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判決例(4条1項6号):商標の拒絶理由

日南市章は著名とは認められず、本願商標と日南市章は全体として類似するとはいえないから,本願商標は、商標法第4条1項6号には該当しないとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】知財高裁平成24年(行ケ)第10125号
【事案】
1 特許庁における手続の経緯
原告は,平成21年7月16日,別紙記載1のとおりの構成からなり,第6類「建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製建具,金属製建造物組立てセット」,第19類「セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」及び第21類「清掃用具及び洗濯用具」を指定商品とする商標(以下「本願商標」という。)を登録出願したが,平成23年4月11日,拒絶査定を受け,同年5月13日,これに対する不服の審判(不服2011-10066号事件)の請求をした。
特許庁は,平成24年2月28日,「本件審判の請求は,成り立たない。」とする審決(以下「審決」という。)をし,その謄本は,同年3月19日,原告に送達された。
本件商標

【拒絶理由】
別紙審決書写しのとおりである。
要するに,審決は,本願商標は,著名な宮崎県日南市(以下「日南市」という。)の市章(別紙記載2のとおりの構成からなる。以下「日南市章」という。)と類似の商標であるから,商標法4条1項6号に該当すると判断した。
日南市章

判決における判断

当裁判所は,原告主張の取消事由には理由があり,審決は,違法として取り消されるべきものと判断する。その理由は,以下のとおりである。

1 日南市章の著名性について

(1) 日南市章の制定・告示
ア 昭和25年1月1日,飫肥町,油津町,吾田町及び東郷村が合併し,新たに「日南市」(以下「旧日南市」という。)となり,同年12月20日,現日南市章と同一と認められる最初の市章を制定した(乙5)。その後,旧日南市は,平成21年3月30日に北郷町及び南郷町と合併して新たな現日南市となり,同市は,同年10月30日に日南市章を市章と定め(乙6),同年11月2日告示第182号により告示した(乙2)。

イ 審決は,「公的な機関である地方自治体を表彰するために用いられる都道府県、市町村の章は、制定時に告示が行われるものであり、そして、告示は、広く一般に知らしめるものであることから、商標法第4条第1項第6号にいう「著名なもの」として扱うのが相当である」(2頁17行~20行)として,日南市章の実際の著名性について認定することなく,「著名なもの」と認めた。しかしながら,商標法4条1項6号は,「国若しくは地方公共団体……を表示する標章であって著名なものと同一又は類似の商標」と規定しているから,同号の適用を受ける標章は「著名なもの」に限られると解すべきであり(告示された国又は地方公共団体を表示する標章が当然に著名なものとなるわけではない。),著名であるか否かは事実の問題であるから,告示されたことのみを理由として「著名なもの」とした審決の判断手法は,是認することができない。そして,同号は,同号に掲げる団体等の公共性に鑑み,その信用を尊重するとともに,出所の混同を防いで取引者,需要者の利益を保護しようとの趣旨に出たものと解されるから,ここに「著名」とは,指定商品・役務に係る一商圏以上の範囲の取引者,需要者に広く認識されていることを要すると解するのが相当である。
原告は,拒絶理由通知書(乙27)は日南市章が「著名」であるとの通知はしていないのに,審決において制定時に告示をしたので「著名なもの」として扱うと認定したことは,商標法15条の2に違反するものであると主張する。しかし,上記拒絶理由通知書には,拒絶理由として,「この商標登録出願に係る商標(判決注:本願商標)は,宮崎県日南市の市章として広く知られている標章と類似するものと認めます。したがって,この商標登録出願に係る商標は,商標法第4条第1項第6号に該当します。」と記載されているから,日南市章が商標法4条1項6号の「著名なもの」であることを通知していると認められる。したがって,審決の認定が,商標法15条の2に違反するということはできない。
そこで,日南市章が「著名なもの」と認められるか否かについて検討する。

(2) 日南市章の使用状況
ア 平成20年8月12日付け西日本新聞(乙11の2上),平成20年8月9日付け読売新聞西部朝刊宮崎県版(同下)及び平成20年8月10日付け宮崎日日新聞(乙11の3)には,旧日南市,北郷町及び南郷町の合併に向けたカウントダウンボードが設置されたことを報じる記事が写真とともに掲載され,同写真に撮影されたカウントダウンボードには,「日南市」の表示と日南市章が記載されているが,日南市章は極めて小さく写り込んでいるにすぎない。

イ 日南市は,平成21年11月2日に,告示第183号により白地に赤色の日南市章を中央に表示した市旗(以下「日南市旗」という。)も併せて制定し(乙9),平成21年12月15日付け「広報にちなん」5頁(乙7)において,赤色で表示された日南市章を掲載して,その旨が説明されている。

