被り物をしたと思しき人物の図の商標の一部に、「円」と「N」の文字とを組み合わせた特徴あるとはいえない部分があっても、本願商標から図形部分を抽出して引用標章とを比較するのは適当でなく、ノルウェー王国政府が商品「電気製品」に使用する監督用の印章または記号と類似とはいえず、商標法第4条第1項第5号に該当しないとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2006-2668
【審決日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【事案】
本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第9類、第16類、第18類、第24類、第25類、第28類、第38類及び第41類について願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成17年5月11日に登録出願されたものである。
そして、指定商品及び指定役務については、原審における平成17年10月28日付けの手続補正書及び当審における同18年2月13日付けの手続補正書により、第9類、第16類、第18類、第24類、第25類、第28類、第38類及び第41類に属する別掲(3)のとおりの商品及び役務に補正されたものである。

【拒絶理由】
原査定は、「本願商標は、ノルウェー王国政府が商品『電気製品』に使用する監督用の印章又は記号であって経済産業大臣が指定するもの(平成9年2月3日号外、経済産業省告示第40号)(以下「引用標章」という。)と同一又は類似であり、かつ、前記商品と同一又は類似の商品(役務)に使用するものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第5号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
そして、引用標章は、別掲(2)のとおりの構成よりなるものである。

審決における判断
本願商標は、別掲(1)のとおり、被り物をしたと思しき人物の図よりなるところ、該被り物に表示された図形部分(以下、単に「図形部分」という。)は、「円」と「N」の文字とを組み合わせた如きものであって、特徴あるとはいえないものであるから、かかる構成にあっては、殊更図形部分のみに着目して取引にあたるとみるよりも、構成全体を不可分一体のものと認識し、取引にあたるとみるのが相当である。
そうすると、原審のように本願商標から図形部分を抽出し、それと引用標章とを比較するのは適当でないといわなければならない。
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第5号に該当するとして本願を拒絶した原査定は妥当でなく、取り消しを免れない。
その他、政令で定める期間内に本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
マレーシア政府が商品「茶」や役務「工業上の分析及び調査」等について使用する監督用の印章または記号であって経済産業大臣が指定するものと同一または類似の商標であり、同一または類似の商品・役務について使用する商標であり、商標法第4条第1項第5号に該当するとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服2021-8337
【審決日】令和4年5月18日(2022.5.18)
【事案】
本願商標は,別掲1のとおりの構成よりなり,第5類,第10類,第29類,第30類,第32類,第42類及び第43類に属する願書記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として,上記1のとおり商標登録出願されたものであり,その指定商品及び指定役務については,上記1の手続補正書により,第29類「食肉,魚,家きん肉,食用鳥獣肉,肉エキス,肉製品,砂糖漬けしたしょうが,加工野菜及び加工果実,食用ゼリー,肉ゼリー,ゼリー状フルーツ,ジャム,コンポート,卵,乳製品,食用油脂,魚のすり身を薄く揚げたクラッカー,食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物,乾燥ココナッツ,ココナッツバター,ココナッツミルク,ココナッツミルクを主原料とする飲料,ココナッツの加工品,乾燥唐辛子,魚のペースト,肉のペースト,食用鳥獣肉のペースト,野菜のペースト,ナッツのペースト,大豆,保存加工をした大豆」と補正されたものである。

【拒絶理由】
原査定は,「本願商標は,マレーシア政府が商品『茶』や役務『工業上の分析及び調査』等について使用する監督用の印章又は記号であって経済産業大臣が指定するもの(平成26年9月26日経済産業省告示196号)と同一又は類似の商標であり,かつ,前記商品・役務等と同一又は類似の商品・役務について使用するものと認める。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第5号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。

