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判決例(3条1項3号) -商標登録ドットコム™

「アマンド」の文字は、洋菓子の材料となるナッツ類の一種を示すフランス語の「amande」を片仮名文字で表したものであるところ、おそくとも本件審決がなされた昭和57年4月頃までには原告の販売する洋菓子を示すものとして、東京都を中心に全国にわたって取引者及び一般需要者の間に広く認識されるに至ったものとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和57年(行ケ)第147号
【事案】
本願商標は、下記のとおり「アマンド」の片仮名文字を、牡丹色(ピンク)に赤紫色を混ぜたような色で横書きし、第30類「菓子、パン」として出願した後、商品を「洋菓子」と訂正したものである。
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【拒絶理由】
商標法第4条第1項第16号
【判決における判断】
「アマンド」という語は、洋菓子の材料となるナッツ類の一種を示すフランス語の「amande」を片仮名文字で表したものであるところ、わが国の洋菓子を取扱う業界においては、少なくとも本件審決時当時においてはその意味を表すものとして普通に使用されていたものであること及び同じ洋菓子業界において、「アマンド」の文字は、アマンドを用いた洋菓子を表すものとして、例えばヌガー・アマンドのように使用されていたものである事実を認めることができる。 しかし、本願商標は、おそくとも本件審決がなされた昭和57年4月頃までには原告の販売する洋菓子を示すものとして、東京都を中心に全国にわたって取引者及び一般需要者の間に広く認識されるに至ったものというべきである。

「ミルクドーナツ」の文字は、「ドーナツ」は指定商品の名称、「ミルク」は原材料の一部であることを認めることができ、したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものであるが、本願商標は特定の業者が製造する「ドーナツ」を示すものとして、東京都を中心に全国にわたって取引者一般需要者間に広く認識されるに至ったものであることを認めることができるとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和37年(行ナ)第4号
【事案】
本願商標は、「ミルクドーナツ」の文字よりなり、第30類「ドーナツ」を指定商品とするものである。
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【拒絶理由】
商標法第4条第1項第16号
【判決における判断】
ところで、「ミルクドーナツ」の文字よりなる本願商標において、「ドーナツ」は指定商品の名称、「ミルク」は原材料の一部であることを認めることができ、したがって、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものということができる。 しかしながら、原告提出の各証拠および証人の証言ならびに原告代表者尋問の結果を綜合すれば、当時市場には他に本願商標と同じ標章を使用した商品は存在しなかった事情もあって、原告会社の製造する「ドーナツ」の業界における好評判と原告会社の多種多様な手段を用いた宣伝広告の結果、おそくとも本審決がなされた昭和47年3月頃までには、本願商標は特定の業者が製造する「ドーナツ」を示すものとして、東京都を中心に全国にわたって取引者一般需要者間に広く認識されるに至ったものであることを認めることができる。 したがって、本願商標は、商標法3条2項の要件を具備するものである。

「TOKYOROPE」及び「東京ロープ」の文字は、東京の地で生産又は販売されるロープなる観念を生ずるのみで、出所表示の機能を営むに足るものではないと認められるところ、原告会社は東京ロープと略称され、業界で東京ロープといえば、原告会社、原告会社製のワイヤーロープ等を意味するまでになっており、周知著名なものとなっていたとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和37年(行ナ)第4号
【事案】
本件商標は、下記に表示したとおり、「TOKYOROPE」及び「東京ロープ」の文字よりなり、第35類「綱、紐、ロープ、網地、網」を指定商品とするものである。
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【拒絶理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