ウ 日南市のホームページの1頁(乙10の1)左上には,「日南市」の表示の左に赤色で表示された日南市章が記載され,2頁には,赤色で表示された日南市章について,「市章/日南市の「日」の字と輝く太陽も意味し,4つの突起は,東西南北・四方に限りなく発展する市をイメージしています。」(「/」は改行を示す。以下同じ。)と説明されている。

エ 平成21年11月22日に開催された新日南市誕生記念式典の写真(乙12)には,式場の舞台奥に日南市旗が掲示されている様子が撮影されている。

オ 平成24年6月13日18時よりNHK宮崎放送局から放送された「ニュースウェーブ宮崎」の「ふるさと情報局」のコーナーにおいて,赤色で表示された日南市章が記載された広報用パネルが使用された(乙13の1,2)。

カ 日南市立中部病院のホームページの1頁(乙14)左上には,「日南市立中部病院」の表示の左に赤色で表示された日南市章が記載され,また,日南市のマンホールの蓋中央には日南市章が表示され(乙15の1,2),日南市が風水害避難所として認定した公共施設等148か所には,「風水害避難所/日南市章/日南市」の表示がされている(乙18の1~4)。

キ 株式会社人文社昭和47年2月15日再版発行の「〈県別シリーズ45〉宮崎県・観光と旅 郷土資料辞典」38頁(乙19)及び株式会社角川書店平成3年6月30日再版発行の「角川日本地名大辞典 45 宮崎県」867頁(乙20)には,日南市を紹介する記事に日南市章が記載されている。また,株式会社地頭鶏ランド日南のホームページ(乙21)には,日南市のホームページとリンクするための日南市章と日南市の文字などからなるバナーボタンが用意されている。

ク 広島東洋カープが使用する天福球場には,同球団が使用する際,球団旗,社団法人日本野球機構(NPB)旗とともに,日南市旗が掲揚されている(乙22)。
また,平成24年2月18日付け宮崎日日新聞(乙23)には,記事「広島東洋カープ日南キャンプ50周年記念祝賀会」が開催された旨を報じる記事が写真とともに掲載され,同写真の背景には日南市章が小さく写り込んでいる。日南商工会議所ブログのホームページ「広島東洋カープ2012日南キャンプ情報サイト2012年02月17日」(乙24の1,2)には,「広島東洋カープ日南キャンプ50周年記念祝賀会」の写真が掲載され,会場の背に球団旗とともに日南市旗が掲示されている様子が撮影されている。

(3) 判断
以上によれば,日南市章は昭和25年12月20日に旧日南市の市章として制定され,日南市もこれを継承していること,日南市章は,日南市を表示するものとして同市の公共施設,ホームページ,広報用パネル,マンホールの蓋などに使用され,大きなイベントの際には,メインとなる舞台や調印式などの背景に日南市章が赤色で表示された日南市旗が掲げられていること,これらのイベント等を報じる新聞記事やテレビ放送には,背景等に日南市章が写ることも多く,また,日南市の観光や物産を紹介する書籍,ホームページにも,日南市の名称とともに日南市章が掲載されることがあること,が認められる。
しかしながら,日南市章が,日南市の公共施設やホームページ等に表示されたからといって,本願商標の指定商品の取引者,需要者が一般に目にするとは認められない。また,イベント等を報じる新聞記事の写真,テレビ放送等に写る日南市章は,背景として小さく写り込んでいるにすぎず,目立つものとは認められない。そして,日南市の観光や物産を紹介する書籍,ホームページも,本願商標の指定商品の取引者,需要者が一般に目にするとは認められない。
被告は,本願商標の指定商品に含まれる商品「マンホール」の蓋は自治体の章が刻印されることが少なくなく,公共工事に用いられる建材を提供する事業者は県章や市章等に相当程度注意を払っているという取引の実情が存在すると主張する。しかしながら,マンホールの蓋を扱う取引者,需要者の数は明らかではなく,本願商標の指定商品の取引者,需要者のうちのどの程度を占めるのかは不明というほかない
したがって,被告の主張する上記取引の実情を考慮しても,上記認定の事実から,審決時に,日南市章が本願商標の指定商品「建築用又は構築用の金属製専用材料,金属製建具,金属製建造物組立てセット」,「セメント及びその製品,木材,石材,建築用ガラス」及び「清掃用具及び洗濯用具」に係る一商圏以上の範囲の取引者,需要者に広く認識されていたと認めることは,困難である。

