「甘栗太郎」の文字が商品「甘栗」について当業者の間において標章として慣用されているとされた事例
【種別】抗告審判(旧法)審決
【審判番号】昭和30年抗告審判第1283号
【事案】
「甘栗太郎」の文字が商品「甘栗」について当業者の間において標章として慣用されていることにつき争われた事例
【審決における判断】
本願商標は、「甘栗太郎」の文字を縦書きしてなり、第43類「甘栗及び甘栗入り菓子及び麺麭の類」を指定商品とするものである。
そこで判断するに、「甘栗太郎」の文字は商品「甘栗」について当業者の間において標章として慣用せられているものであること当庁において顕著な事実であって、本願商標はこの「甘栗太郎」の文字を普通に使用せられる態様で表してなり、甘栗及びこれと類似の商品に使用するものであること明らかであるから、商標法(旧法)2条1項6号に該当する。
三本のマストにそれぞれ若干の帆、幟、縄梯子を懸けた大型帆船を側面より描いた図形が、商品「カステラ」の標章として当業者間に慣用されていたとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服昭和10-299
【事案】
三本のマストにそれぞれ若干の帆、幟、縄梯子を懸けた大型帆船を側面より描いた図形が、商品「カステラ」の標章として当業者間に慣用されていたとされた拒絶査定に対し不服申立がされた事例。
【拒絶理由】
商標法(旧法)2条1項6号
【審決における判断】
本件登録商標は、三本のマストにそれぞれ若干の帆、幟、縄梯子を懸けた大型帆船を側面より描いた図形よりなり、第43類「カステラ」を指定商品とするものである。
よって検討するに、本件登録商標は、マスト帆、幟、縄梯子等を有する船すなわち俗に云う、オランダ船と称する帆船の図形よりなるものであるが、本件登録商標と同一又は類似のものが、商品「カステラ」の標章として本件登録商標の登録前より当業者間に慣用せられている事実は、請求人の提出に係る証拠により認めることができる。
したがって、本件登録商標は、商標法(旧法)2条1項6号に該当する。
請求人の祖先(琉球王朝時代の新垣椒規)により創造された菓子である「ちんすこう」が、菓子について慣用されている商標であるとされた事例
【種別】拒絶査定不服の審決
【審判番号】不服昭和52-11462
【事案】
請求人の祖先(琉球王朝時代の新垣椒規)により創造された菓子である「ちんすこう」が、菓子について慣用されている商標であるか
【拒絶理由】
本願商標は、「ちんすこう」の文字を書してなり、第30類「菓子、パン」を指定商品として、昭和48年8月24日に登録出願されたものであるが、指定商品については、昭和51年7月21日付手続補正書により「砂糖、豚油、小麦粉をこね合せて木型で抜きとり、焼き上げた菓子」と補正されたものである。
これに対し、原査定は、「本願商標は、沖縄県下において砂糖、豚油、小麦粉をこね合せて木型で抜きとり焼き上げた菓子、について慣用されている『ちんすこう』の文字を書してなりにすぎないものであるから、単に慣用標章を表示したにすぎないものと認める。したがって、商標法第3条第1項第2号の規定該当し、前記商標以外の商品に使用するときは商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1第16号の規定に該当する。」として、本願を拒絶したものである。
【審決における判断】
よって按ずるに、本願商標は、その構成上記のとおり「ちんすこう」の文字を書してなるものであるところ、「ちんすこう」は、沖縄名産の菓子であって、砂糖、ラード、小麦粉をこね合わせ、木型で抜き取って焼き上げた菓子をいうものであることは、例えば、昭和2年10月17日東洋経済新報社発行の「日本の名産事典」等の記載に徴し認められるところである。
しかして、請求人の提出に係わる甲第7号証によれば、「ちんすこう」は、請求人の祖先(琉球王朝時代の新垣椒規)により創造された菓子であることは窺い知れるとしても、「ちんすこう」の文字は本願商標は出願前(請求人も述べるところ)より今日に至る間、沖縄における請求人以外の菓子製造業者間により、かかる菓子について、商品を表示する語として当該商品に付することが普通に行われていることが認められる。
そして、上記の認定に反し、請求人のみが、かかる商品について他の同種の商品と識別するための標識として「ちんすこう」の文字を使用し、かつ、取引者、需要者間に広く認識されているということを認めるに足る証左は見当たらない。
してみれば、「ちんすこう」の文字は、上記商品について慣用されている標章といわざるを得ないから、本願商標を商標法第3条第1項第2号の規定に該当するとして拒絶した原査定は、妥当であって取り消す限りでない。
よって、結論のとおり審決する。