本件商標のうち、上段の「TOKYOROPE」の部分が、原告会社の商号を英文字で表示した「TOKYO ROPE MANUFACTURING CO.,LTD」の前半分を採った略称であることは明らかであるが、それだけでは、「トウキョウロープ」の称呼を生ずるのみで、下段の「東京ロープ」と称呼上同一であり、前記両者はいずれも、生産地もしくは販売地等の表示としてきわめて普通に用いられる東京なる地名と本件商標の指定商品の普通名称ロープ(綱)とを、単に一連に結合して表示したものにすぎず、したがって、前記両者を二段に組み合わせて構成してみても、一般には、東京の地で生産又は販売されるロープなる観念を生ずるのみで、それによって本件商標の指定商品について出所表示の機能を営むに足るものではないといわなければならない。 しかしながら、昭和年代に入ってからは、原告会社は、東京ロープと略称され、業界で東京ロープといえば、原告会社を指すとともに、原告会社製のワイヤーロープ等を意味するまでになっており、また、原告会社の株式は戦前から東京証券取引所第1部に上場されていて、ロープ又は東京ロープと略称されていたこと等の認定の事実によると、原告会社が本件商標の登録出願をした当時およびその登録がされた当時、一般取引界において、「TOKYO ROPE」又は「東京ロープ」と表示すれば原告会社を指すとともに、これを標章として本件商標の指定商品に用いるときは、原告会社の製品であることを示すものとして、周知著名なものとなっていたと認めるのが相当である。 してみれば、原告会社が前記指定商品について、少なくとも「TOKYO ROPE」および「東京ロープ」なる表示を上下2段に組合わせて構成した標章を用いるときは、一般取引界において、それが原告会社の営業にかかる商品であることを判別させるに足る表彰力を有していたというべきである。

「スベラーヌ」の文字は、一般に「滑らぬ」の観念を想起せられると同時に、右商品が「滑らない」品質、効能を有することを連想させられるものと認められ、これを「滑り止め付き建築又は構築専用材料」について使用する限り、単にその商品の特性を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるため、本件商標の登録は、商標法3条1項3号に違反してなされたものであるとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和56年(行ケ)第138号
【事案】
本件商標は、「スベラーヌ」の片仮名文字を横書きしてなり、第7類「建築又は構築専用材料、セメント、木材、石材、ガラス」を指定商品とするものである。
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【無効理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
本件商標は、片仮名で「スベラーヌ」と横書きしてなるものであり、この構成文字の中間に配された長音符を除くと、「スベラヌ」となるものである。ところで形容詞の本来の語意を強調するために、例えば「暖かい」を「アタタカーイ」とするなど、語尾近くに長音符を挿入して記述し、あるいはこれに従った発音をする表現が社会的に少なからず行われていることは当裁判所に顕著な事実である。他方、「滑らぬ」という語句が「滑らない」と同じ意味を表現する現代語として社会一般に理解認識されていることも当裁判所に顕著な事実である。
そして、前記の事実によると、本件商標からは直ちに「滑らぬ」の観念が生じるものと認めるのが相当である。
前記の認定事実によると、本件商標を「滑り止め付き建築又は構築専用材料」について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、一般に「滑らぬ」の観念を想起せられると同時に、右商品が「滑らない」品質、効能を有することを連想させられるものと認めるのが相当であるから、これを「滑り止め付き建築又は構築専用材料」について使用する限り、単にその商品の特性を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものといわなければならない。
してみると、本件商標の登録は、商標法3条1項3号に違反してなされたものである。

「ハイチーム」の文字は、「高級な酵素」または「高級な酵素製剤」の観念をもつにいたるほど、強い観念表示力を備えた語であるとは考えられず、いささか商品の品質、性能を暗示する要素をもちながら、なお商品の出所表示力を具備するため、商標法3条1項3号に該当しないとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和45年(行ケ)第61号
【事案】
本願商標は、下記に表示したとおり「ハイチーム」の文字よりなり、第1類「化学品、薬剤及び医療補助品」を指定商品とするものである。
【拒絶理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