2 本願商標と日南市章との類否について

(1) 商標法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁)。

(2) そこで,これを本件についてみると,日南市章は,別紙記載2のとおりの構成,すなわち,上下左右に三角形の突起を有する黒塗りの肉太円輪郭とその輪郭内部の中心に内包される黒塗りの正円からなる図形からなるものである。
他方,本願商標は,別紙記載1のとおりの構成,すなわち,上下左右に三角形の突起を有する黒塗りの肉太円輪郭とその輪郭内部の中心に内包される黒塗りの正円からなる図形部分と,その下方に上記図形と比して1/5程の大きさで「DAIWA」の文字を配した構成を組み合わせた結合商標である。
そして,本願商標の図形部分は,日南市章とほぼ同一といってよいほど類似していると認められるが,同図形部分は,日本銀行の行章(甲28)とも類似しているところ,同行章は「日」という漢字の古代書体に由来していることが認められる(甲28)。また,光が上下左右に4本伸びた構成(「上下左右に三角形の突起を有する黒塗りの肉太円輪郭」の構成)は,日立製作所の社章でもよく知られたものである(弁論の全趣旨)。
そうすると,本願商標の図形部分は,本願商標の大きな部分を占めるものではあるが,「日」という漢字の古代書体に由来するありふれた図形であって,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとまでは認められない
他方,本願商標の「DAIWA」の文字部分は,図形部分と比して1/5程の大きさにすぎないが,同部分から「ダイワ」の称呼が生じることは明らかである。また,我が国には,「ダイワ」,「大和」を冠した企業名が多数存在する(裁判所に顕著な事実)から,取引者,需要者は,「DAIWA」の文字部分を企業名に関する表示として認識し,同部分からそのような企業名としての観念を生じるものと認められる。
したがって,本願商標の「DAIWA」の文字部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認めることはできない
以上によれば,前掲最高裁判決の判断基準に照らして,本願商標の構成から図形部分を抽出し,この部分だけを日南市章と比較して商標そのものの類否を判断することは,許されないというべきである。
そして,本願商標と日南市章を全体として対比すると,外観において本願商標の図形部分と日南市章は類似するものの,本願商標が「ダイワ」の称呼を生じ,「ダイワ」ないし「大和」の企業名としての観念を生じるのに対し,日南市章は,特定の称呼,観念を生じるものとは認められないから,全体として類似するとはいえない

3 結論

以上のとおり,本願商標は,著名な日南市章と類似の商標であり,商標法4条1項6号に該当するとした審決の判断は誤りである。原告主張の取消事由には理由があるから,審決は違法として取り消されるべきである。
よって,審決を取り消すこととして,主文のとおり判決する。

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本願商標のISO部分と引用標章ISOとは、外観、観念及び称呼において共通し、引用標章が 国際標準化機構を表示するものとして著名であることにも照らして、両標章は類似するとされ た事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】知財高裁平成20年(行ケ)第10351号
【事案】
本件は,原告が,下記1のとおりの商標登録出願に対する拒絶査定不服審判の請求について特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書(写し)の本件審決(その理由の要旨は下記2のとおり)には,下記3の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。

1 特許庁における手続の経緯
(1) 商標登録出願(甲1。以下「本件出願」という。)
商標の構成:別紙商標目録記載1のとおり(以下「本願商標」といい,本願商標のうち,ISOの文字部分を「ISO部分」,その他の文字部分を「ISO以外部分」という。)
出願日:平成18年7月11日(商願2006-64428号)
指定商品:別紙商標目録記載2のとおり
拒絶査定:平成19年9月10日付け(甲4)

(2) 審判請求手続
審判請求日:平成19年10月15日(不服2007-28238号。甲5)
本件審決日:平成20年8月13日
本件審決の結論:「本件審判の請求は,成り立たない。」
審決謄本送達日:平成20年8月29日

【拒絶理由】
本件審決の理由は,要するに,本願商標は,国際標準化機構を表示する著名な標章となっている「ISO」(以下「引用標章」といい,これと本願商標とを「両標章」という。)と類似するから,商標法4条1項6号に掲げる商標に該当し,商標登録を受けることができない,としたものである。

判決における判断

1 取消事由1(両標章の類否判断の誤り)について

(1) 本願商標のISO部分及びISO以外部分の一体性あるいは独立性本願商標の構成につき,原告は,本願商標のISO部分とISO以外部分とが不可分一体のものとして看取される旨主張するのに対し,被告は,独立して認識されるものである旨主張するので,以下,その外観,観念及び称呼の順に,その当否について検討する。