審決における判断
(1)商標法第4条第1項第5号該当性について
ア 商標法第4条第1項第5号は,「日本国又はパリ条約の同盟国,世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締約国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標であつて,その印章又は記号が用いられている商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用をするもの」は,商標登録を受けることができない旨規定するものであり,同項第2号(国の紋章その他の記章)及び同項第3号(国際連合その他の国際機関の標章)と共に,工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約[昭和50年3月条約第2号](以下「パリ条約」という。)第6条の3の義務を履行するための公益保護を旨とする不登録事由である(甲3)。
そして,パリ条約第6条の3(1)(a)は,「同盟国は,同盟国の国の紋章,旗章その他の記章,同盟国が採用する監督用及び証明用の公の記号及び印章並びに紋章学上それらの模倣と認められるものの商標又はその構成部分としての登録を拒絶し又は無効とし,また,権限のある官庁の許可を受けずにこれらを商標又はその構成部分として使用することを適当な方法によつて禁止する。」と規定され,その理由は「そのような商標の登録又は使用が,主権の象徴の使用を管理する国家の権利を侵すものであり,さらにそのような商標の付された商品の出所に関して公衆を誤認させるかもしれないから」であり(「注解パリ条約/GUIDE TO THE PARIS COVENTION FOR THE PROTECTION OF INDUSTRIAL PROPERTY」AIPPI・JAPAN),また,「その目的は,工業所有権の対象としての保護というよりは,特定の状況の下ではそのような対象となることから排除しようというものである。」(前掲書)。
さらに,パリ条約第6条の3(3)(a)は,「 (1)及び(2)の規定を適用するため,同盟国は,国の記章並びに監督用及び証明用の公の記号及び印章であつて各国が絶対的に又は一定の限度までこの条の規定に基づく保護の下に置くことを現に求めており又は将来求めることがあるものの一覧表・・・を,国際事務局を通じて,相互に通知することに同意する。各同盟国は,通知された一覧表を適宜公衆の利用に供する。」とし,これにより,「同盟国・・・が,記章などに関して,商標として登録及び使用を排除するためにある種の通知をすることを要求しあるいは許容している。」ものである(前掲書)。
イ そこで検討するに,本願商標は,別掲1のとおりの構成からなるところ,当該商標は,上記パリ条約第6条の3(3)により,世界知的所有権機関(以下「WIPO」という。)の国際事務局から通知され,商標法(昭和34年法律第127号)第4条第1項第5号の規定に基づき,経済産業大臣が指定,告示した「マレーシアの監督用又は証明用の印章又は記号指定」(平成26年9月26日経済産業省告示第196号:別掲2)に係る標章とその構成を同一にするものである。
また,本願商標の上記1の補正後の指定商品「食肉,魚,家きん肉,食用鳥獣肉,肉エキス,肉製品,砂糖漬けしたしょうが,加工野菜及び加工果実,食用ゼリー,肉ゼリー,ゼリー状フルーツ,ジャム,コンポート,卵,乳製品,食用油脂,魚のすり身を薄く揚げたクラッカー,食用魚介類(生きているものを除く。),加工水産物,乾燥ココナッツ,ココナッツバター,ココナッツミルク,ココナッツミルクを主原料とする飲料,ココナッツの加工品,乾燥唐辛子,魚のペースト,肉のペースト,食用鳥獣肉のペースト,野菜のペースト,ナッツのペースト,大豆,保存加工をした大豆」は,上記経済産業大臣が指定する印章又は記号が用いられている商品及び役務(別掲2)中,少なくとも「食肉。魚。家禽肉及び食用鳥獣肉。肉エキス。保存処理、乾燥処理及び調理をした果実及び野菜。ゼリー。ジャム。コンポート。卵。ミルク及び乳製品。食用油脂。加工水産物。米。大豆。ミネラルウォーター。炭酸水及びアルコールを含有しないその他の飲料。果実飲料及び果汁」と同一又は類似の商品である。
ウ そうすると,本願商標は,マレーシアの政府又は地方公共団体の監督用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一の商標であって,その印章又は記号が用いられている商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから,商標法第4条第1項第5号に該当する。
「Anne of Green Gables」の文字がカナダ国のプリンス エドワード アイランド州の公的標章であっても、パリ条約の同盟国等の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標ではないとされた事例
【種別】異議申立の決定
【審判番号】異議2001-90574
【事案】
本件登録第4470684号商標(以下「本件商標」という。)は、平成12年6月20日に登録出願され、別掲に表示したとおりの構成よりなり、商品の区分第9類及び第14類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、平成13年4月27日に設定登録されたものである。
【異議申立の理由】
本件商標を構成する欧文字を書してなる「Anne of Green Gables」は、カナダ国の誇る女流小説家ルーシイ・モウド・モンゴメリの世界的に著名なシリーズ小説「赤毛のアン」の原題である。
カナダ国政府当局は、1)同原題をカナダの誇るべき文化遺産として、カナダ国の貨幣および切手に登載させているほか、2)同シリーズ小説の主人公であり、世界中において今や著名なキャラクターとして認識されるに至っている「赤毛のアン」が住んでいたとされる「緑の切妻屋根の家」(Green Gablesの邦訳)を「Anne of Green Gables Museum」(グリーン・ゲイブルス博物館)として、その管理下の下に開設し、カナダ全体およびプリンス エドワード アイランド州の観光事業の目玉としている。3)加えて「Anne of Green Gables」を本件商標登録異議申立人(以下「申立人」という。)を受益者として公的標章として登録しており、受益者以外の第三者の使用を禁止している。
これらの事実を踏まえて、申立人は、主に次の理由により各条文が適用されるべきと主張する。

異議の決定における判断
(1)商標法第4条第1項第5号について
カナダ国造幣局及びカナダ郵政省が「コイン及び切手」の図柄に赤毛のアンの肖像及び「Anne of Green Gables」なる文字を使用し、また、該「Anne of Green Gables」がカナダ国のプリンス エドワード アイランド州の公的標章であることは認められるとしても、本件商標は、日本国又はパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国の政府又は地方公共団体の監督用又は証明用の印章又は記号のうち経済産業大臣が指定するものと同一又は類似の標章を有する商標でなく、その印章又は記号が用いられる商品又は役務と同一又は類似の商品又は役務について使用するものではないから、商標法第4条第1項第5号に該当するということはできない。

