されたもの(以下「引用標章」という。)である。
イ 引用標章は、上記のとおり、「コナユキ」の文字からなるところ、該文字は「粉のようにさらさらとした細かい雪。」の意味を有する語として慣れ親しまれている「粉雪」の語を片仮名で表したものと看取、理解されるものといえるから、引用標章は、その構成文字に相応して、「コナユキ」の称呼及び「粉のようにさらさらとした細かい雪。」の観念を生じるものである。
(3)本願商標と引用標章との類否について
本願商標と引用標章との類否について検討すると、両者は、外観において漢字と片仮名の差異を有するものの、「コナユキ」の称呼及び「粉のようにさらさらとした細かい雪。」の観念を同一にするものであり、これらを総合的に勘案すると、相紛れるおそれのある類似のものというべきである。
(4)本願の指定商品と種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の種苗との類否について
種苗法は、「新品種の保護のための品種登録に関する制度、指定種苗の表示に関する規制等について定めることにより、品種の育成の振興と種苗の流通の適正化を図り、もって農林水産業の発展に寄与することを目的とする。」(種苗法第1条参照)のに対し、商標法は、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発展に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」(商標法第1条参照)と規定する。
このように、種苗法は、農産物や園芸植物の新品種開発者を保護するために制定された法律であるのに対し、商標法は、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図ることを通じて、産業の発達に寄与し、一方で需要者の利益を保護するために制定された法律であり、種苗法における品種の名称と商標法における商標とでは、種苗法が品種における類似の範囲を品種の名称の禁止権とするのに対し、商標法は商品又は役務における類似の範囲を商標の禁止権とする点において、保護の範囲が異なるものといえる。
ところで、本願商標は、商標として登録出願されたものであるから、商標登録を受けることができるか否かは、商標法に基づいて判断されることはいうまでもない。
そして、本願の指定商品は、第31類「ハオルシア,ハオルシアの苗,ハオルシアの種子」であるところ、商標法施行規則別表には、第31類に属する商品として、「十二 種子類」及び「十三 木 草 芝 ドライフラワー 苗 苗木 花 牧草 盆栽」が例示されており、本願の指定商品は、上記別表に例示された「種子類」及び「「木 草 芝 ドライフラワー 苗 苗木 花 牧草 盆栽」の範ちゅうに属する商品である。また、「種苗」とは、「植物体の全部又は一部で繁殖の用に供されるもの」(種苗法第2条第3項)であるから、その形態は、別表に例示された上記商品の範ちゅうに属する商品が該当するといえ、このことは、種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種である「ばれいしょ種」の種苗についても同様である。
したがって、本願の指定商品は、種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の種苗に類似する商品というべきものである。
(5)小括
上記(3)及び(4)のとおり、本願商標は、種苗法第18条第1項の規定による品種登録を受けた品種の名称と類似の商標であって、その品種の種苗に類似する商品に使用するものであるから、商標法第4条第1項第14号に該当する。
「大雪の花」の標準文字商標は、構成全体を一体不可分のものと認識され、「さくら」について種苗法に基づく登録品種名「大雪」とは称呼・観念のいずれも類似しないものであるから、第31類の植物を指定商品としていても、商標法第4条第1項第14号には該当しないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2003-21860
【審決日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【事案】
本願商標は、「大雪の花」の文字を標準文字で表してなり、第31類に属する願書記載の商品を指定商品として、平成15年2月6日に登録出願されたものであるが、その後、指定商品については、同年9月17日付け及び同年11月10日付け手続補正書により、第31類「きく,バラ,カーネーション,ゆり,きんぎょそう,ストック,スターチス,かすみそう,くじゃくそう,トルコききょう,サンダーソニア,りんどう,スプレーマム」と補正されたものである。
【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、種苗法に基づき『さくら』の品種名として登録されている『大雪』(種苗登録第3269号、以下「引用標章」という。)と同一又は類似のものであり、かつ、その品種の種苗又はこれに類似する商品(役務)に使用するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第14号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
審決における判断
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。
本願商標は、前記のとおりの構成よりなるところ、「大雪の花」の文字は、同じ書体、同じ大きさでまとまりよく一体的に書されており、これより生ずるものと認められる「オオユキノハナ」、「タイセツノハナ」又は「ダイセツノハナ」の称呼も格別冗長なものともいえず、一連によどみなく称呼し得るものである。
そして、かかる構成からなる文字を「大雪」と「の花」とに分離して、「大雪」の文字部分のみを抽出して観察すべきものではなく、その構成全体を一体不可分のものと認識し把握されるとみるのが自然である。
そうすると、本願商標は、全体の構成文字に相応した「オオユキノハナ」、「タイセツノハナ」又は「ダイセツノハナ」の称呼及び「大雪の中に咲く花」又は「大雪山の花」程度の観念を生ずるものとするのが相当である。
したがって、本願商標より「オオユキ」又は「タイセツ」の称呼及び「はげしく大量に降る雪」の観念をも生ずるとし、その上で、本願商標と引用標章が称呼及び観念上類似するものとして、本願商標を商標法第4条第1項第14号に該当するとした原査定は、妥当でなく、取消しを免れない。
その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
商標法と種苗法は法目的が違い、商品の類似範囲も異なり、指定商品が類似しなくても種子及び苗に使用するときは類似するとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2002-4926
【事案】
本願商標は、「こはる」の平仮名文字と「小春」の漢字を上下二段に書してなり、指定商品を、補正によって、第31類「あわ、きび、ごま、そば、とうもろこし、ひえ、麦、ねぎの種子、ねぎの苗」等としたものである。
これに対して、原審において本願の拒絶の理由として引用した、品種登録を受けた品種の名称は、「小春」の文字よりなるものである。
【拒絶理由】
商標法4条1項8号
審決における判断
ところで、種苗法と商標法は目的が違い、それぞれの法目的に相応した、商品の類似範囲が存在(種苗法においては種苗法施行規則第17条)するものであるから、種苗法における商品の類否をもって、商標法における商品の類否の判断の根拠とすることはできないことはいうまでもない。
商品の類似範囲は、商標法における商品の類否に基づかなければならないところ、商標法上、商品が類似するか否かを判断するにあたっては、取引の実情、すなわち、商品の生産部門、販売部門、原材料及び品質・用途・機能、需要者の範囲が一致するかどうか、完成品と部品の関係にあるかどうか等を総合的に考慮することにより、互いの商品に同一又は類似の商標が使用された場合、これに接する取引者、需要者が、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかにより判断されるべきである。
そうすると、本願商標の指定商品中、「ねぎの種子,ねぎの苗」と、引用標章が品種名として登録されている「きく」の種子及び苗は、食用と観賞用の違いがあるものの、農家だけでなく、一般の家庭においても栽培される植物の種子及び苗であるということ、家庭菜園やガーデニングが盛んに行われている現状があり、商店等においても同じコーナーで販売されていることが多く、販売部門や需要者を共通にすることが少なくないということ等を総合的に考慮すると、取引の実情において、多くの共通性を有する商品であるというのが相当であって、本願商標を「ねぎの種子,ねぎの苗」及び「きく」の種子及び苗に使用するときは、これに接する取引者、需要者が、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。してみれば、本願の指定商品中「ねぎの種子,ねぎの苗」と、引用標章が品種名として登録されている「きく」の種子及び苗は、類似する商品であるといえる。
種苗法において「きく」と他の農林水産植物の品種が非類似であることを根拠として、商標法においても非類似の商品であるとすることはできない。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1号第14号に該当する。