ア 外観について
(ア) 本願商標のうち,上段部分は,原告が主張するとおり,同じ書体,同じ大きさ(文字のポイント。以下同じ。)及び同じ色の欧文字を同じ間隔で横一連に書して成るものである。
しかしながら,上段部分は,「ISO」,「Mount」及び「Extender」の3つの英単語が2つのハイフンを介して結合されたものであり,また,先頭の「ISO」がすべて大文字から成るのに対し,その余の2つの英単語はいずれも冒頭の文字のみを大文字と,その余の各文字をいずれも小文字とするものであるから,ISO部分は,ISO以外部分と異なる外観を呈するものであることが認められる。

(イ) また,下段部分も,原告が主張するとおり,同じ書体,同じ大きさ及び同じ色の欧文字あるいは片仮名を同じ間隔で横一連に書して成るものである。
しかしながら,下段部分は,先頭の「ISO」が欧文字のみを書して成るのに対し,その余は片仮名のみを書して成るものであるから,上段部分と同様,ISO部分は,ISO以外部分と異なる外観を呈するものであることが認められる。

イ 観念について
(ア) 国際標準化機構(「International Organization for Standardization」)の英語上の略表記である「ISO」(引用標章)が本件出願日(平成18年7月11日)当時に著名な標章であったことは,原告も,これを争うものではない。
そうすると,本願商標に接した需要者及び取引者は,そのISO部分から「国際標準化機構」との明確な観念を抱くのが通常であると認められる。
他方,本願商標のISO以外部分(「Mount-Extender」及び「マウントエクステンダー」)からは,特定の観念が生じると判断し得るだけの事実を認めるに足りる証拠はない

(イ) この点に関し,原告は,英語の接頭辞としての「iso」の意味,英単語としての「Mount」の意味及び「Extender」,「エクステンダー」等から成る登録商標の存在を理由として,本願商標からは「等しい山のようなエクステンダー」などの観念が生じる旨主張するが,ISO部分とISO以外部分とが結び付けられて生ずるという「等しい山」の観念自体が極めて不明確なものであり,具体性に欠け,かえって,ISO部分とISO以外部分とを分離して,「国際標準規格」に合った「マウントエクステンダー」という商品を想起させる可能性が高いことなどに照らせば,本願商標に接した需要者及び取引者が少なくとも原告主張のような観念を抱くものとは認め難いというべきである。
また,原告は,本願商標のISO部分が英語の接頭辞として認識される旨主張するが,同商標のうち,上段部分については,先頭の「ISO」がすべて大文字から成るのに対し,その余の2つの英単語はいずれも冒頭の文字のみを大文字と,その余の各文字をいずれも小文字とするものであること,下段部分については,先頭の「ISO」が欧文字のみを書して成るのに対し,その余は片仮名のみを書して成るものであることに照らせば,同商標のISO部分が英語の接頭辞として認識され,「国際標準化機構」との観念を生じないということはできない。これがまた,前記説示で「国際標準規格」に合った「マウントエクステンダー」という商品といった観念が生ずる可能性が高いと判断した理由でもある。
さらに,原告は,「ISO」の語は,「ISO 12100」などのように,5桁の規格番号が付されて意味を持つものであるから,需要者及び取引者は,「ISO」の語が規格番号と結合したときに,これを国際標準規格であると認識するといえるが,当該規格番号と結合したものでない本願商標は,国際標準化機構とのつながりがないものとして需要者及び取引者に認識されると主張するが,「ISO 12100」などの語を国際標準規格であると認識する需要者及び取引者の判断が,前記説示したところからしても,一般的にいって,「ISO」に着眼しての判断であると解されるのであって,規格番号と結合しない「ISO」の語であれば,これを「国際標準化機構」とつながりがあるものとは認識しないとまでいうことはできない。