「チーム」という語が、接尾語でなく単独に「酵素」または「酵素製剤」を意味する語として用いられることはなく、「~チーム」の形で、しかも商品名として用いられることがあるにとどまること、また一般に当業界において、「高級な酵素」または高級な酵素製剤を表現することばとして、「ハイ」と「チーム」の語を組み合わせて用いる用語例が存在することを認めるに足る証拠もない。また、本願商標の構成を外観および称呼の面からみるならば、商標としての各文字の不可分一体性がきわめて強いものであること等の事情を考慮すれば、「ハイチーム」の語は、これに接する取引者、需要者の一般が、直ちに「ハイ」の部分と「チーム」の部分にわけて印象づけられ、そこから「高級な酵素」または「高級な酵素製剤」の観念をもつにいたるほど、強い観念表示力を備えた語であるとは考えられず、いささか商品の品質、性能を暗示する要素をもちながら、なお、他の多くの「~チーム」の商標に伍して、商品の出所表示力を具備する商標であると認められるのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法3条1項3号に該当しない。

「サークライン」の文字は、環状蛍光燈を直感させるとか、環状蛍光燈の形状を暗示しているとはいえ、一見して直ちにその形状を表示したに過ぎないと認めることもできないから、本件商標が特別顕著性を欠くとはいえないとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和38年(行ナ)第55号
【事案】
本件商標は、「サークライン」の片仮名文字を横書きしてなり、第69類「電気機械器具」等を指定商品とするものである。
【拒絶理由】
商標法(旧法)第1条第2項
【判決における判断】
被告が環状蛍光燈を発売してから本願商標が登録されるまでの間はわずか半年余りに過ぎないこと、蛍光燈という商品自体が短期間に消費されたり新品に買い替えられたりするものでないこと等を総合すれば、被告が環状蛍光燈を発売し、それが初めて取引市場に現れるようになってからわずか半年余りしか経過しない本件商標の登録当時に、本件商標がわが国において一般に環状蛍光燈を意味する普通名称として認識されていたものとは到底認められず、「サーク」と「ライン」とを結合した造語として受け取られるとみるのが自然である。
してみれば、本件商標は、その登録当時における取引の事情その他社会の一般通念に照らしてこれを見るとき、指定商品に属する環状蛍光燈の普通名称に該当するとか、環状蛍光燈を直感させるとか、環状蛍光燈の形状を暗示しているとはいえ一見して直ちにその形状を表示したに過ぎないとかを感じ取られるような表示方法と認めることもできないから、環状蛍光燈との関係において本件商標が特別顕著性を欠くものとすることはできない。
したがって、本件商標は、商標法(旧法)1条2項に該当しない。

「うめ/梅」の文字が「梅の実の加工品を加味した食用粉類、食用グルテン」について、商標法3条1項3号に該当するとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成16年(行ケ)189号
【事案】
「うめ/梅」の文字が「梅の実の加工品を加味した食用粉類、食用グルテン」について、商標法3条1項3号に該当するとされた事例。
【拒絶理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
本件商標は、「うめ/梅」の文字からなり、第30類「みそ、ウースターソース、ケチャップソース、しょうゆ、食酢、酢の素、そばつゆ、ごま塩、食塩、すりごま、食用粉類、食用グルテン、アイスクリームのもと、シャーベットのもと、氷等」及び第31類「あわ、きび、ごま、そば、とうもろこし、ひえ、麦、籾米、もろこし、うるしの実、ホップ、飼料用たんぱく等」を指定商品とするものである。
商標法3条1項3号に掲げる商標は、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠くものと解される(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決 判例時報927号233頁)。
審決は、梅の実を加工し、他の食品に加味した食品の存在について、「梅肉ドレッシング」「梅酢ドレッシング」「梅の酢みそ」「梅酢」「梅ごま」等のような表示で販売されていること、商標登録された指定商品において、「梅を加味した焼肉・だんご・魚・野菜のたれ」「梅肉を加味したソース」「梅又はそのエキスを主材とする乳清飲料」等の表示の商品名を認定している。これらによれば、原告が争う「食用粉類、食用グルテン」の例ではないものの、多種多様な食品に梅の実の加工品を加味した例が存在するものといえる。さらに、「梅末、梅エキス」を加味した「きな粉」、「焼梅」との表示、「梅の粉末」を加味した「小麦粉」、「梅うどん」との表示、「梅」を加味した「キャッサバ粉」、「冷凍クリスタルビーン/梅入り」との表示や存在が証拠により認められ、少なくとも「食用粉類」に梅の実の加工品を加味した例が現に存在する。
以上の事実に照らせば、本件商標が「梅の実の加工品を加味した食用粉類、食用グルテン」に使用された場合には、その登録査定当時において、指定商品「食用粉類、食用グルテン」の取引者、需要者に、本件商標がその商品の原材料、品質を表示するものと認識される(少なくとも認識される可能性がある)ものと推認されるのであり、かつ、本件商標は、取引に際し必要適切な原材料又は品質を表示するものであって、特定人による独占使用を認めるのは公益上適当でないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法3条1項3号に該当するものである。
