商標審査基準の原則論は妥当しないとされた事例
【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成13年(行ケ)第77号
【事案】
商標審査基準についての法的性格
【判決における判断】
特許庁の商標審査基準は、結合商標の類否について、「形容詞的文字(商品の品質、原材料等を表示する文字、又は役務の提供の場所、質等を表示する文字)を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似する。」と規定し、審決も、商品の色彩を表示すると考えられる形容詞的文字を有する結合商標は、原則として、それが付加結合されていない商標と類似するという判断の枠組みに準拠したものと考えられる。
しかしながら、このようにいうことができるのは、色彩を意味する文字が商品の色彩を記述するものとして、これに接する取引者、需要者に認識される場合が一般的に多いことによるものであるが、本件においては、「BLUE」の語を本願商標の構成文字全体の中に位置付けて検討した場合に、単に商品の色彩を表示するものといえないことは前示のとおりであるから、上記枠組みないし商標審査基準の原則論は妥当しないというべきである。
商標審査基準が法令としての効力を有するものでないとされた事例
【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成11年(行ケ)第372号
【事案】
商標審査基準についての法的性格
【判決における判断】
原告主張の特許庁の商標審査基準について付言するに、平成11年6月に周知・著名商標の保護等を目的として改正された審査基準によれば、商標法4条1項15号に関し、他人の著名商標を一部に有する商標が、当該他人の著名な商標と類似しないと認められる場合において、商品又は役務の混同を生ずるおそれがあるときは、原則として、同号の規定に該当するものとする旨、また、他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上のつながりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱う旨を定めていることは、当裁判所に顕著である。
しかしながら、およそ商標審査基準が法令としての効力を有するものでないことはもとより、上記改正に係る商標審査基準が、その改正前の平成9年7月11日に設定登録がされている本件商標に適用されるものではないことも明らかであるばかりでなく、前示のとおり、登録出願当時既に独自の著名性を獲得していると認められる本件商標のようなものについては、その構成態様が引用各商標と他の文字とが結合したものに当たるとしても、前示商標審査基準の例外として、出所の混同を生ずるおそれがあるとの推認は働かないものと解するのが相当である。
したがって、いずれにしても、前示商標審査基準の定めがあるからといって、本件商標が商標法4条1項15号に該当するということはできない。
仮に審決が類似商品審査基準に違反していても、違法であるとはいえないとされた事例
【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和43年(行ケ)第180号
【事案】
類似商品審査基準についての法的性格
【判決における判断】
原告は、審決は類似商品審査基準に違反するから違法である旨主張するが、いわゆる審査基準は、特許庁における商標登録出願審査事務の便宜と統一のため定められた内規に過ぎず、法規としての効力を有すると解すべき根拠はないから、仮に審決が類似商品審査基準に違反していても、違法であるとはいえないことは明らかである。