ウ 称呼について
(ア) 本願商標から生じる称呼としては,同商標を構成する各英単語の通常の読み(発音)及び片仮名の存在からして,「アイエスオーマウントエクステンダー」,「アイソマウントエクステンダー」及び「イソマウントエクステンダー」の3つが考えられる。
しかし,上記3つの称呼のうち,原告が主張する後2者をみても,これらが有する音節数は,決して少ないものではないし,また,「マウントエクステンダー」又は「エクステンダー」との称呼は,需要者及び取引者になじみの深い英単語として,通常よく使用するものとみることもできないことに加えて,本願商標のうち,上段部分については,先頭の「ISO」の次にハイフンが配されていること,下段部分については,先頭の「ISO」が欧文字のみを書して成るのに対し,その余は片仮名のみを書して成るものであること,上記イのとおり,本願商標のISO部分からは「国際標準化機構」との観念が明確に生じるのに対し,ISO以外部分からは特定の観念が生じるとはいえないことをも併せ考えると,本願商標が,上段部分と下段部分という違いはあるが,いずれも同じ書体,同じ大きさ及び同じ色の欧文字又は片仮名を同じ間隔で横一連に書して成るものであることを考慮に入れてもなお,本願商標に接した需要者及び取引者は,同商標のISO部分とISO以外部分とを区別し,これらを「アイソ,マウントエクステンダー」又は「イソ,マウントエクステンダー」というように,「アイソ」又は「イソ」と「マウントエクステンダー」とを区切って称呼するものと認めるのが相当であり,当該需要者及び取引者にとって,原告主張のように,これを一息によどみなく称呼するのが自然であると認めることはできないというべきである。
そして,以上説示したところは,上記3つの称呼のうち,「アイエスオーマウントエクステンダー」との称呼についても,同様に当てはまるものといわなければならない。

(イ) この点に関し,原告は,「isoagglutination」(アイソアグルティネーション)等の13音にまで及ぶ単語も,一連に称呼するものとされていると主張するが,甲7によっても,「isoagglutination」等の単語に接した需要者及び取引者が,これを一息によどみなく称呼するものとまで認め得るものではなく,その他,そのように認めるに足りる証拠はない。
また,原告は,接頭語「iso-」を冠した英単語は,一連に称呼して初めてその意味を理解することができるとも主張するが,そのような英単語についても,必ずしも一連に称呼せずとも,そのすべてを称呼し,又は視認すれば,その意味を理解することができるのであるから,仮に,本願商標のISO部分が英語の接頭辞であるとしても,これに続くISO以外部分と一連によどみなく称呼されることの根拠となるものではない。
さらに,原告は,仮に,本願商標の称呼が多少冗長であるため,途中で一息つくとしても,「アイソマウント」と「エクステンダー」とに分離されるとみるのが自然であると主張するが,本願商標のうち,下段部分が「ISO」の欧文字と「マウントエクステンダー」の片仮名とから構成されることに照らしても,そのようにいうことはできないというべきである。

エ 小括
以上説示したところによれば,本願商標のISO部分は,上段部分及び下段部分のいずれも,外観,観念及び称呼の点からみて,ISO以外部分から独立して看取されるものといえるのであって,以上の判断を覆し,ISO部分とISO以外部分とを不可分一体のものと看取すべき特段の事情があると認めさせるだけの証拠はない

(2) 両標章の類否

原告は,免震装置等に係る取引の実情についてるる主張し,両商標が類似しない旨主張するが,前記(1)において説示したところによれば,本願商標のISO部分と引用標章とは,その外観,観念及び称呼において共通するといえ,引用標章が国際標準化機構を表示するものとして著名であることにも照らせば,原告が主張する取引の実情を考慮してもなお,本願商標に接した需要者及び取引者は,同商標を付した商品,当該商品を製造・販売するなどする業者等が国際標準化機構が定める国際規格に適合するなどの印象を抱くものと認められるから,両標章は,互いに類似するものと認めるのが相当であり,これと同旨の本件審決の判断に誤りはないというべきである。

(3) したがって,取消事由1は理由がない。

2 取消事由2(商標法4条1項6号の規定の解釈適用の誤り)について

原告は,「ISO-」の構成を有する商標につき,国際標準化機構以外の者を権利者として,欧米において数多くの商標登録がされているとして,これを根拠に,我が国において本願商標につき商標登録がされたとしても,国際信義に反することはないから,本件出願を拒絶する旨の本件審決は商標法4条1項6号の規定の解釈適用を誤ったものである旨主張する。
しかしながら,商標法4条1項6号の規定は,同号に掲げる団体の公共性にかんがみ,その権威を尊重するとともに,出所の混同を防いで需要者の利益を保護しようとの趣旨に出たものであり,同号の規定に該当する商標,すなわち,これらの団体を表示する著名な標章と同一又は類似の商標については,これらの団体の権威を損ない,また,出所の混同を生ずるものとみなして,無関係の私人による商標登録を排斥するものであると解するのが相当である。
そうすると,仮に,欧米において,「ISO-」の構成を有する商標につき国際標準化機構以外の者を権利者とする数多くの商標登録がされているとしても,そのことをもって,我が国において,引用標章と類似する本願商標に係る本件出願を拒絶した本件審決が,商標法4条1項6号の規定の解釈適用を誤ったということはできないから,取消事由2も理由がない。

3 結論

以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は棄却されるべきものである。

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