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「フラワーセラピー」の文字が第31類「フラワーセラピーに供する花」について、商標法3条1項3号に該当するとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成13年(行ケ)207号
【事案】
「フラワーセラピー」の文字が第31類「フラワーセラピーに供する花」について、商標法3条1項3号に該当するとされた審決の取り消しを求めた事例。
【拒絶理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
本願商標は下記に表示したとおりの構成からなり、第31類「フラワーセラピーに供する花」を指定商品とするものである。
商標法3条1項3号が、指定商品の品質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について、商標登録を受けることができない旨規定する趣旨は、そのような商標が商品の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占的使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される。
そうすると、同号は、指定商品の品質、用途を表すものとして取引者、需要者に認識される表示態様の商標につき、そのことのゆえに商標登録を受けることができないとしたものであって、同号を適用する時点において、当該表示態様が、商品の品質、用途を表すものとして現実に使用されていることは必ずしも必要でないものと解すべきである。
そして、本願商標の表示態様は、以下のとおり、指定商品である「フラワーセラピーに供する花」につき、その品質、用途を表すものとして取引者、需要者に認識されるものと認められる。
これに加え、審決が引用する各種新聞に記載されていることによれば、フラワーセラピーに使用する花は、乾燥に強く、枯れて散らない種類の生花であって、安全、衛生的で、軽く、取扱いが簡単であること等の特質を備えることを要することが認められ、かつ、このことは、その取引者、需要者にはよく知られているものと推認することができる。そうすると、「フラワーセラピー」の片仮名文字を書してなる本願商標は、指定商品である「フラワーセラピーに供する花」の上記のような特質をも表示するものとして、その取引者、需要者に認識されるものと認めることができる。
したがって、本願商標の表示態様は、指定商品である「フラワーセラピーに供する花」につき、その品質、用途を表すものとして取引者、需要者に認識されるものと認めるのが相当である。
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「サラシア」の文字が植物の属を示すものとして学識者や取引者に知られ、査定後に一般需要者の間でも、これを用いた商標の自他識別力は失われるときは、商標法3条1項3号に該当するとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成13年(行ケ)574号
【事案】
「サラシア」の文字が植物の属を示すものとして学識者や取引者に知られ、商標法3条1項3号に該当するとされた審決の取り消しを求めた事例。
【拒絶理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
本件植物の名称「サラシアレティキュラータ、サラシアオブロンガ及びサラシアプリノイデス」は、共通の冠頭部分「サラシア」を有している。そうだとすると、本件植物が、サラシア属として分類され、その結果、学術上のみならず、一般社会においても「サラシア」と称呼されることは、このような場合に一般によくあることに照らして、いかにも生じやすいことということができる。現に認定のとおり、その多くは本件査定後の事実であるとはいえ、(一部には、本件査定前のものもある。)
本件植物は、古くから知られ、海外において、その薬効に関する近代的な研究も積み重ねられ、日本においても、原告が、本件査定に先立ち本件植物の研究をし、論文を作成し公表するまでに至っているたのであり、このことからは、本件査定当時、この分野の学識者はもとより、原告を含めて、この種の健康食品の製造・販売にかかわる取引者の間においても、本件植物は、その名称とともに、知られていたと認めることができる。
上記状況の下では、本件査定当時、「サラシア」の語は、「茶」という商品との関係においては、原材料を示すという意味を有する語であったということができ、本件商標は、商標法3条1項3号に該当するものであったというべきである。
原告は、商標法3条1項3号に該当するためには、「サラシア」の語が「茶」の原材料を示すことが、学識者や取引者のみならず、一般需要者にも知られていることが必要であることを前提に、論を進めている。
しかしながら、少なくとも、本件植物との関係における「サラシア」のように、原材料が何であるかを一般需要者に示すための語として他のものを考えることが困難な語(あるいは、少なくとも、原材料が何であるかを示すのによく適しているといい得る語)については、査定当時、当該語がそのような意味を有するものとして一般需要者に既に知られるに至っていることは、商標法3条1項3号に該当するための要件とはならないというべきである。このような語は、まだ一般需要者に知られていないにせよ、それは、当該語が示す物を用いた商品自体が知られていないがゆえにほかならず、そのような商品が知られるに至れば、これの原材料を示すものとして用いられることにならざるを得ない。このような語に商標権という形で独占権を認めることになれば、当該語を用いた商標の独占の名の下に、当該語の示す物を原材料に用いた商品自体の独占を許すことにもなりかねず、当該語が示す物を原材料とした商品が一般に知られるに至れば、一番需要者の間でも、これを用いた商標の自他識別力は失われ、商標としての当該語の使用は、混乱の原因となることがほとんど必定である。このような結果の発生を事前に防ぐことも、商標法3条1項3号の目的の一つであるというべきである。
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「負圧燃焼焼却炉」の文字が造語であるとしても、商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、商標法第3条第1項第3号の適用において必ずしも要求されないとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成12年(行ケ)76号
【事案】
「負圧燃焼焼却炉」の文字が造語であるとしても、それを構成する各単語の語義から「負圧を利用して空気吸入し燃焼させる焼却炉」との意味合いを有する複合語として認識され、商標法3条1項3号に該当するとされた審決の取り消しを求めた事例。
【拒絶理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
辞典には、「負圧」の語義として「大気圧以下絶対圧力零までの圧力」と、「燃焼」の語義として「空気中または酸素中で物質が酸化して炎を生じる現象」と記載されていることが認められ、本願商標を構成する「負圧燃焼焼却炉」との文字は、「気圧を大気圧以下として空気を吸入することにより、燃焼をさせる焼却炉」、すなわち、審決の認定するとおり、「負圧を利用して空気吸入し燃焼させる焼却炉」との意味合いを有する語として、取引者、需要者に認識されるものと認められる。仮に、それ自体としては造語であるとしても、それを構成する各単語の語義から前示意味合いを有する複合語として認識されるものである。本願商標を指定商品に用いた場合には、これに接する取引者、需要者は、当該商品がそのような機構の焼却炉であることを表したものと理解するにすぎない。
仮に原告らの主張する「負圧利用空気吸入燃焼焼却炉」の文字よりなる標章が、その表示態様によっては、「負圧を利用して空気吸入し燃焼させる焼却炉」につき、その商品の品質を普通に用いられる方法で表示する商標に当たり得るものとしても、そのことの故に、前示のとおり、同様に「負圧を利用して空気吸入し燃焼させる焼却炉」との意味合いを生じ、ごく通常、一般的な表示態様よりなる本願商標が、指定商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標に当たることが妨げられるものではない。
商標法3条1項3号は、取引者、需要者に指定商品の品質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、該表示態様が商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解すべきである。
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「TOURMALINE SOAP」、「トルマリンソープ」の文字を「トルマリンを配合してなるせっけん」に使用するときは、定商品に係る原材料名が、仮に登録査定時には、現実に使用されておらず、あるいは、一般には知られていない場合であっても、商標法3条1項3号に該当するとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成11年(行ケ)410号
【事案】
「TOURMALINE SOAP」、「トルマリンソープ」の文字を「トルマリンを配合してなるせっけん」に使用するときは、商標法3条1項3号に該当するとされた審決の取り消しを求めた事例。
【拒絶理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
本件証拠によると、せっけんの商品として、マイナスイオン及び遠赤外線の発生という効果を備えるトルマリンの特性を利用して、水にトルマリンを加えてミネラルイオン水としてこれを練り上げて製造したせっけんが「トルマリンソープ」と表示され、かつ、上記のようなトルマリンの特質を利用して製造した特別な効能のあるものとして原告により宣伝され販売されており、また、トルマリンを配合して製造したせっけんが「トルマリンソープ」と表示されて、原告以外の業者により、宣伝され販売されていることが認められる。さらに、せっけんの商品と需要者を共通にすると認められる化粧品の商品としてもトルマリンを基礎として製造された化粧品として、「トルマリン基礎化粧品」、「トルマリン化粧品」と表示されて原告以外の業者により開発され、マイナスイオンを発生させるトルマリンを基材とし優れた効能があるものとして宣伝されていることが認められる。
本願商標を指定商品である「トルマリンを配合してなるせっけん」に使用するときは、これに接する取引者、需要者に、その商品の原材料につきトルマリンが使用されているものであること(品質)を表示したものと認識させるにとどまるものであるとみるのが相当であり、出所の表示機能や自他商品の識別機能を果たすものではないというべきであるから、これと同旨の審決の認定判断に誤りはない。
なお、商標法3条1項3号の趣旨は、同号に列挙されている商標は、商品や役務の内容に関わるものであるために、現実に使用され、あるいは、将来一般的に使用されるものであることから、出所識別機能を有しないことが多く、また、これを特定人に独占させることは適切でないために登録することができないものとされていると解される。したがって、指定商品に係る原材料名が、仮に登録査定時には、現実に使用されておらず、あるいは、一般には知られていない場合であっても、将来原材料名として使用されて、取引者、需要者の間において商品の原材料名であると認識される可能性があり、また、これを特定人に独占させることは適切ではないと判断されるときには、右の原材料名は同号に該当すると解される。
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やや図案化した書体で「たらの子」と「こうじ漬」の文字を縦2列に配した構成の商標が、商標法3条1項3号に該当するとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高平成6年(行ケ)85号
【事案】
やや図案化した書体で「たらの子」と「こうじ漬」の文字を縦2列に配した構成からなり、第32類「たらこと麹を主原料とする漬物」等を指定商品とする商標が、商標法3条1項3号に該当するとされた審決の取り消しを求めた事例。
【拒絶理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
本願商標は、やや図案化した書体で「たらの子」と「こうじ漬」の文字を縦2列に配した構成からなり、第32類「たらこと麹を主原料とする漬物」等を指定商品とするものであるところ、本願商標中の「たらの子」は、「鱈」の「子」、すなわち「鱈」の「成熟卵」を意味するものと理解することが可能であり、「こうじ漬」は、「こうじ」(麹、糀)、すなわち、米、麦、大豆、などを蒸して寝かし、これに麹かびを加えて繁殖させ、塩を加えたものに、魚、肉、野菜等を漬け込んだ食品を意味するものであることは明らかである。
そうすると、取引者、需要者は、本願商標の前記構成から、その商品が、「すけそうだら」あるいは「まだら」等のたらの腹子を麹(糀)に漬け込んだ食品を意味するものと理解することは容易であり、
したがって、本願商標は、これを指定商品中の「たらこと麹を主原料とする漬物」に使用した場合は、当該商品の原材料及び加工の方法を普通に用いられる方法で表示した標章であるから、商標法3条1項3号に該当する。
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産地+品質(色彩)からなる商標が、商標法第3条第1項第3号にあたるとされた事例

【種別】審決取消訴訟の判決
【訴訟番号】東京高昭和54年(行ケ)第16号
【事案】
「甲州黒」の漢字を縦書きしてなり、第16類「黒染織物」を指定商品とする商標は商標法3条1項3号に該当するとされた審決に対する取消を求めた事例。
【拒絶理由】
商標法第3条第1項第3号
【判決における判断】
本願商標は、「甲州黒」の漢字を縦書きしてなり、第16類「黒染織物」を指定商品とするものである。
商品「織物」等を取扱う業界では、「甲州織」をはじめ、遠州、尾州、丹後などの旧国名が、織物の産地を表示するものとして、「正絹遠州つむぎもの地」「遠州ウールきもの地」「丹後ちりめん」のように、商取引上普通に使用されている。
さらに、「黒」の文字は、例えば、「黒留袖模様」「黒絵羽織(地)」「黒紋付」「黒染」のように、黒く染めた織物又はその加工製品を称呼するものとして、商取引上普通に用いられている。
すると、「甲州」と「黒」とを結合した「甲州黒」の文字よりなる本願商標は、これをその指定商品である「黒染織物」に使用するときは、一般需要者に甲州(山梨県)で生産された黒染の織物を意味するものとして理解させ、認識させるに十分であり、これを排除して、自他商品識別の機能を果すべき特段のものは、その構成上何ら見出すことはできない。そうとすると、本願商標は、商標法3条1項3号の規定にいう商品の産地及び品質もしくは原材料を表示するものに該当する。
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